no title

7-334様

 目が覚めた。ボクは目を擦って灯りをつける。
時計を見ると丁度午前の一時半を指していた。
そろそろか―――・・・。
 胸が凄くドキドキしてきた。もう何回もやっているのに、落ち着くことが出来ない。
寧ろやるたびに興奮は高まるばかりであった。
 ボクは急いでベッドから降りると隣のベッドの布団を剥がす。
―――やっぱりいない。
隣に寝ているはずのルルーの姿が何処にも見当たらなかった。
ここにいない・・・という事はもう一つしかない。

シェゾがいる部屋。

そこしかないのだった。

 * * *

 最初はボク一人の旅だったんだけど、途中でルルーと会って一緒に行動することになった。
正直いって一番最初に会ったトキの印象は余り良いとは言えなかったんだケド、
付き合っていくうちに段々と彼女に惹かれている自分がいたのであった。
 ボクとは違った透ける様な綺麗な髪に、吸い込まれそうなくらい澄んでいる瞳。
スラリと伸びた足に、一回りも二回りも・・・それ以上大きな胸。更にそれを惹きたてる様かのウエスト。
ボクにはないものだらけで憧れると同時に、それ以上の感情を抱いているのに気付いた。
 そんな魅力的な部分を沢山持っているルルーだけど、それ以上に良いところっていったら・・・とっても一途だったこと。
ルルーはサタンが好きで、叶わない確立の方が多いのにずっとサタンの事を思い続けている。
だからといってボクはサタンに嫉妬などしない。寧ろ感謝しているくらいだ。
当の本人『サタン』は、ボクやカーくんの方に気があるみたいだから。
そういう関係である限り、ルルーの夢は叶うことはない。
そう思うとボクが彼女に恋をしていても、許される気がした。

 ねぇ、ルルー。ボクは一途なキミが好き。
なのになんで―――。

 * * *

 シェゾと行動を共にするようになって一ヶ月が経とうとしていた頃のことだ。
シェゾとルルーは喧嘩ばかりで、目が合っただけでも罵り合っていた。
初めて顔をあわせた時からこんな感じだったから、いつものことだと思っていたけど・・・。
 夜、ボクの習慣である『ルルーの寝顔を見る』を実行しようとして灯りをつけた。
確か深夜の一時くらいだったと思う。ボクは隣の布団をゆっくりと退かした。
しかし見えたのは期待していたものではなく、ただの枕であった。
トイレにいったのかな、と思ったけれどもトイレにも誰もいなかった。
若しかしたらなんか遭ったのかも・・・と、一瞬頭に不安が過ぎりシェゾの部屋へと急いで走って行った。
 ノックをするのも忘れてドアノブを回すとすんなりとドアが開いた。・・・鍵はかけていないみたいだった。
シェゾにしては余りにも警戒心がないのでドアからそーっと、顔を覗かせる。
瞬間、聞き覚えのある女の声が耳に入った。
「―――何するのよっ、変態魔導師・・・!」
「あ゛ぁ?俺は変態じゃないといってるだろうが!」
小さな声ではあったが、街中でいつも交わしている喧嘩の様である。
止めなきゃ・・・と思って顔を全て出すと、信じられない光景が目の前にあった。
「・・・んっ、あぅ・・・そんないきなり・・・っは・・・」
女の甘い声。ボクの目線の先には、後ろで手首を束ねられ裸で横たわっているルルーがいた。
ビックリして急いで顔を引っ込めたが、またゆっくり顔を覗かせた。
 向こうは此方に気付いていないようだ。
どうやら幸い、ドアの前は細い道が少しあるため死角になっている様だった。
 シェゾは上半身裸で、下はズボンを穿いたままだ。
横たわったルルーの身体を一旦起こすと自分の方へ向かせ乳房に舌を這わせていた。
暫くするとそのまま後ろへ押し倒し、痛いと呟いたルルーに熱い口付けを交わす。
ボクはそこから一部始終を眺めていた。
 優しく愛撫する癖に口では乱暴な言葉を吐いたり、シェゾが自分の大きくなったモノをルルーに銜えさせたり、
更にそれをルルーの中に入れたり出したりしてて、暫くすると(声にはなっていなかったケド)叫んで二人で倒れこんでしまった。
一部始終―――ボクのルルーが汚れていくのを、ただ・・・じっと見ていた。
 その日から―――・・・否、その時から・・・股間に何か熱いものを感じるようになった。なんだか不思議な感じ。
あまりにも違和感があるので下着の中に手を突っ込んでみると、ぬるぬるした熱いモノがあふれ出ているのが判った。
ボクは急いで自室へ戻り、トイレへと駆け込んだ。鍵を掛けて便器に座り込んでもう一度股間に手を触れる。
やっぱりぬるぬるしたものが沢山でてきていた。股間がじんじんとする。
とても熱くて、何か恐ろしい病気にかかってしまったんではないかと少し心配になった。
こんなことお医者さんにも話せないからなんとかして治さなきゃ、と必死になったのを覚えてる。
治す方法として溢れてくる部分を指で押さえてみると、今までに味わったことのない衝動が身体全体に走った。
不思議に思って何度もソレを繰り返すと、余計に熱くなってきて止められなくなってきた。
やっぱりボクは病気なんじゃないか・・・
再びそんな不安が頭を過ぎったが指は止まるコトを知らず、ボクは一瞬、頭が真っ白になった。
 この時、ボクは初めてこれが『気持ち良い』ことなのだと、『イった』という感覚ということなのだと知った。
よくよく考えてみれば下半身を刺激するという行為は先程シェゾもやっていた事だし、倒れこんだのもイってしまったからに違いない。
 ボクは濡れてしまった下着を外すと、急いで洗面台で濯ぎ、洗濯をした。
ルルーが帰ってくる前に寝ないと怪しまれるのでいそいで布団に潜り、目を瞑った。
 翌日の朝、ボクが目を覚ますとルルーはもう既に起きていた。
「おはよう〜・・・。あれぇ、ルルー早いねぇ・・・」
「おはよう、アルル。アンタが遅いのよ、まったく」
「そうかな〜?」
「そうよ」
いつもの調子の朝だ。やっぱり深夜の事は気付かなかったみたい。
まともに二人の顔が見れるか心配だったけど、話してみるとそこまで抵抗はなかった。
いつもの日常。
変わったのはボクの習慣が増えたこと。

