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■欲深

永遠に、美しいだけの恋のままではいられない。
少女はいつか大人になるのだから。
自分は、他人よりも少しずるがしこくて――嘘つきで、欲深かった。

雪解け、ぬかるむ道をアルルは歩く。
まだ風は冷たいが日差しは暖かい。きっともう今年中に雪が降ることはないだろう。
春がくる。

友情も、楽しかっただけの日々も、これでおしまいになるかもしれない。
それでも。選ばなくてはならない日が、いつか来る。わかってた。
アルルは、一度深く深呼吸して、目の前のドアを開けた。
「ルルー……来たよ」
「いらっしゃい、アルル」
笑顔ではあってもいつもとは少し違う真剣なまなざしで、
アルルはドアを開けて椅子に腰掛けて紅茶を飲んでいた目の前の友人を見る。
いつもと少し違う少女の顔に、ルルーは組んだ脚を組みなおしてアルルの話を促す。
「アルル、話って何?」
「うん、実は、ぼく、ごめんね、ぼく、サタンのことが――」
いつか、こんな日が来るのだろうとわかっていた。
ルルーは少し目を落とし、アルルの言葉をかみ締めるように唇を結ぶ。
少しの間の後、顔を上げてルルーはわらって答えた。
「そう、いいのよ。あの人は素敵な方だもの」
アルルはぺこりとルルーに頭を下げる。
「ごめんっ!」
「頭をあげて、アルル」
「いいの?だって、ぼく、ぼくは。ルルーは、サタンのことが」
ルルーはふっと微笑むとゆっくり立ち上がり、アルルの頭をくしゃくしゃになでる。
「馬鹿ねえ」
アルルの頭を胸に寄せ、ルルーはやさしくアルルの頬を両手で包み、

そして――口付けた。


「ルルーのやつ、この時期にプレゼントとはいったいなんだ??」
サタンは腕組みをしながら城の廊下を歩いていた。
「えーと、……マジックミラーがある部屋……で、20時からパーティー?だったか?」
ルルーの話によれば、サタンがきっと喜ぶびっくりサプライズを用意したとの事だったが、
話の意図がさっぱりつかめずわくわくというよりいぶしげな表情でサタンは言われた部屋に入る。
「む?鏡と椅子だけで何もないぞ」
しかも照明すらついておらず、マジックミラーから漏れる光だけで部屋の中は真っ暗に近い。
念のため照明のスイッチを押してみるものの、カチカチと音だけが空しく響いた。
「んんん??こういう趣向なのか?」
ルルーの性格上照明が切れているとも思えない。とすればわざと切ってあるのだろう。
広いともいえない部屋に足を踏み入れると、とりあえず椅子に腰掛けてみる。
こちら側が暗い分マジックミラーの向こう側がよく見えた。何か劇でもするのだろうか。
隣の部屋はこじんまりした何もない部屋のようだ。ふかふかのじゅうたんがひいてある。
そこにルルーとアルルが入ってきた。
「アルル、こっちよ」
「わあ、すごいふかふか。ここ、そのまま座っちゃっていいの?」
ルルーもアルルもこちらに人がいることなど知らないかの様子で腰掛けて談笑しだす。
「ルルー、アルルにドッキリ大作戦(古い)でもするのか?」
それとも自分がドッキリさせられる立場なのだろうか?
それにしても覗き見というのは背徳感があって少々高ぶるものがある。
かたや自分を思う女と、自分が追いかける女。
ルルーの思惑は読めないが、この二人がどんな話をするのかは興味がある。
別にルルーの言うとおりにしているだけで悪いことをしようとしている訳ではないのだが・・・
何となく気が付かれない様静かに耳をすまし、目を凝らす。
壁一枚、手を伸ばそうと思えばすぐに触れることが出来そうな至近距離に、二人はいた。
暗闇に目が慣れ、こちらも落ち着いて会話が聞こえるようになるとまずます臨場感が増す。
サタンは何が起きるのだろうと期待しながら、二人の様子に目を凝らした。

