「め・・・めんたいこ!」

 ただいまの時刻、午前6時すぎ。
 目覚まし時計をセットした時間より1時間以上早いのだが、アイクは飛び起きた。
 開口一番、謎の言葉を発しながら。

「はぁ、はぁ・・・何だったんだ・・・」

 玉のような脂汗をかいている。
 頭をぶんぶんと横に振ると、ベッドから降りた。





  めんたいこ






 本日の第二試合にアイクは参加する。
 チームバトルだそうで、アイク&マルスvsマリオ&ルイ・・・なんとかという組み合わせ。
 ステージは終点に決まったそうだ。
 一人足りないような気がするが気のせいなようだ。

「てん☆くう
 ・・・・・・なぁマルス」
「させるものかっ
 なんだい?」
「せいやー!
 もし今日、俺が死んだら、」
「え? うわっ」
「もし今日俺が死んだら、めんたいこのせいだと思ってくれ・・・
 ぬぅん!」
「え、どういう意mうわあぁぁぁぁぁ・・・」

 試合は終わり、アイクとマルスは見事に勝利を収めた。
 なんだか一人足りなかったような気がしなくもないがきっとどこかにいたのだろう。
 今日はもう試合もないので、アイクは宿泊施設の自室に戻ることにした。

「ねぇアイク、さっきのはどういう意味だったの? 少し顔色がよくないみたいだけど」
「いや・・・俺も、最悪の事態は避けられるように努める。」
「そうじゃなくて・・・」
「怖気がする。今日はもう部屋にこもる。じゃあな、マルス」
「あ・・・。・・・なんだったんだろう・・・」

 結局よくわからないままマルスは取り残された。





 さて、みんなが待ちかねた夕食の時間。
 早い者はもう席について食べ始めている。
 寝ていたためアイクは遅れて到着した。
 もうすっかり明太子のことなど忘れている。

「夕飯夕飯・・・」
「アイク、もう調子は平気?」

 真正面、ではないけれど正面の席について食べていたマルスがアイクに問う。
 アイクは椅子を引いて座った。

「あぁ。平気・・・だ・・・」

 眼の前に並べられていた料理を見て、さーっと血の気が引いていく。

「平気だ・・・うん・・・平気・・・」
「アイク・・・?」
「め・・・めん、めんたいこ・・・」

 ぽろぽろ
 アイクはあろうことか泣き出した。
 そう、夕食のテーブルの上には明太子の和え物が並んでいたのだ。
 異変に気付いた周囲は眼を瞠る。食堂はざわざわしはじめた。

「アイクさん・・・? どこか痛いんですか?」
「いや・・・眼にこしょうが入っただけだ・・・」(※こしょうは置いてないし使われてもいない)
「と、とりあえず部屋に戻ろう、アイク
 なんだか調子が悪いみたいなんで、僕が彼を部屋まで送ります」

 マルスはアイクを立たせると、アイクの部屋に向かって歩いていった。

「アイクさん、どうしたんでしょうね」
「さぁ・・・拾い食いでもして腹壊したんじゃないか?」
「ぽよ?」

 カービィはいくら拾い食いしてもおなか壊さないよな。
 食堂のざわめきも、しばらくするとまたもとの談笑へと変わっていった。





 一方、アイクの部屋。

「うぅ・・・めんたいこ・・・」

 さっきからずっとこの調子である。
 マルスは彼をベッドに座らせ、横になるように言った。
 自分は向かいの椅子に座る。

「一体どうしたんだ、いい加減話してくれてもいいだろう?」
「ん・・・笑わないで聞いてくれるか・・・?」
「当たり前だよ」

 それからぽつりぽつり話し始める。
 どうやら悪夢を見たらしい。
 料理の中の明太子が大量に細胞分裂し、津波のように襲ってきたのだと言う。
 まさか、と耳を疑うが彼の表情は真剣そのものである。
 そしてそのまま明太子の波に飲まれ、死ぬ夢だったらしい。
 すごくリアルだった、と力説するアイク。
 しかしまったくリアリティが伝わってこない。

「まさか、まさか正夢になるとは・・・」
「正夢って・・・」
「はっ! このままでは・・・」

 なにか思い立ったように、アイクは急に立ち上がった。
 机の上の神剣ラグネルをひっつかむ。

「めんたい軍に制圧されてしまう・・・
 いくぞ、マルス!」
「あぁ、そうだ、ちなみに今日のメニューは“たらこ”だそうだよ。」

「な・・・に・・・ッ?!」



fin.















あとがき。
アホ全開でごめんなさい。題字の明朝体がはげしく合わない。
こんなアイクさんがすきです。