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Ti amo…
 週末はいつもメールが少ない。
 そんなことは初めから解っていたはずなのに、今はただ心が痛い。
 誰があんな男を好きになるもんか。
 そうやって高を括っていたはずなのに、気がつけば堕ちていた。

「誰かを不幸にした分、自分に戻ってくるんだよ……」

 誰かの言葉が頭から離れない。
 それなのに想いは止まらない。止められない。止めたくない。
 戻ってくるならくればいい。
 何一つ、覚悟なんてないけれど、その痛みで壊れてしまいたいと思うから。

 キスして。
 抱き締めて。
 髪を撫でて……

 傍にいて。
 帰らないで。
 頬を撫でて……

 言いたくて、言えない言葉。
 言ってしまえば、貴方は私が重くなる。
 言いたくて、堪らない言葉。
 言ってしまえば、もう元には戻れない。

 Ti amo...


 平日はいつも電話をくれる。
 声を聴けるだけで嬉しかったはずなのに、今はただ心が痛い。
 何でこんな男を好きになってしまったの。
 苦しいだけの都合の良い相手に、自らなり下がっていた。

「つくづく、そういう体質の女っているよね……」

 誰かの言葉が胸を刺す。
 何もかもに謝りたい。ごめん。ごめんなさい。許してください。
 誰かを傷つけたかった訳じゃない。
 向いてない。向いてないの。この痛みで壊れてしまうと思うから。

 私が必要?
 いつまで?
 お願い傍にいて……

 私だけ?
 何してる?
 お願い此処に来て……

 聴きたくて、聞けない言葉。
 聞いてしまえば、終わりが見えてしまうから。
 聴きたくて、堪らない言葉。
 聴いたところで、嘘を探してしまうのに。

 Mi ami...?


 時間を巻き戻して、もう一度貴方に出逢いたい。
 声に出せない想いばかりが膨らんで、殺めたいほど貴方にのめり込む。
 切なそうに微笑まないで。
 私の存在自体を、我が儘だと思わないで。
 笑って。笑っていて――


 乱れる髪。
 軋むベッド。
 降り注ぐ吐息……

 髪を梳く指。
 指輪の痕の消えた指。
 時計を外して貴方が笑う……

 言いたくて、堪らない言葉。
 聞きたくて、堪らない言葉。
 吐き出しかけては躊躇って、唇を噛み締めながら俯けば
 私の頬を掌で包む貴方が、そっと囁いた。

「言えよ。全部叶えてやるから――」

 その言葉で、私はまた貴方に溺れるんだ……
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photo by © 戦場に猫