ドラコとアルルとドッペルと

7-228様

 ぽかぽかと暖かい街道を歩く人影。
 膝丈の紅いチャイナ服を着て大きく開いたスリットから見える健康的な太股は漆黒のスパッツに包ま
れている。
 見た目気の強そうな顔、鮮やかな緑の髪からは尖った角がでており、何よりもそのお尻から伸びる一
本の太い尻尾が目を惹いた。それは猫や犬の様な細い尻尾ではなく、濃緑色でしっかりとした、竜の尻
尾の様な感じである。
 それもそのはず、彼女は龍人の血の多分に混じっている種族だった。
「あっ!」
 その少女は何かを見つけたらしい、小さな声を上げていきなり走り始めた。
「アルル! 私と勝負だぁ!!」
「ぅん?」
 駈けていった先に居た青と白を基調にした服を着た少女、アルルに向かって指さし、大声で叫ぶ。
「アルル! どっちが本当の美少女か今日こそ勝負だ!」
「……ドラコ?」
「なにキョトンとしてるのよ!? さぁ勝負よ!!」
「うん、いいよ」
「やっぱりそうくるわね? 良いわよ! ぷよぷよ勝負で私が勝ったら……って……へ?」
「だから、うんって言ったんだよ」
「……美少女コンテストで勝負してくれるの?」
「うん」
「……えと……」
 いつもと違う相手の反応に困惑するドラコ。だがしかし、持ち前の前向きな性格ですぐに立ち直って
再度アルルを指さす。
「よし! じゃあ勝負だ!! 今から嫌だっていっても聞かないからね!」
「うん。でもドラコ、それはいいけどどうやって判定するの?」
「あぅ……」
 現実的な質問をされて言葉に詰まる。
「えぇっと……とりあえずどっちが可愛いか、みんなに決めてもらおうか?」
「みんなって……あのみんな?」
「うっ……」
 アルルの指す『みんな』を思い浮かべて苦い顔になる。

「あのみんなだと、どう考えても変態さんクィーンだよ」
「………あぅ〜」
「う〜ん……あっそうだ!」
 しばらく唸っていたアルルだが、ぽんと手をたたいてドラコの方へ向き直った。
「あのさ、確か……えっと……あれ?」
 ゴソゴソと荷物をあさるアルルを見ながらふと違和感を感じる。何かが足りない……とはいえ、手や
足が足りないわけではなく、
「ねぇアルル、カーバンクルは?」
 そう、いつも一緒に居る黄色い謎の生物ことカーバンクルが居ないのである。
「カーくん?」
「うん」
「カーくんはおうちでお留守番。カーくんったら酷いんだよ! ボクが昨日せっかくつくったすぺしゃ
 るカレーを一人で食べちゃったんだよ?」
「ふぅん……いっつも一緒って思ってた」
「え〜? ボクだって偶には一人で居ること有るよぅ」
「それでも偶にはなんだ」
 苦笑するドラコ。
「うん、まぁね。それよりコレどう?」
「これ?」
 アルルの取り出した紙片を受け取る。
「え〜っと……美少女水着コンテストぉぉ!?」
「うん、何日か前に雑貨屋のおばちゃんに貰ったんだ。ちょうど今日だし、これで勝負する?」
「み、水着コンテスト……」
「あれだけ言ってたのに嫌なの?」
 小馬鹿にしたようなアルルの言葉にドラコはムッとした顔になる。
「そんなこと無い! じゃあこれで勝負だ!」
「じゃあ行こ」
「行こって……今から?」
「うん。だってボクの住んでる街の隣街だもん」
「え?……あ、ホントだ」
「じゃあとりあえずドラコの家に寄って、で、ボクの家に寄ろ」
「う、うん」
 いつもと違い妙に積極的なアルルに戸惑いながらもうなずく。

