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■恋は戦争

『私の魔導力を差し上げますから、おばあちゃんを助けて』
『半人前の魔導力なんかとってたら、こっちまで半人前になっちまう』

ウィッチが一人前の魔女になるべく試験を受けていたダンジョンの中で、
シェゾに自分と祖母を助けてもらったのが事の始まりだった。
ウィッチは手に持つ魔導書を開いたまま、顔に落とす。
一日かけて読み進めた割りに本のページはほとんど進んでいない。
「半人前で悪ぅーございましたわねぇ……」
鼓動をうつ胸が、かすかに熱を帯びる。
彼にそのまま返してもらった魔導力、のはずなのに。
どうしてこんなにも熱く感じられるのか。
顔に乗せた本もそのままに背もたれに寄りかかる。椅子がぎぃっと鳴った。
塔から見える日差しはかげり、ずいぶん色を変えてきていた。
灰色の空からぽつ、ぽつと雨が落ちていく。

『ウィッチを傷つけた 貴様は許さない』

彼は不器用なんだ。ただ毎回言葉を選ぶのがとても下手で、誤解を招く言い方しか出来ないだけ。
わかってるのに、それなのにどうして。
はやく一人前の魔女になって、彼を見返してやらなくては。そう思う一方の気持ちで、友人の顔が浮かぶ。
……彼女の魔導力だったら、素直に受け取るのだろうか。
憎いのは彼のはずなのに。どうして、彼女の顔を思い浮かべても苦しくなるのだろう。
いつしかいつも彼の視線を追うようになっていた。
いつも視線の先にいるのはあの子。

それを嫉妬と認めるには、時間がかかった。

「あ、あなたが――欲しいっ!!です、わ」
まっすぐな言葉をぶつけても、いつもその場の雰囲気に耐えられなくて。
「もとい、あなたの白い服が欲しいのですわ」
言いつくろってしまう、違う。違うのに。
彼がどうしていつもあんな言い方になってしまうのかわかって、少し悲しくなった。

戦わなくちゃ。
短くしたスカート。
激しく動くとちらりと見えるのは恋心。
見せ付けてあげる。一瞬でもいい、貴方の視線を奪えたら。ねえ、こっちを向いて――


「見つけたぞ!アルル、おまえが――って、またおまえか!!」
「おいっす」
間に合った。絶対彼はアルルのところに行っていると思ったんだ。
ウィッチはアルルとシェゾの間に割り込むように立ちはだかる。
「あなたがほしいですわっ」
「ど、どうしたのウィッチ」
「こっちがききたうぉぁ」
「あなたの黒い服がほーしーいーでーすーわー!!」
ウィッチはシェゾに脚払いをかけひっくり返すと、袖をつかんでその場からシェゾを引きずっていく。
「ひっぱるなああー!!」
そんなこといわれてもいやだ。シェゾをなんとかアルルから遠ざけようと全力でシェゾを引き寄せる。
「なんなんだ、毎回毎回邪魔をして!」
「う、うるさいですわ!そのうち……そのうち自分から服を差し出したくなりますわよ!」
「んなわけあるか!」
なんでこいつもわからないのか。どうして私の周りの人間はこうも馬鹿なんだろう。
私もなんでこんな奴のことが好きになってしまったんだろう。一番の馬鹿は私だ。
「ならねぇよ変態!……なんだ、お前」
悔しくて、涙が出る。
「俺が何をしたよ。ちっ、アルルも逃げちまったし。あーあーあー、泣くな、泣くなよ」
そういわれても、一度流れ出したものは簡単に止めることは出来ない。
貴方がもし少しでも人らしい感情があるならば、私の口をふさいで見せなさいよ。
唇をかみ締めて、彼の服をぎゅうっとつかんで引き寄せる。
どうかお願い。目の前に、彼の顔がある。視線が合う。
「おま――え」
瞳は全てを物語る。戦うのよ。もう、私もこれ以上逃げない。
自分の唇が、不器用に彼の唇のはしに触れた。
負けるとわかっている恋でも、戦わなきゃいけないときってのがありますのよ。

