牧場物語・ルーンファクトリー小説保管スレッド Part1
231:エリック×ラピス2010/12/15(水) 00:53:37 ID:gZco1dzQ0AAS
130 名前:エリック×ラピス:2010/08/03(火) 21:52:46 ID:KBd2Nf0H0
「はあ……。」
営業時間が終わり、訪れる人が途絶え一人になったエリックの口からは思わずため息が漏れる。
セルフィと別れた直後、農場に初めてタバサがやってきた時にはタイミングの悪さにひやひやしたが、純粋に自分の野菜を褒めてくれる彼女のおかげで少し落ち着く事が出来た。
この際見られてしまったものは仕方がない。そもそも自分に彼女と結婚する準備が整っていないのがいけないのだ、と半ば開き直ってその後はいつも通りに過ごした。

売れ残った野菜を冷蔵庫にしまいながら、ラピスとのこれまでの出来事を思い出す。
一目惚れだった。
それから毎日教会に通って、少しずつ話をするようになった。
甘いものが好きだと知って、見るのも嫌なチョコレートやジャムを毎日のようにプレゼントした(後になってエリックが甘いものが嫌いだと知った時、ラピスは大層驚いた)。
聖夜祭を一緒に過ごして想いを告白した時、顔を赤らめて恥ずかしそうに、でもとても嬉しそうに頷いてくれた彼女の顔を忘れることはきっと出来ないだろうと思う。
そして、その夜初めて彼女を抱いた事も……。



回想に浸っていると、コンコン、と控えめにドアを叩く音が静かな家に響いた。
エリックは日誌を書く手を止めて、はてと考える。この時間帯に訪ねてくるのはよく一緒に夕飯を食べるダニーやルートだが、近頃彼らとそういった約束をした覚えはないので、エリックには来訪者の見当がつかなかった。
「どちら様ですか?」
「こんばんは、エリックさん。」
その声に、どきんと心臓が高鳴る。
「ラピスさん!どうぞ、開いてますから。」
「ええと……すみません、両手が塞がっているのでドアを開けてくれませんか?」
「分かりました。」
かちゃり、とエリックがドアを開けると、大きなキャベツとジャガイモが視界に飛び込んできた。それらが進行して来たので体を避けると、ようやく大きなかごを抱えたラピスが現れた。
「どうしたんですか、この野菜?」
「ラグナさんが持ってきてくれたんです。若草の遺跡で育てていた春野菜がたくさん収穫できたからって。わたしとシスターステラだけでは食べきれない程で……。その、よかったらエリックさんにもと思って。」
「ありがとうございます。」
礼を言ってかごを受け取った。
「エリックさん、ご飯はまだですか?よかったらこの野菜で何か作りませんか?」
「いいですね!何にしましょうか?」
「えっと――」


ラピスと料理を作るのは好きだった。二人で共同作業をしている、という感覚が強いからだろう。
トントンとリズムよく包丁が野菜を切る音。コトコトと鍋の中で食材が煮える音。時折交わされる会話。
そのすべてが心地良かった。





お互い料理は作り慣れているため、調理も後片付けもテキパキと進んだ。
今は食後のリラックスティーを二人で向かい合って飲んでいる。
「美味しかったですね。」
「そうですね。やっぱり素材が良かったんじゃないですか?若者は最近大分慣れてきたみたいですから。」
「ラグナさん、毎日頑張ってますからね。くれぐれも無茶はしないで下さいって言っているんですけど……。」
そう言ってはぁ、とため息をつくラピス。村に唯一のナースとして、そして一人の友人として純粋に心配していると頭では分かっていても、ちりちりと胸が焼けるような焦燥感を感じてしまう。
そんな思いを振り払うように、リラックスティーを飲み干すと
「今夜はこれからどうしますか?」
一言、そう聞いた。
答えは今夜ラピスが来た時から分かってるのに。
「シスターステラは今日も酒場に行っていて……その、帰ってくるまでまだ時間があります。ですから、その……」
頬を赤らめながら、うつむきがちに話すラピスに、愛しさがこみあげる。
椅子から立ち上がってラピスに近づき、優しく頬を撫で、そっと口づけを落とした。

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