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牧場物語・ルーンファクトリー小説保管スレッド Part1
44:エンジュ 2009/12/13(日) 21:32:55 ID:kh1UIBdU 238 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/02/24(火) 00:22:28 ID:9bFoD86r どっちだっけ…ていうか、ゲーム中に主人公の一人称って出てきたっけ まあ、自分のss内での主人公に合わせたらいいんじゃないかな …と、自分勝手に解釈して、一人称「僕」でss投下 風バザ 男主人公×エンジュ ストーリーも無くヤッてるだけなんだスマン 239 名前:238[sage] 投稿日:2009/02/24(火) 00:23:47 ID:9bFoD86r 夜だった。 都会と違って、この町は日が暮れると途端に静かになる。 生き物の呼吸ひとつ聞こえない、葉擦れの音さえしない静寂の中にあって、 けれど確かに何かの、誰かの気配を感じている。 誰か……違う、紛れも無い彼の気配。 当たり前よ、ここは彼の牧場だもの……。 彼が丹精込めて育てた作物が根を張り葉を広げている、その畑の中に裸で立っていた。 月明かりの下で、ぐるりと周囲を見回す。 誰もいないの? 求めた姿は無く、ただ、地面に落ちた月影が、ゆらめきながら近付いてきていた。 日中の影と違い輪郭が曖昧で、何だか青みがかって見える。 不意に、影がとろりと色を濃くした。 ほとんど闇に変したそれが身体の上を滑り、内側へも忍び込んでくる。 甘く疼く感覚に頭を振り乱し、見上げた夜空に月が輝いていた。 世界が不規則に揺れる。 ああ、燃えるように体が熱い……。 ぐちゅぐちゅと水音が響く。 それが、男根が自分の秘所をえぐる度に立てる音だと脳で理解するよりも先に、 エンジュの喉から高い喘ぎ声が迸しっていた。 「ああっ、あ、あ、あぁんっ!」 「あれ、エンジュ、気が付いた?」 仰向いたエンジュの顔を覗き込んで男が笑う。 栗色の髪も少年のようにあどけない顔立ちも、普段の彼と何ひとつ変わっていないのに。 黒い瞳に情欲を滾らせ、大きな手で薄い胸を掴んで先端に口づける様は、見知らぬ男性のようだった。
45:エンジュ 2009/12/13(日) 21:33:16 ID:kh1UIBdU 240 名前:238[sage] 投稿日:2009/02/24(火) 00:26:14 ID:9bFoD86r 「エンジュ、イッてすぐ寝ちゃったんだよ。僕も寝ようかと思ったんだけど……エンジュの中がすごく気持ちいいから」 もう一回したくなったんだ。 早口で囁いて、彼はぐいと腰を回した。 最奥に彼の先端が擦りつけられる。 強い快感に頭を振り乱して、視界の端を過ぎった自分の髪の色に、数時間前の出来事を思い出す。 (青い羽根を、貰ったんだわ……) エーリッヒに報告した後、また彼の家へ戻り、心が逸るままに体を繋げた。 貫かれた瞬間の痛みはもう残っていなかった。 「エンジュはきれいだね」 日々の農作業で硬くなった掌が、エンジュの華奢な体を這い回る。 額に浮いた汗を拭い目尻をなぞり、首筋、鎖骨を伝い背を撫でて胸に回った。 重力に従ってなだらかになった乳房を掌に包まれる。 揉みこむ動きはゆっくりとしていたが、屹立した乳首が固い皮膚に擦られて腰が痺れた。 じゅわっと、熱い液体が溢れ出したのをエンジュは感じた。 そこに一物を差し込み注挿をくりかえしていた彼には尚更、それを感じ取られただろう。 破顔して彼女の腰を鷲掴むと、一層大きな水音を立てるように動き出した。 「やっ、ふぁあっ、ああ…!」 「聞こえる?エンジュの音がしてるよ」 「いやっ!何言って…っあああ!」 自身の愛液と、一度放たれた彼の精液とが混ざり合ったそこを、脈打つ肉棒が滑らかに動き回る。 不意に先端が浅い箇所の一点を探り出す。 