役者が違います。
7-444様
昼も回った、簡素な宿の一室。
一組の男女は素っ裸でベッドに寝転んで、絡み合うような視線を交わす。
「…わからないわけないわよね…?」
囁く女の声は甘ったるく―――
はない。
「シェゾ…。私が、この私がよりによってあんたなんかに…あんなことされて…どれだけ屈辱だったか…!!」
ルルーは額に青筋を浮かべ、わなわなと拳を震わせて視線で殺す勢いでシェゾを睨みつけていた。
「いやちょ、ちょっと待てよ、落ち着けルルー」
一方のシェゾはと言うと、寝起き一番に頭に一撃食らったショックからまだ抜けきれていないのか、
目を白黒させながらルルーを何とか制止している。
が、それも効果なし。ルルーは目の据わった世にも恐ろしい表情で、シェゾの首根っこをむんずと掴んだ。
「…何か言い残すことはない?」
「いや…ゲホ、オレはてっきり、お前も納得済みだと…」
「どういう事よ」
「ほら、最終的にはしがみついてきたりしてただろう、だから」
「へ?…………あ…」
やがて思い出したのか顔をみるみるうちに朱に染め、頬に両手を当てて叫ぶルルー。
「そ、それとこれとは、は、話が別なのよっ!!」
「……」
その反応のうぶさに、シェゾは思わずニヤニヤしてしまう。
普段のツンケンした態度とのギャップが、からかい甲斐があって実に楽しいのである。口には出さないが。
「…何よっ…そうやって笑ってられんのも、今のうちなんだから…」
と。
「うお!?」
ルルーがいきなり、シェゾの胸を無造作に突き飛ばした。
どさりと倒れ込んだその上に跨がり、むきだしのシェゾの股間におもむろに手を延ばす。
「おま、何やって…」
「…いいから黙ってなさいよ」
無言のまま、ルルーは掴んだ股間をぐいぐいと擦りあげる。
「お、っおい」
シェゾは思わずその刺激に腰を浮かせてルルーの手を避けようと手を伸ばしたが、ルルーはぴしゃりとそれを払う。
ぎゅ、と強く握ってやると、シェゾが苦しいようにうめく。その反応を、ルルーは嫌がっていると解釈したらしい。
にやりと笑い、乱暴ともとれる早さで手を動かす。
そうすると、段々とその体積が増していき、びくびくと波打ち始めたのが手から伝わる感触でわかる。
「こんなにされて気持ちいいわけ?」
吐き捨てるように呟いて、ルルーはつうと液が滴った、その先端を親指でなぞる。
シェゾを見上げると、彼は眉を寄せて息を乱しながら、なおもぐりぐりと先端を弄るルルーを睨みつけていた。
その表情が「このやろう」と言っているように見え、ルルーはほくそ笑む。
見せ付けてやるようにべったりと舌をはりつけて、いきり立ったそれをゆっくりと舐めあげた。
「っは…!!」
シェゾが鋭く息を吐く。
細い手が覆う股間が大きく鼓動を打ったと思った瞬間、白濁した液が散った。
「?!」
まさかもう達すると思わないルルーは、まともに身体でそれを受け止めてしまう。
慌てて手で拭うが、拭いつけるものがあるわけでもなく、余計にぬるぬると身体に広げてしまい顔をしかめた。
しかも何とも言えない臭いもする。
「もー、ちょっと何よ、これえ!」
「は、はぁ、…それは、こっちのセリフだっ…」
シェゾは息を整えながら上半身を起こし、ルルーを真っ正面から見た。
「いきなり、何なんだ、てめえは…!」
「いきなりはそっちでしょ、この早漏っ!」
「そっ…!?くそ、油断してただけだ、うるせーな!!」
「あーもう、そんな事どうだっていいのよ!
