短文集 「ねぇ剣路、笑って?」 大好きな女性からの一言に、しかし少年は眉根を寄せて仏頂面を作る。 元々は些細なことで悩んで軽く顔を歪めていただけだったというのに。 さらに悪化した表情に、母である薫は悲しそうな表情を垣間見せ――そして、息子を笑わせようと 笑顔という仮面を張り付けた。 その表情が仮初のものであるということを少年が気付かないと思っているのだろうか。 ずっとずっと大好きな母。だけれど…… 胸の中にチクリと針が刺さる感触。 凍った表情を無理やり自力でほぐそうとして、上手くできなくてぎこちない笑み。 しょうがないだろう、なんて思う。 母さんの悲しそうな表情。 それが一瞬だったとしても、その表情を確かに見てしまったのだから。 そして自分の感情と裏腹に、彼女が心から涙を流していることは確かなのだから。 だから、と少年は無理やり笑う。 ――――あ、母さんがほっとした。 母親の様子が落ち着いて嬉しいのは確かなのに、胸のわだかまりが深くなるのは、 彼女が自分を通して別の誰かを見ているから。 誰を―――? ――――――――決まっている。親父だ。 そっくりなこの顔を何度疎ましく、恨めしく思ったことだろう。 こっちが鳥肌をたて恐ろしく思うほど若造りな父。 そんな父親に、自分は子供の頃から似ているとささやかれ続けてきた。 タチが悪いことに、成長すればするほど親父に似てきているという自分の顔。 母さんと結婚する前の父を知る人からは、うなじの上で一つ結びにしないかなんて言われる始末。 なんでも、流浪人とやらだった父親は当時、そんな髪型だったらしい。 冗談じゃないと思って後頭部の上に一つ結びにすれば、親父は親父で何か思うところがあるらしく、 遠い目で俺を見やがった。一体どうすればいいっていうんだ。 生き写しだと言われる父親とそっくりな顔に、こっちはうんざりだ。 誰かに考えてもみろと訴えたい。 自分は将来こんな風に老けていくんだというわかりやすい見本が、すぐ側にあるという状況に。 この状況を前向きに考えるというならば、少なくとも俺は40歳までは禿げないだろうと推測できることだろうか。 そして――こうやって自分の顔で、大好きな母さんを安心させてやれることだろう。 無理やり剣路はそう考えることにした。 どんな理由にせよ、母親が心を痛めている様なんて嫌だったから。 夫が所要で帰ってこない時、それが長期になればなるほど母は心配でたまらなくなるらしい。 そして…本人はわかっているのかいないのかは知らないが、夫とそっくりなわが子を見て、 『元気な夫の姿』を想像するのだ、と息子は感じていた。 だから、いきなり笑えと言われても素直に笑いたくなかったのだ。 きっと母は難しい顔をしている自分を見て、不安になったのだろう。 遠い地にいるあの人も、苦難に向き合っていないだろうかと。 ばか親父。 心の中で剣路は毒づいた。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ あの人が所用で出かけて随分日数が経ってしまった。 こうやって仕事で遠出して家を空けるのは度々あることだったが、いつまでたってもどうにも慣れない。 最初の頃ほど思考が不安でいっぱいになるなんてことはなかったけれど、 やはりいつも心配なのだ。 あの人はこの同じ空の下、今日も人々の為に頑張っているのだろう。 空に願う。 あの人が無事でありますように、と。 幾多の傷を背負い、心身共に傷ついて、それでもなお戦い続けるあの人が笑っていますように。 大地を吹き抜ける風のように、私の思いが彼のもとへ届きますように。 私はここで、あなたの帰りを待っている。 あなたの帰る場所が健やかであるように。 ほんとはね、貴方と共に戦いたいのよ。 貴方の言う『戦いの人生』に私も巻き込んで絡め捕ってしまって欲しい、なんて。 思っても口には出せないのだけれど。 