突くような擽るような動きに嬲られ、エンジュの思考が白く高みへ追い詰められてゆく。 「あ、あああイヤ、いっ、いやああああっ!」 荒い息を吐きながら腰を動かしていた彼が、吐息だけで笑った。 強く彼女をかき抱き、ほっそりした腕が首に回されるのを感じながら耳元に囁く。 「嘘ばっかり」 カッ、とエンジュの全身が真っ赤に火照る。 絡み付いてくる彼女の膣壁を擦りながらぎりぎりまで引き抜き、根元まで一気に叩きつけると、 彼女が高く啼いて強く締め付けた。 うねる胎内に、二度目の精を吐き出す。 燃えるように首筋が熱かった 241 名前:238[sage] 投稿日:2009/02/24(火) 00:31:38 ID:9bFoD86r 爽やかな朝の光の中で、エンジュは自分の両手を見下ろした。 跳ね返す光が眩しいほどに白い指の、繊細な爪の先には少量ながら血がこびりついている。 視線を上げると、顔を引き攣らせた牧場主が、首に手をやりながら「じくじくするぅ…」と呟いた。 「服で隠れないよね、これ……自分じゃ見えないけど目立つ色してる気がする……」 「塩、摩り込まれないように気をつけなさい」 誰にとは言わないけど。 青い顔で「お義父さんには会わないようにしないと……」と震える婚約者を横目に見ながら、エンジュは傷薬を探す為に立ち上がった。 以上です。 携帯なんで改行おかしかったらごめん
46:カイル×ジュリア 2009/12/13(日) 21:39:08 ID:kh1UIBdU 262 名前:カイル×ジュリア(0/8)[sage] 投稿日:2009/03/23(月) 00:32:47 ID:X3OoDaLl 期待しつつ待ってるあいだに投下してしまう >>261 大変そうでよくわからんけど体調崩すなよ だいぶ前に書いたカイル×ジュリアの続き。無理矢理…っていうちょっときついやつです。 続き物なのに間空きすぎてるしハードなんで、苦手じゃない人は>>261を待つ間の退屈凌ぎにでもして下さい。 今回エロは無いです 263 名前:カイル×ジュリア(1/8)[sage] 投稿日:2009/03/23(月) 00:34:46 ID:X3OoDaLl 明け方から雨が降っていたが、日が昇るに連れ、小降りになっていった。 どの家も戸窓を閉ざし、表通りに人影は無い。 その日、夕方になっても、彼女の家の扉が開く気配は無かった。 ジュリアは未だベッドの中。 ジュリア自身の心持ちの様にどんよりと暗く沈んだ部屋の中で、彼女は横になったまま、ぴくりとも動こうとしなかった。 目覚めてはいる。 あれから一夜明け、日が落ち始めた今でさえ、体に受けた痛みはほとんど引いていなかった。 消えない傷を負った体はまだじんじんと痛んだし、頭の中にはずっと不安や悲しみが渦を巻いていた。 そういうものが繰り返しジュリアを苦しめていたせいで、できれば動きたくなかった。 本当は、今日も何事もなかったように店を開けるつもりだった。 昨日の夜に何があったか街の皆は知らないから、風呂屋は今日もいつも通り開かれると思っている。 休むかもしれないなんて誰も考えないだろう。 だから突然休めば皆に嫌われると思った。 皆に冷たくされる自分の姿を想像して、胸が潰れそうになった。 そのくらい強く、脅迫観念的に、ジュリアは日常を取り戻そうとしていた。 なのにジュリアは今こうして臥せっている。 ガチャ、と、下階で鍵のかかった扉を開けようとする音がした。 何も知らない街の誰かが、風呂に入ろうとやってきたのだ。 ジュリアは反射的に飛び起きる。 窓の方を向くが、ここからではやってきたのが誰かも分からない。 必死に耳をそばだてるが、何か言われても返事はできない。 どっと冷や汗が溢れる。 何もできないことに、ただ焦っている。 もしかしたら、自分が今まで積み重ねてきた幸せな日常が、今ここで、だめになってしまうのかもしれないのに。 ぎゅっと胸を強く押さえて、窓の外の何も無い部分を見つめながら、彼女は小さく開いた口を震わせている。 もうジュリアには、何をすることも、何を避けることもできなかった。 できたのは、今起こっている出来事を受け止め、耐えることだけ。 そうでなければ、耐えられずに傷つくことだけだ。 もう一度だけ、ガチャ、と音がして、それきり何も聞こえなくなった。 「誰か」は、諦めて帰っていったらしい。 「……うっ……、ううう……」 ジュリアは…、泣き出してしまった。 顔を覆い、小さな体を震わせながら、か細い悲痛な声を上げて。