「へ〜……こういう家だったんだ」
 小さな、しかし可愛気のある家を前にちょっと意外そうな顔のアルル。
「悪い?」
「ううん全然! だってドラコって龍人の系統だし、火も吐けるし、てっきりこんな家かと思った」
「そんな訳あるワケないでしょ!!」
 アルルの言うこんな家、火山の中腹に穿たれた洞窟に思わずつっこみを入れる。
「私だって女の子なんだし、そもそもそんな所だったら危なくってしょうがないじゃない」
「え? 龍人ってみんなああいう所に住んでるんじゃないの?」
「違うよ、あんな所に住んでるのは変わり者かシェゾ(変態)だけだよ」
「それ言えてる」
 知人全員から変態の烙印を押されている、しかし容姿端麗で実力もある魔導士、シェゾ・ウィグィィ
の顔を思い浮かべて妙に納得してしまう。
「さてと、それじゃ私水着取ってくるからちょっと待ってて」
 そう言い残してさっさと家に入っていくドラコ。
「え〜っと……こないだの水着は…っと……」
 一人つぶやきながら衣装ダンスの有る奥の部屋へ向かい……ふと立ち止まった。
「あのさ……アルル?」
「ん?」
 振り向かずにいう。
「何でついてくるさ」
「ドラコの家に興味があったんだもん」
「………あのね、だからって勝手についてこないでよ」
「あっはっは」
「笑ってごまっむぐっ!?」
 流石のドラコも振り返って文句を……言えなかった。すぐ近くまで来ていたアルルに抱きしめられ、
キスによって口を塞がれてしまう。
「むぅっぅ!??!?」
 いきなりの事に目を白黒させるドラコ。しかしそんなドラコには全く構わずにアルルは熱烈な抱擁と
口づけ、そしてそのままゆっくりと舌を相手の口へこじいれて口内を舐め回す。
「むうぅぅぅ!! っっぷは!! ア、ア、アルル!!」
 持ち前の剛力に火事場の馬鹿力をプラスし、アルルを無理矢理引き剥がして距離を取る。
「な、な、な、な、何するんだ!!?」
「何するって、今ので分からないかなぁ? ただボク、キミが欲しいなって思っただけだよ」
「!?!?!?!?!?!?」
 ニコニコ笑いながら近づいてくるアルルに、ドラコは一気に部屋の隅までさがった。
「ア、アルル? 冗談にも程が……」
「ボクは全然冗談のつもりないよ。ドラコがほしいの」
「っっっっっっっ!!!!」
 まるで壁画のように壁に張り付き顔面蒼白、ただただ首を振るドラコ。
「ドラコはボクのこと嫌いなの?」
 やや悲しげな表情(かお)。
「好きとか嫌いとか、そーゆー事以前に、私達女の子同士でしょ!?」
「そんなの関係無いよ。ボクはドラコが好き……大好きだよ……だからキミの全部が欲しいの」
「ひえぇぇぇぇぇぇ」
 ジリジリと迫り来るアルル。対してドラコは今にも泣きそうな顔で逃げ場を探す。