でも覚悟は出来ているの。貴方が気付かないだけで。 目に見える人々の幸せを願う貴方。 貴方に会って私は泣いたり、笑ったりいろいろあったけれど、幸せよ。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 青い空。白い雲。心地よい風。 なのに。 「さいっあく……っ」 長い黒髪を高く一つ結びにした女子高生――神谷薫は憂鬱だ。 その隣で、友人である巻町操がケタケタと面白そうに笑うものだから、なおさら薫の機嫌も悪くなると言うものだろう。 誰もこない昼休みの高校の屋上で、超が付くほど古典的な『それ』を隠す方法を施された指を見る。 ずばり、包帯ぐるぐる巻き。 薫としては、こんなことになる筈じゃなかった。 突き指のせいじゃない左手の薬指のあり様を見ていると、思わず悲しくなってしまう。 「いいじゃないの、薫さん。いっそのこと包帯はずしちゃえばー?」 「もう、人事だと思っているでしょ操ちゃん」 ニヤニヤと笑う友人が憎たらしい。 ふてくされて、薫は顔をそむける。 左手の薬指の包帯の下には、指輪。 誰から贈られたものでもない、これは結果的に『薫が買った指輪』なのだ。 つい出来心で、二人でアクセサリーショップで指輪を見て。可愛い指輪があったから、 ちょっとはめてみただけ。いつか、この指にも指輪がはまる時がくるのだろうか…なんて乙女なことを考えて、 ちょっとだけと思い、薫がその指輪をはめてみたが最後。 外れなくなってしまったのだ。 やむなくその指輪を買うはめになったのはともかく、外れないのはゆゆしき事態。 石鹸を使うなど、色々努力はしたものの、全て空回りな努力となってしまっていた。 「はめる時はちゃんとはまったのに、抜けないなんてどういうことよぉ〜」 絞り出すような声が自然と口をついて出る。 抜けなくなってから、薫の思考はそのことでいっぱいになっていた。 「だからぁ、薫さん。いっそのこと包帯といて指輪むき出しにしちゃえば〜?」 「…………」 「薫さん可愛いんだしもてるんだから、虫よけになるよ。 彼氏もいないし、今は誰とも付き合うつもりないんでしょ?」 「…………」 「―――――薫さん?」 「三日くらい絶食したら、抜けるかな…」 そう言う薫は真剣そのもの。 涙をためた目で恨めしそうに左薬指を見つめる。 包帯を解いた先には銀色の輝き。 「何もそこまで…腹くくればいいじゃん。 いつかきっと抜けるよー」 「いつかじゃだめなの!!」 不思議なことに、昨日お店で薫が見たときは可愛く見えたその指輪も、今や邪魔者にしか見えない。 薫の思考と身体は、ここにはめるべきものはこんなモノじゃないと全力で訴えかけてきている。 第一、こんなものをつけていて誤解を招いたらどうするのだ―――それだけは絶対嫌だ、と思う。 ――――彼に知られるのだけは絶対にごめんだ―――― そう考えたのもつかの間。 薫と操、二人だけの空間にまさかの闖入者。 屋上のドアを開ける音を背景に、とっさに薬指を後ろ手に隠した。 現れたのは、同じクラスの相楽左之助。 「お、いたいた。嬢ちゃん。緋村センセがお呼びだぜー。お前今日日直だろ」 ぎくり。 薫の体がこわばる。 「国語科準備室に来いってよー」 「えー、緋村め、なにも生徒を貴重なお昼休みに呼び出さなくたっていいのにさー。薫さん、無視っちゃおうよー」 「おいおい、ヤロウに頼まれた俺の立場ってもんがあるだろーがイタチ娘」 「イタチって言うなトリ頭ぁっ」 ――誰も知らない。 ――知られてはいけない。 「操ちゃん、私行くね」 苦笑いして、薫はその場を去る。 呼び出されたなら逃げられないから。 二人の秘密。 誰も知らない、秘密の恋。 準備室の前で少女はため息。 思わず包帯を巻きなおした指を見つめていた。 どうかばれませんように。 ――――――彼だけには。 扉の前で深呼吸。 