47:カイル×ジュリア 2009/12/13(日) 21:39:41 ID:kh1UIBdU 264 名前:カイル×ジュリア(2/8)[sage] 投稿日:2009/03/23(月) 00:37:13 ID:X3OoDaLl 耐えることなどできなかった。 成すすべなく傷ついていく事しか、彼女にはできなかった。 あれから、もう何度泣いたか知れない。 カイルが帰っていった後、本当は、寒さで死んでしまうまで泣き続けていたかった。 あの時は本当にショックだったし、何もかも失ってしまったような気持ちだった。 もう、明日が来るのが怖くて仕方無かった。 だから、本当にそうするつもりだった。 でも、寒さは彼女の体にはあまりにも辛くて、目の前にお風呂もあって、結局、その暗い考えを最期まで貫くことはせずに終わった。 でも、お風呂に入ることはできなかった。 温泉のお湯は、彼女の傷に酷くしみるのだった。 耐えられないほど痛かったし、その上、痛みから先程の事の記憶が蘇ってきた。 あの鼻を突く生臭い匂いまでどこからか漂って来る様だった。 それは、ジュリアには辛過ぎた。 そうしてジュリアは、自分の身に起こった悲劇が決して悪い夢などではなかったのだと、改めて思い知らされた。 泣きながら汚れた体をきれいに拭いて、それでもいくらか落ち着いた。 ベッドに潜り込み、小さな体を丸めて、震えながら目をつむり、できる限り辛いことを考えないようにして、眠ろうとした。 しかしなかなか眠れず、やっと眠りにつけたころ、ジュリアは、カーテンの隙間から部屋の中にうっすらと陽が差しているのを見た気がした。 この夜は彼女にとってつらいものだったが、悲劇は今晩限りではない。 この日の出来事は、はっきりとジュリアの人生にも傷として残った。 この日を境に彼女を取り巻く色々なものが変貌してしまった。 どんなに望んでも、以前に戻る事は、できないのだ。 ジュリアは、体に違和感を感じて目を覚ました。 下着の中がぬるぬるして冷たい。 布団から出て下着を下ろすと、お腹から太股にかけて濡れていて、所々で何かが糸を引いている。 「あ…あ……」 それが何か、分からない筈がなかった。 注ぎ込まれたカイルの精液が、溢れ出していたのだ。 そんなものを見てしまっては、嫌でも、彼女の恐れる最悪の結果を想起させられる。 妊娠、という。 血の気が引いた感じがした。 急激に覚醒したジュリアは、その上でショックの余り卒倒しそうになった。 265 名前:カイル×ジュリア(3/8)[sage] 投稿日:2009/03/23(月) 00:39:39 ID:X3OoDaLl 貧血を起こしたように、視界が影に覆われ、揺れている。 それでもジュリアは、何とかしなければ、という思いでベッドから降りた。 「く、う……っ」 床に足をついて、両足が華奢な体を支えようとすると、体がみしみしと軋むように痛んだ。 純潔を破られた傷が、恐らく、まだ消えないでいる。 相変わらず視界は暗く曇っているようだったし、階段を一段降りる度に痛みで呻き声を上げたが、それでもジュリアは風呂場に向かって少しずつ歩いていった。 しかし、その時間がいけなかった。 必死に歩いている間、とにかくどうにかしなければ、と思っていた。 けれど、どうすればいいかなんて少しも分からなかった。 なにしろこんな事は初めてだったのだから。 その不安に、マイナス思考が強烈に作用した。 やがて頭に浮かんだのは、最悪の結果の想像図だった。 