「ア、アルル! それ以上来たら火を、火を吐くよ!!」
「……本当に吐ける? キミにボクを殺せる?」
「…………お前! アルルじゃない!!」
「どうして?」
「アルルは……殺すなんて絶対に言わない!」
「……………ふふ……」
 ドラコの指摘に小さく笑うアルル。姿形は一緒だがその纏う雰囲気が全く違う物に変化する。
「やっぱりキミでも気付いたかぁ……アルルと親しい人の中じゃ一番楽だと思ったんだけどなぁ」
「お前、誰だ!?」
「ボクはボク。もう一人のアルルかな?」
「なにを言ってる!?」
「ん〜……」
 少しだけ困った顔をしてみせるアルル。
「ちょっとややこしいんだけど、確かにボクとアルルとは違う……けど、ボクもまたアルルなんだよ。
 アルルの人格を受け取った闇の魔力の結晶とでも言うのが一番正しいかな?」
「つまりアルルの偽物で、悪い奴なんだな!?」
「それもちょっと違うよ。まずボクは偽物じゃないの。限りなく本物に近い偽物……今はね。それから
 悪い奴っていうのも一概には合ってると言えないと思うよ。善悪なんてこの世の中で抽象的なものの
 代表格だから、キミには悪に見えても、世の中じゃ善かもしれないじゃない」
「う〜……難しいことは分かんないけど……とにかくお前! アルルは何処だ!?」
「あれ? アルルってキミの敵じゃないの?」
 不思議そうな顔で問い返すアルル。
「敵じゃなくてライバル!」
「ふぅん……難しいんだ。ま、アルルは何処かにいるよ。ボクは今はまだアルルをどうこうしようなん
 て思ってないから」
「??」
「つまり外堀から埋めていくの。で、一番はキミ」
「!?」
 ニッと笑ったアルルにファイティンポーズを取る。
「無駄だよ。キミは格闘家、ボクは魔法使いだから」
「がぁぁお!!!」
 アルルの言葉を無視し、雄叫びというには少し可愛すぎる声を上げながら正拳を突き出す。
「わっ!」
 不意に突っ込んできたドラコの正拳を慌ててかわす。
「がうぅ!!」
 踏み込んだ足を軸足にし、避けた方向へ回し蹴り。そして間髪入れずにもう一段階踏み込みながら回
し蹴りの回転を利用した裏拳。
「うわわわっ!」
 回し蹴りを紙一重でかわし、続けて襲いかかってきた拳を腕をクロスして受け止めながら後ろへ飛び
すさるアルル。
「ドラコ、いきなりなんて非道いよ」
「気安く呼ぶな! 外見はアルルかもしれないけどお前は敵だ!」
 再度構えを取りながら怒鳴る。
「次は外さないぞ!」
 間合いを計りつつゆっくりと呼吸をする。
「がぁぁぁお!!!」
 そして窓の外から差し込む陽光が雲に陰った瞬間、大きく音を立てて床を蹴る。
 今度は先ほどとは違い、拳ではなく右中段回し蹴り。
「わぉ!」
 だがしかし、必殺心を乗せたその蹴りは紙一重で見切られる。
「がうっ! がぁおぉ!!」
 しかしかわされた事を微塵も気にせずに流れるように後ろ回し蹴りに繋げ、独楽の様に回って再度の
回し蹴り。しかし今度は吹き抜けたその蹴り足がいきなり軌道を戻して跳ね上がり、アルルの頭頂部か
ら落ちてくる。
「あぅっ!!」
 三連回し蹴りの後の踵落としはさすがに避けきれず、かろうじて頭への直撃は避けたものの肩口へと
ヒットした。

「っつ〜……」
 ぱっと離れ、肩を押さえて顔をしかめるアルル。
「これ以上やられたくなかったら早く元に戻ってどっかに行っちゃえ!」
「ふふふ……ちょっと甘く見てただけだよ。それじゃあ今度はこっちから行くよ!」
 なんとアルルも軽く足を引きファイティングポーズを取ると、何の前触れも無く床を蹴った。
「くぅっ!!?」
 ドラコの美しい舞いのような攻撃とは違う地を這うような不気味な拳軌、それもドラコよりも少々速
い拳速。

(正体は分からないけど……あの腕なら!)

 軽く素早い打撃攻撃なら避けるよりも受けて密着状態から反撃に転じた方が有利……見た目アルルと
同じ華奢な体付きに、しっかりと足を踏ん張って攻撃を受ける体制を取る。
「っっ!!」
 腕に相手の拳が当たる感触、痛みと打通を気合で弾き飛ばす。
「っがう!!」
 そしてそのまま密着状態になった瞬間を見計らって相手に向かって肘を撃ち込む。

(もらった!)

 カウンター気味で人体の最も硬い部位の一つを撃ち込むのである、ドラコはこの技でよっぽどの怪物
で無い限り倒す自信を持っていた。
「うぐ……」
 事実腹部に肘を受けたアルルは小さくうめいて体を「く」の字に折り、ドラコに倒れ掛かる。
「全く……」
 よっかかってきたアルルを受け止め、大きく息を吐くドラコ。
「この偽アルル、どういうつもりでこんな事してるんだろ?」
「……それは宿命なんだよ」
「!?」
 耳元で聞こえた小さな声、それに気が付きはっとするのと膝の力が抜けるのとほぼ同時だった。
「え……な…?」
 逆にアルルに抱きかかえられるようになりながら疑問符をもらす。

 何故あの技で?
 何故力が入らない?
 何故?何故?何故?

