no title

9-114様

「よ〜しっ、これで完成〜!」
「ぐ〜!」
ピンクの包装紙でラッピングした箱に、チェックの赤のリボンをキュッと結ぶ。
箱の中身はチョコレート。そう、明日はバレンタインデー。いやすでに明け方になっているから今日になる。
日頃お世話になっている人に、感謝の気持ちを込めてチョコをプレゼントしようと手作りしていたら、
いつの間にか一晩越してしまっていた。
ふぅっと一息つくが、ここからが本番だ。
「よいしょっと」
友人知人の多いアルル、大量のチョコを持ち歩く為、用意したでっかい袋はパンパンになった。
白い袋を肩に担ぐ姿は、さながら季節外れのサンタさん。
ソリは引いてくれないけど可愛いお供のカーバンクルと共に、アルルのチョコレート配りの旅が始まった。

「あ、おーいドラコ〜」
「アルル。何その荷物?」
「今日バレンタインでしょ?はい!いつもありがとうね、のチョコプレゼント!」
「あたしに?…ありがとう、何か嬉しいね」
「えへへ、よかったぁ」

「アルル?お前何担いでんだ?」
「シェゾ。会えてよかった〜これバレンタインのチョコ、よかったら貰って?」
「…そんなくだらないイベントに乗っかりやがって。まぁくれるって言うなら、しかたなく貰ってやるけどな」

「ウィッチ〜、チョコあげる」
「まあまあまあまあ……ちゃんと食べれるんですの?」
「失礼なっ!」

広いようで狭いコミュニティー。アルルがチョコを配っていると話が広まり、気になる者は
アルルを探し、しっかりチョコを戴いていく。
今日中に全部配りきれないかもしれないと思っていたが、そんなお調子者達のお陰で
意外とスムーズにチョコはさばけていった。みるみるうちに袋の中はスカスカになり、
バレンタインのチョコレートも残り後一つとなった。
闇の貴公子ことサタンの分だ。しかしこの男がどこを探しても見つからない。


「もぉ〜どうでもいいときはいつも現れて、会いたいときに会えないってなんなんだよ〜」
はぁ〜とため息が漏れる。昨日の夜から寝ていないから、さすがにアルルも疲れてきた。
「ぐ〜」
「カーくんも疲れた?チョコ作りから付き合ってくれたんだもんね。肩の上で寝ていいよ?」
「ぐ〜!」
ピョン、と飛び乗ったのは袋を担いでいる肩。大きな入り口をゴソゴソして袋の中にに入っていった。
「袋の中がいいの?苦しくなったら出ておいでよ」
「ぐ〜!」

さて、これからどうしよう。もうお日様も沈みかけて、茜色の空が闇の到来を予感させる。
暗くなるとこの辺りも危険だ。分からないまま探すよりも、もう一度お城に行こう。
それで駄目なら明日渡そう。そう決めた矢先、アルルは遠くから自分を呼ぶ声を耳にする。
「……ル…」
「ん?」
「アルル〜!!」
「サタン」
夕日を背にハァハァ息を切らせてサタンが駆けてきた。
「チョ……チョコ…アルルがチョコを渡していると聞いて…探していた。私にもくれないだろうか?」
実はサタンもチョコ配布情報を耳にしアルルを探していた。
ただ普段の行いが悪いせいか、見事にすれ違いを起こしていたのだ。何はともあれ、こうして二人は出会えた。
アルルも自分のチョコを求めて探してくれていたと聞けば、嫌な気持ちはしない。
「サタンの分もあるけど……でも勘違いしないでよっ!別にキミのこと、ス、スキ…だとか、
 お世話になってるとかないけど、みんなにあげたしついでにだからね!」
「それでもよい!アルルからチョコを貰えるならそれだけで幸せだ」
目をキラキラ輝かせるサタンに少しホッとしながら、アルルは袋の中から箱を取り出す。
「はいっ、ホワイトデーは三倍返ししてよ」
顔を背けながらずいっと差し出し、横目でサタンの顔に目線を向ける。
この男のことだ、満面の笑みで受けとるのだろうと思っていた。が、予想に反し
きょとんとした表情を作っていた。
え?どうして?困惑しながらサタンの視線を辿ると、そこには可愛くラッピングされた箱
…ではなく包装がビリビリに破かれて、中身の入ってないただのカラ箱が。


