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◇◆ 彼が盗んだもの 効果音 ◇◆
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椅子に腰を掛けたまま両頬に手を当て、撓垂れくねりながら恥じらい告げる。
「キャ! ルパンさん、危ないから立っちゃ駄目。文子怖いぃ」 そこで瞬時に立ち上がり、誰も居ない場所へ華麗に手を差し伸べ語る。 「文子さん、例え観覧車が落ちてしまったとしても、僕が必ず貴方を助けます。この命に代えても……」 「ル、ルパンさん……」 「そんな、ルパンと言わず、どうか則巻と呼んでください!」 そこで、思考回路に割って入るテレパシー。 『則巻』 「はい! 文子さ……」 頬を赤らめ振り向けば、堂々威風な福島の仁王立ち。 さらに、俺の肩へ手を置き、何度も首を横に振りながら、憐みの想いを告げる。 「ルパンよ、無理のあり過ぎる妄想は片腹痛い」 で、ですよね……(コーン) 励ますように、俺の肩を数回叩いて強く肯くと、この話は終わりだとばかりに福島が身体を翻す。 そして大きく息を吸い込み、後方で固唾を呑む面々に、ガッツポーズで気合いを叫ぶ。 「いいかお前ら、ワンダーランドサイドの準備は万端だ!」 「おーっ!」 「鎬を削る戦いだが、気合いで乗り切れっ!」 「おーっ!」 「最後に、最も肝心なことをお前らに伝える。いいか? アイウエっ!」 「オーーーーッ!」 どう肝心なのか尋ねてみたい、ルパン永遠の16歳。(でも叫んじゃったけど) 事の始まりは、我がラブリー文子の秘密計画が漏れたためで、誰にも内緒で事を進める文子に憤慨したやつらが、邪魔邪魔作戦を練り上げた。 秘密計画と言っても、勘違い続行中の文子が、ただ単に、リアルフジコと遊びに行くってな企画だ。 それでも、ワトソンを挟み、リアルフジコと何かと対立している福島にとっては、そんな文子の行動が面白くないのだろう。 そこで、悪魔司令官長の下、どこまでも二人を邪魔してやろう作戦が企てられたのだが、何だかどうも、気が進まない。 なぜならそれは、チクったのが俺だからだっ!(ドーン) オトコ香る。たる、ネーミングだけは男気漲る薔薇臭いガムを噛みながら、相変わらず踏ん反り返った次元がチャチを入れる。 「しかしまた、よくお化け屋敷に潜りこめたよな?」 そこで、優等生ワトソン対劣等生次元の、どこまでも噛み合わない会話が勃発。 「嘘も方便と、昔の方は上手いことを言いますよね」 「なんだワトソン、どこ地方を操った? 東北か?」 「は? いや、僕はただ、本年度の風早文化祭にて、お化け屋敷の模擬店を出店する運びとなりましたが、曖昧模糊故に、蛙鳴蝉噪ばかりを繰り返しておりました。けれど貴社のお化け屋敷に深く感銘を受け、より格物致知を高めたく存じ……」 「ま、ま、待て、何語喋ってんだ。そんな方言、聞いたことねーぞ!」 次元、これは、ガンダーラ語のモンキーマジック弁だ(グォ〜ン) 苦虫を噛み潰したような顔で、眼鏡のフレームを持ち上げるワトソンが、脱線し掛けた話を戻す。 「ちなみに、時給を戴かない代わり、乗り放題パスを頂戴しました」 そんなワトソンを、リズミカルにピーチョコを貪るゴエモンが褒めちぎる。 「ワトソン、お前って、ピーすげぇな!」 「ピーは解りませんが、こちらは福島さんのお手柄です」 そこで俺もその会話に加わり、己の切れ者具合を示す言葉を投げかけた。 「なるほど。悪魔も、ガンダーラマジックを使ったのだね」 「ガンダーラマジックも知りませんが、福島さんの場合は、その……」 えぇ。当然ここで、脳へダイレクトに伝わる悪魔のお告げ。(ドドン) 『下等生態よ、四の五の言わず、乗り放題にするが良い――』 「悪魔語か」 「悪魔語だ」 「悪魔語です」 「デビルラージ!」 