晴天、大安祝日。 ウィッチは他の友人達と共に大きな拍手で教会から出てきたドラコとラグナスを迎えていた。 普段はチャイナドレスのドラコは、今日はふんわりとした純白のドレスに身を包んで タキシード姿のラグナスに腕を組み、とても幸せそうな笑顔で階段を下りてくる。 鐘の音と共に、平和の象徴である鳩が飛び立っていく。 今日はドラコとラグナスの結婚式だった。 「それにしても、ものすごいスピード結婚でしたわね」 ドラコ達女性陣がサタンのハーレムから抜けてまだ一ヶ月しか経っていない。 少し前からこっそり付き合っていたのは知っていたが、結婚まで話が進んでいると思わなかった。 「ドラコ、ルルーのブーケトスの時すごい勢いで取ってたらしいもんね、そのおかげかな」 「ええもうすごかったですわよ、皆を押しのけ炎を吐いてまでの大ジャンプ」 「あはっ、それは僕も見たかったなぁ」 隣同士に立っていたアルルとウィッチは、顔を寄せて忍び笑いをする。 「あ、ドラコさんもブーケトスやるみたいですわ、アルルさん急ぎましょう!」 ルルーのブーケを取ったドラコがすぐに結婚したのを皆知っているためか、 是非幸せの恩恵を我が手にしたいと女性達は目を輝かせてドラコの後ろに集まっていく。 「いっくよー、それっ」 後ろを向いたドラコは太陽の下に思いっきりブーケを放り投げた。
「で、勢い余って遠くに投げすぎたブーケは」 「後ろで控え目に見守っていたセリリが手に入れましたとさ」 ロビーで出されたカクテルを飲みながら、がっくりと肩を落す女性たち。 対照的にセリリは照れながらも綺麗なブーケを嬉しそうに抱え握り締めている。 「あのこも最近人気急上昇中らしいのよね。うかうかしてられませんわ」 アルルはシェゾとラブラブ、ルルーに続きドラコは結婚するしセリリはもてもて、 あののんびりハーピーですら実は年下趣味でパノッティを囲っているとは何たる不覚! この物語の主なヒロイン陣の中で何の浮いた話もないのはもしや自分だけ…? ウィッチはため息をついて腕を組む。 「このゲームにまともな男性が少なすぎるのがいけないのよ馬鹿コン○イル」 かなり危険なことを呟きぼやくウィッチに、薔薇を持った男が話し掛けてくる。 「どうしたんだい、何か浮かない顔だね。せっかくの綺麗な顔が台無しだよ? 君の曇りを拭い去りたい…披露宴が終わったら僕とお茶でもどうかな、ハニー?」 顔を上げると、長いまつげと髪を持つ端正な顔をしたインキュバスが目の前に立っていた。 薔薇を差し出しながら、白い歯と目ををきらきらさせて気障な言葉でウィッチを誘う。 「……………」 ウィッチは目の前の男をじろじろと上から下まで眺めて値踏みする。 いつもなら女性には声をかけずにいられないような軽い男など歯牙にもかけない所だが、 たまには大人の関係も悪くないか、とウィッチは思う。 それにちょっと実験に必要なものがあった。ついでに協力してもらうのも悪くない。 「貴方、インキュバスなくらいだからそれなりに場数は踏んでいるのよね?」 「何の話だいハニー、僕は君に会うためだけに生まれてきた男だよ」 「はっ、実力のない口だけの童貞男には用はありませんわ。 私、精力絶倫で強引に組み伏せてくれて一夜に何度も攻め立ててくれる 大人で強い男じゃないと満足できないし面白くありませんのよ」 鼻で笑って手でしっしと追い払おうとするウィッチに、 インキュバスが慌ててウィッチの挑発に乗りそんなことはないと力説する。 「言いましたわね?」 ウィッチの目に怪しい光が宿る。唇が触れそうなほど顔を近づけて顎に触れる。 それ以上何も言わせないようウィッチはインキュバスの口に人差し指を当てた。 ぎゅうっと心臓をつかまれたような感覚にぞわりとインキュバスの背中に冷たいものが走る。 女性を追いつづけた長年の感と経験が、この女は危険だと言っていた。 「私、たくましい貴方に是非手伝って欲しいことがありますのよ… 協力してくれるなら今夜私の家に忍んでらっしゃい。 お礼といってはなんですけど、気持ちよくて楽しい夜を過ごしましょう?」 くるりと踵を返し、披露宴会場に消えていくウィッチの背を、インキュバスは見つめる。 「ハニー、君は一見地味な娘だと思っていたけど、一筋縄ではいかない女性のようだね… インキュバスの名にかけ、逃げるわけにはいかないね。今夜は全力でお相手させてもらうよ」 手伝って欲しいことは何なのか気にはなったが、 この自分が「気持ちよくて楽しい夜」のお誘いに答えないわけには行かない。 震える手を握り締めて、獲物の大きさに気力を奮い立たせるインキュバス。 その目には燃え盛る炎が宿っていた。