「え?え?なんで??」
「ぐ〜」
ハッ!…もしかして。
手にしていた袋の中に入っている友人を取り出すと、思った通り口の周りをチョコでべっとり彩っていた。
「カーく〜んっ!!食べちゃだめじゃないー!!」
「ぐ〜!」
叱りつけるがニッコニコの笑顔で答えるカーバンクル。
そしてそれとは対象的にどんよりしたオーラを見にまとい、ガクーっと肩を落として伏せているサタン。
これは、まずい。
「サ、サタン…」
「……」
「ごめんね、こんなことになるなんて」
「…ぅうう……ぐすぅ」
「!?」
な、泣いてる?!大の男がチョコを貰えなかったくらいで泣いている。
正直情けないと思ったが、この男が自分をどれだけ好きでいるか知っている。
アルルはなんだか悪いことをした気持ちになってしまった。でも無いものは無い。
家に帰ればチョコは残っているけど、プレゼントするためのラッピングはきっかり人数分しか
用意してなかったのですぐには渡せない。
「明日絶対持っていくからさ、泣かないでよ…」
「今日で、今日でなければ…意味がない……ヒック」
ボロボロ大粒の涙を溢すサタン。またその涙のピュアで綺麗なこと。アルルのちっちゃい胸がチクチク痛む。
「あぁ〜!もぅわかったよ!…ウチにおいでよ、チョコならまだあるしご馳走するから」
パアアァァ!サタンの顔がみるみるうちに輝いた。
「そうか!そうと決まれば今すぐ行くぞ!」
「うわわわ?!抱っこ…抱っこしなくていいっ!」
さっきまでの落ち込みはどこ吹く風、たぎりにたぎったサタンによって、アルルはお姫様抱っこ
されながら家路に着くのであった。


117 :サタアル 4/7:2009/02/14(土) 22:07:39 ID:EIU/3izw


「じゃあ準備するからそこに座って待っててよ」
「ああ」
勢いでサタンを招き入れたが、夜も始まるこんな時間に男の人を家にあげるなんて少し軽率
だったかもしれない。早く食べて帰ってもらおう。アルルは早速準備に取りかかった。
アルルの作ったチョコは、フォンダンショコラという濃厚なチョコレートケーキだ。
そのままでも充分美味だが、温めると中のチョコがトロリと溶け出し、また格別の味わいとなる。
せっかくだから美味しく食べて貰いたい。温めたチョコの横にささっと泡立てた生クリームを添え、
紅茶と共にテーブルにセッティングをする。
「食べたらすぐ帰るんだよ」
「わかったわかった。コレがアルルの手作りチョコ…なんと美味そうな、
 料理上手な妃をめとるコトが出来て、私は幸せ者だな」
「ボク妃じゃないって!もういいから早く食べよ?いただきまーす」
「ぐー!」
「では、いただきます」
銀のスプーンがチョコをすくいあげ、そのまま口の中に消えていく。
「うまい!」
「ホント?」
「甘さが押さえられた上品な味だ。チョコとリキュールのバランスも絶妙で香りもよい。
 アルルはお菓子作りの天才だな」
「えヘヘ、そんなに言われると照れちゃうよ」
なんだか胸がこそばゆい。目の前で作ったものを食べてもらい、賞賛の声を受けるのは
とても幸せなことだとアルルは思った。
サタンを泣かせてしまったけど、結果として一番美味しい形で食べてもらったので
これはこれで良かったのかも。
嬉しそうにチョコを口の中に運ぶサタンを見つめながら、アルルの気持ちもほんわり
あったかくなるのを感じていた。そんな時、サタンの口元が茶色く汚れていることに気づく。
「あ。チョコについてるよ」
気が緩んでいたせいだろうか、アルルはチョコの着いた唇をペロリと舐めてしまった。
しまった!思ったが時は既に遅し、サタンはアルルを凝視しカチンコチンに固まっている。
「あ、あのこれは別に何の意味もなくって、いっつもカーくんが口の周りにベトベト
 つけちゃうからいちいち拭いてあげるより舐めちゃう方が早くって、だから、だからね」
「ア、アアアアルル落ち着け、わか、分かっている。すまんな、汚い食べ方をしてしまって」
「う、ううん。そんなことないよ。こっちこそ急に変なことしてゴメンナサイッ」
「ハハハ…アルルはうっかり屋さんだな」
「アハ、アハハハハッ…そうなの、ボクってばうっかり屋さんで困っちゃうね〜」
どこか空々しい二人の笑い声が室内に響く。この状況を変えたいアルルだが、うまい話題もでてこない。
次第に笑い声も止み、室内がシンと静まり返る。奇妙な空気が二人の間に漂った、次の瞬間。
「アルルーッ!!!」
「きゃあぁぁぁー!!!」