気配に目ざとい彼の事だから、きっと私が扉越しにいることはばれているのだろうけれど。 でも、私達は学校ではあくまで『教師と生徒』だから。 そして、ノックの音が準備室に響く。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 例えばこんな日。 朝目が覚めて、隣にはあなたがいないの。 いた、ということだけは私だけが知っているのだけれど。 かつてあったぬくもりはもう冷めていて。 私は、彼がもう行ったことを知る。 どこへ行ったのか、なんて馬鹿なことは思わない。 決まっているから。 彼は、人々の為に―――転じて、私たちの為に戦っているの。 それはいつものことだと。 わかっている筈なのに心の片隅が悲鳴をあげている。 私は彼を支えたいのだから。 支えは、頑丈であればあるほどいいから、私はそんな悲鳴を抑え込む。 彼は元気だろうか。無事だろうか。笑っているだろうか。 考えながら、私は彼の帰る場所を守る。 彼がただいまと言ってくれた場所。私の大好きな場所。 ここが、彼の帰る場所。 彼が帰ってきたら、笑顔で抱きしめてあげたい。 そして言うの。 おかえりなさい。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ お昼過ぎの甘味処に、むくれた少女が一人。 「………むぅ」 隣どころか、まだ時間が早いということで、空いた店内には人気は少ない。薫の隣も空いていた。 だけど、本来なら隣に座る人物がいた筈なのだ。 その人と二人で他愛無いおしゃべりをして、美味しい甘味を食して……の、予定だったのに。 視線を目の前に置かれて大分たつ善哉(ぜんざい)から逸らして逸らしてその先。 隣に座る筈だった人は、そこにずっと立っている。 緋色の髪の思い人の隣には、遠目からみても美人だとわかる女性。 男の表情はこちらを背にしている為わからないが、女性の頬を染めた、はにかんだ笑いが見えるとそれに反比例して薫の顔から笑いが消えていって。 ……そして、むくれた表情にまでなっていた。 (剣心の馬鹿。善哉冷えちゃうじゃない…!!) 現に善哉と一緒にきた茶は――お代わりした後なのだが――とうに湯気を失っていた。 茶は飲んでも善哉は彼と食べたかったから、ずっと待っているのに。 剣心と約束して、二人で訪れた甘味屋。 確かに剣心は柔和でほがらかで、傍目から見てもその人の良さが伝わるだろう。迷い人が道を訊いてくるのも不自然じゃない。 それに、彼は人の役にたつのを好むから、率先して力になってあげる。 それは好ましいこと――薫も異存はないのだが。 よりにもよって折角の二人の時間を邪魔しなくてもいいではないか、と思うのは我儘だろうか。 しかも、相手が若く綺麗な女性となれば尚更気が気ではない。時間も長いし。 (剣心も剣心よ。案内が終わったのなら早く戻ってくればいいのに…!!!) 見るからに、女性が剣心を気にいって放したがらないのだと思った。そう思いたかった。 (早く剣心を解放してよ…!!!) さっきまで美味しそうに見えていた善哉も、今となっては全く食欲をそそらない。 視線は常に二人の動向に向かってしまう。 と、件(くだん)の女性がいきなり剣心の腕をひいて、自分の腕とからめるのが見えた。 気付いたら身体は往来の中。 「ちょっと貴女、それ以上剣心に触らないで!!」 瞠目した表情で二人と――その時の薫には見えていなかったが往来の人々や甘味屋の客や従業員までもが振り返る。 「剣心は私のなんだから!!!」 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 「母さんって、父さんとの歳の差、十一もあるんだよな」 庭先で稽古に区切りをつけて休んでいた少年が、不意に口を開いた。 それを見つつ針仕事に精をだしていた女性が微笑む。 「なぁに、いきなり」 手は針を持ったまま、包容力のある眼差しが息子にむけられていた。 