インキュバスは何度も灯りの落ちた家の前で場所はここであっていたかと確かめる。 意を決して拳をあげ、月夜にとんとんと、ドアをノックする音が響かせた。 返答はない。扉を押すと鍵もかかっていなく、月明かりを頼りに足を踏み入れた。 「ハニー、もう寝ているのかい?夜はこれからだよ」 もしやからかわれたのではないかと思いながらも、周りを見渡してウィッチを探す。 後ろのほうでぎぃっと音と共に、ほんのりと明かりの筋が部屋に差し込んだ。 店のカウンターの奥にある扉から、ウィッチが半身を出してインキュバスを手招きしていた。 「ようこそ、そちらは店ですから。こっちへ、いらっしゃいませ」 ああそうか、頼みたいことがあるとは言ってはいたが それでもさすがに店内で「気持ちよくて楽しいこと」はしないだろうな。 自分の迂闊さに苦笑いしながら、ウィッチの後に続いて奥の部屋に入る。 ベッドの横に置かれた本棚と、大きな机の上に広がる錬金術用の器具や薬が 魔女らしいなぁ、と思いながらちらと見ただけでもわかる見識の広さに感心する。 「すまないね、裏口から声をかけて入ればよかったのかな?」 「どちらでも構いませんわ、鍵はかけてませんでしたから」 「レディーの家にしては無用心だね。僕みたいな男が勝手に入ってきたらどうするんだい?」 少しおどかしてやろうかとウィッチの手を取って引き寄せる。 ウィッチは動揺もせず、「こうしてやりますわ」とインキュバスの頭をかい寄せて唇を重ねた。 その積極さにこちらが驚かされながらも、女性から仕掛けられるのは悪い気はしない。 身体を抱いて唇を情熱的に吸うと、ウィッチは目を閉じて舌を絡ませてきた。 ――これは。かなり上手い。 自分が相手をした女性の中でも一番か二番なのは間違いなかった。 同じ淫魔のサキュバスともお互いの練習を兼ねて何度か絡み合ったことはあったが、 もしかしたらウィッチのほうがずっと上手かもしれない。 負けるものかと自身が持つ舌技を駆使しウィッチの舌や歯茎を舐め、吸う。 ウィッチはインキュバスの攻撃にあわせて舌を動かす。 その攻撃の受け止め方は、どこか余裕すら感じさせた。 「ふふっ、さすがは淫魔ですわね、お上手ですわ」 「こっちのほうが驚いたよハニー、一体どこでこんな技を覚えてきたんだい」 その質問には答えず、ウィッチはテーブルの上のランプに手をかざす。 部屋に静寂と暗闇が訪れた。 妖艶な笑みを浮かべながらウィッチはベットまで歩くと、服を全て脱ぎ捨てる。 よほどの自信があるのか、ためらいなく自分の身体を見せつけている。 月明かりにウィッチの裸体が浮かび上がり、美しく白い身体を照らしていた。 ルルーほどではないが大きめの胸にくびれた腰、男が悦びそうな桃尻。 常に魔女の服を着用しあまり外には出ない為か肌はきめこまやかで透き通るように白い。 普段あのような服を着ているから体型がどうなのかわかりにくかったが、 服の下にはこんなにもグラマラスで美しい身体を隠していたのか。 意外な所でいい女を見つけた喜びに思わず口元が揺るむ。 ベットに腰掛け無言でインキュバスを誘うウィッチ。 興奮を抑えながら、インキュバスは自らも服を脱ぎ捨てると ウィッチの目の前まで進み、ベットに優しくウィッチの身体を倒す。 「ハニー、今晩の君はとても素敵だよ」 「お手並み、拝見させていただきますわ」 互いに挑戦的な目で相手の身体を探り始める。 