サタン編

7-273様

サタンは自室の窓枠に手をかけ、去ってゆく少女の背中を眺めていた。眼差しはいつも以上に茫洋と
している。
まだ身体を離してから半刻も経ってはいないというのに、もうあの小柄な肢体が恋しかった。願わくば
気分が悪くなったなんて理由で引き返してこないものか。卑劣なことを思って眼差しを眇める。
むしろ帰れなくすることすら狙って手加減せずに抱いた側面は勿論、あった。否定はすまい。
一人寝が寂しいだけなら、同衾してくれる女はいくらでもいる。だが満たされないのは心だ。
育ちきらない肉体と心をためらいがちに開いて、狭い膣にペニスを突き入れられながらむせびなくあの
少女こそが自分には必要なのだ。
アルルはセックスで感じられないという。サタンはその意味するところをほぼ正確に掴んでいた。アルル
の身体は敏感すぎる。
拓かれてまだ日の浅い其処は、僅かな身じろぎさえも感じ取って快楽に変える。強烈すぎる感覚は苦痛と
常に紙一重だ。思い返すと痛々しさを覚えるが、何しろ最中は頭に血が上っているのであまり労わる気
にはならない。
正直に告白すると、“ただ欲望のままに律動し果てる”という牡の本能を、まだ己が維持していたことに
サタンは新鮮な驚きを覚えていた。
春だ。どうしようもなく遅咲きの、春だ。

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