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シークレット・ロマンス
 
 戦闘中、森の中に逃げ込んだ魔物を追い、アリーナが駆け抜ける。
「逃がさないわよッ!」
「姫様ーっ! お待ちくださぁぁい!」
「姫様、お一人では危険ですぞ!」
 彼女を追い、クリフトとブライも森の中へと走った。
 しかし寄る年波には勝てず、ブライはすぐに息を切らし座り込んでしまった。
「大丈夫ですか、ブライ様っ」
「おおクリフトよ……わしはいい、姫様を追うのじゃ!」
「はっ、はいっっ!」

 クリフトが先に進むと、そこには一撃で倒された魔物が転がって息絶えていた。
(間違いない。姫の会心の一撃を受けたのだな)
 だが、肝心のアリーナ姫の姿がない。
「姫様ぁぁー! アリーナ姫様ーっ!」
 クリフトは叫び続けた。
「ここよー! クリフト!」
 呼びかけに答えるアリーナの声を聞きつけ、ほっとするのもつかの間、クリフトは声のする場所に赴き足を止
めた。
「これは!」

 穴だ。とても深い。暗くてよく底が見えない。
「早くここから出してー!」
 どうやらアリーナ姫様は穴に落ちてしまわれたようだ。きっと戦いに夢中だったのだろう。
 そう思いながら、クリフトは穴に向かい返事をした。
「御安心下さい、姫様。すぐにクリフトがお迎えにあがります!」
 クリフトは辺りを見回し、木のツルを撚り合わせ即席のロープをこしらえると木の幹に結びつけ、穴の中に垂
らした。
「ただいま参ります!」
 ツルのロープを伝い、穴の中に潜って行く。かなりこれは思ったより深い。
 ようやくアリーナの姿が見え、クリフトは穴の底に到着した。
「お怪我は? どこか痛いところはありませんか?」
「足をくじいたみたい……」
「それはいけません。すぐに回復を」
 クリフトが手をかざし、呪文を唱える。みるみるアリーナの腫れていた足首が元に戻っていった。
「ありがとうクリフト! もう痛くないわ」
「では、早く皆の所に戻りましょう」
 にっこりと笑いロープを掴むクリフトに向かい、アリーナは首を振った。

「まだ早いわ」
「え……っ?」
「ここも怪我したみたいなの」
「どっ、どこですか?」
「こ……こ……よ!」
 柔らかな唇の感触。アリーナ姫の胸のふくらみがその刹那クリフトに伝わる。
「えっ?!……えええっ?!……??!!」
「……もう治ったわよ、クリフト! ……ありがと」
 真っ赤になったクリフトは、ふと我に返り俯く。
「姫様、御冗談が過ぎます……」
「冗談でキスなんかしないわ。クリフトが好きなんだもの」
「わたくしと姫様では身分が違い過ぎます」
「今では対等なパーティメンバーじゃない。ここはサントハイムではないのだし」
「しかし、国に戻ればわたくしはただの神官で、あなた様は王女様です」
「王になるあなたを、夢で見たわ」
「夢の中でなら叶うのでしょうか……」
「現実にしてみせるわ、いつか!」
「姫様……!」
 堪えきれずにクリフトは愛しいアリーナ姫を抱き寄せる。
 息苦しいほどに強い抱擁に、アリーナは幸せを感じた。

「なにやっとるんじゃ、クリフト! 姫様を早くお助けせぬかーっ!」
 頭上からブライの怒声が聞こえた。
 しかし恋人たちは、二人だけの甘い空間に酔いしれる。  
 
 もう少し……このままで。
 永遠の愛を誓い、身分さえも乗り越えて。
 長いヴェールを引き純白のドレスを身にまとった私は、あなたの方に歩み出す。
 そして待つの。
 あなたがヴェールを上げ、誓いのくちづけをするのを……。
( 完 )  2003/09/20
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とあるクリアリスキーな方に差し上げた乙女モード炸裂な一作。
ノマカプ物も見たいというリクエストに応え、PCの奥底から封印を解いてみましたが……
うわー! 恥ずかしいなコレ!ww あんまり見ないで欲スィ!(自らアップしておきながら勝手な言い分
ノマカプ書くと異様に緊張します。慣れてないからw