ご、ゴエちゃん、それじゃ、Lサイズの悪魔……(パフ〜) 次元に男気漲るガムを要求し、互いにニヤニヤしながら、その匂いを嗅いでいるところで、ゴエ&ワトの息ピッタリな漫才開始。 「石川くん、似ているようで、意味合いが全く違います」 「え? 違った? じゃ、デビルチャージ?」 「悪魔を補充してどうするんですか」 「じゃ、ジャージでいいよ」 「戦い易い服装は、地球の危機に繋がるかと」 「ニュ、ニュージャージーだ!」 「地域限定の悪魔は、住民の方が気の毒です」 「え? ニュージャージーは牛乳だろ?」 ゴ、ゴエちゃん、きっとそれは、ニュー製品……(モオォ〜) ガムを脇の下に擦りつけ、これが男の香りだと主張すれば、ゴエモンが、負けじと股間に擦り付ける。 そんな俺たちの姿に憤慨した次元が、歯を剥き出しながら話を戻す。 「もうよ、いいから配役を決めようぜ!」 すると、これだけは絶対に譲れないといった勢いで、ゴエモンが騒ぎ出す。 「俺は何がなんでも、ネコ息子ゲットっ!」 「まぁ、確かにドラ息子だからな」 「なんだとっ! ネコ型ロボットを馬鹿にすんなっ!」 「ドラちゃんは関係ねーだろ」 そんな二人の輪に飛び込み、瞳をウルウルさせて懇願する。 「俺は、送り狼になりたい!」 「そ、それは俺もやりてーな」 「でもよ、それって食えねーじゃん」 ネ、ネコ息子は、食えるんだな……(キュイン) 「ぼ、僕は昔から、一度でいいからフランケンシュ……」 「史彦くん、ちょっと今いいかしら?」 颯爽と現れたリアルフジコが、熱く語ろうとするワトソンを否応なく止めた。 そして、尋ねた割に、ワトソンの返事など聞かないまま、用件を語りだす。 「実は久島さんからダブルデートに誘われてしまって。でもお相手を頼める方が、私には史彦くんしか思い浮かばないものだから」 こうなれば当然、この方のご登場。 「ほぉ? 浮かばないのなら、嫌というほど浮かべてやるものを」 「お黙りなさい悪魔。人間界の催し物に、異界の者が口を挟む権利はないの」 「あぁっ?」 バナナで釘が打てる程、凍える空気が張り詰める中、KYなやつらは、どこまでもKYに現れ、スタンダードな我が道を、堂々と行進しながらKYを語る。 「ゆうこりんも、ダーリンと一緒にお化けになっちゃうのだぁ! 怖いのだぁ!」 「ルパーン! 話は聞いた。素晴らしい修行じゃないか。どうだ、ここは一つだな?」 「あぁもう、やっと桜庭が携帯を返してくれたよ。ん? みんなで何やってんの?」 か、可愛いけど、文子も空気を読めません……(ギュムッ) ◆◇◆◇◆◇◆ やってきちゃった、決行当日。 だけど、早く文子とキスしたいから、お化け屋敷珍道中はすっ飛ばし、観覧車前まで早送り。 文子を担いだまま観覧車に乗り込んで、スーパーヒーローばりに、続くやつらを眺め見る。 そして、呆然中の文子を尻目に、ルパちゃん実況アナウンサー開始。 けれど、とりあえず、これだけは言っておこう。 会話は全てアフレコだっ!(ドーン!) リアルフジコとワトソンが、俺らの次に乗り込んだけれど…… 「はぁ、ようやくゆっくりできるわ」 「そ、そうでもないかと……」 「あら、なぜ? 私とではご不満だったかし……ひぃっ」 「空中での戦いを選ぶとは、お主も乙だのぉ?」 予想通り、悪魔福島も滑り込みセーフのご搭乗。(シャキーン) 第二リンクでは、男気漲るはずの男が、男気衰退にて必死の防御を展開中。 「ダーリン、早く乗るのだ♪」 「いや、め、滅相もない……」 「乗れというのが、わからんのか? あ?」 「い、いえ、乗らせていただきます……」 次元のレベルが1下がった。へっぴり腰を覚えた。(パパパ パッパッパー) さらに、魔女と次元コンビから一歩遅れて、モジモジとっつぁんが影薄小島に? 「じ、自分は、こう見えても十七歳でありまして」 「はぁ」 「か、彼らの色に染まらぬ貴女は、う、美しい……」 「えぇ?」 