もし自分が妊娠すれば、街の皆は驚くだろう。 そしてそれが非難に変わるのに理由はいらない。 そんなことになったら、自分は街に居続けられるだろうか。 でも、もしそれが辛くなっても、街の外で生きることなんてきっとできない。 今まで自分のイメージを守ってきた美しい体は、妊娠することで失われる。 そうしたら、どうすればいいのか。 もはや、自分を守るものなんて、何もなくなってしまった。 これからどうやったらみんなに嫌われずに生きて行くことができるというのか。 その時のジュリアには、そういう風にしか考えることができなかった。 妊娠することが、既に決まった未来のように思えていた。 風呂場にたどり着くまでにかかったその時間が、ジュリアを打ちのめしていた。 一階に降りると、脱衣所の前に、赤黒く汚れたバスタオルが一枚、昨日のまま、広げてあった。 それはまさに昨日のまま、あの時のジュリアの身悶えの一つまで皺として残していた。 「……」 ジュリアはそれを拾い上げるために屈もうとしたが、力が入らず、畳んだ膝が、とん、と床についた。 「……?」 気付くと、水滴がタオルに落ち、それは見る見るうちに染み込んで、小さな円を描いた。 ジュリアは涙を流していた。
48:カイル×ジュリア 2009/12/13(日) 21:40:13 ID:kh1UIBdU 267 名前:カイル×ジュリア(4/8)[sage] 投稿日:2009/03/23(月) 00:43:03 ID:X3OoDaLl どうして気付かなかったのか、という程たっぷりと溢れた涙が、あるものは頬を伝って顎に、あるものは鼻の先に集まり、ぽつぽつと雫をつくってこぼれ落ちていった。 いつから泣いていたのか分からない…、でも、気付いた時には、彼女の心は折れてしまっていた。 それから、何も考えていない時間と泣いている時間を、ただただ何度も繰り返した。 あれ以来人は来ていない。 あるいは、誰もが扉に手を掛けずして帰って行くのか。 そうか、既に突然の無断休業が、皆の知るところとなっているのかもしれない。 それなら、明日は、どうしよう。 店を開けるべきか、家に籠るべきか。 明日こそは皆のために店を開け、その上で非難を一身に受けるべきか、それに耐えられるとも分からない自分を、皆にどう思われても、もう少しだけ守るべきか。 ジュリアにはどちらも辛い選択に思えた。 そんな時、あの音がした。 ガチャ、という、扉を鍵が押さえる音が。 ジュリアは再び緊張する。 また、あんな辛い思いをさせられるのか。 それきり音は聞こえてこない。 帰って行ったのだろうか…、また… コン、コン、と、扉をノックする音が聞こえた。 この客は、ジュリアが出て来ることを望んでいる。 とはいえ、ジュリアはそんなことができる状態ではない。 大体お風呂にお湯も張っていないのだから、出ていったところで何もできない。 その音は、より彼女を追い詰めていく。 「ジュリアさん?」 「!」 聞き慣れた声。 「わたくしです、起きてらしたら、返事をして」 ロザリンドだ。 ジュリアを特別好いてくれている、大切な友達だ。 「具合が悪いんですの?怪我をなさったの?」 ジュリアがどこにいても聞こえるように、大きな声で呼び掛けている。 「返事をして、ジュリアさん」 どうしよう、と悩む前に、ジュリアの体は動き出していた。 ロザリンドが自分の窮状をいかにして知ったかは分からない。 大体、いくら親友とはいえ、今回の事は、話してしまうべきか悩んでもいいものだったろう。 しかしジュリアは、自分を助けようと手を伸ばす彼女に、反射的にすがったのだった。 痛みを堪えながら窓まで歩き、それを押し開けた。 窓から通りを見下ろすと、ロザリンドがいた。 目が合うと、彼女は安心したように微笑んだ。 それを見ると、ジュリアは泣きそうになってしまう。 