鬼畜サタルル

8-390様

「あああああっ、何故だっ、何故なんだああああっ!」
 サタン城には劣るがそれでも広大な敷地を持つ避暑地の別荘の、一番奥にある寝室で、
サタンは頭を抱えてじたばた暴れていた。
 原因は、彼が以前からしつこく執心している魔導士の少女から来た、一通の手紙―――
―正確には、彼自身が出した手紙への、彼女からの返信――――の内容だった。
『サタンへ。せっかく別荘に招待してくれたけど、ごめんね、ボク行けないんだ。ルルー
やドラコと一緒に、南の島バカンスツアーに行く約束をしてるから。誰か別の人を呼んで
あげてください。じゃあね!』
 少女――――アルル・ナジャからの手紙には、それだけのことが簡潔に綴られていた。
「何故、この熱い時期に、尚更熱いところに行こうとするっ!? わたしの別荘の方が、
涼しい場所にある上に冷房完備で、食事も何千万倍も豪華だというのにいいぃぃぃっ! 
なにより、この魔界の貴公子サタン様が誘っているというのにっ! パキスタなんぞが企
画した貧乏臭い旅を優先するなんてっ…………なんて愚かなんだアルル・ナジャっ!!」
 部屋中にところ狭しと並べられた、黄色い生き物を模したぬいぐるみの一つを抱き潰し
つつ、悲痛な叫びを上げる魔界の王。
 そのときだった。
 ピンポォ〜ン♪
『サタン様ぁ〜v ここを開けて下さいませんこと? 貴方様の后候補、ルルーが参りま
してよv』
 聞き覚えのある甘ったるい声が、インターホンから聞こえてくる。
 緩くウェーブのかかった蒼い長髪の、大人びた顔立ちをした美少女が、モニターの中で
上機嫌な笑顔を浮かべていた。狙ってなのかそうでないのか、大きく胸元の開いたドレス
からこぼれ落ちそうな豊かなバストも、画面下方にばっちり映っている。
「いつお前がわたしの后候補になったのだ…………?」
 冷や汗をかいて呟きつつも、居留守を使うわけにもいかず、サタンは彼女を迎え入れる
べく玄関へと歩いていく。
「サタンさまぁ〜! お会いしとうございましたわっ」
 扉を開けた途端、ルルーは喜び勇んでサタンに抱きついてくる。
「いだだだだだっ! わ、わかったから離してくれっ、ルルー!」
 その力の強さに抱き潰されそうになったサタンが、必死に抗議の声を上げる。
「も、申し訳ございませんですわっ」
「ふぅ…………まったく…………」
 間一髪のところで開放されたサタンは、思わず溜め息を吐く。この怪力が、サタンにル
ルーを苦手とさせる所以の一つであった。これさえなければ、彼女の豊満な肉体が密着し
てくるのは、決して悪い気はしないのだが…………。

「それより、何をしにきたのだ、お前たち」
 気を取り直してサタンは、はしゃいだような笑みを崩さないルルーと、その後ろに控え
て複雑そうに眉を顰めているミノタウロスとに交互に眼をやり、尤もな質問をする。
「嫌ですわサタンさま、何をしにきただなんて、無粋な質問…………。あたくし、サタン
様にお会いできるのなら、そのためだけに、例え火の中水の中、地獄の果てまでだって参
りますのよ」
 要するに、ただ会いに来ただけ、と…………回りくどい言い方をするルルーの言葉をそ
う解釈し、再び溜め息を吐くサタン。
「しかし、どうやってこの場所を知ったのだ? ここにわたしの別荘があることは、アル
ルにしか知らせていないはずだが…………大体お前は、そのアルルと南の島バカンスツア
ーへ行く予定のはず…………」
 不思議そうに尋ねるサタンの言葉に、僅かに表情を曇らせるルルー。
「それ、アルルからお聞きになった話ですの…………?」
「あ、ああ、手紙でだがな」
 急に不穏な空気を漂わせるルルーに、サタンは思わず言い訳するような口調で答えてし
まう。
「ここのことは、町で見かけたポスターで知りましたの。サタンさま、メイドのアルバイ
トを探しておいでになってたでしょう? もしよろしければ、あたくしをお使いになって
頂きたいと思いましたの。もちろんお給金なんかは頂きませんことよ。あたくしはサタン
様にお仕えできるだけで、十分に幸せですから…………v」
「ああ、そういえば…………」
 ルルーの説明を聞き、サタンは、確かに自分がアルバイト募集をかけていたことを思い
出す。サタン城の優秀な掃除係であり、この別荘の管理役にさせようと思っていたキキー
モラが、先日新しいバイト先を見つけて辞めてしまったので、その代わりを慌てて探して
いたのだった。
「南の島バカンスツアーは、このためにキャンセル致しましたわ」
「そうか…………」
 笑顔で言うルルーの言葉に、サタンは複雑な思いを抱く。
 片や、丁寧に招待しても先約があるといってすげなく断る思い人。片や、呼ばれもしな
いのに、その先約を断ってまでタダ働きをしに来る目の前の少女――――。
 逆だったならどんなに嬉しいか、と思うと、泣けてくる魔界の貴公子であった。

