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9-336様
―――ガシャン、と呆気ない音を立て、インスタントカメラは破片と化した。
体育倉庫の冷たいコンクリートには用を為さなくなってしまった黒いフィルムが散らばっている。
「な、な、なっ……!なんてことするんですの!?」
「……なんてこと、だと?」
カメラを床に強く打ちつけた体勢のまま、一呼吸してシェゾは視線を上げた。
目の前の金髪の少女は信じられないといった表情で瞳に抗議の色をにじませている。
「当然の報いだ!さっきからコソコソと人のこと盗撮しやがって」
「……あら、なんのことかしら?私はただ今日というかけがえのない一日のメモリーを…」
「ほう、なら後ろに隠しているデジカメもよこしてみろ。お前の収穫をチェックしてやる」
「ぎくっ…え、あ、いやこれはっ……」
ウィッチの抵抗虚しくカメラはシェゾの手に素早く奪い取られる。
再生されたのは、目に眩しい白の体操服を着たシェゾの写真ばかりだった。数枚どころに収まる枚数ではない。
徒競走で駆け抜ける姿、タオルで汗を拭う姿、木陰で休息する姿………。
案の定とため息をついて、シェゾは迷いなくデリートボタンを押した。
「全削除、っと」
「いやあああっ!!私のコレクションがぁっ!き、今日一日撮りだめてましたのに―――」
「こんな健康的な恰好、仕方が無いとはいえ人前に出ているだけで恥だってのに……写真など残されてたまるか」
軽く想像してみただけで背筋が凍る。
「ちょっと、あんまりじゃありませんこと!?」
目に涙すら浮かべ、ウィッチが非難の声をあげた。
「人がせっかく『変態らしからぬ爽やかな服を着ていたらちょっと素敵☆』と思って撮ってあげてたというのに……!
問答無用で削除なんて横暴すぎますわ、個人の趣味の自由侵害ですわ。やっぱり変態は腐っても所詮変態ですわね」
「お前に変態呼ばわりされるのは絶対納得がいかん!どの口でそれを言うか!
…………どうやら、多少灸を据えてやらんと懲りんようだな…」
「灸?」
言って、シェゾはくるりと背を向け倉庫の扉へ向かった。
最後のセリフは気にかかるが、ともかく苦情は終わったらしい―――ウィッチはそう判断した。
あとは外へ出た瞬間にスキを見計いデジカメを奪って逃げるだけ、そう算段し機を待っていたが――――
シェゾの取った行動は、半開きになっていた扉を閉め鍵をかけただけだった。
「午後一番の種目は何だ?」
「は?え、ええと……リレー、ですけど……」
この質問の意図とは。
「そうか」
訳が分からないままシェゾの視線の先を追うと、彼は壁にかかった時計を見ていた。
針は昼休み終了10分前を指している。
不意に、ウィッチの肩が強く押された。
「きゃっ!」
ウィッチは後ろに畳んであったマットに尻餅をつき、すらりと細い白い足を折り曲げた。
「……リレー出場は諦めることだな」
低い声にぞくりと悪寒が走る。
目の前には、口の端に歪んだ笑みを浮かべたシェゾが静かに見下ろしていた。
「シェゾ……な、何を……」
「さて、何をされると思う?」
一歩ずつ距離を詰める。感情のこもらない問い返しが既に愚問だと告げていた。
逃げなくては。本能が鳴らす警報に従い、ウィッチは咄嗟に倒された身を起こそうとする。
だがシェゾが両手を捕らえる方が早い。勢いのまま、古びた体育マットの上にねじ伏せられる。
「嫌ぁっ!お離しなさい!」
「非力な腕だな。封じるのもたやすい」
「やめてっ、汚い手で……触らないで!」
振り払った手がシェゾの頬に命中し、パン、と小気味良い音が響いた。
「……っ……てぇ……」
「あ……」