268 名前:カイル×ジュリア(5/8)[sage] 投稿日:2009/03/23(月) 00:45:45 ID:X3OoDaLl 「い、いまいくから、まってて」 取り乱しているのを気付かれないよう、ちゃんと声を出したつもりだったが、かすれた、驚く程小さな声しか出なかった。 「わかりましたわ」 ロザリンドは、しっかりと答えた。 ロザリンドは扉の前で、ジュリアが出て来るのを待っている。 なかなか開かない扉が、不安を煽った。 そして、やっと開かれた扉から出て来たジュリアを見て、ロザリンドは言葉を失った。 「ロザリンド」 それだけ口にしたジュリアの目の下には、黒いくまができていた。 目は真っ赤に泣き腫らして、白い肌に痛々しいほどに映えている。 声も、信じられないほど弱っている。 他でもないあのジュリアが、他人に見せる姿ではなかった。 目の前に立っているのは、本当に彼女なのか。 ジュリアに何があったのか。 分からない。驚くしかなかった。 それでも、今自分にできることは、と考え、ロザリンドは何も考え付かなかったが、ただジュリアの手を握った。 「何があったんですの…?」 そう聞いたが、ここまできてジュリアは答えるのを渋った。 「だいじょうぶよ、たいしたことじゃないから……」 しかしロザリンドには、どう見ても異常事態にしか見えなかった。 きっと予想もできないような。 誤魔化すようなその言い方が、やはり、ただ体調を崩したとかではなく、もっと深刻な何かがあったのでは、と思わせた。 「いいから、答えて」 「……でも……」 「わたくし、まだなにも分かっていませんのよ。何があったのか分からないと、ジュリアさんを助けられませんわ」 ジュリアは、「助ける」という言葉に反応したようだったが、それでも答えなかった。 繰り返し諭すうちに、泣きたくなってきた。 こんな弱ったジュリアを見るなんて。 今すぐこの子を抱きしめて大声で泣きたかった。 目の前で傷ついている親友の悲しみを、少しだけでも肩代わりしてあげたい。 でもそれで解決できるとは、ロザリンドは思わなかった。 だから何度も言った。 「話して、大丈夫ですから」 「うぐ…っ」 ジュリアの赤くなった目に、涙が滲んだ。 それは下まつげにたっぷりと溜まり、やがてぽろりとこぼれ落ち、少しだけ線をつくって頬を離れた。 「ジュリアさん、ずっと一人で悩むのは、辛いんですのよ。話せば、きっと楽になりますから」 「うう…うう…っ」
49:カイル×ジュリア 2009/12/13(日) 21:40:43 ID:kh1UIBdU 269 名前:カイル×ジュリア(6/8)[sage] 投稿日:2009/03/23(月) 00:48:56 ID:X3OoDaLl それでもジュリアは、ぽろぽろと涙をこぼしながら、首を横に振った。 「どうして…、もう、そんな、一人で苦しむ必要ありませんのよ。お願いですから、わたくしに助けを求めて…」 「ううっ…だ…だって…、だれかにいえるようなことじゃないもん、いったら、き…っ、きらわれるもん…っ」 泣きながらそう言うジュリアの手を、ロザリンドはもう一度、しっかりと握った。 「誰があなたを嫌いになんかなりますか!」 ロザリンドの声は震えていたが、ジュリアをしっかりと見据え、強く言った。 「ジュリアさんは、わたくしがどんなにあなたを好きかご存じないようですから、はっきりと言います。 わたくしは、どんな事があっても、ジュリアさんを嫌いになんてなりません。絶対です。いつだって、何があったって、わたくしは、ジュリアさんが大好きなんです。 ですから…、ですから、ジュリアさんが苦しんでいるのを見るのはとても辛いのよ…。苦しい時は、お願いだから相談して。友達なんだから」 そう言ってロザリンドは、ジュリアを抱き寄せた。 母親が子供にするように、優しくジュリアを包むように抱き締めた。 ロザリンドは、ジュリアよりちょっと背が低い。 それでもジュリアは、ロザリンドにすっかりもたれるようにして、泣いた。 二人の涙に濡れた頬が、触れ合った。 それから、ジュリアは、すべてをロザリンドに打ち明けた。 