「ああ……いいですわ、インキュバス」 インキュバスは触れるか触れないかくらいのさわり方で指先を滑らせる。 首筋をなめあげると、ウィッチはインキュバスの耳を軽く食んで吐息を吹きかけた。 それだけでぞくっと耳に甘い痺れが走る。 絶妙なタイミングと力の入れ方で愛撫してくるウィッチに、 ともすればこっちがのまれてしまいそうだった。 二人は激しくベットの上で主導権争いを繰り広げていった。 たわわな胸に指を伸ばす。相手の指ははちきれそうに膨張した股間に伸びていった。 「ううっ、ハニー、たまらないよ」 「私も、こんなに燃える夜は久しぶりですわ」 胸をリズミカルにもむと、ウィッチは切なげな声を上げて身をよじりながらも、 股間の指は攻撃の手を緩めず、根元から鈴口まで柔らかく刺激してくるのだった。 二人はいつの間にか頭を互いの足の間に入れ、一番感じる所を攻め立てあっていた。 「ほら、こんなに大きくなって……」 ウィッチは唾液でインキュバスの大きくなったものを濡らしながら、 指と手のひら舌を使い強すぎず、弱すぎず攻めてくる。 「ハニー、君もこんなになっているよ」 インキュバスも負けじとウィッチの濡れそぼった中を数本の指でかき回し、 一番敏感な場所を指ではじくように弄繰り回す。 あふれ出た愛液を舌で吸い取っては甘い淫な音をたてて舐めまわした。 「ああっ、いいですわ。そこ、もっと」 「僕も最高だよ、ハニー、君はなんて素晴らしいんだ!」 高ぶった欲望をぶつけ合うように二人は重なる。 ウィッチは挿入された瞬間ぎゅうっとインキュバスのものを締め上げた。 思わず出してしまいそうになるが、ぐっとインキュバスは耐えて荒い息をついた。 「あら……?これで出ないなんて、お見事お見事」 まったくこらえた自分を自分で褒めてやりたかった。 ウィッチの中は絶えず絡みつくように動き、 壁がざらざらしていて先端まであたるとこすれ強烈な快感をもたらす。 まさに鍛え上げられた名器だった。 こっちが先にいってしまいそうで最初からがんがん攻め立てていく。 「ああん、あっ、あっ、激しいのっ……!いいですわっ」 素数を心の中で数えながら奥へ奥へと腰を打ち付けるインキュバスに、 ウィッチも足を腰に絡ませあられもない声をあげた。 「そんな、私最初からこんな風にされたら壊れてしまいますわっ」 答える余裕もなく無心に腰を振る。 探り当てたGスポット付近を容赦なくこすりあげると、ウィッチの声がいっそう高くなった。 「ひゃうっ、うあっ、ふぁっ」 中のものも一層締め付けられてインキュバスにも快感の波が押し寄せてくる。 「ああっ、インキュバス、私と一緒に、な、中に出してっ!」 もうだめだ……限界か、と思った頃ようやくウィッチがひときわ高い声をあげて達してくれた。 我慢に我慢を重ねて溜めつづけたものをご要望どおりに中で放つ。 びくん、びくんと大きく脈打ちながら、大量の精液で中を満たすと、 ウィッチがしがみついていた手と体を離して身体を大の字に伸ばして寝転がった。 インキュバスも精根尽きたようにベットにごろんと転がる。 まったく、手ごわい相手だった……。だが、ずいぶんといい女だった。 これだけ全力を尽くしたのも初めてだった。自分もまだまだだ。 世の中、いい女というものはどんなところに転がっているかわからないものだな。 「ふぅ……ご協力、ありがとうございましたわ」 「??これが君が頼みたいことだったのかい?」 インキュバスは小首をかしげた。 たんに夜のお相手に誘いたかったのなら、率直にそういえばよかったのではないんじゃないか? インキュバスの体から離れたウィッチは、ベットの横にある 小さな机の上に置いておいた試験管を取り出して自分の膣内に入れ、数回出し入れする。 試験管の中に、二人が交わった行為の証が10分の1ほどたまっていた。 「これこれ、実験に使うので和合液が欲しかったんですわよ。」 「ああ、なるほどね。それで僕をお相手にという訳かい」 自分がたんに性欲旺盛な相手だから選ばれたのかと思うと 少し気落ちしてインキュバスはため息をついた。 