当たった。ウィッチの頭を掠めたのはその事実だけだった。
即座に反応し体勢を整えることができたなら逃げられたかもしれない。
だが好機は一瞬にして去ってしまっていた。
シェゾはにやりと笑い、ウィッチの細腕をいっそう強く掴む。
「きゃああっ!痛ぁっ……」
「こういう状況にある場合、下手にあがくのは賢明ではないな。
事態が悪化する事がほとんどだ―――威勢は買うが」
ウィッチの身体を返し、うつぶせに抑えつけたまま周囲を見渡すと、
目先にちょうど手頃な細い縄が落ちていた。
それを手に取り、ウィッチの両手を背中に回して縛り上げる。
「くっ……い、たぁっ……ずいぶんと手荒な真似してくれますわね……。
SMがお好みですの?変態さん」
「まあ、嫌いじゃないぜ」
「いい趣味してますわ。あいにく私、アブノーマルな性癖は持ち合わせておりませんの。
ご理解いただけたら解いてくださる?」
ウィッチは強気で睨んだ。しかし侮蔑と嫌悪の眼差しの中にも、怯えた恐怖の色が見て取れる。
「駄目だ。撮られたくない姿を写真に撮られる気持ちをお前にも味わわせてやる。
ちょうどここにカメラも有るしな」
「ちょっ、それ私のデジカ―――……きゃあああっ!あなた、どこに手を……
……んっ……おやめ、なさい…!」
「いい表情しろよ?せっかく撮ってやるんだから」
先ほど奪ったカメラを片手に、もう一方の手をウィッチの青い体操服の中に潜り込ませる。
下着ごと服を上へずらすと白い乳房が露わになった。
小ぶりだがツンと張っていて綺麗な形をしている。おそらくまだ発展途上なのだろう。
素早くカメラのシャッターボタンを押す。
暗い密室の中心を光が照らし、雪のような柔肌が目に焼き付けられた。
「いやあっ」
「『今日というかけがえのない一日のメモリー』ってやつだな。誰かさんの言葉を借りると」
「このっ―――変態!ド変態!それ以上撮ったらタダじゃおきませんわよっ!?
もう、さっさとこの縄、解きなさいってばぁ!」
怒りか恥じらいか又は両方か、頬を紅潮させてウィッチは身をよじる。
上半身は背中で固定された腕のおかげで自由がきかない。
かといって下半身が動けるかといえばシェゾに馬乗りされているせいで足を小さく地団駄する事しかできなかった。
せいぜい肩をゆすって抵抗するくらいだが、そうすると反動で微乳が元気一杯ふるふると震え、
はたから見ると非常に卑猥な光景となってしまっている。
そんな姿でいくら怒りを示そうが目の前の男には丸きり逆効果なのは言うまでもない。
「……そういうセリフはこんな状態で言うもんじゃないぞ。勃ってるじゃねぇか、ここ」
「ひぁっ」
いつの間にか張りつめて固くなっていた乳首を指ではじくと、ウィッチの口から甘い悲鳴が漏れた。
敏感な反応に気を良くしたシェゾは指と指で桃色の先端を挟み、くにくにと更にしつこく玩ぶ。
「おいおい、写真撮られて興奮してんのか?どっちが変態だか分からんな」
「っんぅ…っ……やめ……な、さ…っ……」
揉みしだくと柔らかな膨らみは手の動きに合わせて形を変える。
胸の先に口を寄せて小さな突起を甘噛みすると、華奢な身体がびくびくと震えた。
「ひゃあんっ!ふあ、あっ」
ウィッチは苦悶の息を漏らす。
その表情に優越感と快感を感じ、シェゾは思わず続けざまにシャッターを切る。
四角いモニターに写し出される潤んだ瞳から目を逸らすことができない。
そこにはよく知る女の初めて見る顔があった。上気した頬、切なげに歪む眉、涙まじりにふせた睫毛。
あの普段つんと澄ました高飛車な小娘を征服しているのだ―――そう考えると、
シェゾは言いようのない興奮がざわざわと胸の奥を荒らすのを感じた。
(……くそ、参ったな……。少しからかってやるだけのつもりだったんだが……)