「ねえルルー、今日は……サタン、いないんだよねえ?」
少し落ちつかなそうにアルルはきょろきょろしながら、ルルーに話し掛けている。
「ええそうなの。だから今晩、一緒にこちらに泊まってほしくて」
「そっかあ。なんだか、ちょっと、どきどきする」
アルルは少し顔を赤らめ、ルルーから目をそらした。
「サタン様にどんな風に告白するか、もう考えた?」
「ぶほっ……そ、そんっなっぼ、くはっ、けほっ」
唐突過ぎるルルーの言葉に、アルルは思わずむせてしまう。
「もう、アルルってば、かわいいんだから」
ルルーがいたずらっぽく笑うと、アルルのほっぺたにキスをする。
「な、いきなりなにいいだすのルルーってば!」
アルルは真っ赤になって両手を顔の前で振った。
「あら?こんなかわいいアルルの言うことですもの、
 きっとサタン様はどんな言い方だって喜んでくれると思うけど」
ルルーは余裕の笑みでアルルにしなだれかかると、ぷに、とやわらかいほっぺをつつく。
「そ、そ、そうかなあ」
「ええ。きっと」
ルルーは、座るアルルを抱えるように後ろから抱きしめると、太ももに指を這わせ始めた。
長く、美しい指が触れるか触れないか位の繊細な力加減でアルルの脚に這い、
その指がひざとスカートを少しもぐるくらいのところをゆっくりなぞりあげるたびに
アルルの体がぴく、ぴくとわずかに震えた。
「あ、ちょ、ちょっと、ルルー、こんなところで……」
「大丈夫よ、今宵この城にいるのは私とあなただけ―――」
「そ、じゃ、なくて……あ、あうううっ」
「大好きな人の家でこんなことするの、それだけで恥ずかしい?」
こくり、と少し荒い息をつきながらアルルがうなずく。
「かぁいい、アルル。もっとかわいいところ、見せて」
「あんっ」
ルルーがアルルのスカートのホックをはずす。
自らの体が明かりに照らされる羞恥に、アルルは軽い抵抗を見せるが、
ルルーは巧みに快感と力の差でどんどんアルルの服をはだけさせていってしまう。
肩まで伸びた柔らかい髪、そこから見えるうなじが、とても健康的だ。
「あっ、ああっ、だめ、ルルー!」
服をたくし上げられ、つんと上を向いた胸があらわにされる。
ルルーはその双丘を持ち上げると、先端をじわじわとなぶるようにやさしく引っかいた。
「あ、んく、あ、ああ……」
性とは無縁そうなアルルが、優艶なルルーにあられもない姿にされ、
そして――いやらしいことをされている姿が、かえって甘美的に見える。
「サタン様にこんなエッチなこと、されたいんでしょう?」
「そ、そんなぁ……ぼくぅ、ぼくには、こんなことまだ――」
ルルーに嬲られながらアルルは、必死にかぶりを振った。
「何言ってるのよ、あの日以来私とは毎日のようにエッチなことしているじゃないの。
 それにこんないやらしい体しておいて今更」
「ひあっ、ちがっ、それはルルーがぁ、ルルーがエッチな事するから」
「へえ?エッチなことされてこんな感じちゃういけない体なのに?
 ほら、見てみなさいよ自分の姿。……ねぇ?」
「んあああ、やだぁ、こんなの、こんなところ」
甘い声で鳴きながら、ルルーはいやいやするアルルの脚を鏡のほうへ見せつけるように開かせる。
「ほら、見えるでしょ?乳首だってこんな硬く尖らせて。
 下着の中だって触って欲しくてもうどうしようもなくなってるんじゃないの?」
鏡に映る自分の姿を直視できず、アルルは顔を手で覆って涙目でルルーに懇願する。
「ルルー、だめ、やめて、こんなのぼく、恥ずかしいよぅ」
「恥ずかしいことされて感じちゃってるのはだーあれ?」
くすくすと笑いながらルルーはアルルの耳たぶをかるく食む。
せまる快楽に身をよじり、髪を振り乱すアルル。
「ちがっ……だ、だめ、や」
「嘘をつくんじゃないの」
脚の内側を、ルルーの指が這いまわる。
少しだけ指をもぐりこませて下着の内側の線をなぞり、恥毛を指ではさんで軽く引っ張る。
「ううう、ううっ――」
アルルが焦らされ身もだえ困惑する姿に、ルルーは唇の片側を吊り上げ笑った。
「さあ、どうして欲しいか言うのよ、アルル」
「これ以上、は、もう」
息も切れ切れに、脚をひくつかせてアルルは何度も何度も首を振る。
わざと敏感なところの周囲だけを責めながら、ルルーはアルルの背中に口付ける。
「ああ、ルルー、ルルー、いじめない・・・で」
「誰に、どこを、どんな風にして欲しいの?
 いってくれたら、いじめるのおしまいにしてあげる」
「あっ」
ルルーは不意にアルルの両乳首を軽くつまむ。
焦らされつづけたアルルの体は、それだけで強烈な快感が走った。
くりくりと乳首を転がすと、アルルの唇から甘い声が幾度も漏れた。
「ほらほら、誰に、どんなことして欲しいの?」
「ル、ルルー、や」
「言えたら、おしまいにしてあげるから」
アルルは幾分逡巡してから唇を震わせ、切なげな声でルルーにおねだりした。
「もっと――」
「もっと?」
「もっと、きもちいいこと、して、ほしい」
ルルーは意地悪な笑みを浮かべ、アルルの胸をもみしだきながら耳元に息を吹きかける。
「ひゃうっ」
「誰と――したいの?」
「ううう……」
「ほら、本当は・・・誰と、もっと、気持ちいことしたいの……?」
「いゃああっ」
軽く、ショーツの上からアルルの割れ目をつめで引っかく。
背中を弓なりにさせ、アルルはひときわ高い声をあげた。
「はあっ、あっ、サタンと、サタンにっ……エッチなこと、して欲しいの」
「よくできました」
瞬間、ルルーの指がアルルの下腹部にもぐりこむ。
「ああああ、あああっ、あああー!」
すでに濡れそぼったそこを、ルルーは両手を使って絶え間ない刺激を送り込んでいく。
3本の指が肉芽を捕らえ、やわやわともみ、震わせ、さらに愛液をあふれさせていく。
もう片方の手の指が花びらを掻き分け、入り口付近をなぞると、重い水音が部屋に響く。
「はあっ、ルルー、だめ、やめてくれるって、意地悪やめるって、いっ、ああああ!」
指が入り口から奥に飲み込まれ、壁を刺激はじめる。
アルルのそこは自分の意思に反し、快楽を求めてきゅうきゅうと指をしめつけ、離さない。
「ええ、意地悪やめておもいっきりアルルの大好きなエッチなことしてあげるわ」
「ああ、そんなのぼく、おねが、やめ、やめて、これ以上――」
「もっとしてっておねだりしちゃうなんてエッチなアルル。
 サタン様もアルルがこんな淫乱な子だって知ったらきっとお喜びになるわよ」
「サ、サタンと、こんな、こんなことなんて、ぼくはそんな……あうっ」
アルルの中に指を軽く入れると、そこはぬぷりと音を立てて吸い込まれるように加えこむ。
「あら、したいんでしょ?本当は、もっとすごいこと、サタン様としたいんでしょ?
 今まで、私に遠慮して言えなかっただけで」
「ぼくはっ」
「大丈夫。私とアルルは、同じ人が好きなもの同士でもっと仲良しになったのだものね。
 一緒にサタン様とこんな風に楽しめるって知ったら、きっとサタン様も……
 ほらほら、もう一度本当のこと口に出して御覧なさい。楽になるわよ」
ルルーは、アルルの下腹部を責める指を更に早く、激しく動かしていく。
「サタン……サタン、サタン、すきい、好きなの、してほしい、エッチなぼくに、もっと……
 サタン、サタンに……ぼく、ぼく、へんだよ、へんに……あーっ!!」
がくがくとアルルの脚がふるえ、そして秘所が痙攣し――達した。
「だ、そうですわよサタン様」
ルルーは、アルルを抱きとめながら傍らにあったリモコンのスイッチを押す。
ガー、という機会音。
「え――」
そこには、間仕切りとなっていたマジックミラーが跳ね上げられ……呆然としているサタンがいた。