「それで、しばらくここに置いて頂けないかと思いまして…………」
 上目遣いでサタンの顔色を窺いながら、猫なで声で言うルルー。改めて見てみると、後
ろに控えるミノタウロスは、このお嬢様が数日どころか何ヶ月も定住できそうなほどの大
荷物を抱えている。
 やばい。ここで首を縦に振ったら、何日居座られるかわかったものではない。
 それに、ルルーと二人で(正確に言えばミノタウロスもいるが)別荘で過ごしていると
アルルが知れば、あらぬ誤解を受けてしまうかもしれない。
 そう考えたサタンは、慌てて断る理由を探す。
「いや、しかし…………魔界の貴公子たるもの、使用人をタダ働きさせるわけにはいかん
のだ。それに、お前のような箱入り娘に、メイドの仕事が務まるとは思えん。諦めて帰る
がいい」
 多少きつい言い方だが、その方が効果的だろうと思い、わざと素っ気なく言うサタン。
 しかし、ルルーは諦めなかった。
「そう仰ると思って、あたくし、家事の練習はたっくさんしてきましたの! お給金に見
合うだけの働きだって、できるはずですわ。いいえ、やってみせますわっ! ですから、
お願いしますの!」
 両手を組み、瞳を潤ませながら詰め寄るルルー。
 こうなってはテコでも動くまい…………と、今までの経験から悟るサタン。と同時に、
逆にこの状況を利用して、彼女が二度と自分に近付かないように仕向けようか、という考
えも生まれていた。
 サタンは、多少の苦手意識はあれど、ルルーのことは決して嫌いではない。こうまで一
途に思われれば、やはり可愛いとは思うし、何よりその豊満で官能的な肉体と美貌は、数
多の美女を見慣れたサタンにも十分に魅力的に思えるものだ。
 しかし、ルルーの存在が、アルルとの関係を進展させる上で、大きな障害になっている
ことも明らかだった。
 アルルにはどうも、彼女に気を遣って、サタンに素っ気ない態度を取る傾向が見受けら
れるのだ。無論それ以前に、元よりアルルがサタンに特別興味を持っていないことが何よ
りの原因ではあるのだが…………それは置いておく。
 どうにかしてルルーに自分を諦めさせることはできないか、と思い、自分のアルルへの
気持ちが他に動きようもないほど強いことを、何度も言い聞かせてきてはいるのだが……
……それでも、彼女は決して諦めず、一途にサタンを追いかけ続けるのだった。
 普通に遠ざけて諦めてくれないのなら、いっそしばらく側に置いて、逆に嫌われるよう
に振る舞った方がいいのかもしれない、とサタンは考えた。
 下手に格好良く遠ざけようとするから、余計に気持ちを煽ってしまうのだ。メイドとし
てここに滞在させ、その間、鬼姑も真っ青なほどイビり抜くなりなんなりすれば、やがて
嫌になって自分から出て行くかもしれない。