もはや自制すら危うい。
「…きゃうっ!」
「ん?」
跨いでいる下で、ウィッチの足がぴくんと跳ねる。
どうやら体勢を戻す際に動かしたシェゾの手が偶然ウィッチの太ももの外側辺りを掠めたらしい。くすぐったかったのか、驚いたような変な顔をしている。それを見て思わず低い笑みがこぼれた。
「…ああ。こっちも触って欲しいのか」
「は?ちっ、違いますわ、なにを勝手に……」
「そうかそうか。すまんな、察しが悪くて。上だけじゃ物足りないってんだろ?」
「だから違っ、やんっ!言ってな、っあ……!」
太ももの内側を撫で上げる。細身の体格の割に下半身は比較的肉付きが良く柔らかい。
いつもは魔女の象徴とでも言うべきロングスカートの下に隠されているせいか、
惜しみなく露出したウィッチの脚は物珍しく貴重であるような気がした。
付け根付近のもどかしい位置を何度か行ったり来たりさせると、強張っていた
ウィッチの体は徐々に力を無くし大人しくなる。
ブルマの裾から手を入れ奥へ侵攻していく。
指先が下着に触れたのを確認し秘部に当たる部分を探ると、
くちっ――――
「………濡れてるな」
湿り気を帯びた場所を見つけた。
実りきらない身体のくせに、そこは一人前にいやらしい蜜を流している。
「うそ、うそですわ……」
乱れた呼吸でウィッチはかあっと顔を赤らめた。認めようとしない口ぶりが逆にシェゾの被虐心を煽る。
「嘘じゃない。どんどん溢れてくるぜ。ほら、聞こえるか?この音」
「やあっ!ひう……っ、いやっ……っあ…」
「お前が変態な証拠だ」
「ふああっ」
ちゅぷちゅぷとわざと水音を立てるように突いてみる。
まだ触れているのは布越しだが、既に十分過ぎるほど濡れているのが分かった。
しかし裾からの侵入は動きにいちいち制限がかかり過ぎる。これはこれで面白くはあるのだが。
素直に正攻法でいくか、とシェゾは青い体操着を脱がしにかかった。
「あ、いやあっ、だめ…っ……!」
制止も聞かずブルマと下着をまとめて下ろす。
現れた秘部には割れ目に沿って申し訳程度に毛が生えていた。もちろん髪の毛と同じ金色をしている。
その奥から溢れ出した淫液がぬらりと粘着質の輝きを見せる。
光に引き寄せられたようにゆっくりと指を宛てがい、縦のラインを軽くなぞった。
「やあああっ!」
ウィッチは体を走る電流に背中を反らした。
衝撃が収まるのも待たずに、指が這って穴の入口を探り当てる。
「……何が“だめ”だ。馬鹿みたいに濡れてるじゃないか」
「ふぁっ、あっ、いやぁっ……んんぅっ…」
狭い肉壁がシェゾの指をくわえ込んで飲み込み、さらに奥へ呼びこもうと吸い付いてきた。
指を二本に増やして中を刺激するようにピストンすれば、とめどなく快楽の証が溢れ出て来る。
上部にある小さな芽を親指で器用にこねると、ウィッチの脚がひくひくと痙攣し、嬌声が響いた。
「あっ!ひあっ、あふぅ…んんっ!」
涙に滲んだ深い青色の瞳。目の前の淫靡な魔女のそれは、薄暗がりの中でも光るようによく目立つ。
潤んだ扇情的な眼差しで見上げられた瞬間、残っていた僅かな理性までもが崩れ去る音を聞いた。
「口、開けてろ」
ウィッチの頭の両脇に膝をつく。体操服の下を寛げ怒張した性器を露出し、先端をウィッチの唇に押し当てる。
口を離そうとする首の動きを手で顎を掴んで止めさせ、無理矢理に咥内へねじ込んだ。
「リレーをサボらせた詫びだ。代わりにこっちのバトンで我慢しとけ。歯は立てるなよ」
「んぅっ……!んくっ、むぅっ……はっ…」
徐々に唾液が溜まってきたのか、喉の奥まで挿し入れるとクチュクチュといやらしい音がする。
粘膜がぬめりに包まれて揉みこまれ、シェゾの背筋を快感が走った。
