301−350

本当は抜け出したかった。この、絶対世界から。
君さえいなけりゃって、考えたことくらいあるよ。それこそバカみたいにね。
誰よりも君のこと、壊してやりたいと思ってたんだ。
お前だっていつか俺を見捨てるに決まってるさ。だから優しくしないでくれ。
君が大切すぎたから。何処にも行かないようにしたかった。

お前に云わなきゃいけないこと、ひとつも云えないままだったな。
この世に色さえなかったら、モノクロさえもなかったら。
お母さん、泣くくらいなら産んでなどくれなくてよかったんです。
他に誰もいなかったから、お前を愛しただけなんだ。
全てを守ることなど出来ないから、何もかもを残らず捨てた。

誰よりも何よりも、お前だけが愛おしいから傷つけた。
私はきっと、壊れることでしか愛を体現出来ないのよ。
お前の望みを俺が叶えてやっただけなのさ。結局はお前の一人勝ち。
だって怖いでしょう? 残らず消してしまわないと。
雨が降れば笑えるの。赤い赤い、雨がいいわ。

俺はお前に、なくした面影を重ねていたんだな。
何も知らないから無邪気だなんて、あなた方の幻想じゃあないですか。
笑顔の下にひた隠す。誰も知らない、そう、自分さえ。
放棄すればそれで終われるなんて思ったら大間違いよ。逃がさないから。
教えてあげるよ。嘘だって、ねじ曲げちゃえば真実になることを。

愛おしさを押しつけてねじ伏せて、ほら、愛していると云ってご覧。
限りなく自己満足でも構わない。俺は貴方を守りたい。
痛みなんて忘れました。悼みなんて知りませんでした。
言葉を無くして、思いを失して、後は何を喪えば楽になれますか。
ある日突然、世界は凶悪に剥かれた牙を突き立てた。

灼熱色が空に溶けた。まるで闇を誘うように。
夕陽に向かって叫びましょう。嗚呼素晴らしきこのセカイ。
向日葵のように笑う君は、僕の薄暗い心には眩しすぎるよ。
淡い若葉の真下でね。君にそっと告白します。
緑雨が幾度も降り注ぎ。けれど僕は未だ救われず。

空が憎らしくて仕方なかった。貴方を虜にした空が。
探してきたよ。見てご覧、これが僕らの幸せだ。
深い海の中にまで、届いた光はやさしすぎて。
薄く包んだ朝焼け色で、君の涙が滲まぬようにと。
君が笑ってくれるなら、僕もまだ笑っていられるよ。ずっと。

そんなこと云ってたら、本当に攫うよ? なんて、冗談でも云えない。
貴女の歩く横顔を、隣で見られる贅沢な日。少しくらい、もう少しくらい。
嘆いたところで意味などはないと知っています。
縋るように依存するそれは惰性にも似たエンドレスループ。
余りにも弱々しい、儚い一面の偶像。

いつか全てを忘れたとしても。
ありがとう。貴方に出会えたことが、私の全て。
涙を杯に、心を剣に、愛だけを君に。
明けてくれるな永き夜。夢の中まで永遠に。
晴れ渡った空だから。あなたは、そこにいるはずなのに。

新しい、時を刻む。またひとつ、罪を犯す。
シズクは地に落ち、また流れるときを待つ。
縛り付けるくらいに、繋いでいてね。せめて、この器が果てるまで。
わずかな熱に、壊れそうな白い自我を抱き。
鳴り響く警報機にあなたの声が消え て ゆ く ・ ・ ・
bacK