 そう判断したサタンは、やおら厳しい表情を作ると、ルルーに向かって言い放つ。
「そこまで言うのなら仕方ない。ここに置いてやってもいいだろう。ただし、ここでわた
しに仕えると決めた以上、わたしの命令には絶対服従してもらうぞ。それが嫌なら、即刻
ここを出て行くがいい」
 しかし、言い方はどうあれ承諾の言葉を受けたルルーは、途端に顔を輝かせる。
「嬉しいですわ、サタンさまっ。あたくしがサタンさまの命令に背くなんてこと、あるわ
けございませんことよ。どうぞ、何なりとお申し付け下さいませっv」
 本気で嬉しそうな表情で言うルルーに、サタンは思わず苦笑を浮かべかけるが、慌てて
再び厳めしい顔を作る。
「それなら、ミノタウロスは帰らせろ。従者付きのメイドなど聞いたことがない。それに、
わたしの屋敷にお前の荷物をぞろぞろ持ち込むな。一緒に全て持ち帰って貰うぞ」
「えっ? で、でも、着替えとかはどうしたら…………」
 さすがにこれには驚き、控えめな抗議の声を上げるルルー。
「着る物も、わたしが用意したものだけ着てもらうから、着替えはいらん。下着も含めて
な。嫌ならば、お前も今すぐ帰るがいい」
 『下着も含めて』という部分で頬を赤らめるルルーだが、最後の言葉を聞いて、慌てて
ミノタウロスの方に向き直る。
「あなたは帰りなさい、ミノ。この荷物も、全部持って帰るのよ」
「ええっ!? そ、そりゃないですよルルー様っ! それに、私がいなくて本当にやって
いけるんですか!? やっぱり、ルルー様もここで帰った方がいいんじゃ…………」
 不満と心配の入り交じった声で抗議するミノタウロス。ルルーは一瞬言葉に詰まりかけ
るが、すぐにキッと鋭い目つきになり、忠実な僕に命令を下す。
「私が帰れと言っているの! つべこべ言わず、さっさとお行きなさいっ!!」
 きっぱりと言い放たれた哀れなミノタウロスは、主人の姿を何度も心配そうに振り返り
ながら、大荷物を抱えて屋敷を後にした。
「……………………」
 その後ろ姿を見送るルルーは、従者の影が段々と小さくなるにつれ、流石に不安そうな
表情になっていく。
「後を追いたければ、追って行ってもいいのだぞ」
 サタンが後ろからそう声をかけると、ルルーは我に返ったようにピクリと反応し、慌て
た様子で振り返って笑顔を見せる。
「そ、そんなわけありませんわっ。サタンさま、どうぞこれからしばらく、よろしくお願
い致します」
 言ってルルーは、無自覚なのか確信犯なのか、ドレスから胸の谷間を思いっきり覗かせ
つつ、深々と会釈した。

 サタンが着の身着のままのルルーに宛った部屋は、この別荘の中でも一番小さい、物置
きにでも使おうと思っていた部屋だった。といっても、普通の民家の基準で言えばそうそ
う狭くも汚くもない部屋である。しかし、魔界の王であるサタンや、深窓の令嬢であるル
ルーからしてみれば、十分窮屈で粗末な部屋ではあった。
 しかし、ルルーはやはり不平など言わず、素直にその部屋に腰を落ち着けた。お嬢様育
ちの割に、結構な根性である。やはり、それだけサタンを一途に想っているということな
のだろう。
 それを考えると、これからしようとしていることに罪悪感を覚えないでもなかったが…
………逆に、徹底的にやらねば彼女を幻滅させることはできない、と悟りもした。
 サタンは、物置部屋にルルーを待たせて、そこからドア三つ分ほど離れた自室に戻り、
魔導力を使って即席で彼女に着せるメイド服を作った。
 キキーモラが残していった服をベースに、彼女とは全く違うルルーの体型に合うように
作り替え、更に『メイドいびり』のために必要な細工も色々と施したため、かなりの改造
を加えることとなった。しかし、魔界の王の力をもってすれば(思いっきり無駄遣いだが)
大した時間もかからず、サタン的には最高の出来のものが仕上がった。
 出来上がった服を一式、白い箱に入れると、サタンはルルーを部屋に呼びつけ、その箱
を渡した。
「これが、とりあえず今日一日お前が身に付ける服だ。替えはまた後で作ってやる。さっ
きも言ったとおり、ここではわたしが用意したものだけ身に付けてもらうぞ。今着ている
物は全て脱ぎ、この中の物は必ず全て身に付けろ。よいな?」
「はい……………………」
 妙にねちっこい言い回しに気恥ずかしさを覚えたのか、落ち着かなさげに頬を赤らめる
ルルー。しかし、箱を受け取ると、心底嬉しそうに顔を綻ばせた。
「サタン様が、あたくしのためにわざわざ用意して下さいましたのね…………」
 はにかむような笑みを浮かべて箱を抱きしめる純情な姿に、中身がどんなものか知って
いるサタンは、ちょっと、というか、かなり罪悪感を覚える。と同時に、中身を見た後で
この表情がどう変わるのかを想像すると、嗜虐的な快感を密かに覚えてしまうサタンでも
あった。
「着替え終わったら、もう一度ここに挨拶に来るがいい。仕事はそれから初めてもらう」
「わかりましたわ。それでは、着て参りますわねっv」
 箱を手に、嬉々とした表情で宛われた部屋へと戻っていくルルー。