「……そろそろいいだろう」
疲弊しきったウィッチの身体を持ち上げ、向かい合って膝上に座らせるような形にする。
ウィッチはおぼろげな思考の中でこれからどんな行為が待ち受けているのかを悟り、恐怖に身を引く。
「……っや、いやっ、もう……もう許して…っ…くださ………」
「許すだと?まさか―――これからが本番じゃないか」
鼻で笑い、耳元で吐き捨てると同時に、ずぷっ、と潤った入口へ貫くように一気に突き立てた。
「ああああっ!うぁっ、いた…っ…やぁんっ、やですぅっ、おねが…い、抜いてぇぇ……」
股間から下腹部にかけてびりびりと痺れるような衝撃が走る。
入っている。紛れも無く入ってしまっているのだ、自分の中に異物が。ウィッチはそう思い知る。
痛い。苦しい。早く解放されたい。痛みで体が裂けてしまいそうだ。
肩で息をして激痛を少しでも和らげようとしていると、シェゾは刺した彼自身を若干引き抜き、
根元の結合部を眺めた。愛液に混じってわずかに血が絡み付いている。
「なんだ……?処女だったのか」
「ふ…うっ……はぁ、はっ……誰も、違うなんて、言ってませ…ん、わよっ……」
「そうか。かなり濡れていたから俺はてっきり慣れてるものかと。お前、淫乱そうだしな」
「絶対…絶対っ……呪い殺してやりますわ…!」
「ああ、いいねぇその顔。涙目で睨む表情、なかなかそそるな」
愉しそうに笑うと、シェゾはマットに体を倒して傍に置いてあったカメラに手をかけた。
騎乗位の体勢の下からウィッチの火照った顔を写真に収める。
「変態、悪魔、あとで覚えてらっしゃい……」
前のめりになったウィッチの頬を涙が一粒伝い、シェゾの着ているTシャツに零れて色の無い染みを作る。
「その変態にいじられてこんなにしてるのはどこのどいつだ?」
繋がっている部分の少し上、敏感に膨れ上がったクリトリスをこね潰され、反射的にウィッチの上体が反る。
「うあっ!」
「変態はそっちの方だろう」
「いやぁ、だめっ…そこ、触っちゃだめですわ……」
「ダメなようには見えんがなぁ」
「あぅっ!んっ、やあっ!こす、こすらないでぇぇ……!」
いやいやをするように首を振るが止めてやるわけも無く、シェゾは些細な一撫にさえ震える様子を楽しみながら、勿論カメラのシャッターを押すことも忘れない。
シェゾをくわえ込む濡れた性器から、のけ反る度に揺れる乳房や煌めく金髪、そして何よりウィッチの感じている顔を刻み込む。
「……動くぞ」
言って、ウィッチの腰を掴んで奥へ突き上げた。
「………っ、…あ…ぁ……」
ぐちゅ、ぐちゅ、と鳴る。
結合部から漏れる水音、肉と肉がぶつかり合う音、緩やかな律動に呼応する二人の息遣い。
狭い体育倉庫の中は淫猥な響きで満たされていた。
天井近くにある窓の格子から陽の光が射し込む。
シェゾは、外の快晴と今頃始まっているであろう競技とを思い、
またその裏で人知れず快楽に耽る自分達の滑稽な構図を思い、背徳感にさらに興奮を深めた。
知らず、腰の動きが速くなる。
(…ああっ……な、なんですの……?この感じ………)
痛みが引いた後に襲って来たのは、むずむずと蠢くような不思議な感触だった。
シェゾのそれが乱暴に押し込まれると、甘いような切ないような感覚が全身を走るのだ。
まさか感じてきてしまったなんて死んでも認めたくない。
認めたくないのに、どんなに我慢しても何故か声が漏れてしまう。
ウィッチは悔しさに唇を噛み締めた。
「……っ、ふっ…!くぅ…!ひあっ、ああっ!…ぅあ、やぁん!」
溺れ始めたウィッチに、シェゾはより深く突いて追い打ちをかける。
と、その時。
二人の耳に素っ頓狂な声が届いた。
「ドラコーーー!そっち居たぁーーー!?」
(……あ、アルルさんっっっ!?)
