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9-249様

賑わいのあるメインストリートとはうってかわって、昼間でもどこか薄暗くカビ臭さを漂わせる路地裏。
飲食店の残飯を漁る猫の真横でシェゾは地面に押し倒されていた。
「ア、アルル落ち着け。何も今こんな所でする必要ないだろ、お前だって初めてだろうし、もっと適切な場所でだな……!」
「何いってんだよ、今しなきゃ意味ないのに。ほら暴れないで、こっち向く」
華奢な身体のどこにそんな馬鹿力があるのか。両手でがっちり掴まれた肩は微動だにせず起き上がることが出来ない。
いや、元より起き上がる気がないのかもしれない。シェゾはアルルへの想いを日々募らせていた。
しかし相手はまだ心も身体も未成熟な少女、成長の妨げになりたくないと彼女が実るのを待っていた。
それが急なアルルからアプローチ。もう何も待つ必要はない。
ぐぐぐと可愛らしい顔が迫ってくる。食べてしまいたい瑞々しい唇がふわりとシェゾの元に降りたってきた。

―――……うわ、柔らけぇ〜……なんでこんなにフニフニしてんだこいつのくちび…はうぅ!!舌入れるの早っ!
待て待てまだ早いだろーがそれはっ!物事には順序があってだなあああああ!し、舌!舌動かしすぎだろ!!
こいつ初めてじゃないのかっ!?は、歯ーーッ!歯とか絶対汚いからペロペロ舐めるな〜!!どんだけ細かく舐めてんだよっ!
う、わ、あ、上顎とかっ!!そんなザリザリされたら!あ、ああ、ヤベェ、気持ちい……って女にリードされてるってどうなんだよの俺!?
でもこれすげえくる、あ、頭が朦朧と……、ぅく、う、あああ、

『え〜、本日販売終了いたしました一日限りの幻のカレー、ご好評頂きましたため、今から二十食のみですが販売を再開いたしまーす』
「買いまーす!!」

ちゅぽんっ!
情熱的なキッスをぶつ切りし、声の聞こえた方向へたったか走っていくアルル。
残されたシェゾは何が何だかわからない。な、なんだったんだ今のは?もしかして想いが行き過ぎて、幻覚でも見ていたのか?
しかし口に残る自分以外の唾液の味が残っている。押し倒された体勢のまま呆然としていると、アルルがひょこり現れた。
「シェゾごめんね〜。あのお店の限定カレー、どーしても食べたかったのに売り切れだったからちょっとでも味わいたくってチュウしちゃった!
でもさっき追加販売してたの無事買えたし、家帰ってさっそく食べるよ。じゃあまたね〜」

―――カレー……。ああ、食った食った幻のカレー。確かに旨かったよ、幻って言うだけのことはあったな。
そっかーカレー食いたかったのかー。俺じゃなくてカレーね……。

アルルの足音がだんだんと遠くなり、カレーの香りと一緒に完全に消えた。
普段通りに静まり返った路地裏にはシェゾの力ない笑い声が小さく響く。
「ハハ……ハハハ。……次会った時、ぜってー犯してやる……」
カレーに負けたシェゾは、ずぐずぐ疼く下半身を抑えながら男心を弄んだ少女への仕返しを誓うのであった。

おしまい

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