「……別に、不意に思っただけだけど」 どこかふてくされたように少年は言い捨てる。 その質問をしたことに照れくささでもあるのか、顔をそむけて休めていた手に力を入れた。 竹刀が風を切る音が響く。 その様を見て、母親は思いだした。 そうだ。自分の息子に、仲の良い女友達ができたらしい、と風の噂で聞いたことがある。 その子のことを意識しているのかしら。 均整の取れた体格は華奢そうに見えて実は力強い。 昔は可愛いとちやほやされていた顔立ちも、いつのまにか男らしくなっていた息子。 まさかもう結婚を考えている…とは親心からちょっと思いたくないのだが、彼女の夫が十五で妻を娶ったことを思い出すと、そう遠くもない話に思えた。 元服を控えた息子の、素振りの音が鳴る。 いい音だ。 「……そうね、十一も歳の差があるわね」 懐古の表情で、薫は苦笑した。 あの人と一緒になって、当たり前のように側にいるから、少し忘れてしまうのだけれど。 でもやはり、不意に彼の生きた年月を突きつけられる。 「………一生縮まない差が、にくたらしいと思うことも、あるのよ?」 そう言って、女の顔が笑った。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 「………薫、いい加減カメラをしまったらどう?」 「嫌」 「…って言っても、さっきから俺の方にばかりカメラを向けてるじゃないか」 「うん。そうね」 「………そんなにカメラが好き?」 「うん、好き」 上機嫌で薫は、先日買ったばかりのデジタルカメラのメモリーを見ている。 薫は色んなものをとった。そこにある風景や、緋色の男を被写体に、残り容量が切れるまで。 剣心がデータを見せてもらうと、中にはブレてロクに映っていないものや、シャッターを押す薫の指が入ってしまった画像も多い。 「消したらいいのに」と言う剣心に、嫌だと反抗していたものの、新たな写真を撮りたいという欲求と、 データ保管場所の問題から、薫はしぶしぶとデータを選別し始めた。 しかし、数々の写真を見るのが楽しくなって、デジタルカメラに没頭し、ようやく頭をあげたかと思えば、空いた容量分、剣心にカメラを向けてやまない。 「あっ、ちょっと! カメラ取りあげないでっ」 「いい加減俺を撮るのにも飽きただろう?」 「飽きてないっ、飽きてないから返してー」 はぁ、と剣心はため息をつく。 後ろ姿や、ロクに剣心がカメラにむかって構えてない時まで、薫は剣心を撮り続けていた。 「一時没収」 「酷いっ、私のカメラなのにー!」 「これ以上は肖像権の侵害ってことで」 「じゃあ剣心以外のものを撮るからー――『わっ!!!』」 ごんっ☆ 「いたた………あ」 薫の手には再びデジタルカメラ。 にやりと笑う。 「………彼氏を傷つけてまでカメラが欲しいですか…」 「もう、そんな言い方ないじゃない。だって、カメラって凄いじゃない」 「?」 「明治に撮った写真も現代まで残っているのよ? こんなに手軽に記憶を留めておけるなんて、凄いじゃない。私も家計切り詰めてでも写真一枚とっておけばよかったわ」 視線の先には憧憬。 けして楽しいことばかりじゃなかった。辛いことも、別れもいくつも経験したけれど、 得たことも、幸せな記憶も、かけがえのない大事な思い出。 「………」 「剣心?」 「………じゃあ、俺も…拙者も、薫殿の白無垢姿を撮っておけばよかったな」 「え?」 「今度は、教会式の結婚式がいいんだろう? ウエディングドレスも綺麗だろうけど、ね」 あの時の薫は、とても綺麗だったから。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ しんしんと降る雪を。 山々を白く染め上げる雪を。 あなたは綺麗だと言いました。 でもあなた。 雪は冷たいのです。 気づいて欲しくない。 気付いてほしい。 