ウィッチの心臓が跳ねる。
聞き間違えるはずがない、あのよく通る能天気な調子の声。
「居なーーーい! ったく、どこ行っちゃったんだよぉ!ウィッチってば、もう!」
続いてドラコの声も届いた。
どうやら二人ともウィッチを捜しに来たようである。
それも当然と言えば当然のことで、リレーは原則三人一組でなければ出場できない決まりになっていた。
ウィッチはアルル・ドラコとの三人チームで登録していたのだが、
おそらく彼女がいつまで経っても現れないのであちこち捜し回っていたのだろう。
声と足音から二人が少しずつ近付いて来るのが分かる。
シェゾはふと良い遊びを思い立ち、緊張で固まったままのウィッチを急に強く突き上げた。
「……っ!」
不意に再開した動きに思わず出そうになる声をギリギリで押し止める。
もしもアルルとドラコに聞こえでもしたら。
そう考えて必死にあえぎ声を抑えるウィッチに対し、シェゾはその様子を楽しむようにわざと腰のスピードを速めていった。
きゅっと結んだウィッチの小さな唇から吐息が漏れる。
(私がこんな、こんな醜態を他人に晒すなんて……許せませんわっ……)
抵抗に反してシェゾの悪戯はエスカレートしていく。
激しい上下の律動を一旦止め、今度はウィッチの尻を掴んで回すようにうねりを描いた。
「〜〜〜〜っ…!」
掻き回される度、内側が擦れる甘美な刺激にウィッチは無言でがくがくと震える。
――ピンポーン―――
『リレーの第四組になっているチームは、速やかに大会本部テント前へお集まり下さい―――』
スピーカーから響く、ルルーの場内アナウンス。
「わああっ!どっどうしよう、ボクたちの組まで来ちゃったよ……!?」
「こらぁぁぁウィッチぃぃぃぃっ!!どこにいんのよーーっ!
リレー始まっちゃうからとっとと出てきなさーーい!」
「ぐっ!ぐぐぐう!」
「え、な、何?こうなったらカー君がウィッチの代わりにリレー出るって?カー君、それ本気?」
「ぐっぐー。ぐぐっぐ、ぐぐう」
「『色が似てるから変装すればばれないだろう』……?ああ、ウィッチの髪の色とカー君の色がってこと?
そ、それは流石にバレバレなんじゃないかなぁ……」
「あんたのちっちゃい足で走り終えるの待ってたら日が暮れるっつーの!」
(……そっ、そんな間抜けな話はいいから、早く行きなさいってばぁぁぁっ……!)
皮肉にも二人のすぐ近くに潜むウィッチは、相変わらず気配を殺すため快感の波に堪えていた。
―――ピンポーン―――
『リレーの第四組になってるチームは速やかに集まりなさいって言ってんでしょうがァァァァァァッ!!