ロザリンドは、ジュリアをベッドに寝かせ、パンとスープを用意し、食べるように言うと、一階の掃除に取り掛かった。 お湯を抜いただけのお風呂も勝手は分からなかったものの、丁寧に掃除した。 女湯の脱衣所は、念入りに水拭きした。 血の付いたバスタオルも、さすがに直ぐには手を付ける気になれず後回しにしたが、綺麗なタオルにくるんで廃棄した。 ついでに近くに丸まっていたカイルの上着も捨てた。 しかし、カイルがそんなことをしたとは…。 日頃の彼からは想像できなかった。 そして同時にこのことは、ロザリンドが彼に抱いていたささやかな慕情が破れたことも意味していた。 しかし、今はそんなことはよかった。 第一、ジュリアを傷付けた事への怒りの方が、遥かに大きく、激しかった。 270 名前:カイル×ジュリア(7/8)[sage] 投稿日:2009/03/23(月) 00:50:51 ID:X3OoDaLl もしこの場に奴がぬけぬけと謝りにでも現れようものなら、5、6発殴り付けた上で塩を撒いて追い払ってやっただろう。 本当なら、彼はジュリアを守ってやらなければいけなかったのに。 彼女の理解者になってあげなければならなかったのに。 彼になら、それが出来たはずだった。 それができる人間だと、自分なりに評価するくらいに、彼はいつも優しくて、何にだって馬鹿みたいに真面目だった。 ロザリンドは、紅茶を淹れて二階へ上がる。 ジュリアはしっかり言う事を聞いたようで、パンとスープは綺麗に片付いていた。 「少しは…、元気になりました?」 「うん…、ありがと」 相変わらずジュリアは見るからに弱っていたが、それでも笑顔を返した。 彼女のいじらしさに、ロザリンドはまた泣きそうになる。 しかし、もう十分泣いた。 泣くのはもういい。 そう思って、これ以上取り乱すことはしなかった。 「痛みは?まだ治まりませんか?」 「うん…、ちょっとだけ。でも、よこになってればへいきよ」 「そう…、それで、一番大切なことですけど…」 この質問は、ジュリアもさすがに重くて、少しうつむいた。 「まだどちらとも言えないと思いますわ。毎月の体調はどうですの?」 「…わからないの。くるときもはっきりしないから。もうずっときてないし…」 スタイル維持のためといって、無茶な生活のし過ぎで体調を保てていないのではないのか。 そうだとすれば呆れる。 しかしそれは、妊娠の可能性について、希望的に見てもいいということだろうか。 恐らく彼女の身体にそんな余裕は無い。 勿論それも推測で、自信を持って言えはしない。 まあ、そのあたりの知識量は二人とも似たり寄ったりだろう。 「はっきりとは言えませんけど、このままならきっと…大丈夫。ジュリアさんがストレスで倒れてしまう方がよっぽど有り得ますわ」 「…ねえ、もし、このまま…」 「?」 ジュリアは何か言おうとしたが、途中で思いとどまった。 「…ううん」 「何ですの?」 「ごめん、なんでもないの」 本当は、もしこのまま何日か何も食べずにいたら、そうして体をもっと弱らせたら、妊娠することは無いんじゃないか、と言おうとした。 でも、それをロザリンドに言うことはできなかった。 ジュリアはちょっとくらい食べないのなんて我慢できると思った。
50:カイル×ジュリア 2009/12/13(日) 21:41:13 ID:kh1UIBdU 271 名前:カイル×ジュリア(8/8)[sage] 投稿日:2009/03/23(月) 00:53:34 ID:X3OoDaLl それで妊娠を防げるとするなら十分やれる。 しかし、それをロザリンドに言うことはできなかった。 ロザリンドに嫌われるのが嫌だったからだろうか。 もしかしたら、言ってしまってロザリンドを傷付けることが、ジュリアは、嫌だったのかもしれなかった。 「ごめん、ロザリンド、わたし、いま、ちょっとだけ、いやなこといおうとしたの」 ジュリアは、言わなければ何事も無く済んだものを、わざわざ謝った。 ロザリンドはそれに首を傾げて見せる。 