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7-204様
「うわぁあっ!何するんだよ!」
突然真っ暗闇の中に放り出されたアルルは悲鳴を上げた。
『うるさいやつだな。大人しくしていろ』
ため息混じりながらもどこか楽しそうな声が闇の中から降ってくる。
声の主の姿は見えない。
居場所を特定しようと神経を尖らせて周囲の気配を探るも、なんだかよく解からないぐるぐるした感覚に邪魔されてかなわずにいる。
「こんな状況でおとなしく出来るわけないでしょ!ボクに何をしたのさ、ヘンタイシェゾ!」
そう、確かついさっきまで彼女は変態……もとい闇の魔導師・シェゾとぷよぷよ地獄で対戦していたはずなのだ。
必殺の七連鎖を生み出すぷよ列が組み上がり、その起爆となる赤いぷよをいざ設置しようとしたその時。
突如足元から黒衣が出現し、それが全身をを包み込んだかと思った次の瞬間、アルルはこの闇の中に立っていたのである。
あまりに突然の事態に呆然と立ち尽くしていると、唐突に細い腕を凄まじい力で捕まれ、そのまま叩きつけるようにして引き倒されてしまったのだった。
ねぇ、教えてよ!ここはどこなの!?」
腕と両足を見えない力で拘束され、身動きがまったく出来ない。
おまけに見えるのはただ闇、闇、闇……
さすがのアルルにも僅かずつ不安が湧き上がり始める。
そんな彼女を嘲笑うかのような声が答えた。
『ここは一種の亜空間だ……安心しろ、用が済めばすぐ出してやる』
「用って何だよ!何するつもりなのさ!このヘンタイ!!」
『――……ふ、くくっ、はっはっはっは!』
「な……何よ」
その笑いの意味が解からず、そして何か背筋に冷たいものを感じて、恐る恐るアルルは問う。
それに、なお込み上げる笑いを堪えたようなシェゾの声が答えた。
『いや……な?』
「ひゃっ……!?」
『お前があまりにもオレのことをヘンタイだとぬかしやがるから……その本当の意味を教えてやろうと思って――……な』
アルルの脚を、何かあたたかいものが撫で上げる。
「あ……やだ、何!?」
次いでぱちんと音を立てて肩から重みが消えた。おそらく防具を外されたのだろう。
覆う感覚が取り払われた胸を、服の上から熱がまさぐった。
「や、何……なにするのっ!やめてよ!」
得体の知れぬものに与えられる感覚から逃れようと、アルルがもがく。
しかし闇の呪縛にその細い両手足をしっかりと捕らえられているために振り払うことは叶わない。
至極可笑しそうにシェゾの声が笑った。
『そう嫌がるな』
「ひぁっ……」
『よくしてやるからよ……』
首筋をぬるりと生暖かいものが辿って、アルルは思わず声を上げた。
ゾクゾクと背筋を悪寒に似たものが駆け上ってゆく。
「やだっ……ぁ……なにこれぇ……」
二度三度と往復するソレにいやいやとアルルは首を振る。
じっとりと湿った感触が何かイキモノを思わせて気持ちが悪い。
気持ちが悪いはずなのに……
「ぁん……っ」
ある箇所を撫でられた途端背筋がぞくりと疼いて唇から切なげな声が漏れた。
思わぬ己の反応にぎょっとするが、確かめるように何度も同じところを通るソレに絶え間なく声は溢れ出る。
「や…あぁ……っん、あん……」
『ふ……オコサマのくせにイイ声出しやがるぜ……』
さも楽しそうなシェゾの声にはっと我に返る。
「なっ、何言って――ひぁっ!」
慌てて反論しようとしたその時、するりと胸元に何かが忍び込んできた。
びくりとアルルは身を強張らせるアルルにお構いなく、それはアルルの胸を包み込むとゆっくりと動き始める。
「あっ!あぁ!な……なに……ひゃぁあん!」
『思ったとおりのオコサマサイズだが……』
「なっ!?」
『感度は良いらしいな』
くくっ、と声が笑う。
それにアルルはかっと頬を染める。
ようやく気付いた。
今自分の胸に触れているのは他でもない、シェゾの手なのだ。
そしておそらく、今首筋からようやく鎖骨へと下り、胸の頂に辿り着いたコレは――……
『甘いな……アルル、甘いぜ、お前のココ』
シェゾの、舌だ――……
「やっ……あ!ん、んんっ!!」
シェゾに、あのシェゾにこんなことされてる。
こんなところを、こんなふうにされている。
吸い付かれ、舐め尽くされて、快楽と恥辱にアルルの頭の中は真っ白だった。
「いや……シェゾ、やだ……ぁ!やめてよぉッ……」
言葉では拒絶を示しながら、身体は従順に与えられる悦楽を受け入れ始めていた。
時折わざとその一点を逸らして逃げる感覚を追うように胸を押し付け、ねだるように身体をしならせる。
そんなアルルの様に、シェゾがどこか熱を帯びた声で呟く。
『お前……今自分がどんな格好してるかわかってるのか?』
「ぇ、……あ……?」
『教えてやるよ』
どこか遠くでそれを聞くアルルの身体から、触れていた熱の一切が去る。
『お前みたいなヤツをヘンタイ……インランっていうんだ』
空白は一瞬だった。
「あ、あぁああっ!」
ぬる、と下腹部に熱い塊が触れた瞬間、アルルを凄まじい何かが突き抜けた。
体中が熱く脈打って、まるで全身が心臓になったようだ。
「ふぁ!あぁ!ぁん!あぁんっ!」
それはアルルの中を這い回り、時折外に飛び出してはとりわけ敏感な部分に吸い付いてはじゅぶじゅぶと音を立ててまた潜り込んでゆく。
言うまでもなく、それはシェゾの舌だった。
もう、何が何だかわからない。
アルルはついに泣き出してしまった。
そんな彼女に残酷にもシェゾは囁く。
『もうこんなに濡れてやがるぜ……インラン』
「やだ、やだぁ!っあ!あぁ!」
涙をこぼしながら必死でかぶりを振るアルルに追い討ちをかけるかのごとく彼は続けた。
『嘘つけよ……本当はもっとよくなりたいんだろうが……』
「そ、んな、あっ!こと、ぁあ!」
『素直じゃねぇな……身体はこんなに正直なのによ……』
「ちがぅ、ちがうぅ……!」
『今楽にしてやるぜ……』
いやに優しい声が囁く。
これから起こる事態を予測して、アルルは恐怖と、思わず抱いてしまった期待にぞくりと身を震わせた。
体内を蠢いていた舌がはなれ、それとは比べ物にならぬ質量の灼熱が触れようとした、瞬間――――――
ザシュッ!