ぐずぐずしてんじゃないわよアルル他二名!あんたたちのせいで始めらんないのよ!』
ゴギッ!とマイクが折られる音。次いで沈黙。
「…………」
「…………死ぬ前に行こうか」
「うん、もうカー君でいいよ」
命の危機を察したアルルとドラコは全速力でグラウンドへ戻った。
「ようやく行ったか…」
遠くへ走り去る足音に、シェゾは息をついて胸を撫で下ろす。
必死で声を抑えるウィッチの可愛い反応を楽しんではいたものの、彼も内心では若干冷や冷やさせられていたところだった。
さて、とシェゾは身体を起こした。ウィッチははあはあと乱れた呼吸でシェゾにしな垂れかかっている。
体勢を変えるため自身を一度引き抜いて、ウィッチの後ろ手の縄を解いてやる。
半身を起こしていられない程にとろけてしまった彼女に騎乗位はもう難しいだろう。
ようやく自由を与えられたウィッチは、汗だくになった肢体をマットに横たえた。
「あぅっ、そんなぁ……中途半端でやめるなんて」
絶頂近くまで昇りつめかけていたのに突然放置されたため、淋しくなった下半身が疼きだし熱を帯びた膣が主張する。
「シェゾぉ……わ、わたくし、もどかしくてっ、このままじゃ」
「なら言えよ。どうして欲しいか」
弄ぶようにウィッチの金髪をすくい上げ、シェゾはサディスティックに歪んだ微笑を向けた。
「ふふふ……そうだな、『私はどうしようもない変態です、素敵で格好良いシェゾ様が欲しくてたまりません、
いっぱい注いで汚してください』……よし、これ全部復唱だ。さあ言え」
「変態!変態!変態!」
「おっと、気分次第じゃこのまま放置したっていいんだぞ?ついでに撮った写真も街中にバラ撒いてやる」
「この外道っ、地獄に堕ちなさ…………ひゃああぁんっ!?」
喋り終える前に予告無く再び肉棒を挿入されたため、ウィッチの言葉は中断を余儀無くされる。
勢いが良すぎたせいで愛液が溢れてマットを汚してしまったがシェゾはこの際気にしないことにした。
むしろわざとじゅぷじゅぷと溢れさせるように浅い抽送を繰り返す。
生温かい熱を持った無数のヒダが絡み付いてくる感触に、耐え切れずシェゾはため息を漏らした。
「ふあっ、あっ、ずるいっ、ふいうち、ずるいですわよぉっ!」
「ウィッチ……お前のいやらしい所、全部撮っといてやるぜ……。
ほらバラ撒かれたくないんだろ?さっさと言えっ」
「あんっ!ひああぁぁっ……」
それにしてもこの男ノリノリである。
悦に浸りながらも的確かつ集中的にウィッチの敏感な角度を刺激してくるため、
言葉を紡ぐことも困難な程に翻弄されてしまっていた。
こいつ本気で呪い殺そう、魔女族の呪術の中で最もえげつない魔法でも使って、と、
朦朧としてきた意識の片隅でウィッチは固く心に誓う。
プライドの高い彼女だがそれを守るのももう限界だった。
もはやこの誘惑には抗えそうもない。欲望は既に気が狂う決壊寸前のところまで来ている。
懇願の悲鳴を上げ、涙と汗でぐしゃぐしゃの赤ら顔でシェゾにすがりついた。
「あっ!わっ、わたくしは、どうしようもないぃっ……やぅ、んっ、へんたい、ですわっ…」
「そうだなぁ、俺の体操着姿に発情してたんだからな」
「すっ、すてきで、ひぁっ、かっこいいっ、……しぇ…シェゾ、様がぁぁっ…!
んっ、欲しくて、たまりませんのぉっ…!」
「この淫乱め、たっぷりくれてやるから光栄に思え」
「あううっ、っ…激し……!シェゾ、だめっ、お願い、もうだめですぅっ……」
「くっ……ダメじゃないだろ……?何て言うんだ?」
絶頂へ向けて腰の動きが最高潮に激しくなる。
高まっていく感覚に振り回されて息もできない。
「いっぱい、いっぱいそそいでぇっ、よごしてくださいぃぃぃっ!