 * * *

 今日はシェゾと部屋が隣り合わせだから耳を澄ますと声が微かに聞こえた。
余り壁が厚くないので普通の声で喋っていれば筒抜けだ。
部屋が離れていればボクは危険でない範囲で近づき、ルルーの喘ぐ姿を覗きに行く。
隣であれば壁に身体を預け耳を済ませて声を聞く。それが習慣になっていた。
大体行為は深夜で、週に二三回のペースだ。最初の方は二週間に一回くらいだったけど段々と回数が増えていったのだった。
 今日は隣なのでシェゾの部屋の方の壁へもたれかかり、ボクは下着を外した。これは一番最初のときに学習した事だ。
結局あの時の下着は時間が経ち過ぎていた所為でバリバリになってしまい、使えなくなってしまった。
「っは・・・」
ルルーの苦しそうな声が聞こえた。これがボクの行為の始まりの合図。
ボクは段々と熱くなってきた股間に左手を添えると人指し指を手前の突起に触れさせた。
シェゾの声が聞こえない。きっとキスをしているのか、乳房を舐めているのだろう。
ボクはルルーが今、どんな気持ちになっているのか知る為に、右手を自分の服の下から潜り込ませた。
胸は小さいケドきっと感じ方は一緒なんだろうな・・・と思い乳首を捕らえこねくりまわす。
身体が更に熱くなるのが判った。気持ちよさに浸っているとルルーの声が聞こえてきた。
「・・・ね・・・、・・・そこばっかりいじらないで・・・」
「じゃあ何処がいいんだよ」
「下もぉ・・・っあ・・・」
「ここの事か?」
「っふう・・・もっとお・・・」
「エロ女」
「・・・変態の癖・・・んっ・・・っは」
やっぱりさっきのは乳房を舐めていたようだ。二人のやりとりの通り下を弄る。蜜が沢山溢れてきた。
くちゅくちゅといやらしい音が聞こえてくる。これがルルーの音だったらと考えると更に興奮が高まった。
 ルルーのこういう時にしか出さない声が次々と聞こえてくる。普段の彼女からは想像のつかない台詞付きで。
 先にイかないようにじっくりと自分を焦らして時間を稼ぐ。そろそろ挿入の時間の筈だ。
最初と比べて最近前戯の時間が少なくなってきた。それだけ慣れてきたという事だろうか。
その代わりといっては何だが体位を色々楽しんでいるようだった。
「おっきい・・・」
「・・・っう」
シェゾのを刺激してるのかな?
今度はシェゾの喘ぎ声が聞こえてくる。
「ね・・・」
「・・・くぁっ・・・」
「は・・・やく」
さっきより全然甘い声。これがボクのスイッチをオンにしてしまった。
焦らしていた手が暴走したかの様にずぶずぶと奥に侵入しては最初の位置に戻り・・・また入る。
ミシンのように段々と早くなっていく。止まることを知らない手はボクを快楽に溺れさせる。
くちゅくちゅという音から、じゅぶじゅぶと空気を含んだ音に変わっていくのに時間はかからなかった。
同時に隣でもぎしぎしとベッドが軋む音が絶えず聞こえてくる。どうやらシェゾも我慢できなくなってしまったらしい。
 ボクにはシェゾみたいなモノはないから自分も気持ちよくなるってことはないケド、ボクだって知ってる。
女の子かどういう身体をしていて、どういうことをしたら気持ち良くなるってコト。
毎日自分の身体をいじってはルルーの事を考えて研究してるんだもん。
だから・・・ボクにだってシェゾに負けないくらい気持ちよくさせれる自信はあるんだよ?
―――ルルーを気持ちよくさせてあげたい。
そう思った瞬間、ボクは頂点に達した。

