no title
1-910様
「ア〜ル〜ル〜!!」
ボクの頭の上から聞いたことのある声がする。音源は大空を横切って、
ボク目掛けて飛んできた。
「げっ、サタン。」
ボクは反射的に一歩下がって、飛びついてきたサタンをかわす。
ズガーン!!
哀れサタンは土の中に・・・ってこれにボクがぶつかってたらどうするんだよ。
「ねぇ、サタン大丈夫?」
不本意だけど、あんまりな有様にボクは、つい安否を尋ねた。
「アルルぅ・・・・そうかっ、未来の夫が心配か!?」
「あ、あのねぇ。」
土まみれで起きあがったサタンは止まらない。いつだって彼はマイペースだ。
「私は、大丈夫だ。お前を残して、どうして私が先に逝けようか?いーや、無理だ!不可能だっ!
神に誓うぞ!たとえ転変地異を起こって世界が滅んだとしても二人の愛は永遠だっ!アルル!!」
めげずにサタンは両手を広げて抱きついてくる。刹那、ボクの肩の上、
いつものポジションにいる友達の額が光った。
「うぎゃぁぁぁああ!!」
赤い閃光がサタンに命中。ボクは真っ黒こげになったサタンの側にしゃがむと、
とりあえず一言をかけた。
「・・・・・君も懲りないね。」
「なぁっっぜだぁぁあ!!何故、駄目なんだっっ!カーバンクルちゃーぁん!!!」
おいおい、いい年したオッサ・・・大人がそんな大声で。半べそのサタンは結構しつこく後を
ついてきた。あっちにいけばあっちへ。こっちにいけばこっちへ。
「もぅ!いい加減にしてよ!!」
キッと睨むボクにサタンがたじろぐ。これじゃあ、ボクが悪者みたいじゃないか。
・・・・・あ、そうだ!
うっとうしさにボクは、ちょっとした悪戯を思いついた。そう、今日だけは、
許されるちょっとした意地悪。
「・・・・・サタン・・・・本当に気づいてないの?ボクが君を避ける理由・・・・。」
ボクはわざと目を潤ませてうつむいた。へへんっ、ボクにだってこのくらいの演技は軽いもんね。
「なっ、是非聞かせてくれ!」
さっきまで頭をかかえていたサタンが、目を輝かせてボクの台詞にくいつく。
「・・・・ボクね。実は、好きな人がいるんだ。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「なっっ何っっっぉお!!?」
サタンは言葉になってない叫び声をあげる。あ〜、これはなかなか面白いかも。ボクは、彼のリア
クションにちょっとだけエープリルフールが癖になりそうな気がした。
「だった、誰だ!?その羨ましい奴はっっ!??
!!!!!!!!!!!!!!まさか、あの変態魔導師かっ?よし、即消滅だ!塵すらこの世に残すものかっ!!!」
・・・・・怖いこと言うなぁ。ちょっとボクは答えに詰まる。シェゾの名前借りようと思ってたけど・・・
殺し合いが始まったら洒落にならない。
ボクは慌てて、意気込んで飛び立とうとするサタンのマントを掴む。
がっっぐらりげほっ
変な声と同時にサタンが再び地面に顔をぶつけた。やば、マント掴んだから首が絞まったのかな?
まぁ、いいや。ボクは続ける。
「違うよ、シェゾじゃない。ボクの好きな人は・・・・・・・・・・。」
「誰なんだ!?」
「マスク・ド・サタンだよ!!」
「よしっ!では、そいつを消し・・・・・・・・・(俺じゃん!?)←声にならない声」
なんか、サタンの喋り方が動揺したのか、怪しい。そんな理由をもちろんボクは知っている。
マスクさんの正体に気づかない人なんて、そういないもん。
ちょっと意地悪く微笑むとボクはサタンの顔をのぞいた。
「どうしたの?サタン・・・・・そんなにショックだった?」
「いっっいやぁ・・・な。ちょっとした友人の名前が出ておっ驚いただけさ・・・ハハ。」
口調がますます怪しくなっていく。笑いだしそうになったボクはぐっと堪えた。なんだか、
ふらふらとした足取りで地面を離れるとサタンの姿が消える。
「う〜ん、ちょっとやりすぎたかなぁ?」
ボクはカーくんに話しかけながら、少し反省した。やっぱり、嘘つくって後味悪いね。