 クエスチョンマークを飛び交わせながら倒れるドラコ。

「あの技はかなり効いたけど、密着してくれて助かったよ。かけたい呪文が接触しないと効果が無くっ
 て……どうやってキミにかけようかって考えてたんだ。ありがと♪」
「な、何の……呪文……」
「さぁ……まだ名前が無いからなんとも言えないんだ。闇の魔力を相手の体内に直接撃ち込むって事だ
 けは確かだけどね」
「うぅぅぅぅ……」
「で、効果はね……」
 言葉を最後まで言わずにドラコの首筋へ舌を這わせる。
「ひゃわっ!?」
 背筋を駆け上がるゾクゾクとした感覚に思わず声をあげるドラコ。
「えへへへ……気持ちいいでしょ?」
 首を甘噛みしながら囁く。
「き、気持ちよくなんか無い! やめろぉ!」
「あれぇ? おっかしぃなぁ……じゃ、もう一回やってみよっか?」
「ひぇぇ……」
「ん〜……」
 自分の発した言葉がどういう結果を招いたかを悟って真っ青になるドラコ。実際は全身が気だるい熱
さに包まれ、さっきの首筋への一舐めも下半身を覚醒させるのに十分な感触があったのだ。
 もっともアルルも当然それを知っている上で二回目をかけようとドラコの胸に両手を置いていたりす
るのだが……
「……え〜いっ☆」
 アルルの掛け声と共にその両手が暗い光に包まれ、その薄暗い塊はスーっとドラコの胸に吸い込まれ
ていく。
「ふぅ……どう?さっきのが駄目みたいだったから、二倍の量を送り込んでみたんだけど……ちょっと
 疲れたけどね♪」
「うぁ…うっ……ぁ……ん……」
 合計で3回分の魔力を詰め込まれたドラコはロクに返事さえ出来ない有様になっていた。僅かでも動
こうものなら全身から熱い波が押し寄せ、息を一つする度に胸の突起から気の遠くなるような快感が襲
いくる。
「あれぇ?」
「………ぅぁ………ぅ………」
 アルルは小さくなったまま息さえ押し殺しているドラコを見下ろしてわざとらしく首を傾げた。
「ドラコ、どうしたの? 凄い汗だねぇ」
 言いつつドラコを仰向けに転がす。
「っあっ! くっ! ひぃっっ!!」
 転がった拍子に全身が衣擦れに襲われて短い悲鳴を上げるドラコ。
 先程まで強烈な破壊力のこもった攻撃を繰り出していた手足は力無く投げ出され、思い出したように
時折痙攣している。
「暑そうだから服脱がしたげる。汗で張り付いて気持ち悪いでしょ?」
「やっ! あっ、ひう!?」
 脇腹の辺りにある留め具を外される刺激で大きく仰け反る。その隙にさっと上着をはだけさせられて
しまった。
「ドラコってさ、実はボクよりも胸がおっきいんだよねぇ」
「〜〜〜〜」
 飾り気のない黒いタンクトップの上から、触れるか触れないかの力加減でドラコの双丘を撫でながら
羨ましげに言うアルルだが、当のドラコは手が触れる度に小さく跳ね、跳ねる度に声にならない空気を
吐き出す。
「んもぉ……何か言ってくれなきゃ面白くないよぉ」
 それを見ながらアルルは、まるで拗ねてるような口振りで……いや本当に拗ねているのかもしれない
が……唇を咎らかせて不平をもらす。
「しょうがないなぁ……少し弱めよっか」
 再度胸へ手を当てて目をつむる。

