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◇◆ KC アルファベット対抗戦 ◇◆
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その話は、我が担任教師である桜庭からもたらされた――
「ということでだ、風早伝統にのっとり、今年もまたアルファベット対抗戦だ!」 おーっ! と叫んでやりたいところだが、今年入学したばかりの俺らにとって、 伝統だとかアルファベット戦だなどと言われても分かるわけがない。 でもなぜか、極端に喜ぶ男が一人…… 「おーーっ!」 そう、それは俺!(とりあえず、叫んどけ!) 一学年、A組からJ組までの十クラス。 他学年との親睦を深めるとともに、体育祭を盛り上げようと始まったこの企画。 つまり俺らE組は、二年E組・三年E組とタッグを組み、十チームで争われる勝敗? 「勝ち負けにこだわるタイプじゃないけどさ、やるなら勝ーつ!」 文子、充分こだわりまくりだろ…… 「ですよね。僕たちが皆を引っ張っていきましょう!」 ワトソン、足を引っ張るの間違いじゃ…… そんな話で盛り上がる我がクラスに、ちょこんと現れた一人の女子。 「け、恵子ちゃん?」 ドアから少しだけ顔を出し、恐る恐る小島の名を呼んでいる。 そんな彼女の襟元の、ネクタイラインは三本線。 一年は一本、二年は二本。だから彼女は三年だ。(わかりやすっ!) 「あっ、鈴先輩!」 珍しく小島が声を荒げ、文子並みにピョンピョン飛び跳ねながら、彼女の元へと向かう。 先輩という敬称をつけるところからして、小島の部活、美術部の先輩なのだろう。 三年が一年のクラスに出向くなんて珍しいことだ。 だから興味津々のやつらが騒ぎ出す。 「うっわ、可憐で清楚! 誰か爪の垢もらってこいよ!」 ゴエモンが、チョコを食べることすら忘れてそう言い出せば 「癒しの森の姫? あぁ、あなたに癒されたい……」 心底懇願するように、次元が指を組んで祈りを捧げる。 けれどワトソンが、大きな溜息をつきながら 「あれは、庇護欲をそそられますよね……」 だなんて同調した途端、次元とゴエモンがツッコミと言う名の猛攻撃開始。 「ワトソン、お前は悪魔を庇護しろよ!」 「悪魔に庇護がいりますか?」 「じゃ、援護だ」 「悪魔を援護したら犯罪です」 「なら、ルパンが文子を保護しろ!」 「ばっ、それを言うなら、捕獲だろ?」 「保護でも捕獲でもドントコーイっ!」 文子のことなら任せとけ! ってな感じで両腕を高々と掲げ、雄たけびを上げたところで、文子・中島・悪魔のカッコウ連唱。 「あぁ?」 「へぇ?」 「ほぉ?」 「呪う……」 お、奥田さんもいたオクダ〜!(byマイブーム) なんだかんだの、出場種目争奪戦。 ワトソンのリレーアンカー立候補に誰もが固まり、ゴエモンのパン食い競争出場に勝利を確信。 さらに全員参加の男女混合二人三脚に、否応なく色めき立つホームルーム。 絶対文子と俺が組む! と騒いだけれど、背の高さが違い過ぎると即却下。 結局文子は、ワトソンと組むことになり(ダブルチビフミ) ワトソンの相手が文子なら、何の文句もない悪魔と俺が組むことに。(ダブルフミフミ病) ところが三学年合同練習場で、予想外の一期一会が勃発。 「あ、鈴ちゃん先輩だー!」 文子が叫ぶ方向に顔を向ければ、足に結わく紐を持ったまま、一人佇む癒しの女王。 「鈴ちゃん先輩、どうしたの? 二人三脚の相手がお休み?」 「いや、そのね? わ、私の相手になってくれる人がいないの……」 「えっ? なんで?」 文子がそう聞いた瞬間、背中に走る妙なイタイ視線。 また魔女の呪いだと思いながら振り向けば、美しい微笑をたたえたゴージャスな男が 校庭のタイヤに座り、のんびりと練習を見学しているのが目に映る。 あの男からは、ヤバイオーラが放たれている。(呪いっぽいやつ) しかも翔也並みの王子様加減?(エセっぽくはないけど) 俺の妖怪アンテナが、ピキンと作動!(キタローっぽく!) マズイ・ヤバイ・クサイ! これは明らかに文子のストライクゾーンだ!(バリメロドキュン!) ところがそんなゴージャス男に向かって、既にお知り合いっぽく名を叫ぶ文子が走り出す。 「ぬおっ! あそこに居るのは、バリスタのアイちゃんじゃないですかーっ!」 ま、待て文子! お前には、バリドロのルパちゃんが居るだろがっ!(バリバリドロボー) 「やあ、チビフミちゃん。最近はご無沙汰ね」 語尾に音符がついちゃうような、可愛らしい喋り方をする男。 こいつは明らかに、接っ客っ業!(バリスタです) なんでそんなやつが、俺の文子と知り合いなんだと思いつつ、二人の間に割り込んだ。 そして、文子に手を出してみろオーラを漲らせ、歌舞伎町ナンバーワンの座は譲らないぞ口調で自己紹介。 「いやぁ、初めましてル・パ・ンです」 俺の手が美しく弧を描き、華麗に口元へと宛がわれたところで、ゴージャスくんが言い出した。 「ラパンじゃなくて、ルパンなの? 男にしては変な名前だね」 ラ、ラパンは作者の愛車……(しかも赤!) 「でも君の場合は、ジープって感じよね」 な、なんで車にこだわるの……(なんかわかるけど) 「ルパンが中古のジープなら、アイちゃんは新車のベンツね!」 