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 一度挿入しようとしたが、アルルはほんの僅かのところで泣きを入れた。シェゾはいったん芯を引き抜き、押し倒した体勢から少しだけ起き上がる。

「──知ってるか?」

 中断したのは親切心からではない。耳元に囁くのは、もちろん苛めるための言葉。いや、「可愛がる」が正しいか。

「この先はもっとひどくなる」

「!! やっ……やだっ……やだぁぁぁっ」

 怯えきっている彼女に、欲情で気が遠くなる。ますます歯止めが利かなくなり、アルルの腰を引き寄せた。片手の指で侵入し、内部でゆっくりと前後させる。

「は、あ、あぅっ! ひぅん! ひぃあっ……ひゃぅ! ……はっ……あ……!」

 何度か繰り返すと、彼女は次第にぐったりしてきた。それでも、シェゾが瞳を覗き込むと、同じ言葉を繰り返すのだ。

「おねがい……やめっ……」

 笑みを浮かべたまま、聞き流す。

 泣き顔が見たい、と強く思った。支配され、貫かれながら、シェゾを見つめる瞬間の表情を。

「ふっ……ひっく……、!? ん、うっ…………っ!」

 うるさい唇を呼吸ごと塞ぎ、彼女の両腕を片手で掴む。アルルの力など抵抗にもならないが、そうすることには意味があった。抵抗の術をすべて奪って、震える身体を蹂躙するのだ。お前は獲物だとわからせてやるため。

「……ッ!」

 中を軽く掻き回すと、アルルは身を捩って吐息を漏らした。その声が聴きたくて、シェゾは意図的に唇を離す。

「はぁんっ……は、あ、あぅっ! ひぅん!」

 ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゃッ……

「ひぃあっ……ひゃぅ! やぁぁぁっ……!!」

 花びらや蕾を舐めてやる。指で、舌で。もっともっといい声で鳴かせるために。攻めて、攻めて、視界を涙で埋め尽くし、その先に自分しか見えないように。

「いやぁぁっ! あっ、や……ひぅっ! ふぅぅんっ!!」

「そろそろか」

 呟いて指を引き抜いた直後、もう一度押し入り、蕾を思いきり掘り起こす。

 ぐちゅり。

 濡れた音と共に、一際高い鳴き声が響いた。

「やああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

 虚空へ向かってそう叫び、夢中で涙を溢れさせている。聞く者など誰も居ないのに。

「ひッ……ぁ、ぁんっ! ……ふ……ぁぅッ!」

 息すら侭ならないほど、アルルはシェゾしか感じていない。それが言いようのない愉悦をもたらし、彼は追撃の手を激しくする。

「や……! あ! はん! はぁっ……ひぅぅぅぅぅぅ!! ひぁッ!」

 もう一度。もう一度。もう一度。もう一度、何度でも。執拗に刺激されて、蕾は震えながらどんどん濡れてゆく。アルルが身体中で感じている証拠だ。その痙攣がおさまらぬうちに、固くなった自分自身をシェゾは今度こそ挿入していった。

「っ! やあああ……!!!」

 アルルが涙声で悲鳴を上げる。押しのけようとする手に指を絡め、シェゾはしっかりと握り締める。

「甘いぜ。これからだ」

 優しくするつもりなどない。何度でも喘いで、身体中で思い知るといい。

「ひゃっ……あぁん!」

 抵抗すら心地よく感じながら、シェゾはアルルを犯してゆく。胸の先を舐めたかと思うと、今度は軽く噛み付いて刺激した。

「いや……っ!」

 彼女は目の淵に涙を溜めて、喘ぎながら攻められるがままだ。なんとかして逃れようとする身体を、片腕で押さえて自由を奪った。それが彼女の全力の抵抗であることが、シェゾは可笑しくて仕方がない。

