51−100

情愛は、時に狂気へと姿を変える。
貴方に恋した、それが過ち。
哀しいまでに悲しいほどに、焦れた人はもういない。
呟くだけで涙が滲む誰かの名前。
呼んで呼んで呼んで、届くわけもないのに。

好きだよ。好きだったよ。今だって、ずっと。
ごめんなさい。嫌いにならせてください。
まるで常識のように存在した感情。
罅割れた神経で考えるのは終わりの言葉。
潰えた気持ちを踏みつけて、どうか嘲って頂戴。

泣けばいいんですか、泣いたら何か変わりますか。
幸せになってね、と夢の中でアナタが云った。
王子様。そんなのいないって知ってるよ。
触れたはずの指先は、硝子窓を曇らせた。
触らないで。届かないはずの距離に期待してしまうから。

私の奏でた旋律は、酷く憐れに部屋を満たす。
雨音が消してくれたのは嘘泣きの痕跡。
さよなら、わたしはあなたがきらいでした。
恋だの愛だの、軽々しく云えるくらいに好きだった。
世界中の何が嘘でも、この気持ちだけは真実だって思ってたのに。

誰しもにとって、僕は罪人なんです。だって全てが虚構だから。
このまま、手を繋いで。僕ら、消えてしまおうか?
勝敗よりも気にすることは成功。いつだって、うまくいかないから。
僕は君を連れてゆく。ゆけるのなら、どこまでだって。ずっと。
嘘で塗り固めたコトバで、自分自身を騙してゆこう。

永遠が存在しないように、瞬間も消えてしまうなら。あと、少しだけ傍に。
何でもします、何でもするから。貴方の傍に、いさせてください。
高望みの価値観。もっと楽に生きていけるなら、捨ててもいいですか。
この道の先、もう二度と交わらぬよう。永遠のお別れを。
踏み外したいと云うのは願望。誘うのは誘惑。さぁ、おいで?

赤が滴る情愛の、全て全部を貴女に捧げ。そしてそれは、
数滴の絵の具を落としたところで変わらずに、暗鬱と垂れ込める。
この指先を離れて、生まれる分身など。捻り潰してしまいたい。
楽観的なことは、馬鹿らしい。悲観的であることは、愚かしい。
終末と終焉に誓い給う。唯一、絶対の貴方だけに生きることを。

天秤はいつでも簡単に君に振れる。計測の必要性がないくらい。
嘘も偽りもないくらいに、真実だったことがどうしようもなく悔しくて。
何でもするし出来るけど。どうせ報われないことも知っている。
こんな平和な時間さえ、うずうずと削いでゆくのだろう。
優しく抱きしめてこの骸を。その口づけのすぐ後に。

君のことを考えると何も手がつかないなんて、空笑うロマンチズム。
当然であること、そうでもないこと。些細である差異。
ありがとうなんて、気色が悪くて気味が悪くて。聞けやしない。
残酷な優しさに満たされて、抉られてゆく私の心。貴方に。
しあわせです、しあわせです。そばにいられることが、こんなにも。

無知であることなんて。羨ましいわけでなく、疎ましいだけだった。
そう在ることが当然だと、受けて流して止め処なく。冷え冷えと。
あの人が、届きそうなんだ――そう云った顔が、初めて笑って見えた。
感情なんてものはあまりにも混沌で、波に紛れて霧散するから。
進んでゆく道標、育ててゆく心、歩いてゆく道上、育んでゆく意。

bacK