「あ、あ、アルル」
「え、な、な」
力が入らなくだらしなく開かれた脚をとじることもできず、
アルルもまた呆然と目の前のサタンを見上げた。
ルルーによって快感におぼれた自分の体が愛する男の目にさらされている。
それどころか、この様子だと最初から見られて、あまつさえ聞かれて……
「いや、いや、いやあああああああああああああ!!
 見ないで、見ないで、サタンっ」
「さあ、サタン様――プレゼント、受け取ってくださいませ」
ルルーは成り行きを理解したアルルの脚を強引に割り、ひくついた秘所を指で開く。
サタンは目の前の光景がもはや夢か現かわからない。
生唾を飲み込み、本能が求めるままに、脚が一歩前に、女達の前に進みだす。
サタンはばさりとマントを肩から落とすと、アルルに覆い被さった。
「あああっ、サタン、サタン――」
「よかったわね、アルル」
ルルーがアルルの胸をもみながら、サタンとアルルに微笑む。
「私も、アルルもサタン様の両方は失いたくなかったもの。
 だから、これからは3人で……ずっと一緒よ」
その目には、ほの暗い情念が宿っていた。

この選択がどうかといわれたら、きっと、正しくは、ない。
でも私は、他人よりも少しずるがしこくて嘘つきで、――欲深だから。


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