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牧場物語・ルーンファクトリー小説保管スレッド Part1
48:カイル×ジュリア2009/12/13(日) 21:40:13 ID:kh1UIBdU
267 名前:カイル×ジュリア(4/8)[sage] 投稿日:2009/03/23(月) 00:43:03 ID:X3OoDaLl
どうして気付かなかったのか、という程たっぷりと溢れた涙が、あるものは頬を伝って顎に、あるものは鼻の先に集まり、ぽつぽつと雫をつくってこぼれ落ちていった。
いつから泣いていたのか分からない…、でも、気付いた時には、彼女の心は折れてしまっていた。
それから、何も考えていない時間と泣いている時間を、ただただ何度も繰り返した。
あれ以来人は来ていない。
あるいは、誰もが扉に手を掛けずして帰って行くのか。
そうか、既に突然の無断休業が、皆の知るところとなっているのかもしれない。
それなら、明日は、どうしよう。
店を開けるべきか、家に籠るべきか。
明日こそは皆のために店を開け、その上で非難を一身に受けるべきか、それに耐えられるとも分からない自分を、皆にどう思われても、もう少しだけ守るべきか。
ジュリアにはどちらも辛い選択に思えた。
そんな時、あの音がした。
ガチャ、という、扉を鍵が押さえる音が。
ジュリアは再び緊張する。
また、あんな辛い思いをさせられるのか。
それきり音は聞こえてこない。
帰って行ったのだろうか…、また…
コン、コン、と、扉をノックする音が聞こえた。
この客は、ジュリアが出て来ることを望んでいる。
とはいえ、ジュリアはそんなことができる状態ではない。
大体お風呂にお湯も張っていないのだから、出ていったところで何もできない。
その音は、より彼女を追い詰めていく。
「ジュリアさん?」
「!」
聞き慣れた声。
「わたくしです、起きてらしたら、返事をして」
ロザリンドだ。
ジュリアを特別好いてくれている、大切な友達だ。
「具合が悪いんですの?怪我をなさったの?」
ジュリアがどこにいても聞こえるように、大きな声で呼び掛けている。
「返事をして、ジュリアさん」
どうしよう、と悩む前に、ジュリアの体は動き出していた。
ロザリンドが自分の窮状をいかにして知ったかは分からない。
大体、いくら親友とはいえ、今回の事は、話してしまうべきか悩んでもいいものだったろう。
しかしジュリアは、自分を助けようと手を伸ばす彼女に、反射的にすがったのだった。
痛みを堪えながら窓まで歩き、それを押し開けた。
窓から通りを見下ろすと、ロザリンドがいた。
目が合うと、彼女は安心したように微笑んだ。
それを見ると、ジュリアは泣きそうになってしまう。
268 名前:カイル×ジュリア(5/8)[sage] 投稿日:2009/03/23(月) 00:45:45 ID:X3OoDaLl
「い、いまいくから、まってて」
取り乱しているのを気付かれないよう、ちゃんと声を出したつもりだったが、かすれた、驚く程小さな声しか出なかった。
「わかりましたわ」
ロザリンドは、しっかりと答えた。
ロザリンドは扉の前で、ジュリアが出て来るのを待っている。
なかなか開かない扉が、不安を煽った。
そして、やっと開かれた扉から出て来たジュリアを見て、ロザリンドは言葉を失った。
「ロザリンド」
それだけ口にしたジュリアの目の下には、黒いくまができていた。
目は真っ赤に泣き腫らして、白い肌に痛々しいほどに映えている。
声も、信じられないほど弱っている。
他でもないあのジュリアが、他人に見せる姿ではなかった。
目の前に立っているのは、本当に彼女なのか。
ジュリアに何があったのか。
分からない。驚くしかなかった。
それでも、今自分にできることは、と考え、ロザリンドは何も考え付かなかったが、ただジュリアの手を握った。
「何があったんですの…?」
そう聞いたが、ここまできてジュリアは答えるのを渋った。
「だいじょうぶよ、たいしたことじゃないから……」
しかしロザリンドには、どう見ても異常事態にしか見えなかった。
きっと予想もできないような。
誤魔化すようなその言い方が、やはり、ただ体調を崩したとかではなく、もっと深刻な何かがあったのでは、と思わせた。
「いいから、答えて」
「……でも……」
「わたくし、まだなにも分かっていませんのよ。何があったのか分からないと、ジュリアさんを助けられませんわ」
ジュリアは、「助ける」という言葉に反応したようだったが、それでも答えなかった。
繰り返し諭すうちに、泣きたくなってきた。
こんな弱ったジュリアを見るなんて。
今すぐこの子を抱きしめて大声で泣きたかった。
目の前で傷ついている親友の悲しみを、少しだけでも肩代わりしてあげたい。
でもそれで解決できるとは、ロザリンドは思わなかった。
だから何度も言った。
「話して、大丈夫ですから」
「うぐ…っ」
ジュリアの赤くなった目に、涙が滲んだ。
それは下まつげにたっぷりと溜まり、やがてぽろりとこぼれ落ち、少しだけ線をつくって頬を離れた。
「ジュリアさん、ずっと一人で悩むのは、辛いんですのよ。話せば、きっと楽になりますから」
「うう…うう…っ」
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