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7-273様

「血、だぁ…」

 *

原因を知ってしまえばますます動きたくなくなるのが、この時期の女の常というものだ。
寝室はそのままサボり場と貸した。
この時期を乗り切るにはとかく開き直りが肝心だ。ドラコは身をまとう服をすべて脱ぎ捨て、
むき出しの膣の下にシーツと藁を敷き詰めた。血を吸った布と藁は、あとから燃やしてしまう
に限る。一族の女達が古来から慣れ親しんでいる処理方法だ。男は血を穢れといって嫌うから。
ドラコは生理がきつい方で、どれほど処置をしても汚してしまうことが多い。
鈍痛をつとめて気にしないように意識を散らす。以前ウィッチから処方された鎮痛剤を飲み干した。
きつい薬特有の、じっとりした眠気がすぐにおそってきた。夢さえ見ない、深い眠りだった。

「これはこれは。目の保養ですね」

どのくらい眠っていたのだろう。うとうとと意識が浮上しだした頃、耳を打つ知らない男の声で
ドラコは覚醒した。慌てて飛び起きる。寝台の前に優男が一人腰掛け、優雅に足を組んでドラコの
寝姿を鑑賞していた。当然身体には何も身に付けていない。男の目が、足の狭間を図々しく這う。
血でてらてらといやらしく濡れた花弁がシーツを汚す様を、すべて見られているのだ。
理解するとドラコの頬がさっと紅潮した。羞恥よりもただ怒りのために。
「どこから入った!」
がるる、とドラコは不法侵入者に対して威嚇をする。しかし相手は怯えることなく、髪を掻きあげて
薔薇を差し出した。血の色に近い深紅だ。行為よりその色に嫌悪感を覚えて、ドラコは花を振り払う。
「これは失礼。散歩をしていたらこの近くでやけに甘い香りがしたもので」
目覚めてしまったからには長居は無用。退散しますとインキュバスは言った。こうも堂々として
いられると、なにやらこちらが悪いのではないかという錯覚すら覚えてしまいそうだ。
ドラコは困惑気味に呟いた。
「どうして」
「さて…どうしてですかね」
手を取られた。
指に微かに付着していた血痕を舐めとられる。
「あなたの血は甘い」

ドラコは泣きたくなった。

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