「…………」
「ひああぁぁ!!?」
 まるで胸に手を突っ込まれたような感触を感じて涙ながらに悲鳴を上げるドラコ。もっとも実際はそ
の様なことがあるわけ無く、ただドラコの胸から黒い何かがアルルの手へと収束し、そして消えた。
「どう? これで少しは喋れるでしょ?」
「ぅくっ……も、もうやめてよぉ……」
「えぇ〜!? 喋れるようになった途端もう泣き言ぉ?」
「うぅぅぅ……」
 アルルの嘲るような言葉に口を閉じ、悔しげに唇を噛む。
「さっきまでの威勢はどうしたんだい?」
「…………」
 確かにさっきまでのドラコならば文句を並べ立てていただろう。
 だがしかし、非常識な快感を操れるというデモンストレーションをされ、その上ドラコ自身こういう
経験はあまり無い。そしてそれはあの快感の果てに自分がどうなるか分からないと言う結論に至る。
 詰まるところこのアルルが……敵が怖いのだ。
「……も、もう……やめてよ……許してよぉ……」
 その想像不能な恐怖に負け、プライドをも捨てていつもの気丈な様子からは全く想像の出来ない涙目
で訴えるドラコ。
「だめだよ。まだキミは完全に負けてないから……完全に精神(こころ)の奥から、根元的な負けを刻
 印してあげるよ」
「ひっっっ!」
 可愛いが、悪魔的な笑みを浮かべるアルルを見てドラコは確信した。

 このアルルは何があってもアルルじゃない!

 そして

 もう逃げられない……

 もう助からない……

 もう私は……

 もう……

「も、や、やめてぇぇ!」
 薄暗い部屋、甘い悲鳴と甘い体臭が充満していた。
「なんで? キミの胸、こんなに固くなってるよ☆」
 部屋に一つだけ有るベットの上で二つの人影が一つに重なって蠢いていた。
 一人は後ろ手に縛られ、魔力によって身動きを封じられたドラコ。もう一人はドラコの上に覆い被さ
り、胸の突起を弄んでいるアルル。
「ほらほら、下着の上からでも摘めちゃうよ♪」
「あひっ! くぁっ! あくぅ!!」
 黒い布地を突き上げるように立ち上がっている乳首を転がされる度にスタッカートの効いた悲鳴を上
げて跳ねる瑞々しい肢体。
「ん〜……でもそろそろ飽きちゃった。次はこっちかな?」
 左手で胸を弄りながら、開いた右手をそそと下ろしていく。
「ひぐっ! 駄目ぇ! そ、あぅ!!」
 乳首をつねられ言葉が途切れる。その間に腰の横にある留め具を外してチャイナドレスの下半分も脱
がしてしまう。
「わはっ☆」
 黒いスパッツに包まれた下半身が露になった瞬間、アルルはもの凄く嬉しそうな声を上げてドラコへ
顔を近付けた。
「……ねぇドラコぉ……これお漏らし?」
「ちっ違……」
「じゃあこれなぁにぃ?」
「……………」
 股間を中心にぐっしょりと濡れ、その半分以上、より濃い黒に染まっているスパッツの状態を問われ
て真っ赤になって沈黙するドラコ。
「こうしたら分かるかな?」
「な? っ!! あひゃああああああ!!!」
 足の付け根をグイッと押され、そこから生まれたショッキングピンクの稲妻にひとたまりもなく達し
てしまう。
 と同時に、僅かな間をおいて黒い布から湧き出すように小水が噴き出した。
「ほぉら、やっぱりお漏らしだぁ」
「ひぎっ、ち、がっ…やぁぁぁ、止ま、ら…ないよぉ!!」
 どうにか押し止めようとするが焦らしに焦らされた末の絶頂で下半身は言うことを効かず、水流に強
弱が付きつつも、しかし止まることなくそれは出続ける。
「……ひっく……うぇっ……えぐ……うっく……ひっく………」
 漏らすことしばし、ゆっくりと量が減り、そして止まったとき、部屋にはドラコの嗚咽が低く響いて
いた。
「別に気にしないでも良いじゃないの」
 そんなドラコに明るくアルルが声を掛ける。
「これからもっと凄いことになるんだから……お漏らしくらいで泣いてちゃ本当に壊れちゃうよ?」
「ひ…ぃ……い…ゃ……ぁ……」
 怖い内容を妙に明るく言う事が、より一層の恐怖感を煽る。
 既にドラコは武闘家としてのドラコではなく、弱々しく首を振り、小さな声で許しを乞う一人の弱々
しい少女としてのドラコでしかなかった。
「だ〜め♪」
「ひっ!」
 にまっと笑って覆い被さってくるアルル。胸に手を置かれて息を呑む。
「はっ……ひっ……くぅ…はぅ!……ひ……ひぃ……」
 ぐにぐにと胸を揉まれ、布越しとはいえ陰裂に指が這う。立て続けに襲い来る快感に涙を流しながら
嬌声を上げる。