サタンが勢いよくアルルに覆い被さってきた。椅子ごと床に押し倒される。背中を打つかと思ったが、
そこはサタンが背後に手を回し守ってくれたお陰で、最小限の痛みで押さえられた。
しかしその腕は解かれることはなく、アルルを拘束したままだ。
サタンの胸をドンドン叩いてなんとか逃れようと抵抗する。
「サタンッ!駄目だよ!エッチなのはだめぇ!カーくんも見てるんだからぁ!」
「カーバンクルちゃんはとっくに寝ている!もぅ無理だ!もぅ我慢ならん!ここはお前の匂いで
 いっぱいで、あんなことまでされては暴れん棒を押さえられんっ!」
「あああ暴れん棒ってなんなのさーっ!!」
分かっているけどその言い方はなんなんだよ!
余りのお馬鹿発言に、一瞬アルルの身体から力が抜ける。その隙に見逃さなかった男は拘束を解き、
一気にシャツとブラジャーを上にずらした。
ぷるんっ。アルルの控え目な胸がサタンの前で露わになる。
「やぁんっ…チョコ、今日じゃなきゃって泣いてたくせに!サタンのバカバカァ〜!チョコ食べなよっ」
「もちろん食べる。アルル見てろ」
「ひゃ…!」
サタンはチョコをアルルの胸の間に置き、二つの小さな膨らみを手で寄せぐちゃぐちゃとそれを潰し始めた。
ホロホロとケーキ部分が崩れていき、中のとろけたチョコレートが、アルルの胸をを茶色くコーディングしていく。
「や……サタン、もしかしてぇ…」
ニコニコ嬉しそうに、サタンは唾液にまみれた舌を差し出す。ぺろんっ。
「きゃうん!」
想像通り、サタンの舌がアルルの胸の先をかすめた。
「うまいぞ、アルル。こうして食べるとまた格別だな」
サタンは唇を茶色く染めながら、淡いピンクの突起にむしゃぶりつく。
ぴちゃぴちゃとワザとイヤらしい音を発て、アルルの性感を徐々に煽る。
舐めて、吸って、軽く噛んで、その柔らかい感触と美味しいチョコを存分に味わうと、
敏感なアルルの乳首がピンッと立ってきた。
「んぁ、やン、…ぁああんッ」
次第に少女から上擦った声が上がり始める。
「ん、可愛い声だ」
色めいた声に気をよくしたサタンは、さらにアルルを追い立てる。
空いているもう片方の胸を手で覆い、ゆっくりと揉みほぐす。指の股で突起を挟み、クニクニ
とくねらせればアルルはゾクゾクと背筋を震わせた。
アルルはいつしか抵抗する気力もなくなり、サタンから与えられる快楽を受け入れるだけとなっていた。
「はふぅ……ンん、サタ…おっぱいだけ…、やぁ、下も…シてよぉ…」
身体の疼きに耐えられず、腰を揺らめかせる少女が、次のステップを求める。


アルルのおねだりを拒否するはずがない。サタンは力の抜けきった足から純白のショーツを剥ぎ取る。
秘部に触れていた布地の部分からは糸が引き、濡れた花弁は何かを欲するようヒクヒク蠢いていた。
その魅力的な誘いにサタンはゴクリと喉を鳴らし、迷うことなく舌を這わせる。
「はぁ……ン」
「チョコみたいにトロトロだな」
「言わない…でぇ。恥ずかし…」
「ここもちゃんと食べてやるぞ」
小さな粒はすでにぷっくりとはち切れそうになっていて、コロコロ舌先で転がすと
秘処からはトロリと愛液が零れた。
止めどなく溢れてくるソレをすくっては肉芽にねっとり擦り付け、そして刺激によって
また溢れる愛液を同じように擦り付ける。
このサイクルを続けると、我慢も限界を迎えたアルルは、目に涙を浮かべながらサタンに懇願した。
「ンぁ、サタ……ダメッ、も、舌じゃ足りな……お願、い…キミのアレ、欲しいよぉ!」
くすりと笑うサタン。
「今日のアルルはおねだりさんだな。我慢の出来ない可愛い妃よ、今すぐ旦那様をくれてやろう」
同じく我慢も限界にきていたサタンは、秘部から顔を離し、パンパンに腫れた自身の分身を取り出してあてがう。
そして間髪置かずアルルの中にズプンッと突き入れた。
「きゃあああぁぁぁー!!!」
「うっ……アルル…!」
「やあ!ぁあ、ああんッ!サタ、ンッ!すご、すごいぃ……すごいよおっ!!」
待ち焦がれたモノを与えられ、アルルから歓喜の声があがった。
しかしドロドロにぬかるんでいるが、アルルの中は経験の少なさからキツく狭い。
サタンは、馴染ませるように緩い律動を繰り返す。ゆっくりゆっくり擦りあわせ、
アルルを侵食していくと、次第に甘い吐息が漏れ出した。
充分に溶けきった。そう判断したサタンは動きを激しいものに切り替える。
「やっ!!……らぁ!それ、激し…ああんっ、ひィ!強いぃ…!!」
突然の乱暴な打ち付けに、アルルの瞳かから涙の粒が飛び散る。
何度も何度も行われる注挿は激しい増していき、結合部からじゅぽじゅぽ愛液が滴る音をたてた。
耳を犯す淫猥な音色も、重なりあう粘膜の熱さも、二人の性感を高めていく。
もう二人は快楽の虜だった。繁殖期の獣のようにお互いの身体を貪りあう。
「アルル…ぅ……あるるっ、くあぁ」
「はぁンッ……ぐちゃぐちゃあ…んあ……ゃ、やだよぅっ、
 ……でも、もっとぉ奥も欲し…ぁあっ、サタンおくぅ!」
「ハァ…ぅ……奥…だな、わかった、奥の奥を…満たしてやるぞぉ、そらっ!」
より深い結合を求め、体制を変えようとサタンはアルルの腰に手を回し、半身を持ちあげる。
「ひゃあぁぁ!!」
サタンの上に乗せられ、自分の重みと重力で狂暴な肉棒が奥深くをえぐった瞬間、
アルルは目の前でフラッシュをたかれたように、頭も視界も真っ白になった。
「イッ?!…………ゃ、やああぁぁーーーーっ!!!」
強すぎる刺激を受け、半ば強制的にアルルは達してしまった。
絶頂に伴う強烈な締め付けがサタンを襲い、共に快楽の波に飲み込もうとするが、
まだ早いとなんとか射精感に耐える。
「…ふ、ハハハッ。早いぞっ…これからが楽しくなるというのに」
「あ、ア…ぁぁ…………あー…」
「アルル?おいアルル、しっかりしろ!?」
痙攣する身体から力が抜けると、アルルはのけ反った体勢から、そのまま後ろに倒れこみ意識を手放した。