 自室に引っ込んだ後、彼女は…………そのままかなりの時間、サタンの部屋に戻ってこ
なかった。
 確かに、『ちゃんと』身に付けようと思えば、それだけでかなり時間のかかるものでは
あるのだが…………それ以前に、気持ちの上での抵抗が大きく、なかなか着替えが進まな
いのだろう。
 一時間以上は経った頃、ようやく、控えめなノックの音がサタンの部屋に響いた。
「入れ」
 ソファに身を預けて彼女を待っていたサタンは、わざと素っ気なく返事をする。躊躇う
ような間があった後、ドアは静かに開いた。
「し…………失礼します…………」
 真っ赤に頬を紅潮させたルルーが、普段あれほど堂々と見せつけている豊かな胸を、ド
アノブを握っていない方の手で必死に隠し、恐る恐る部屋に入ってくる。
 ルルーの身に付けている『メイド服』は、キキーモラが着ていたときの詰め襟状のもの
とは違い、胸元――――どころか、乳房全体がはみ出てしまうほど大きく前が開いている
という、奇妙なデザインになっていた。普通の服なら襟ぐりにあたる部分が、乳房の下側
の付け根に沿うように、ばっくりと開いてしまっているのである。脇と背中の部分に残さ
れた布地に繋がって、肩口からはきちんと桃燈袖が付いている辺りが、余計に倒錯的な印
象を与える。
 なくなった詰め襟の代わりに、首には赤いチョーカーが巻かれていた。その前側の中心
部から、細い鎖が逆Y字型に伸び、先端にはそれぞれ、小さな白いバラを模したコサージ
ュのような飾りが付いている。チョーカーの飾りにしてはその鎖は妙に長く、剥き出しの
胸の上に垂らされて揺れている様子が、酷く卑猥に見えた。
 上半身がそのような状態なので、自ずとエプロンは下側のみに付くことになるのだが、
その下のスカートも、相当短かった。程良い肉感を持つ官能的な太股が完全に露わなのは
勿論のこと、これでほんの少し屈みでもすれば、後ろからは下着まで丸見えになってしま
うだろう長さである。
 純情なうら若い乙女なら、これを着せられただけでも、相当精神的なダメージを喰らう
に違いなかった。というか、普通にアルバイトに着た女の子なら、着る以前に、服を見た
瞬間に激怒して帰りそうなものである。
 それをここまできちんと身に付け、更に言いつけ通りにサタンに見せに来るのだから、
彼女の一途さは、改めて相当なものだと思わされる。