「……ねぇ……」
 ふと手を止めて問うアルル。
「キミの尻尾ってさぁ……どうなの?」
「…ふぇ?」
 急に止んだ愛撫、そして意味不明の問いかけ。
 兎にも角にも気が狂いそうな快感が止まってホッとしながら、吐息とも返事とも付かない声をだす。
「さっきからぴょこぴょこ跳ねてさ……気になるんだよね」
 アルルの言うとおり、愛撫をくわえる度に緑色の尻尾がぴこぴこと反応するのである。
「それからさ、羽根も気になるし……」
 ドラコの背中から生えた一対の緑の大きな羽根。相当柔らかいらしく仰向けに転がっていてもあまり
違和感がない。
「よしっ! やってみれば分かるか。もし効果が有れば助かるし♪」
「うぁ?」
 ころんと転がされ、俯せにされてドラコの心に危機感が浮かぶ。
「やぁ……やぁぁ……」
「ほらほら動かない。ん〜……取りあえず……あむっ!」
「ふひゃあはぁァぁ!!!?」
 尻尾の先に噛みつかれてあられももない悲鳴を上げるドラコ。
 普段単なる体の一部として、手や足と同じ程度にしか意識していないし、事実感覚もそうでしかない
尻尾。
 だがその尻尾が、今は気が狂わんばかりの快感を生み出す性感帯としてドラコの精神(こころ)責め苛
んでいた。
「ふえ〜、ひゃんひるんら」
「らめらめらめぇぇぇ!!!」
 尻尾をくわえたまま喋るアルルに、気の遠くなるような快感が生まれて兎にも角にも悲鳴を上げて藻
掻く。
「んっ…ぷふぅ……へぇ……尻尾ってそんなに感じるんだ」
 アルルは尻尾から口を離して面白そうに言った。
「もしかして一人でするときって、これしごいたりくわえたりするの?」
「そ、そんな、こと、しな…い」
 荒い息を吐きながら途切れ途切れに答える。
「ふぅん……こっちは?」
「きゃううぅぅ!!」
 今度は背中の羽根。その付け根に舌を這わされてビクビクと仰け反る。
「わぷっ!!」
 いきなり背中を押しつけられ思わず顔しかめるアルル。
「もぉ……いきなり動かないでよ」
 不平を言うがそれは無理な相談というもの。随意筋で動いたのではなく不随意筋での反射運動に文句
をつけられてもドラコにはどうしようもない。
「キミみたいな勝手な子にはお仕置き!」
「そ、そん、なぁ…」
 言いがかりと言うにも酷い事を言われて弱々しい悲鳴を上げる。
「うっふっふ〜☆」
「あ、だ、だめぇぇ」
 ふにふにと尻尾を優しく揉まれることに逆に恐怖を感じる。
「じゃあ、まず第一のメニューだよ♪」
 それまで揉んでいた尻尾を再度口に含む。そしてそのまま甘噛み、舌で全体をなぞり、口全体を使っ
て先をしごき、両手を使って全体を擦る。
「あああああああああああああああ!!!!!!!!」
 尻尾から湧き起こる膨大な快感の波に一気に頂点へ放り上げられるドラコ。
 今まで何度か自慰はしたことがある。エクスタシーも軽いながら感じたことがある。だがここまでの
高みに上がったことはなかったし、そもそも尻尾がこんなに感じるとは想像だにしたことがなかった。