……あっ、あっ、あああああ――――…っ…!」
「うっ……」
回した腕がシェゾの背中をぎゅうっと抱きしめる。
全身をビクビクと痙攣させながらウィッチは果て、同時に意識を手放した。
搾り取られるように、シェゾも熱い白濁をウィッチの中に吐き出す。
「―――おい、起きろ。次の競技始まるぞ」
「う……うーん……?」
目を開けると。
ウィッチの視界には、銀色の髪と端正な顔立ち、そしてこちらを覗き込む青い瞳が映った。
途端に断片的な記憶がフラッシュバックする。考えるよりも先に、手が宙を舞っていた。
「っ!」
「……最低、ですわ」
本日二度目となる平手打ちがシェゾの頬にお見舞いされる。一度目よりも込められた力は遥かに強い。
憎しみを露にするウィッチを無言で見つめた後、シェゾは決まり悪そうに呟いた。
「今のは喰らっといてやる。よけようと思えばよけられた」
「じゃあ次は全力で放つ攻撃魔法も、その優しさで受け取ってくださる?
貴方の存在自体、今すぐにひと欠片の物体すら残さずに消し去りたい気分ですの」
「……あのなぁっ!俺だって元々ここまでするつもりは無かったんだよ!」
「つもりは無かった?嬉々としてあれだけ人のことを辱めといて、よくそんなセリフが言えますわね?」
「だからそれはお前が……!」
「私のせいだって言いますの!?」
「お前があんまり――――……だから、その………………うるさい、なんでもない。
カメラはしばらく預からせてもらうぜ。これに懲りたら生意気もほどほどにしとくんだな。」
言うなり、シェゾは立ち上がって扉へ向かう。ドアを開くと雲一つない晴天が広がっていた。
篭っていたのはほんの短い時間のはずなのに、ずいぶんと光が懐かしく思える。
「お待ちなさいっ!話はまだ……」
「ちょうど次の種目へ移るところらしいぞ。行かなくていいのか?」
遠くの喧噪と競技開始を告げるアナウンスを聞き、シェゾはウィッチに尋ねた。
「冗談おっしゃらないで、誰かさんのせいで体力なんてほとんど残ってませんわよ」
「せっかくだから出たらいいじゃないか。どうせお前は自分の足で走るんじゃなく箒で飛ぶんだし、
別に支障ないだろう。ついでにカメラで撮っといてやるよ、その勇姿を」
「……貴方は?」
「俺は疲れた。どこかの木陰で日和見でもしてるさ」
「私には出ろって言いましたのに……」
帽子をかぶり直しながら、ぶつぶつと文句を言うウィッチ。
その頭を軽くぽんと撫で、シェゾは立ち去りながらだるそうに手を振る。
「取れよ、一位。負けたら罰として写真バラ撒くからな」
ウィッチが責任追及を上手くはぐらかされた事実に気付くのは、シェゾの背中が見えなくなってしばらく経ってからのことだった。
「あーっ!いるじゃん、ウィッチ!もう何やってたんだよぉ、
あんたが居なかったおかげでリレー大変だったんだから!」
「そーだよっ。代わりにカー君をアンカーにしたら走者のバトンみんな食べちゃうし、
ルルーはそれに怒ってカー君の耳ちょうちょ結びにしちゃうしさ、もうすんごい大騒ぎで………
……って……ウィッチ?聞いてる?どーしたのボンヤリしちゃって」
「え、ええ。ごめんなさい、お詫びしますわ」
まさか某変態魔導師のバトンをインコースされてました、などとは口が裂けても言えない。
先ほどまでの行為を思い返しながら、苦笑いで誤摩化す。
「えーと、ちょっと災難に遭ってましてね」
「……災難?なぁんか顔色悪いよねぇ。大丈夫?あっ、分かった!