ふ、文子、誰も中古とは……(言ってません) 「チビフミちゃん失礼よ。僕はどう見てもハイエースでしょ?」 ベ、ベンツが失礼ってお前……(そうなのか?) そんな意味もない会話に勤しむ俺たちを、遠くから呼ぶワトソンの声。 「ルパンくん! 久島さん! 練習を始めますよ!」 「うーい! じゃ、アイちゃんまたね!」 「うん。チビフミちゃん頑張ってね」 これでようやく、この胡散臭いゴージャスくんから解放されると思いきや、俺の背中につぶやき声がぶつかった。 「お姫様を守る王子様は、大変よね……」 聞き捨てならないその台詞に立ち止まり、振り向きざま言い放つ。 「あ、あんた、分かるのか?」 するとゴージャスくんが、俺に向かって人差し指を突きたてながらビシっと言い返す。 「当然だ。君の気持ちは誰よりも分かる!」 ア、アイちゃん、君はいいやつだ……(号泣中) 「そうだ、ルパちゃんになら、鈴ちゃんのことを任せられるね」 「は? 鈴ちゃん? 誰それ?」 「失敬だな、あそこに居る、僕の可愛いお姫様だよ」 「そう? 文子のほうが可愛いけど?」 「ルパちゃん、君の想いも揺るぎが無いね……」 ところが突然、眉間に縦皺を寄せて、アイちゃんが今にも泣きそうな顔でつぶやいた。 「本当は、誰かに触られるのも嫌なんだけど、二人三脚に出場させないわけにはいかないでしょ?」 そんな悲しげなアイちゃんを見て、手の甲で涙を拭いながら囁いた。 「ア、アイちゃん……そ、その気持ちは痛いほど分かるよ……」 「そうでしょ、ルパちゃん……」 互いの肩をつかみ合い、スクラムを組んで誓いを交わす。 「お、おれが、鈴ちゃんのパートナー役を、アイちゃんの代わりに引き受けるよ……」 「ル、ルパちゃん……君はアルより最高な、僕の親友だ!」 ガシっと肩を組む、分かり合った妙な男二人組の図。 「でも、やるなら必ず勝つよね?」 「えぇ、勝たねば、なんの意味もないわ!」 「王子は姫のために戦い、そして勝〜っつ!」 「おーっ!」 そんなアイちゃんと俺を、遠くから見ている一味のアフォ会話。 「あの二人は確実に、ファイト一発っ! と、叫んでますよね?」 「で、どっちがケイン?」 「バリスタが、マッチョじゃヤバイだろ?」 「バリスタって、にしきのあきら?」 「それは、バリバリのスターです」 「なんだよ、江守ぃ!」 「それは、中尾あきら! 『あきら』はバリスタに関係ありません!」 こんなことを囁かれていたなど、知るもんか――(でも、バリスタって何?) ◆◇◆◇◆◇◆ 一期一会の帰り道、知りたがり屋の文子が切り出した。 「ねぇルパン、アイちゃんから何を貰ったの?」 どうやらアイちゃんから別れ際に渡された、ブツのことを言っているらしい。 黄金色に輝く、ハチミツみたいな液体が詰まった小瓶。 使用方法をうっかりバッチリ、アイちゃんから聞いちゃったものの、そんなこと恥ずかしくて話せない。 あぁ、この手であのブツを、使う日なんて来るのだろうか?(多分無理) ヒダの一枚一枚に、丁寧に塗りたくるって……(恥ずかしい〜) しかも俺の全てを、く、くわ、咥え込むまでは痛いんだぞ?(ポッ) だけど、そこから先は……(ハウッ) 「ルパン、だから何を貰ったんだってばっ!」 「い、いつか必ず使おうね♪」 「はっ? てか、何をまた赤くなってるのさ?」 突然文子の腰を引き寄せて、抱きしめながら低く囁く。 「これから試す?」 「何をだよっ……んんっ!」 驚き見上げる文子の頬を両手で固定して、吸い付くように唇を塞いだ。 こじ開けた文子の唇に舌を滑り込ませ、戸惑う文子の舌を舌で突く。 「文子、舌を出せよ……」 舌で下唇をなぞりながらそう囁けば、言われるがままに、文子が舌をそっと出す。 差し出された文子の舌を唇で吸い込み、舌の裏を舌で撫で上げた途端に、文子の膝がカクンと落ちて 「ル、ルパン……」 崩れ落ちまいと俺にしがみつきながら、甘い吐息のような声で俺の名を囁いた。 けれど、いつもの文子以上に、しがみつかれる腕が重い。 だから何気なく横目で腕を見下ろせば、ギョロンと見上げる魔女の顔―― 「いやん。見つかっちゃった♪」 ひぃ〜っ! ってオイ、ふざけんな?(でも言えないけど) 「こんなところで、不純異性行為はダメなのだぁ〜!」 純粋異性行為オクダぁ〜!(でも言えないけど) 「ふみりん、キスってどんな味なのだ? こうもりっぽいなのだ?」 「こ、こうもりじゃ、ないとは……」 ア、アイちゃん、俺には当分、このブツは使えそうにありません…… でもいつか、いつか必ず!(500話記念とかで) そして、体育祭の勝敗は、10万HIT御礼SSへ続く!(えぇ?) 〜その頃の、アイちゃんと鈴〜 「アイちゃん、ルパンくんに何をあげたの?」 「痛くなくなる、おまじないグッズよ?」 「そんなのがあるんだ? いいなぁ、私も欲しいな」 「鈴ちゃんは、二回も使ったじゃない?」 「え? いつ使ったの?」 「チビフミちゃんは、一回で済むといいよね♪」 「え? 文子ちゃんが使うの? だってアイちゃんはルパンくんに……」 「だから鈴ちゃんは、違うやつを使おうね♪」 |
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