どうしてくれんのよ、これ! なんか…ベトベトするし…!」
「馬鹿か」
心底イヤそうなルルーに、シェゾは呆れてため息をつく。
「受け止めるか何かするもんだぜ、普通」
ルルーは暫く納得行かないように憮然としていたが、何かを思いついたのか今度は不敵に笑う。
「…今度はなんだ。見てて飽きない女だな、お前は」
少々嫌な予感を覚えながら、シェゾは心持ち後ずさりながら聞く。
「ふん」
唇を歪めながら顔を傾けるのは、勝利を確信した時の彼女の癖である。
「よっぽど気持ちよかったのね」
どこかふざけた調子の上目使いで覗きこむ。
「だからあんな早くイッちゃったんだ?」
「…てめえなー…」
「舐めなさいよ」
と、ずいと精液に塗れた胸元を彼の眼前に差し出した。
「…はあ?」
「そんな風にぶざまにイッたあんたのせいで、汚れたのよ。舐めて綺麗になさいよ」
「馬鹿か、てめえで…んぐ」
口応えするシェゾに、有無を言わさずルルーが指を突っ込んできた。
先程の、拭おうとして精液に塗れた指である。
ルルーはシェゾの口内に塗りたくるようにして、それを引き抜いた。
「…おえ」
「おいしーい?」
思わずえづくシェゾに、ルルーはいかにも愉しいといった笑顔で尋ねた。
「う、うまいわけねーだろ…」
喋ると唾液が溢れてきてしまうので、そのまま黙りこむシェゾ。
飲み込んでしまおうかという考えも浮かんだが、目の前でほくそ笑むルルーが憎たらしい。
同じ飲むならこっちのがましだ、とシェゾはルルーの腕を引っつかんだ。
いきなりの事に戸惑う隙も与えず、そのまま勢いつけて口づける。
「ん!?!? っ、んんっ…!?」
ルルーの柔らかな唇を舌でこじ開けるのは容易だ。そのまま頭を傾けて精液なんだか唾液なんだかわからないのを流し込む。
ルルーは突然のことに対処しきれず、液体に息を塞がれる感覚に思わずごくんと大きく喉を鳴らした。
「ん!!っぷは…!! っ、ちょっと!! ゲホ、何、すんのよ、飲んじゃったじゃない…!!」
「うまかった?」
シェゾはにっこり笑ってやった。
「そんなわけ、」
涙目で喉を押さえ、怒ろうとするルルーの乳房を、シェゾはそれこそむぎゅうと掴んでやる。
「ひゃ! な、何」
肩を揺らしながら、ルルーはシェゾの手首を掴む。構わずにぐにぐにと手のひら全体を使って揉みしだく。
「ちょ…っ」
「綺麗にして欲しいんだろ?」
絶句するルルー。こう言うダイレクトな接触に弱いことを、シェゾは昨晩の経験で知っていた。
「大人しくしてろよ?」
念を押し、シェゾは手全体で乳房を支えながら、尖らせた舌で先端の周囲をぐるぐるとなぞる。
ルルーは身体をくねらせて何とか逃れようとする。
精液のせいで滑りがよくなっていて、おまけに、既に肌をさらけ出した状態だから、乳首が硬く尖ってくるのがすぐに解ってしまう。それが恥ずかしい。
「ふん、なんだかんだ言ってやる気充分だな」
「や、そん…な…」
、ルルーは身震いしてシェゾの頭に手をかけた。目を逸らしたいのに、なぜかシェゾがその舌で胸をなめ回す光景に釘付けになってしまう。
胸元に散った精液を先端に集めるようにして、舌がべっとりと、何度も緩急をつけて往復していく。
「っ、ぁぅ…」
中身を絞り出すようにして強めに噛んでやると、ルルーはびくりと腰を波打たせて鳴く。
ピンク色の乳首は痛々しく尖っているのに、乳房自体は握りかた次第でマシュマロのように形を変える。
芯でも通っているのかとふと思いついて、シェゾは一旦舌を離し、指を乳房のなかに乳首を沈めるように押し込んだ。
「ん!や、あっ」
ルルーはいっそう熱のこもる嬌声で反応する。
「おーおー、でけえくせにこんな弱くて、どうすんだ?」
「やぁん、どうも、しないもんっ……、ぁあ…!!」
その指を上下に小刻みに揺すると、胸まで合わせてたぷたぷと揺れる。
「はぁ、はあ、ああっ…や、だ、それ、やだぁっ…!!」
シェゾは嫌な笑みのまま、徐々に乳首を押す力を強めていく。
ルルーは身をよじってその刺激から逃れようとするが、気持ちとは裏腹になぜか力が入らない。
「やっ…ひ、ひう…ああ…っ、あっ…!」
与えられる感覚に自然にルルーの腰が浮く。
乳首に身体中の神経が集まっているように、押し潰されるだけで電気のような鋭い快感がルルーを襲う。
「ぃ、やっ、あんっ、いやあ…!」
「なーにが嫌なんだか、気持ちいい癖によ」
「んっ、あ、も…なによぉっ、…の…へんたぃいっ…!!」
「お前が言うセリフか」
のけ反って喘ぎながらも未だに口応えするルルーの耳元へ、シェゾは顔を近づけて囁いた。
くっきり浮き出た鎖骨にゆっくり舌を這わす。
「…、…っ…!」
ルルーは堪らず声にならない震えた息をつき、がくりとくずおれた。
その股の間に、すかさずシェゾが身体を割り入れる。
股間に指を充てて上下に軽くなぞると、ルルーの足の指がぎゅっと丸まった。
「んっ…」
深く指を差し込んでいくほど、ルルーの太股は小さく震え、そのあいだから溢れる液体がシーツを伝っていく。
「…ぁ」
くいと指を折ると、穴がびく、と収縮した。
「あっ…あっ…」
そうやって中を掻くように刺激すると、なお溢れ出てくる液体そのために、赤みがかったそこは淫らに光る。
「…身体は正直だな」
意地悪く言いつつ見ると、いつからなのかルルーの目の端からつうと涙の筋が落ちていた。
「んだよ、泣くなよ」
「…わ、笑って、言っ、てん、じゃ、ないわよ」
ルルーは苦しげに胸を上下させながら、それでも気丈に文句を言った。
シェゾはというと、それこそご満悦、といった表情で言い切る。
「だって、すげえ楽しいもん」
「うぅうー…!!」
悔しそうに唸るルルーに含み笑いしながら、シェゾは静かに覆いかぶさっていった。