no title

9-206様


 はじまりは彼が笑った。それだけだった。
 その綺麗な蒼色の目を細めて、形のいい口の端をほんの少しだけ、ふっと。
「……」
 泉の脇の木にもたれかかる彼に話しかけていたのは、水から顔を出したうろこさかなびとだった。
 ――僕の前じゃ、あんな顔したことないのにな。
 何故かそれが無性に苛立たしくて、僕は唇を噛んで、くるりと踵を返した。
 なにより、彼が笑ってくれたことに喜ぶ彼女の顔を、見ていられなかった。


「セーリーリちゃんっ」
 次の日。僕は泉の脇から彼女を呼びかけた。
 数秒後、水面にゆらりと影が見えたかと思うと、彼女がひょっこり顔を出した。
「アルルさん。来てくれたんですね」
「えへへー、もうちょっとこっちに来てくれる?」
「?」
「もうちょい、もうちょい……うん、それくらい」
 もう少しで体が触れてしまいそうなほど、僕とセリリちゃんは距離を詰める。
「えっと、アルルさん……?」
 僕は笑いかけた。
「セリリちゃんってさ、胸大きいね」
「ひゃあ!?」
 前触れもなく、右手でがっしりとそれを掴むと、僕の手のひらでは掴みきれなかった分が指の隙間から主張した。あらら、ホントに大きいよ、この子ったら。
 彼女は驚いて身を離そうとするけれど、既に背中に回してある僕の左手がそれを許さない。
 その間にも、僕は服の下から手を入れて柔らかいそれを直接揉みしだく。
「やっ……」
「やらしい体してるなあー、セリリちゃん」
 セリリちゃんは瞬時に顔を赤く染める。
「そんなこと、」
「あるって」
 きゅ、と胸の突起をつまむと、高い声と共に、彼女の身体がびくりと跳ねた。
「あれ、ずいぶん感度いいんだね。ひょっとしてこういうの慣れてたり?」
 問いかけると、セリリちゃんは、ぶんぶん、と音がしそうなほど激しく首を振った。


 僕は右手の動きはそのままに、口で彼女の服をくわえて、ゆっくりとまくりあげる。
「アルルさ、やめっ……」
 泣き虫なセリリちゃんの目には大粒の涙。
「なんで泣きそうなのかな。気持ちよすぎるの? この淫乱」
「いじめないで……っ」
「やだなあ、いじめてるって思われてるなんて心外だよ。僕はセリリちゃんと仲良く遊んでるつもりなんだけどなあ。ほら、僕らは『ともだち』だから、ね?」
 僕はにっこりと笑った。
「……!」
 つぅ、と僕はお腹から上へ上へと舌を這わせる。
 首を振り続ける彼女の胸の飾りを、形を確認するように執拗に舐め上げて、ぱくりとそれを口に含めた。
「あ、やっ、ひぁぁ……っ」
「ほんとにやらしいなあ、君ってば。こうやってあいつのこと誘ったの?」
「ふぅ……っ、なんの……話を……」
「ね、君、シェゾのことどう思ってる? 好き? ただのともだち?」
 一瞬訝しげな顔をしたあと、セリリちゃんはたどたどしく答えを考え始める。
「シェゾ、さんは……」
「ともだちだよねっ」
「え、あ……。はい、おともだち、です……」
「そっかー」
 その言葉を聞いた瞬間、ぱっと僕は突然彼女から身を離した。
「っ!」
 いきなりのことに、セリリちゃんはかくんと体勢を崩し、水上に出ていた上半身が再び水の中に落ちる。
 まあ、大丈夫でしょう。うろこさかなびとだし。
「それならいいんだよ、それならさ」
 僕はのびをすると、泉に背を向けた。
 数歩歩いて、くるりと振り向くと、泣きはらした顔をした彼女ににっこりと僕は満面の笑みを作ってみせた。
「また遊ぼうね、セリリちゃん」


セリリたん、誕生日を祝わずにいじめてすまないw

index