「その声。もっと聞かせろよ……」

「ひっく……もぅ……シェ……はぁん! ひぁ……ぁんっ!! きらいぃぃっ……」

「……。何か言ったか」

 少しずつ入っていくつもりだったが、「嫌い」の言葉に意地悪な気分になる。シェゾは押し入った芯をわずかに引き抜き、一度下がってから急速に「貫きなおした」。

「っ!? ああああああああああッ!!」

 衝撃のあまり硬直し、何が起こったのか分からない彼女。これからする仕打ちを思い、シェゾは心中でにやりと笑った。そのままどんどん沈めてゆく。

「や、あ、あ、嫌あああああっ!! 助け……!」

 目から涙が溢れ出てくる。両手に悲痛な力がこもる。シェゾはそれを握り締めて、押さえつけたままアルルを犯す。

「……俺が嫌いなんだろう? いい度胸だ」

 そうしてアルルを貫いたまま、泉を出たり入ったりする。乱暴な嵐で水が溢れた。

「あ、ふぅぅん! ひゃう……!! ひぁっ……はぅ、いやぁぁっ……!!」

 最奥まで容赦なく押し込んでやると、アルルが泣きじゃくって悲鳴を上げた。そのまま意識が遠のくのに気づいて、腰を引いてもう一度突き刺す。

「はぁんッ……! ひ、あ、あ、あああああああッ!」

「そう簡単には寝かせない」

「ひぅんっ!! やぁぁぁっ……や、あ、やだ……っ」

 無垢なその瞳から、怯えきった涙が流れる。だから囁く。いっそ優しいとすら言えるほどの、彼にしては破格の穏やかな声音で。

「壊してやるから、イイ声で鳴けよ?」

 その残酷な宣告は、結局アルルには届かなかった。深く鋭い攻撃が、彼女から全てを奪ったからだ。

「あ、いや……ひぁぁぁんっ!!!! ふ、あっ……や、やめ……はんっ!」

 散々に苛められて泣いているくせに、それでもどこか甘えるような声。それがやたらと扇情的で、シェゾは動きを激しくする。やめるつもりなど欠片もなかった。ひとたび侵入を許してしまえば、内部は無防備な果実のようなもの。貪り尽くすのは造作もないことだ。

「いやあああああっ!! やっ……あ、ああああああああああああああッッ……!!」

 敏感な蕾の更に奥、砦の中に注ぎ込まれた熱に、アルルは為す術もなく気を失う。

「──」

 数瞬の間の後、ふぅ、と息をついて、シェゾは力の抜けたその身体を引き寄せた。

 正直なところ、こちらとしてはまだまだ苛めてやりたい。苛めて苛めて苛め抜いて、それでもまだ足りないくらいだというのに。


 その、数時間後。

「は……あっ……」

 荒い息をついて、アルルは泣きながらシェゾを睨もうとした。身体には力が入らないし、メロメロにされているので迫力などほとんどない。

「災難だったな」

 シェゾは素知らぬ顔でキスをして、口を塞いだままもう一度貫く。アルルはびくりと身体を震わす。悲鳴も呼吸も塞がれていて、ますます涙が流れてきた。彼女はそろそろ学習するべきだ──その表情こそが彼を刺激するのだと。

 頃合を見計らい、シェゾは唇を離してやる。しかし内部への攻撃はやめない。逃れられるわけがなかった。

「はっ……あ、あっ! ふ……ひゃぅ! いやぁぁんっ!」

 容赦なく攻めるのは常套手段。耐えられずに喘ぐアルルが可愛い。

「あぅ! はぁんっ! ふっ……ひぁぁぁぁっ!! や……いや、嫌ぁぁぁっ!!」

「知るか」

「はぁんっ! や、あっ……やぁぁん……っ………………」

 何度も苛め抜いたせいで、アルルはまた意識を手放した。けれど。

「起きろ」

「!! あっ……いやぁぁぁぁっ!!」

 彼女を求めて。執拗に求めて、もう一度深く貫いた。その中に熱い欲望を吐き出す。

「ひぁ……ッ、ぁ、ぁ、あああああああああああああッッ……!」

 くたっ。

 アルルが完全に力を失った。まだだ、とシェゾは呟き、更に犯して目覚めさせる。この程度では苛め足りない。

「あんっ! は……ひぅんっ……!!!」

 五回。荒々しく貫く激情は、彼女を傷つける欲望の刃だ。

「や……いやっ、はぁぁんっ!」

 十回。強く強く、すべてを打ち込む。彼女が決して溢さぬように。

「いやぁぁっ……あんっ! ふぁっ……ひゃんん! は、あ、ひゃぅっっ!!」

 二十回。犯し続けるつもりだった。アルルが力尽きるまで。

「……っ、はぁっ……、、ひぃんっ! ……、……っ…………」

 三十回。奪い尽くす。蹂躙する。彼女の全てを。

 アルルが息継ぎすらできなくなった頃、シェゾはようやく彼女を眠らせた。

(……やりすぎた)

 可愛すぎて止まらなかった。苛めたときの鳴き声が聴きたくて。何度でも、何度でも聴きたくて。自分のケダモノっぷりに呆れながらも、やめることだけは絶対にしない。

(ちっ……。俺の方が、よほど中毒か)

 その悔しさをぶつけるように、アルルの身体を可愛がってやったのだ。自分ばかりが夢中にさせられるとは、不公平というもの。

「お前はずっと、俺で溺れてろ」

 その言葉は、アルルには届かない。だが、構わない。何度でも身体に刻んでやるから。そう思って、シェゾは笑った。今までにないほど優しく、アルルの身体を引き寄せて。そして抱き締めて、シェゾも眠った。

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