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牧場物語・ルーンファクトリー小説保管スレッド Part1
6:名無しさん@カブ好き2009/12/11(金) 13:02:15 ID:LfAy+aOs [sage] AAS
17 名前:STRANGE GANTLEMAN 909[sage] 投稿日:2009/01/01(木) 00:51:50 ID:t9cwEGtq
ラグナ×ミネルバ
一つの石が投げ込まれ湖面に映り込む月は揺らぎ始める。
波の中に揺れる影はこちらを見ていた。
ため息を一つこぼして褐色の肌を持つ少女は夜空を見上げる。
膝小僧を抱え座り込むと顔をうずめた。
目尻にうっすらと涙が浮かぶ。
自分が何のためにはるばるこの土地までやってきたのかわからなくなってきていた。
それというのもあの男のせいなのだ。あのボケーッとした顔を思い出すだけで胸の奥が波立つ。
つい先日まではこんな気持ちになることはなかったのに。
一番大事なものが何かといえば揺るぎないものがあった。
胸を張って答えられる自信があった。
今はもうわからない。
一番傍に居たいと思い続けてきた人の為にここまできたのに。
一番傍にいてほしい人が違う人だったなんて、今更、そう、今更なのだ。今更、どうしようもないのだ。
しんしんと雪が降り積もる中ラグナは先日の吹雪で荒廃した畑の手入れをしていた。どこから湧くのだか切り株だの大岩だのがみっしりと集まっている。
ラグナは手慣れた様子で斧を宙に放り投げると自身も跳躍し斧を空中で掴み縦回転しながら落下の勢いを利用した一撃を振り下ろす。切り株は一撃で弾け飛び十数本の木片と化した。
「……それってほんとに農作業なの?」
声の方向へ振り返ると自宅の軒先に褐色の肌をした少女が佇んでいた。呆れたような珍しいものでも見るような眼差しをこちらに向けている。
「ミネルバさん、おはようございます。今日も寒いですね」
「あのね、冬だから寒いのは当たり前なのっ、せっかくレディが訪ねてきたのに他に言うことはないの?」
「厚着しないんですか?」
「うっ……。い、いいの! ミネルバはこの格好が気に入ってるんだから! それにラグナだってそんなに変わらないじゃない」
「あはは、体を動かしてるとこれでもときどき暑いくらいです」
「そりゃあんな曲芸みたいなことしてればそうかもしれないわね。あんな風に切り株割るの余所で見たことないよ……」
「こうすると切りやすいんですよ」
「……ラグナも相当変わり者ってことね」
「ところでミネルバさん、何かご用でしょうか」
「べ、別にないわよ。用がなかったら来ちゃいけないっていうの?」
「いいえ、聞いてみただけです」
「そ、じゃあさっそくお茶の一つでも出していただこうかしら?」
18 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/01(木) 00:53:05 ID:t9cwEGtq
「お茶受けはいつものでいいでしょうか」
「そうね、今日は栗きんとんもつけてほしいな」
ミネルバは軽く首を傾げ片目をつむって目一杯可愛らしく見えるようにウインクをした。これで乗せられない殿方はいない、筈なのだが。
「それだとリラックスティーより緑茶の方がよさそうですね。ちょうど緑の草がいっぱいありますよ」
いたって普通の反応。
生来の朴念仁なのか血統書つきの天然なのかこの少年に対してはいまいち効果が発揮できない。
(なんだか自信なくなっちゃうなあ……)
それでもこの少年の作る栗料理にはちょくちょく通うだけの価値があるのだからタチが悪いと言える。
中でも見た目は最悪だが味は絶品というミステリーフードが格別なのだ。似たような見た目のものは自分でも作ったことはあるだがそれとはまったく異なる味わい。それこそ月とトータスほどに違う。
かつて誕生日に姉が初めて作ってくれた料理がこれとよく似ていた。それとも違う味なのは作った人の個性だろうか。
「うーん、美味しかった♪」
「お粗末さまでした」
「じゃあお昼にまた……っくしゅ!」
派手にくしゃみをした後に寒気が襲ってきた。肩を抱くと自分が軽く震えているのがわかる。
「ミネルバさん、大丈夫ですか!?」
「ぐす……風邪ひいたみたい……夕べ夜更かししすぎたからかなぁ……」
「早く帰って寝た方がいいですよ」
「うぅ……ミネルバにお昼ご飯持ってきてくれる……?」
「持って行きますから、早く休んでください。送っていきますから」
「えへへ、約束だからね……」
ミネルバはラグナに支えられながらなんとか歩くことができた。
ラグナがドアを開いた瞬間凍えるような強風が吹き込みミネルバは身を縮めた。外は吹雪になり始めていた。後数分もすれば数メートル先さえ見えない猛吹雪となるだろう。
大きな音を立ててドアがしまった。
一気に吹き込んだ風で更に体が冷えたのかミネルバは強い脱力感にみまわれた。
きつく閉じていた目を開き見上げると心配そうにこちらを見下ろしている顔があった。できればそんな顔をしないでほしい。自分に対して向けて欲しいのはそんな表情ではなく……もっと……
徐々にまぶたは重くなり、ラグナの顔も遠ざかっていった。
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