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牧場物語・ルーンファクトリー小説保管スレッド Part1
72:ラグナ×キャンディ 2009/12/13(日) 21:51:57 ID:kh1UIBdU 387 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/05/07(木) 00:16:43 ID:LC4bHXtk ラグナ×キャンディです。 「わかったわ。じゃあお願いしてみるね」 飴玉のようにキラキラと透き通った瞳の少女は、ニッコリと微笑むと両手を合わせて、いつもの精霊歌を唱えはじめた。 らん、らん、ららら。 細い糸のように繊細な歌声が、僕と少女と精霊の世界に響きわたる。 風なんて吹くはずのない時計台の中にも関わらず、栗色の髪と赤いケープと、白いスカートが――ふわふわと靡いていた。 その靡くスカートの間からチラチラと控えめに姿を見せる太ももが、なんだか変な雰囲気を醸し出していた。なんなんだろう? 「……」 ――気がつくと、その不思議な何かは少女からパッと消えていた。歌声も終わって、深い森のような静寂が訪れていた。少女は一息ついて、再び僕に子供らしく微笑んだ。どうやらお願いが終わったらしい。 僕もいつものお礼でお返しすることにする。 「ありがとう。今日はもう大丈夫だよ」 それから僕は最後にキャンディ、と名前を付け足した。 「うん、どういたしまして!」 「ところで、何を作ってるんだい?」 僕は台所の上のボウルを指差した。 それは何かの生地のようなもので、お願いに訪れた時から、ずっと気になっていたものだった。 「え? ああ、これはまだナイショよ。明日になったら見せてあげるね」 「ああ、そういえば明日だったね」 僕はキャンディとの約束について思い出した。 確か休日にボートに乗せてあげる約束をしたんだった。 ……そもそもの理由は、キャンディがマルコと魚釣り勝負をした時に、見事に惨敗したらしい。 『魚釣りで負けちゃったんじゃ、あたし、お姉ちゃんの妹として顔向けできないよ。お兄ちゃん、お願い……!』 それで、マルコを見返すべく立派な魚を釣り上げたいというキャンディのお願いを叶えるため、ボートに乗せてあげるという約束をしたのだった。 正直に言うと、ボートに乗りながら釣る場所を変えたとしても余り意味がないんだけど、それでキャンディが満足できるなら……まあいいか。 388 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/05/07(木) 00:18:04 ID:LC4bHXtk 湖。太陽。小さな雲。青空。 その中心のボートの中に僕は座っていた。 湖を覗くと、水が綺麗に透き通っていて、まるでボートが宙に浮かんでいるような錯覚を感じた。 さっきから目の前に座ったキャンディが真剣な面持ちで湖に向かって釣竿を向けていた……けど、そろそろ疲れたようで、軽い溜め息を付いて僕に向き直った。 「なかなか釣れないなぁ」 「釣ってあげようか?」 「そ、それじゃあ意味がないよ〜」 「ははは、大丈夫。元からそのつもりだから」 僕の言葉に、キャンディは少しだけ間を置いて、 「……あたしのわがままを聞いてくれて、ありがとう」 うつむきながら申し訳なさそうに呟いた。 「いやいや、そんなことはないよ」 むしろ僕としては――わがままを言ってくれるような間柄になれたのが――仲良くなれたみたいで、逆に嬉しかった。 「お、お礼と言っては、ええと、じゅうぶんじゃないかもしれないけど」 キャンディは鞄の中に手を入れて、小包を取り出すと自身の膝の上に置いた。 リボンを解いて中身を開いてゆくと、ふわっとバターの甘い香りが広がって、そこに包まれていたのは数枚のクッキーだった。 「きのう、作ってたものよ」 それから、お兄ちゃんが自分で作ったほうが美味しいかもしれないけどね、とキャンディは苦笑いしながら付け足した。 僕は返事を返さずに、クッキーを一つ摘んで口に入れる。 それから、もぐもぐと良く噛んで飲み込んでから、僕は言った。 「おいしいよ」 「……え? あ……」 さっきまで苦笑いだったキャンディの顔は、徐々に褒められた子供のものに変わっていって、そのまま頬を真っ赤にしながら、うつむいて口ごもってしまった。 しばらく僕は魚釣りの見学を休憩して、クッキーに舌鼓を打っていた。
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