「んっ……むっ………んちゅ……ふぅ…んふっ……」
「っ!! かっ!! あっ!! かはっ!!」
 アルルの口が小さく動く度、それとは対照的に大きく跳ねるドラコの痩身。
「んふふ♪ ふぁんふぃふぇひゅ?」
「っっっっああああああぁぁぁぁああぁぁぁあぁあぁあ!!!!」
 尻尾を口に含まれたまま喋られ、歯が軽く当たる感触に痙攣しながら悶絶する。
「ん〜………」
 そんな様子を見ながら思案顔をするアルル。
「…………………ん〜…むっ!」
 しばしの間を空け、突如尻尾に歯を立てた。
「っっっっっっっっっっっっっっっっっっ!?!?!?」

 脳味噌の中に太陽を置かれた……

 全くそうとしか言い様のない快感がドラコの脳を直撃した。
 いや、もはや快感という枠を越え、悲鳴どころか呼吸も、果ては心臓さえも止まるかと思う程の衝撃
と化した快楽(けらく)がドラコの精神をぶん殴った。
 そして一瞬の精神の空白……そしてその後凶暴な現実が襲いかかってくる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!」
 大きく大きく、今にも折れそうな位体を反り返らせ、半ば白目を剥いて絶叫するドラコ。
 汗にまみれた身体はビクビクと震え、布越しなのに勢い良く吹き出す淫液、そして盛大な潮吹きが終
わるのとほぼ同時に、残っていた小水がチョロチョロと流れ出る。
「ぎっ……ぁ……あが………」
「あははは♪ すっごいんだねぇ」
 長く激しい絶頂感に翻弄され、ふらふらと布団に倒れ込んだドラコの身体を撫でながら楽しそうに言
うアルル。
「今のでもできたかもしれないなぁ」
 答えることなど出来そうにないドラコ相手に言葉を続ける。
「そもそもボクがキミに何をしたいかって言うとね、キミを洗脳したいんだ」
 身体と共にひくひくと震える尻尾を撫でながら言葉を継ぐ。
「でも幾ら魔法でも万能って訳じゃなくって、洗脳って言うのはそれはそれは難しいんだ」
 聞いているのか定かではないドラコにわざとらしい口調で続ける。
「洗脳するってコトは相手を自分の思うようにしたいわけで、その為には自我が邪魔なんだ。自我があ
 ると当然後天的な強制は弱いわけで……詰まるところ、相手の精神が真っ白けになったところで術を
 かけたいんだよ」
 そこまで言ってニッコリと笑うアルル。
「でね、一番古くからあって確実な方法がこれ。気が狂うほどの快感を与えて真っ白にしちゃうの。別
 に狂ったら狂ったで良いんだし……」
「ぃ……ぁ………ぁぁ………」
 ニッコリと微笑んだその笑顔が悪魔の微笑みに見えたのはドラコの錯覚でも幻覚でもないだろう。