お弁当持ってくるの忘れてお腹すかせてたんでしょ?
なんだぁ、ボクの所に来てくれたらたくさん分けてあげたのに〜」
「それはお気遣いどうも。でも平気ですから情けは無用ですわ。
このレースの一位だって、私が頂きますから」
妙に気合いの入ったウィッチの発言に、二人は顔を見合わせる。
負けるわけにはいかない。
周囲を見渡すと、シェゾはギャラリーから少し離れた場所で、木にもたれかかりながらこちらを眺めていた。
ウィッチが見ている事に気が付くとちらちらとカメラを動かす。
あのいつもの意地の悪い笑みを浮かべながら。
重なるように、彼の言葉が頭をよぎる。
―――取れよ、一位。―――
(……冗談じゃありませんわっ………)
箒の柄を握る手に力が入る。
まったく冗談じゃない。あってはならないのだ、そんなことは。
この早まる鼓動はスタートラインに立つ緊張のせいであり、耳が熱く赤くなるのは身体を巡る
魔導力のせいであって、決してあの男と目が合ってしまったからではない。断じてない。
ない、はずなのに。
審判が銃を高く掲げる。
「―――位置について………よぉい―――」
一瞬の静寂ののち。
晴れ渡る空に、短い空砲の合図が響いて消える。
弾けた歓声と風を切る音、そして誰よりも速く駆け抜けることができるような予感を、箒に乗った彼女は感じていた。
終わり
どうでもいいおまけ
(実行委員テント内にて)
「大会開催委員会会長ことサタン様。お茶が入ったのでどうぞ」
「うむ、すまないな実行委員兼救護保健係のキキーモラ君。有り難く頂こう。
しかしわたしは今はサタンでなくマスクド云々なのでそう呼んで欲しいのだが」
「ああ、そんなどうでもいい設定すっかり忘れてましたすみません。
それよりヘッドフォンして何を聞いてたんですか?」
「(地味に傷付いている)これか?実はな、この会場には事故防止と防犯を兼ねて随所に小型録音器が仕掛けられているのだ」
「つまり盗聴ですね、分かります」
「安全性とは時に犯罪の裏で成り立つものだ。
まあそんな訳で録音した音源をチェックしていたんだが、予想外のサプライズが手に入ってな。
今はその愉快な使い道を色々と思索していたところなのだよ、はっはっは」
「朗らかに笑って言える事じゃないと思いますが、すごく…外道です……」
「さーていかにしてシェゾの奴を陥れてやろうかな。
陰で脅してひざまずかせるも良し、この場でBGMとして放送してうろたえさせるも良し。
夢は無限に広がるぞ」
「内容は知りませんがお気の毒に、シェゾさん」
「良いのだよあんなサディストの変態は。そもそもあいつのようなならず者が
女を抱けるというこんな世の中がポイズンなのだ。
ええい忌ま忌ましい、わたしだってアルルと体育倉庫ファックしたいぞ畜生!」
「えーと非常に聞き苦しいですが、とりあえず私怨乙な感じですね会長。
ああそろそろ次の種目始まるみたいなのでアナウンスお願いします。
はいマイク入れますよー」
「ああ!許されるならアルルのむちむちの太ももを思いっきり撫で回したい!
あの魅惑のブルマに射精して白濁の染みを作りたい!
跳び箱に手を付かせてバックから足腰立たなくなるまでガンガン突きまくりたい!
ああああアルルっアルルっ!アルルぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「マイク入れたっつってんのに何も聞いちゃいませんね会長。フルボリュームで響き渡って場内ドン引きですよ。
ちなみに当のアルルさんは鬼の形相でこっちを睨んでますね。あ、走って来た。
ファイヤーぶちかまされる前に私逃げますから。では」
おしまい