貴方の傍らの雪が汚れていることを。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 「薫殿はあんなにも綺麗な女人でござったろうか」 は? と、効果音付きで振り向いて、まじまじと俺は隣に座る赤毛の剣客を見つめた。 胡乱な視線で。 当の剣客は、そんな弥彦に目線を向けることなく、じっと、庭先で友人だという女達とおしゃべりに興じている弥彦の師匠を見つめている。 ――薫殿はあんなにも綺麗な女人でござったろうか―― いきなり何言うんだこいつ。 常ならばそんな恋話など俺にすんなよとかわしてしまうところなのだが、 よりにもよってその話をふってきたのは自分の尊敬して、いつか追いつきたいと思ってやまないその人だ。 それに、彼がそんな話を口にするのを初めて聞いた。 刹那あっけにとられる弥彦にかまわず、剣心はなおも言葉をこぼす。 「いや…出会い頭から、綺麗な女人だとは思っていたのだが……最近、やけに綺麗にみえて… 弥彦はそう思わぬか?」 思いをぽつり、ぽつりと告げる剣心は、どこか虚ろな表情をしていた。 胸の疑問が不可解そうで、それを不可解だと思う自分に戸惑っているような。 そんな彼を初めて見たから、驚きつつ―――、少し心が浮きだった。 この会話はつまり、剣心が薫のことを意識してるってことじゃねえか? 薫が剣心を思っていることは傍から見ても確かなのに、逆はどうかと訊かれると、多分、とか、おそらく、とか曖昧な言葉がついていた現状。 絶対好きにきまっとるわ!、と断言するのは赤べこの妙くらいだった。 それくらいロクに感情を周りに悟らせない男だけに、弥彦もどうなのだろうかと、気にかからなかったことがないわけではない。 ……薫、よかったな。 するりと心に感情が浮かんできた。 「俺は剣心と会う前の薫を知らねぇからな。 一慨には言えねぇが、確かに、あいつよく微笑むようになったかもな」 暗にお前が綺麗にしたんだろ、という意図をこめる。 それはともかく、弥彦が出会ったばかりの薫は何にでも必至だった。 人斬り抜刀斎事件の影響で弟子を失い、道場の信頼回復の意味もこめて、大きく立ち回ったりと。 気丈だな、と思っていたが、今思うと剣心が支えていた影響も多かったのだろう。 だからか、出会い頭の薫の顔を思い出そうとしても、今の薫を知っているからこそ、当時何とも疑問に思わなかった笑顔もどこか痛々しく思えて。 薫は綺麗だと思うけれど、剣心の言う出会った頃の薫は、どんな顔をして笑ったのだろうか。 弥彦にはわからない。 それでもきっと、今の薫のほうが綺麗だろう。 彼に恋をしたのだから。 「薫殿は、よく笑い、怒り、表情がころころ変わる。 どの表情も、拙者とは違いまがいものではない―――」 「むしろ剣心が仮面を被りすぎるんだろ」 「……だからだろうか、見てて飽きることがなくて…」 お前はいくつだ。 弥彦にもわかる感情が剣心には捉えられていないらしい。 見てて飽きることがないから見る、じゃない。 剣心が薫を見ていたいんだろう? と言いたくなるが、そこは抑えた。 逆に、剣心の本音をどうにかして彼の口から言わせようと、言葉を選んでみる。 「どちらにしろ、薫が綺麗だと剣心も嬉しいだろ?」 「そんな言い方は…確かに、見目は良いにこしたことはないが――」 「剣心はどうして薫が急にぐんと綺麗になったって思うんだ?」 なかなか言葉を選ぶのが難しい。 これで間違ってないだろうか? 「……ふとした横顔とか、こちらに微笑んでかけてくる姿とか、目をひきつけられるでござろう?」 <途中中断/京都編前あたりのイメージ> あとがき+++++++++++++++++++ 明治現代入り乱れ。 乙女で、上手な剣心に翻弄されてしまう薫ちゃんが好きなので薫ちゃん乙女率高し。 BACK Copyright (c) Raiki, All rights reserved.