深い眠りについていたアルルの意識が少しずつ覚醒していく。
気だるい瞼を擦り、何とか目を開けると、視界に入ったのは見覚えのある木目の板、いつも見ている天井だ。
アルルはいつの間にかベッドの中で横になっていた。
「…………ん…」
「目覚めたか?」
「……ふぇ?…あ、サタン」
声のした方に顔を傾ければ、サタンはアルルお気に入りの椅子に座って本を読んでいたようだ。
手に持つ魔導書をパタンと閉じて、アルルに近づきベッドに腰掛ける。
「ボク、寝てた?」
「ああ、昨夜からぐっすりとな。……あそこで気を失うとは思わなかった。相当疲れていたのではないか?」
窓の外を眺めると、暗かったはずの空が、青く気持ちのいいものに変わっている。
ずいぶんと眠っていたらしい。どうやらバレンタイン前日からチョコ作りで、一睡も
していなかったせいで、突然の絶頂にそのまま気をやってしまったようだ。
ポンッと昨日の情事を思い出す。
慌てて衣類を正そうとしたが、どこも乱れた様子もなく、全てがコトを及ぼす前の状態に戻っていた。
布団の中でこっそり秘部に触れてみても、特に変化はない。
「サタンは…何してたの?」
「勝手に悪いと思ったが書架の本を読ませてもらっていた。なかなか興味深い文献が多く
 有意義な時間を過ごせた」
「そうなの」
てっきり気を失なった自分に対し、あんなことやこんなことしてるかと思っていた。
サタンを信用せずに、馬鹿なコトを考えたアルルは自らを恥じる。
アルルは気まずい思いに、サタンの顔を見ることが出来なくなっていた。
「では帰るとするか」
「え?」
急にサタンがベッドから腰をあげる。
「無断で城を長く空けるのも良くないからな。ありがとうアルル、チョコ上手かったぞ」
「そっか…ゴメンね。あと、ありがとう…起きるの待っててくれて」
「愛するお前の寝顔をゆっくりと見れたのだ、なんてことはない。……無理をさせて悪かった」
どこかバツの悪そうな顔で、おでこにそっと口付けを落とされた。
それはアルルを気遣った、優しい優しいキスだった。アルルの胸がきゅうんと締め付けられる。
もう、こんなときばっか格好つけるなんてズルイ。
昨日は馬鹿みたいに泣いて、馬鹿みたいに笑って、馬鹿みたいに襲ってきたくせに。本当にズルイ。
「サタン」
身を翻し、帰ろうとするサタンの袖を引っ張り腕に抱きつく。
「バレンタインは終わっちゃったけど、チョコまだあるから…ボクと一緒に食べて欲しいな…」
消え入りそうな小さな声でポツリと呟く。見上げれば昨日と同じようなきょとんとした顔。
でもサタンは泣かないで、その顔を大人の余裕を伺わせる笑みに変えていた。
「喜んで」
アルルの身体は後ろに倒れ込み、二人分の重みでベッドのスプリングがギィっと軋む音をたてた。

終わり



index