「抱いて、くださいまし」

シェゾの腕がウィッチの体を強く抱きしめた。
自分で望んだことなのに、歯の根が合わずかちかちという音が口の中で響く。
臆病な自分を悟られないように頬の肉をかみ締めて耐える。
少し乱暴に手先が、ウィッチの服の中に進入していく。
強引にされるほうがかえって今の私にはありがたかった。
考える余裕があったら、きっとどうにかなってしまっただろうから。
彼は私の服の背中にあるファスナーを勢いに任せておろすと、肩から服を脱がせていった。
よろけた私を木の幹に寄りかからせると、肉食動物が獲物を食らうかのように私の肌に吸い付いていく。
巨大化した太陽が、私の背中を熱く焼けるように照らす。
砂漠には陽炎が揺らめいているのに、私の背中ににじんだ汗は冷ややかで、冷たかった。
シェゾの手がブラジャーのなかにある私の乳房をつかむと、むにゅむにゅともみくだく。
その手が動くたびに、ブラが乳房の上へ押し上げられ、胸があらわになる。
「あ――」
指の腹で、隆起した乳首をつままれる。それを転がすようにくりくりとうごかしたり、
引っかいたり、なでられたりするたびに自分でも信じられないような声があがる。
良くも悪くも強すぎる刺激が、ウィッチの感情と体を強く揺り動かす。
ばさり、と服が地面に落ちた。背中に、シェゾの唇が跡をつけていく。
「もっと、もっと強く吸って――」
貴方の記憶が、残滓が体にもできるだけ長く残るように。
獣のように歯を立てて噛まれる。噛み千切られて貴方の肉になれたら、どんなに幸せだろう。
舌が背筋をなぞる。その舌先が、ゆっくりと下に下りていく。
「ん……」
執拗に胸を嬲っていた指も、腹から腰へ降りていった。
ショーツの両端に指を引っ掛けると、太もものあたりまでずらしていく。
シェゾはウィッチを自分のほうに向かせると、ショーツを脚から引き抜き、片足のひざをもちあげる。
そして自分もひざ立ちになると、あらわになったウィッチの股間に顔をうずめ、ぴちゃぴちゃと舐め始めた。
「っ、シェ、ゾ……」
シェゾの顔が、自らの一番恥かしいところの目の前にある。
羞恥と快楽に、涙目になりながらシェゾの頭をつかむ。
そうしないともうたっていられそうになかった。舌がウィッチを責めるたび、熱い吐息が漏れる。
シェゾはあいているほうの手で、もっとなめやすいように秘裂をひらくと、クリトリスを重点的になめあげた。
「うっ、あっ、あああーっ」
ウィッチにかまわず激しく、シェゾは舌先を尖らせては膣口に差し込み、
あふれる愛液をすするようにクリトリスを吸い、また舌でなめまわす。
「い、いあああ、あう、シェゾ、シェゾ」
ウィッチの反応を楽しむように舌でむさぼり、指で入り口を音を立ててかき回すように動かす。
声もあげるのが辛くなってきた頃、ようやくシェゾはウィッチの体を地面に横たえた。
「……」
シェゾが服を脱いで、ウィッチの頭の上辺りに投げ捨てる。
大きく屹立したものを見て恐怖がわきあがるが、目を閉じてシェゾが自分を抱くのを受け入れようと
脚を開き、おとなしくシェゾのされるがままにのしかかられる。
これで、今だけは彼のものになれるのですから……だから大丈夫。耐えて見せますのよ。
「うっ……きついな」
体に押し入っていく異物感を感じたのは一瞬だった。ぐっとシェゾが強引に腰を進めると、
引き裂かれるような痛みが体に走り、そして、自分が彼のものになったのだと、わかった。
痛みよりも、達成感というか、一緒につながっているという喜びのほうが大きかった。
シェゾがウィッチの上で動き始める。感じていてくれているのだろうか、
荒い息とともに眉根を寄せて、切なそうな顔をみると、胸のなかに甘酸っぱいものがこみ上げる。
首に腕を回し、ぎゅっとしがみついて、全身で受け止めようと思った。
「だめだ……もう出るっ、わりいな、早くて」
「いいですのよ……きて……くださいましっ……」
シェゾが腰を奥に叩きつけるように打ち込むと、どくん、どくんと欲望の塊をウィッチに注ぎ込む。
そのあつさと痙攣する彼のものを感じ、言いようもない満足感がウィッチの心を満たすのだった。

「……どうして、お前、初めてだったのか」
「いいんですのよ」
お互いの後始末をしながらウィッチの太ももを伝う血に気が付いたシェゾが、戸惑った顔でウィッチを見る。
困惑するシェゾと対照的に、晴れやかな顔でウィッチはワンピースをまとう。
「背中。手伝ってくれませんこと?」
「……ああ」
シェゾはウィッチのワンピースの、背中にあるチャックをあげてやる。
「あのよー」
「なんですの?」
「前から気になってたんだが。んー……お前、スカートなんで短くしたんだ?」
気が付いてたのか。何もそ知らぬ顔でいたくせに。
「まだわかりませんの?これだからむっつり助平の変態さんは困りますわね」
「ぬっ」
「人を半人前だなんて馬鹿にするからですわ。精進なさい」
もう二度と馬鹿になんかさせませんのよ。
高笑いしながら帽子をかぶりほうきにまたがると、まだ釈然としていないシェゾを残し、空へ舞い上がる。

いつか同じ土俵に立ってみせますから、そのときは――きっと、相手にしてくださいましね。


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