「是非、美しい貴女と、空の旅を、その……」 「や、え? あ、はい……」 とっつぁん選手、やりました! 口説き落としの一本技勝利です!(ピピーッ) けれど、最後のやつらは、アトラクション待ちの列を逆走中。 「久恵、あっちでソフトクリーム食おうぜ!」 「あ、うん。でも、ゴエモンの奢りだよね?」 「えーーっ?」 「あたし、ミックス〜!」 ゴエちゃん、後頭部の赤いリボンが素敵だね。(ニャーッ) 窓から入る隙間風が、俺のマフラーをはためかせる。 肩幅に開いた足と、腕組みといった出で立ちで、悠然と階下を見下ろす俺に掛かる声。 「ルパン、何立ってんだ! 危ないから座れっ!」 ちょっと違うけどぉ、聞き覚えのある台詞に、オスカー男優スイッチオン。(トオーッ) 「文子さん、例え観覧車が落ちてしまったとしても、僕が必ず貴方を助けます。この命に代えても……」 「結構です」 「そんな、ルパンと言わず、どうか則巻と呼んでください!」 「遠慮します」 ふ、文子、そんな台詞は脚本にないよ……(ガーン) ところがそこで、観覧車が、嫌な金属音をギシギシと立てはじめた。 地上、数十メートル上での不吉な音に、文子の顔が青ざめ、怒りの矛先を俺へと向ける。 「ほ、ほら止まっちゃったじゃないか! お前のセイだっ!」 ね、願ってもない展開?(キラ〜ン) 足置き地べたに胡坐をかき、椅子に座る文子の腕を引っ張り、足の上へ乗せる。 「真ん中に居るほうが、傾かないから危なくないよ」 「そういう問題じゃ……ふぐっ」 俺の上に跨る文子の腰をきつく抱き、手で固定することなく唇を塞ぐ。 最近の文子は、頭を固定しようがしまいが、抵抗をしなくなった。 それどころか、こうやって自分から、俺の髪に指を差し入れる。 頗る良い傾向とは、こういうことを言うはずだ。 文子の下唇を吸い上げ、口に含みながら舌で弄る。 それを勿体振ってゆっくりと放し、そして見つめ合う。 恥じらい微笑む文子の表情が堪らなく愛しくて、額や頬に何度も唇を押し当てた。 すると文子の顎が持ち上がり、滑らかな首が、誘うように目の前へ広がる。 当然いざなわれた俺は、そこへ顔を埋め、唇で吸い付き噛みながら首筋を這う。 一定の場所で、文子の身体がビクっと揺れる。 だからその場所に狙いを定め、執拗に舌を這わせれば、文子の腕が俺の肩を押し退けた。 「だ、だめ……」 頬を赤らめながら唇を噛む文子の耳元で、理由など解っていながら、低く掠れた声で囁く。 「なんで?」 モゾモゾと俺の髪の中で指を動かし、潤んだ瞳で俺を見つめながら、ようやく文子が呟いた。 「だって……」 好きな女が囁く『だめ』は、『もっと』に変換されると知って欲しい。 文子の腕を拘束し、当然俺の唇は、『だめ』なところを、的確に押さえて犯す。 けれど、屈して仰け反り始めた文子は、だめではなく、可笑しな言葉を吐き出した。 「ア、アレ……」 「ん?」 首筋から唇を放して文子を見れば、なぜか大きく眼を見開き、恐怖に慄きながら指差し叫ぶ。 「ル、ルパン、アレ!」 文子の濡れた首筋を指で拭い、ゆっくりとその方向へ眼をやれば、観覧車の窓をこじ開け、互いに身を乗り出す、悪魔とリアルフジコの睨み合い。 「ひぃっ」 そして、唯一人中央に佇むワトソンは、指を組み、十字を切り、祈祷懺悔の神父と化す。 「ルパンさん、あれは、ポルターガイストですよね?」 「いいえ文子さん、あれは、エクソシストです」 「あ、あれが停止の原因だ……」 「ワ、ワトソンが気の毒だ……」 ていうか、信じられる? 観覧車の箱乗りよ?(危険です) 良い子のみんな、危ないから絶対に真似をしちゃダメだ。(当然です) そして、寝る前には必ず歯を磨こう!(意味不です) 今なら僕と、観覧車で握手っ!(嘘っぱちです) こうして次号、誰かの視点でお化け屋敷珍道中に、移行!(駄洒落です) |
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