「じゃあそろそろ次に行こっか」
「ぅぅ……ぁぅぅ………」
 尻尾を軽く握られ、先程の気が狂わんばかりの感覚を思い出し、様々な液体でぐちゃぐちゃの顔を必
死で横へ振る……が、当然アルルはソレを無視してドラコへ優しく口付けをする。
「ドラコの顔…ん……すっごく……ちゅっ…可愛い、よ……」
 数え切れない絶頂で涙や涎、汗や鼻水といった体液でぐちゃぐちゃになり、怯えと恐怖が彩りを添え
ているドラコの顔をワザと音を立てながら舐めつつ啄むようなキスを繰り返す。
「……いくよ…」
 耳元で囁き、そして再度尻尾をギュッと握った。
「っっきゃああああああああ!!!!」
 尻尾からの甘激が再開し、その形の良い唇から絶叫を迸らせつつ激しく痙攣するドラコの痩身。
「ほらほら、まだ序の口だよぉ?」
「らめっ!! らめええぇぇぇぇぇぇっっ!! ひがっ! あぎいぃぃぃ!!!!!!」
 強弱を付けて尻尾を握られ、しごかれ、そして時折爪を立てられ、その一つ一つに過剰な反応を返す。
その胸を包む黒いタンクトップは大量の汗を吸ってしっとりと張り付き、意外と豊満な胸とその先端の
痛いほど勃起した尖塔を露に描き出していた。
 また下半身を守るはずのスパッツも汗と愛液、そして先程の失禁のせいでぐっしょりと濡れて股間に
食い込むように張り付き、守るどころか女性のみが持つスリットをくっきりと浮き彫りにして逆に卑猥
に見せていた。
「あはっ☆ ドラコのここすごくえっちぃ♪」
 尻尾の手を緩めず、そんなヌルヌルとした布越しに股間の柔肉をさするアルル。時折ドラコの身体が
激しく痙攣し仰け反るのは、布越しにもぷっくりと見える淫核を引っ掻く指の動きと同じタイミングで
ある。
「ほらほら、すっごく固くてはちきれそうだよぉ? スパッツ越しでも摘めちゃうよ☆」
「もぉらめぇぇぇぇ!! くるっっ! ちゃ、んああぁぁぁぁ!! ひぬぅぅ!!!!」
「狂っちゃうかもしてないけど死なない死なない♪」
「い、くっ…んっ! ああああ!! ふっ! かはっ! あっがっ…ひああああ!!!」
 クリトリスをくじられる度、尻尾をしごかれ引っ掻かれる度、淫裂に指を割り込まされる度、ニプル
を捻られる度……その全てが猛威となってドラコの胸を、腰を、脳を灼き尽くす。
 何回も十何回も何十回も絶頂を繰り返す内、絶頂の感覚がせばまり始め、やがて高みから高みへの綱
渡りとなり、そしてアクメ一色へと変わっていく。

「ひっ! がっ! ぃぎ! ふっ! あひっ! ぉあっ!!」
「そろそろ終わりだね」
 ドラコの悲鳴が、嬌声と言うよりは息の漏れに繋がる音になってきた頃、ふとアルルは呟いた。
 気が遠くなるほどの回数を数えた連続絶頂、半ば白目を剥き緩慢な痙攣しかしなくなったドラコへの
愛撫を続けながら頬へキスする。
「………………」
 キスを繰り返しつつ、人には発音不能な言語を並べていくアルル。
 そしてその呟きが終わる瞬間……
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっっっっっっっっっっ!!!
 !!!!!!!!!」
 もっとも敏感な肉真珠とそれに負けず劣らず敏感に開発された尻尾に目一杯爪を立てられ、ドラコは
絶叫した。
 大きく目を見開き、背骨が折れんばかりに反り返って泡を吹きながら硬直する。そしてスパッツ越し
に勢い良く大量の愛液をしぶかせ、と同時に、ちょろちょろと失禁する。
「あ……ひぃ……ぃひぃぃ……ひっ……ひぐっ……かっ……は…ぃ…け………か……」
 そんな全てを消し飛ばすような絶頂の硬直から解放されると、ドラコは全く意味を成さない(もしか
すると何か意味があったのかもしれないが……)音を切れ切れに吐きながらその身をベットへと沈み込
ませた。

「……ん…………んぅ……」
 朝の穏やかな光を感じてゆっくりと身を起こす。
「ふぁ…ぁ……あ〜…………ぁ、良く寝たぁ!」
 ベットから飛び起きて大きく伸びをする少女。
「さぁっ! サーカスに行かなくっちゃ!!」
 その少女はそう言うとベットから降りて愛用のミニチャイナ服に腕を通す。
 背中の羽を通し、尻尾を服の裾から出して全体を整える。
「よぉっし! アルル! 今度こそ絶対に勝つぞっ!」
 そして鏡の前でグッと拳を握ると元気良く寝室から飛び出して行った。

「……くすっ………」

 主を失い静かになった寝室……その隅に淀む影が一瞬笑ったのは気のせいだろうか……

                                        End……?

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