 * * *

 瞼を開くと目の前には四角い升目が沢山見えた。・・・天井だった。
先ほどまでの事がよく思い出せない。布団を被ろうとしたら何か引っ掛ったような感じがしたので足元を見ると、ルルーが座っていた。
「あら、おはよう」
「あれ・・・ボク、何してたんだっけ・・・?」
全然記憶にないので目の前にいるルルーに訊ねると「知らないわよ」という返事が返ってきた。まぁ、当たり前か。
ルルーをじっと見ていると彼女は顔を顰め、
「本当に何も覚えてないの?」
と聞いてきた。
「うん・・・」
「あっきれた!本当に・・・何も覚えてないのね?」
本当に思い出せない。ボクはコクリと一度頷いた。
・・・何か悪いことでもしちゃったのかな、ボク。
「ねぇ、ボクなんかしたの?」
「・・・別に・・・何もしてないわよ。覚えてないならいいわ」
なんだかルルーの様子が可笑しい。
もう一度よく考えてみた。
確か―――
「あ・・・」
「・・・思い出したの?」
若しかして・・・いった後そのまま寝ちゃった・・・のかな。ボクは恥ずかしくて頭に血が上るのが凄くよく判った。
「あの―――ボク―――」
「昨日の。聞いちゃったのね・・・」
ルルーもなんだか気まずそうだ。―――今回の件で、若しかしてボク嫌われちゃったのかな?
気持ち悪いって思われちゃったかな。今迄の全部・・・。そう思うと涙がぼろぼろと出てきた。
「ちょっと・・・!アルル・・・」
「ふぇ〜」
涙が止まらない。なんか子供の泣き方みたいだけど、こんな泣き方しか今は出来ない。叫びたい位だ。
ボク嫌われちゃったら―――・・・
「・・・ごめんなさい・・・アルルのこと考えなくて。イヤよね・・・なんか・・・」
「―――・・・っ!ボクの事っ、キ・・ライ、にな・・・ったんじゃ、ない・・の?」
「そんなわけないじゃない!なんでアルルをキライになったりなんかするのよ・・・」
「だって・・・だって・・・」
「こっちこそ・・・イヤな思いさせちゃったみたいで・・・」
「な、んで・・・?」
「だって、アルルは変態のこと好きなんでしょう?」
なんだかルルーはとてつもない勘違いをしているようだった。
違う・・・ボクが本当に好きなのは・・・
「ルルー、だよ」
「え?」
「ボク・・・ルルーが好き、っなんだ・・・よ?」
言った瞬間は得に何も思わなかったけど直後に色々思うことがあった。
気持ち悪いと思われたかもしれない、嫌われたかもしれない、若しルルーがボクを友達としてでも好きでなかったら?
ふと顔をあげ、ルルーの瞳を覗き込んだ。すると

「バカね・・・」

と一言だけ呟いて、静かに笑うだけであった。

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