『ぎゃあぁあぁああぁああぁあ――――――――!!!』
目の前を覆いつくしていた闇に一筋の閃光が走ったかと思うと、空間を揺るがすような凄まじい絶叫が響き渡った。
まるでひび割れるようにして闇が崩れてゆく。
剥がれ落ちたそこから差し込む光の強さに、アルルは目を閉じた―――
「――……ぃ、おい、アルル」
「……ふぇ?」
呼ぶ声に目を開くと、青空が広がっていた。
「ぐーっ!」
「カーくん!」
とびついてきた黄色い小動物を胸に抱きとめて、アルルは辺りを見回す。
見覚えのある森の中だった。
「あ、あれ……?ここは……」
「元の場所だ」
「そっか……って、しぇ、しぇしぇしぇしぇしぇぞっ!?!!??」
きゃぁあぁあっと悲鳴を上げてアルルは少しはなれた木の後ろへと逃げ込む。
「おい、ちょっと待て!何だその反応は!」
そう怒鳴っているのはまぎれもなく、銀髪に蒼い瞳をした闇の魔導師・シェゾ。
さっきまで彼女にあーんなことやこーんなことをこれでもかというほどやってくれちゃった……
「だっ……だってだってっ……!キミ、ボクにあんな……あんな……」
あの闇の中での行為を思い出し、アルルの顔にかぁーっと朱が上る。
ああ、もう信じられないよッ!
知らずにまた涙が溢れ出てきた。
シェゾはそんなアルルの様子を何だか怒ったような顔で見つめていたが、やがてはぁーっと深いため息をついた。
「何があったか知らんが……お前が見たのは幻覚だ」
「………え?」
幻覚、というシェゾの言葉に、アルルはぱっと涙に濡れた瞳を上げる。
視線が合った途端、どこかバツが悪そうな顔をしてシェゾはさっと顔を背けた。
そうして右手に握った剣をひゅん、と振るう。
アルルがその剣先が示す方向へ目を向けると、何やら見たこともない魔物が首と胴体を切り離された状態で転がっていた。
「こいつは人間を亜空間に引きずりこんで幻覚を見せ、魔力を食らうモンスターだ。ぷよぷよ地獄で対戦中にお前はこいつに呑まれたんだ」
「じゃあ、あれは全部……幻覚……?」
「そういうことだ」
「…………な………なんだぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」
安心したやら何やらで一気に脱力してしまったアルルは、へなへなとその場に座り込んだ。
そうだよね、シェゾにあんなことされちゃうわけないよね、幻覚に決まってるよ、幻覚に……
「よかったよぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜カーくぅ〜〜〜〜ん!!」
「ぐ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「あっ、ごめんね」
ぎゅ――――――っと腕の中のカーバンクルをこれでもかというほど抱きしめる。
苦しい、というように黄色い彼(?)が鳴いたところで、アルルは慌てて開放してやった。
「あ……てことはシェゾが助けてくれたんだよ……ね」
あの幻覚の中で見た閃光を思い出し、アルルは少し離れたところで彼女たちのやりとりを傍観していた闇の魔導師を振り返った。
あれはおそらくシェゾが放った闇の剣の一撃だったのだろう。
「あ、ありがとう……」
幻覚だったとはいえ未だに残る気恥ずかしさからまともに目を合わせられなかったが、何とかそれだけは言った。
「フン!ただあんなザコにお前(の魔力)を奪われることが癪だっただけだ。」
「あ、あのねぇ……」
「それよりも……」
に……と不敵な笑いを浮かべ、シェゾはアルルを見た。
アルルはそのアヤシイ光を宿した瞳に非常に嫌な予感を抱き、後ずさる。
ばっ!と剣をアルルの方に向け、シェゾは声高に言い放つ。
「勝負の決着がまだだったな。アルル、オレはお前が欲しいッ!!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
アルルの中であの幻覚のシェゾと目の前のシェゾがダブった。
ぶちっ……どこかで何かが切れる音がした。
「………この、ヘンタ―――――――――――――――――イッッッ!!」
「ぎゃぁあああぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁぁ!!!!!!」
いつもより多い12連鎖が決まったそうである……