神に祈るだけの毎日にも、そろそろ飽きた。

 見慣れた教会のステンドグラス。聞き慣れた会衆の歌う賛美歌。

 彼と別れたあの頃は、藁にもすがる思いで、毎日懸命に祈りを捧げた。あの日から、数えるのも億劫になるほどの年月が過ぎ、その間に教会へ祈りに来る人の顔ぶれもまるで入れ替わった。来る日も来る日も、ただただ彼との再会を夢に願って、神に祈り続けた。

 だが、どうだ。深い深い心の傷はすこしも癒えることなく、未だ悲しみをいっぱいにたたえている。数百年前のあの日から、何一つとして変わっていない。





 やがて かなしみは いかりに。





 風が逆巻く。彼の怒りに呼応して、轟々と。虹色のステンドグラスは弾け飛び、祈っていた会衆はどよめき逃げ惑う。驚いた司祭はどうすることもできずに立ち尽くす。

 ゆっくりと祭壇へ近づいていく。信徒は恐れおののき道を開ける。制止せんとする司祭の叫びも、吹き荒れる風に飲み込まれていった。





神なんていないなにが全知全能の神だくだらないたった人一人生き返らせることもできずに神だなんて笑わせるいくら祈ったところであの人は帰ってこないそれは神が無能だからたった人一人の悲しみさえもすこしも癒すことができずに何が神だ何もできない誰も救えない役立たず人の心をもてあそぶ最低のクズ死ね失せろ消えろ





 ――――ぼくが いま してあげますね





 祭壇の上の蝋台が、ことんと床に落ちる。風はその火を炎に育て上げた。炎はじゅうたんを焼き、カーテンを焼き、やがて教会全体を焼き尽くすだろう。司祭は教会を捨てて逃げ出した。

 祭壇の奥にたたずむ、神を象った石像は、恐怖にがたがたと震えている。




















さぁ、神しの宴のはじまりはじまり。