「どんなのかはいえないけど、…いえないけど、いやなこと…」 ロザリンドはにっこりと微笑むと、しょげ返るジュリアの額に手を伸ばし、そのさらさらと美しい髪を指で梳いた。 「わたくしが一番嫌なのは、ジュリアさんが傷つくことですわ」 ロザリンドは、夕飯を一緒に食べようと言ってくれた。 「ご飯はわたくしがこしらえますから、ジュリアさんはお家で待っていてくださいね」 「うん…ありがと」 ジュリアは一旦帰るロザリンドを見送った。 「いいですか?ジュリアさん、困ったことがあったら、すぐに、必ず、わたくしに言ってください。一人で悩んでは絶対にいけませんからね」 「うん。きょうはほんとにロザリンドのおかげでげんきになれたわ。ありがとうね」 「ええ。これからもわたくしは、ジュリアさんの味方ですわよ」 「あら、そういえば、どうしてきょうきてくれたの?」 そうだ。ロザリンドは一体いかにしてジュリアの窮状を知ったというのか。 「ああ、それは、ドロシーさんが教えてくれたんですの」 「ドロシー?」 それでは、さっきの一人目の客は、ドロシーだったという事か。 「お風呂に行ったら開いていなくて、それで真っ直ぐわたくしの所へ来てくださったのね、ジュリアさんは黙ってお休みするような人じゃない、すごく心配だ、って」 ロザリンドは目をつむって思い出すように語った。 「それでわたくしも気になって、ドロシーさんに代わって様子を確かめに来たんです」 そうだったのか。 ドロシーも自分のことをそんなに気にかけていてくれたのか。 胸が詰まって、ジュリアは堪らず下を向いた。 「ですから、わたくしだけでなく、ドロシーさんもジュリアさんの味方、ということですわね」 「うん…」 272 名前:カイル×ジュリア(9/9)[sage] 投稿日:2009/03/23(月) 00:58:51 ID:X3OoDaLl 「今度は三人で、ご飯食べましょうね」 「うん…」 「それでは、わたくしは戻りますわね」 ジュリアも顔を上げ、ロザリンドを見送る。 「特別美味しいのを作ってきますから、期待しててくださいね」 「うん!ロザリンドのおりょうりだもの、たのしみにしてるわん」 ジュリアは満面の笑みで答えた。 ジュリアに見送られ扉を閉めると、ロザリンドはため息を一つついた。 今回の事には、彼女もひどく精神力を消耗させられた。 ドロシーに知らされた時にはロザリンドも何事かと思ったが、まさかこんなことになっていたとは思わなかった。 それに、まだ問題は解決していない。 まだ彼女は救われてはいないのだ。 これからどうなるか分からない。 でも、彼女のために、自分にできる事があるなら、その全てをやろう。 そう決めた。 ロザリンドは両手を握り締める。 そして、誰もいない通りの真ん中で呟いた。 「神様、ジュリアさんは本当に良い子です。誰にだって優しくて、人に自分の弱いところを絶対に見せません。毎日を幸せに生きられる事を、誰よりも強く望んでいるんです。 でも、わたくしは、あの子がいつも一人でどんなに寂しい気持ちでいるか知っています。そして今、あの子は、だめになってしまいそうなくらい、心細い思いをしているんです。 どうか、どうか神様、あの子を守って下さい。あの子に、誰より大きな幸せをあげて下さい…」 273 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/03/23(月) 01:14:13 ID:X3OoDaLl 終わりです。本当はせっかくだからエロもあったんだけど自重しました。 見直したらケータイ小説みたいな話だ… 前回書いてからなんか可哀相になって助ける感じのものを書きたかったんだけど、いかにもなワードが鼻に付くかも。 それ以前に続きから読み始めて伝わる話になってたかが怪しい…。 もう細かいことは気にせずに>>261を待つんだ!
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