牧場物語・ルーンファクトリー小説保管スレッド Part1
47:カイル×ジュリア2009/12/13(日) 21:39:41 ID:kh1UIBdUAAS
264 名前:カイル×ジュリア(2/8)[sage] 投稿日:2009/03/23(月) 00:37:13 ID:X3OoDaLl
耐えることなどできなかった。
成すすべなく傷ついていく事しか、彼女にはできなかった。



あれから、もう何度泣いたか知れない。


カイルが帰っていった後、本当は、寒さで死んでしまうまで泣き続けていたかった。
あの時は本当にショックだったし、何もかも失ってしまったような気持ちだった。
もう、明日が来るのが怖くて仕方無かった。
だから、本当にそうするつもりだった。
でも、寒さは彼女の体にはあまりにも辛くて、目の前にお風呂もあって、結局、その暗い考えを最期まで貫くことはせずに終わった。
でも、お風呂に入ることはできなかった。
温泉のお湯は、彼女の傷に酷くしみるのだった。
耐えられないほど痛かったし、その上、痛みから先程の事の記憶が蘇ってきた。
あの鼻を突く生臭い匂いまでどこからか漂って来る様だった。
それは、ジュリアには辛過ぎた。
そうしてジュリアは、自分の身に起こった悲劇が決して悪い夢などではなかったのだと、改めて思い知らされた。


泣きながら汚れた体をきれいに拭いて、それでもいくらか落ち着いた。
ベッドに潜り込み、小さな体を丸めて、震えながら目をつむり、できる限り辛いことを考えないようにして、眠ろうとした。
しかしなかなか眠れず、やっと眠りにつけたころ、ジュリアは、カーテンの隙間から部屋の中にうっすらと陽が差しているのを見た気がした。



この夜は彼女にとってつらいものだったが、悲劇は今晩限りではない。
この日の出来事は、はっきりとジュリアの人生にも傷として残った。
この日を境に彼女を取り巻く色々なものが変貌してしまった。
どんなに望んでも、以前に戻る事は、できないのだ。


ジュリアは、体に違和感を感じて目を覚ました。
下着の中がぬるぬるして冷たい。
布団から出て下着を下ろすと、お腹から太股にかけて濡れていて、所々で何かが糸を引いている。
「あ…あ……」
それが何か、分からない筈がなかった。
注ぎ込まれたカイルの精液が、溢れ出していたのだ。
そんなものを見てしまっては、嫌でも、彼女の恐れる最悪の結果を想起させられる。
妊娠、という。
血の気が引いた感じがした。
急激に覚醒したジュリアは、その上でショックの余り卒倒しそうになった。


265 名前:カイル×ジュリア(3/8)[sage] 投稿日:2009/03/23(月) 00:39:39 ID:X3OoDaLl
貧血を起こしたように、視界が影に覆われ、揺れている。
それでもジュリアは、何とかしなければ、という思いでベッドから降りた。
「く、う……っ」
床に足をついて、両足が華奢な体を支えようとすると、体がみしみしと軋むように痛んだ。
純潔を破られた傷が、恐らく、まだ消えないでいる。
相変わらず視界は暗く曇っているようだったし、階段を一段降りる度に痛みで呻き声を上げたが、それでもジュリアは風呂場に向かって少しずつ歩いていった。

しかし、その時間がいけなかった。
必死に歩いている間、とにかくどうにかしなければ、と思っていた。
けれど、どうすればいいかなんて少しも分からなかった。
なにしろこんな事は初めてだったのだから。
その不安に、マイナス思考が強烈に作用した。
やがて頭に浮かんだのは、最悪の結果の想像図だった。
もし自分が妊娠すれば、街の皆は驚くだろう。
そしてそれが非難に変わるのに理由はいらない。
そんなことになったら、自分は街に居続けられるだろうか。
でも、もしそれが辛くなっても、街の外で生きることなんてきっとできない。
今まで自分のイメージを守ってきた美しい体は、妊娠することで失われる。
そうしたら、どうすればいいのか。
もはや、自分を守るものなんて、何もなくなってしまった。
これからどうやったらみんなに嫌われずに生きて行くことができるというのか。

その時のジュリアには、そういう風にしか考えることができなかった。
妊娠することが、既に決まった未来のように思えていた。

風呂場にたどり着くまでにかかったその時間が、ジュリアを打ちのめしていた。
一階に降りると、脱衣所の前に、赤黒く汚れたバスタオルが一枚、昨日のまま、広げてあった。
それはまさに昨日のまま、あの時のジュリアの身悶えの一つまで皺として残していた。
「……」
ジュリアはそれを拾い上げるために屈もうとしたが、力が入らず、畳んだ膝が、とん、と床についた。
「……?」
気付くと、水滴がタオルに落ち、それは見る見るうちに染み込んで、小さな円を描いた。
ジュリアは涙を流していた。

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