勇者の日記

勇者の日記

248日目

リムルダール・・・
みんなすごく喜んでいる。もしかしたら生まれて初めての日の光なのかもしれないな。
よかったよかった。
魔法の鍵を開発してた爺さんは、ついに完成させたらしい。
なんだ、本物見せてあげようと思ったのに・・・。でも一回使うと壊れるんだって。
どうみてもばったもんです。本当にありがとうございました。

マイラ・・・
リムルダール同様大喜び。平和って素晴らしい。
ここの占い師が気になることを言った。

「ゾーマが ほろび べつのせかいに つうじていた くうかんの あなは とじられたようです。
そして ここアレフガルドは ひかりあふれる せかいとして あゆみはじめたのです。
このとちに ほねを うずめなさいまし。」

はっはっは・・・またまた御冗談を・・・。
王者の剣を鍛えたジパング人は、どうやらここに骨をうずめるようだが。

メルキド・・・
このニートの街でも喜びにあふれていた。
だがさすがニートの街。日の光がサンサンと降り注いでいるのに寝てる奴多数。
宿屋にいたガライもいい加減家に帰ることにしたようだ。

ドムドーラ・・・
砂漠化が深刻なこの街でも、そんなの関係なしに大喜びだ。
生まれてくる子供の名前になやんで商売手つかずだった武具屋のところは
無事、生まれてきたようだ。名前は「ゆきのふ」にしたんだって。
・・・変わった名前だな・・・。いや、アレフガルドじゃあ普通なのか?

エルフの祠・・・
精霊ルビスはここにいるのかな?・・・いない。ルビスの使いのエルフはいるが・・・。

「ありがとうございました。 あべるの はたらきは けっして わすれません。
また いつのひか あいましょう。 と ルビスさまは そういって おられましたわ。」

・・・あれ・・・大魔王を倒したら恩返しをしてくれるんじゃあ・・・。
いつの日っていーつーよー!!

ラダトーム・・・
他の街より、一層喜びが大きい気がする。魔王の城が近かったからかなぁ?
あの、くそ生意気な女(バラモスなんて手下にすぎないとかいった奴だ!)も喜んでる。
感謝しやがれ。
カンダタには、親分と呼ばせてくださいなんて言われる始末。
いやだよ。あんたみたいにシツコイ奴は願い下げだ。

ん?いつのまにか、太陽の石と雨雲の杖が手元にあるぞ・・・?雫になったはずだが。
あと精霊の守りも・・・アリアハンに置いてきたんだけど・・・なんでー?
ハッ・・・もしやルビスの仕業かッ!!
太陽の石か・・・。仕方がない、城の外堀にいたオジサンの夢でも叶えてやるか・・・。
太陽の石を、ラダトーム城の外堀地下のおじさんに手渡す。正夢になったと喜んでいた。
・・・もしかしたらまた必要になるかもしれないしな・・・。しっかり持っててくれ。

謁見の間で、ラルス王から賛辞・感謝の意とロトの称号をもらった。
ロトとは神に近しき者という意味だ。・・・神ねぇ・・・。16歳のガキだぜ?俺は。

城・城下町と凱旋パレードを行った。色々な人からの感謝・喜びの声。
うーん・・・慣れないせいかムズ痒いな・・・。途中でバックレよう。
そしてアリアハンに戻ってゆっくり過ごすんだ・・・。

249日

あの日、凱旋パレードから抜け出しアリアハンに戻るためルーラを唱えた。
が、しかし、アリアハンに移動することは叶わなかった。
どうやらアレフガルドに光が差し込んだとき、上の世界へ通じる空間が閉じてしまったらしい・・・。
あの時の音はそれだったんだ。
マイラの占い師の言っていたことは冗談ではなく本当だった。
どうやら俺はこのアレフガルドで一生暮らしていかねばならんみたいだ。
母さん・・・爺ちゃん・・・。父さんの話できなくてゴメンなぁ・・・。

ゾーマの負け惜しみだと思っていたが、消える間際の言葉が俺の中でこだまする。
「だが ひかりあるかぎり やみも また ある……。
わしには みえるのだ。 ふたたび なにものかが やみから あらわれよう……。」
・・・本当かもな・・・。出来ることをやっておくか・・・な。

まずは父さんの亡くなった場所に、ゾーマを倒したこの剣を供えよう。
父さんの魂はきっとこのアレフガルドにいるはずだし。この剣を守ってくれ。
鎧は・・・そうだな・・・。誕生記念に「ゆきのふ」にプレゼントでもするか。
雨雲の杖は・・・んー・・・ルビスのいた塔にでもおいとくか。そこに人いたし、そいつに任せよう。
後は、聖なる守りだ。・・・ルビスの使いに渡しておくか・・・。
あとはー・・・魔王の爪痕の洞窟にでも、魔の島への渡り方を残しといて・・・。

こうして、俺の長いようで短い旅は終わった。日記はこの日で終わることにする。

後日

大魔王ゾーマを倒して、もう何年たつか・・・。
再びこの日記に記す時がこようとは。

あの後、人里隠れひっそり暮らした。
富や権力なんて興味ないし。王とか面倒だったしな。ロマリアで懲りた。
人里離れてはいたが、ちゃっかり結婚して息子もいる。
良い妻に良い息子だ。父・母に一目合わせてやりたかったがな。叶わぬ願だ。
とは言うものの、一応魔王城跡に年に1回は行って父に報告しているつもりではあったが。

そう、なんでこの日記に今回書き込もうと思ったか。
ルビスが現れたんだ。
しかも聞いて驚くなかれ、ここはアリアハンだ。
死ぬ前に故郷に戻ることができたというわけだ。
本当は妻と息子も連れてきてやりたかったが、それはダメだった。ケチ。

すっかり変わってしまったが・・・まぎれもなくアリアハン。
ルイーダの酒場も顕在。・・・ルイーダさんはもういなかったけどな・・・。2代目かな。
・・・ま、やっぱり居場所は無くなっていたな・・・。
もう一生できないと思っていた母の墓参りが出来ただけでも幸いか。
・・・母さんには苦労かけただろうな・・・。あの若さで夫と息子がいなくなったんだから・・・。
墓前で謝ることができてちょっと心のつかえがとれたような気がした。

さて、そろそろ時間だ・・・アレフガルドに戻されてしまう。
ありがとうルビス。なかなか良い恩返しだった。じゃあな。