no title

4-880様

「お前が・・・欲しい」

狂気に満ちた瞳。冷たい、青。
ただただ、アルルを求め・・・歪む。

「お前の全てを俺にくれ」

頬を吊り上げ笑う。ワラウ。

信じられない驚愕と恐怖に涙目で震えるアルル・・・
闇の剣にえぐられた肩からはドクドクと鮮血が流れ、徐々に彼女から体力を奪っていく。
傷は深く・・・放っておけば間違いなく助からないだろう。

「しぇ・・・・ぞ・・・」

激痛と絶望。もはや立ち上がる力すら残っていないアルルの首を掴む。
それは想像以上に細く、か弱い。

「ぐぅっ・・・!!」

シェゾは容赦なくその腕に力をこめる。
日々この少女に勝つため鍛え上げられた腕・・・そして今日遂にそれは実現して・・・

「はは、わはははははは!!これで俺に勝てる者など存在しない!!」

さらに腕に力を込める。鍛え抜かれた握力はアルルの首を千切れんばかりに締め付け・・・
アルルは涙を流しながらもだえる。足をばたつかせ、シェゾの腕に爪を立ててみるも、
そんなことで抵抗になるはずも無く・・・。
薄れていく意識。奪われていく体力と魔力。そして命さえも。

「ぅぐぐぐ・・・!!」

とうとう泡を吐き出したアルルを開放するシェゾ。
しかしその手には再び闇の剣が握られ・・・

ずぶっっ

アーマーを貫き、アルルの胸を貫通する刃・・・
アルルはすでに焦点の合わない瞳で自分の胸を見下ろす。

飛び散る血・・・深々と突き刺さった剣・・・。
もはや痛みの感覚すらない。
あるのは、自分が密かに好意を抱いていた相手に殺されるという現実だけ。

薄れゆく意識の中、アルルの耳に入ったのはシェゾの高笑い。

(ボク・・・死んじゃう、の・・・かな・・・)


落ちていく意識。そしてそれは二度と目覚めることはない・・・・


筈だった。


「・・・ほえ??」

どれくらい時間が経ったのだろう?
気がつけば先程と同じ場所で目を覚ましていた・・・。
シェゾにやられた傷も無く、まるでさっきまでの事が悪い夢だったようにも思え・・・

記憶を整理してみる・・・

確か・・・サタンの塔の真下に辿り着いた時、シェゾと出くわした。
いつものように勝負もした。ここまでは正しい・・・。
問題はその後。
不覚を取った自分は・・・

(・・・殺されたんだ・・・)

余りにも鮮明すぎる記憶。
いつもとは違うシェゾの瞳。
まるで狂ったように冷たく・・・自分を見下ろす青い目・・・。

(まさか、ね・・・・)

悪い夢だったんだ、と勝手に解釈し、本来の目的を達成すべく塔を上る。
しかし、そこで待っていたのは・・・


「シェゾ・・・?!」

見間違えるはずもない、愛しき人の後姿・・・。
その向こうには・・・

「サタン!!」

血まみれで倒れる魔王。粉々に砕かれた水晶。

「シェゾ・・・。君がやったの?」

振り返る銀髪の青年。
その瞳は狂気に満ち・・・
さっきの出来事が夢などではなかったと思い知らされる。

「アルルか・・・目がさめたみたいだな」

言い、近づくシェゾ・・・白い服は返り血で赤く染まっている・・・・。

「シェゾ・・・?!どうしちゃったんだよぅ・・・」

恐怖がよみがえる。
震える身体・・・浮かんでくる涙・・・
そんなアルルを見てシェゾは嬉しそうに笑い、アルルの胸倉を掴む。

「きゃっ?!」

びりびりぃーー!!

そのまま服を引きちぎり、アルルの髪を鷲掴みにする。

「いたっ・・・!」

「アルル・・・お前が欲しい」

狂った瞳・・・
それはまっすぐにアルルを見つめ、顔を近づけ

「んんっ」

唇を奪う。

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