 部屋に入り、そそくさとドアを閉めたルルーは、自由になった両手を使って再び胸を隠
し直す。しかし、両腕でも隠しきれないほど大きく柔らかそうな胸が、ぎゅっと押し潰さ
れて形を歪めている様は、寧ろかなり卑猥だった。
 もじもじと所在なげに体をくねらす様子が、かなり情欲をそそる。普段から大胆な服装
を好んでしているルルーでも、流石にこの格好は相当恥ずかしいらしく、目尻には涙さえ
滲んでいた。
 そんなルルーを、サタンは更に追い詰め始めた。
「主人の前で、いつまでそのような無礼なことをしているつもりだ? 早くその両手を下
げて、きちんと真っ直ぐに立て」
「…………っ……! はいっ…………」
 容赦のない辱めにビクリと体を震わせながらも、消え入りそうな声で返事をすると、ル
ルーは両手を胸から外し、体の横にぴったりつけて、必死に背筋を伸ばす。
 両腕の支えを失った乳房がぷるんといやらしく揺れ、その先端の突起が、外気と男の無
遠慮な視線に晒されて、ぷっくりと勃ち上がる。
「くくっ…………なかなか似合っているではないか」
「…………あ、ありがとうございます……………………」
 意地悪く笑いながらのサタンの賞賛に、固く眼を瞑り、羞恥を必死に堪えたか細い声で
答えるルルー。
「しかし、着方が少々間違っているようだな…………きちんと着れば、そんなに胸が丸見
えにはならないはずなのだが」
「えぇ!?」
 予想だにしなかっただろうサタンの言葉に、ルルーはただでさえ紅潮していた顔を更に
真っ赤に染めて、驚きの声を上げる。図らずも自分が、サタンの意図しないほどに余計に
肌を露出してしまっていたのなら、恥ずかしくてたまらない――――恐らくは、そんな心
境なのだろう。
 サタンは含み笑いを浮かべながらソファから立ち上がると、戸惑うルルーにツカツカと
歩み寄っていく。僅かに怯えた様子すら見せるルルーの眼前まで来ると、サタンは、唐突
にその胸を鷲掴み、硬く尖った乳首を指先で捻り上げた。
「ぁんっ!」
 電撃を受けたかのようにルルーの体が大きく痙攣し、嬌声が上がる。
「ここを隠すものを、ちゃんと用意してやっていたのだがな…………そんなにお前のいや
らしい乳首を、わたしに見せつけたかったのか?」
「やっ…………はぁぁん…………ちがっ、あんっ、ああぁ…………!」
 指先で敏感な突起をこね回されながら言葉責めされ、頭を振って身悶えるルルー。

「随分と悦んでいるようだな。これはもっと気に入るのではないか?」
 言いながらサタンが手に取ったのは、チョーカーから垂れる鎖の先端に付いたバラの飾
りだった。
「これは、こうして使うものなのだ」
 サタンは空いた方の手でルルーの片方の乳房を掴み、その先端を前方に突き出させると、
痛いほど硬くなった乳首に、バラ飾りの裏側を押しつける。
「んぁあっ!」
 途端に、ルルーが一際高い声を上げて悶える。
「あんっ、あっ、あぁっ…………」
 バラ飾りは、サタンの手を離れてもルルーの乳首を捉えたままだった。鎖を軽く引かれ
る度に、ルルーは甘い声を上げる。
 実は、この飾りの裏側には、小指の先ほどの大きさの、最下級の淫魔が魔力で貼り付い
ている。この淫魔は殆ど口しか持っていない生き物で、女性の性感帯に吸い付いてひたす
ら快楽を与え続ける習性があり、魔族の女性の性玩具としてよく使われていた。
「あんっ、やあっ…………ああぁっ…………」
 鎖が強く引っ張られ、空いている方の突起にも、もう一つの飾りが押しつけられる。
「ほら、こうすれば、ちゃんと乳首が隠れるだろう?」
「やっ、ああっ、そんな…………」
 からかうように口端を歪めながら言うサタンに、ルルーは両の乳首を淫魔に吸われる感
覚に喘ぎながら、いやいやをするように頭を振る。それに合わせて鎖と乳房が左右に揺れ、
その刺激にルルーは更に身を震わせる。
 二つの飾りの間を繋ぐ鎖は、両の乳房を自然な位置に保つには些か短かすぎ、余裕なく
ピンと張って、左右の乳首を中心に寄るように引っ張っていた。加えて、チョーカーに繋
がる縦の鎖の長さも足りないため、ルルーの乳首は、その豊穣な乳房の重みの分だけ、上
からも中心からも引っ張られている状態になる。
 そして、それに抵抗しようと喰らいついてくる淫魔に、その分だけ強く乳首を吸われる
のである。
「あぁっ…………はっ、あんっ…………はぁっ…………」
 絶え間なく襲ってくる快感に、ルルーは切ない喘ぎを洩らし続けた。快楽にたまらず身
を捩れば、その動きで乳房が揺すられて、敏感な箇所がますます強く刺激される。
「どうだ、お前の持ってきた下着などより、余程いいだろう」
「あっ! あぁあっ! やっ、あんっ、サタンさまぁ…………!」
 張りつめた鎖を、サタンが更に指で強く弾いてやると、ルルーが嬌声を上げ、いやらし
く腰をくねらせる。下着に染み込みきらなかった愛液がひと筋、内股を滑り落ち、膝まで
伝っていくのが見えた。

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