「それもありますけど、たまには私も遊びたかったのですわ……」 ウィッチが試験管を試験管立てに戻すと、背中からだきついて胸を押し当ててきた。 萎えた気持ちが、それだけでむくむくと起き上がってくる。 別の場所も元気を取り戻してやる気に満ち溢れてきた。 「私、まだ全然満足してなくてよ…? ……ねぇ、今夜はこれでおしまいな訳ないですわよね、インキュバス?」 ウィッチの手がインキュバスの胸に伸びる。 小さな乳首を悪戯する子供のようにこりこりと転がしてきた。 満足していない、という言葉に闘争心がかきたてられる。 今夜はこんな所で終わりにしてはいけない。なんとしても目の前の女を落さなくては。 「まさか。僕を誰だと思ってるんだい?」 「それでこそ淫魔ですわ。さあ、今夜は眠らせませんわよ」 「ハニー、僕は負けるわけにはいかないんだ!自分の名にかけても!」 「魔女が上か妖魔が上か、私を陥落させてごらん遊ばせ」 ウィッチがくすくすと笑う。その笑みはまさに魔女にふさわしかった。 二人はベットの上で激しい戦いを繰り広げる。 そこは、まさに戦場だった。
「こんなものじゃないですわよね?」 「まだだよ、まだだっ!」
「くっ、ハニー、君はまったくすごい女だよ」 「貴方も、なかなか良くてよ……?」
「ぜぇぜぇ……こ、これからが本番だよ……」 「ふふっ、そうでなくては面白くありませんわ」
「ううっハニー、僕の負けだ!もう素直に降参するよ、だからもう帰し」 「まだまだこんなもんじゃないでしょう?ほら、ここがいい?どうなの?」
「すみませんもう許して下さいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめ」 「まだしぼりとれそうですわね、もう少し我慢なさい」
「ほら、尻を上げて!さっさと舐める!」 「はひぃぃぃぃぃぃぃ」
「ホホホホホ、ざまぁないですわね!それでインキュバスとは片腹痛いですわ!」 「ああっ、私は貴方様の卑しい卑しい奴隷です、ウィッチ様ぁぁぁ…」
「踏んで下さい!蹴って下さいご主人さま!」 「ほらほら犬!お手!」
ウィッチの部屋に嬌声と悲鳴が上がりつづける。 夜はまだまだ長い。
次の日。 「……なんじゃ、ありゃ。なんかの罰ゲームか?」 買い物に街に出ていたアルルとシェゾは、 散歩に出ていたウィッチの手にあるロープに繋がれたものを見て目を点にしていた。 「ウィッチ、何してるの?」 「いいペットが手に入ったので、お散歩中なんですわ。おすわりっ!」 「わん」 ウィッチの命令に従いすっと座る首輪をつけられロープに従わされているそれは、 鳴き声と耳と尻に刺さった尻尾はともかくとしてどうみても犬ではない。 「インキュバスお前、何があった…」 心底かわいそうなものを見る目でシェゾは犬、いやインキュバスに語りかけるが、 インキュバスは律儀にお座りしたまま身じろぎ一つしない。 「ごめんなさいね、もう私以外の言うことはまったく聞きませんの。 これ、昨日気まぐれにちょっと遊んだんですけれども ぜんっぜん駄目!お話にもなりませんでしたわ! まったく、この世界には私を従えられるだけの男はいないのかしら」 大袈裟に肩をすくめて嘆くウィッチ。 一生無理だ。そんなんだから彼氏が出来ないんだという言葉を口の中で飲み込むシェゾ。 「あ、ああ……そんな男がいつかあらわれると良いな、散歩中に足を止めさせて悪かった」 この女だけは一生敵に回さない。下手に関わらんほうが身のためだ。 そう決心して曖昧な返事で場を濁しシェゾはアルルを引っ張ってその場から離れていった。 引きずられながらアルルは、自分には到底理解できない世界を垣間見て ただただ目を丸くして二人を見比べていた。
女王様と下僕、といえばこの世界では影でルルーとミノタウロスを指す言葉であったが、 最近ではこの怪しい組み合わせに変りつつあるらしい。 魔女は、今日も健在である。 |
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