チョコクリーム
捏造バレンタイン+クリーム塗り◇2005/02/14初出 2010/05/18改稿 W&M えち
2月14日。
リアからは巨大なミルクチョコ、マジックからはサクラ&パスタ謹製高級チョコが、
リーザスとゼスの国章入りの包装紙に包まれて、ランスの元に送られてきた。
コパンドンから送られてきたものは大陸をかたどったチョコの表面全てが金箔で覆われている。
(こんな凄いのに対抗できるチョコなんて……)
バレンタインデーを前に、睡眠時間を削って内職を増やしてはみたものの、
シィルのへそくりなんてたかが知れている。
愛用のがまぐちをぱちんと閉めてため息をつくシィルとは対照的に、
豪華三大チョコ以外にもたくさんのチョコに埋もれたランスは幸せそうだった。
(まあ対抗しようってのがそもそも無謀な考えだし、いっそのことチョコを用意するのやめちゃおうかな)
そう後ろ向きに結論を出して、シィルは夕御飯の買い物に行くべく立ち上がった。
「ランス様、私、買い物に行ってきますね」
いつものように声をかけて出かけようとしたシィルに、ランスは何の気なしに声をかけた。
「チョコの買い出しか?」
「え……そんなにたくさんあるのに?」
シィルの一言に、それまで上機嫌だったランスの顔が一気に曇る。
「だって、私のへそくりじゃあそんな豪華なの買えな……はうっ、ランス様、食べ物を投げてはダメですよ」
「黙れ、お前からのチョコに豪華さなど端から期待しておらんわ」
「うっ……」
目に見えて落ち込んでしまったシィルに、さすがのランスも少し慌てる。
「……去年のケーキはまあまあ食えたからな、あんなんでもいいぞ、とにかく」
顔を上げたシィルから、ぷいっとランスは目を逸らした。
「ご主人様のための手間を惜しむな、わかったな、シィル」
「……はいっ、ランス様!」
「まだかまだかまだか」
「後はクリームを塗って完成ですよ、もう少し待っててくださいね」
焼きたてスポンジケーキの甘い香りに釣られて台所に侵入したランスが、シィルを急かす。
あれだけのチョコを貰ってなお、自分が作るケーキを待っていてくれるというのが、シィルには嬉しかった。
溶かしたチョコを生クリームに混ぜているシィルの手元を、ランスはじっと見ている。
「それをあれに塗るのか」
「そうです」
チョコクリームを凝視していたランスは、指をつっこんでクリームをひと掬いし、ぺろりと舐めた。
「あん、ランス様」
「まあまあだな」
満足そうなランスの表情に、つまみ食いを咎めようとした事も忘れて、シィルは微笑む。
「本当ですか?良かった、じゃあ頑張って続きを……」
「俺様も手伝ってやろう、こっちに来い」
何の疑いも持たず手招きされるまま側に来たシィルから、ランスは慣れた手つきで素早く服を剥ぎ取る。
「きゃあっ、ランス様、何を……」
「クリームを塗ってやると、さっき言っただろうが」
ランスは側にあったラッピング用と思しきリボンを手にすると、
素早くシィルの両手を後ろでひとつに縛りあげテーブルの上に仰向けに転がした。
「がははははは、俺様の素晴らしいセンスでシィルちゃんを可愛くデコレーションしてやろう」
ランスはスプーンで掬ったチョコクリームを、テーブル上のシィルの胸の谷間に落とす。
「ひゃんっ、つ、冷たいです、ランス様っ」
「動くな、テーブルから落ちて痛い思いをするのはお前だぞ?」
更にもうひと掬い、今度は胸の先端に乗せ、スプーンの背でクリームを塗りのばすように愛撫する。
体温で暖まって緩くなったクリームがほどよい潤滑剤となり、シィルに絶妙の刺激を与える。
「ランス様、食べ物をオモチャにしては……あ、ふ」
固くなった乳首をスプーンで突かれ、シィルの抗議は甘い吐息に変えられてしまう。
「食えばいいんだろ、食えば」
ランスはシィルの胸に顔を寄せ、舌でクリームを舐め、乳房を甘噛みする。
夢中で乳房にむしゃぶりついているランスは、まるで乳飲み子のようだとシィルは思う。
その視線に気付き、ランスが顔を上げた。
「何だ、俺様の顔に何か付いているのか?」
「ん、えっと、お鼻にクリームが付いてます」
シィルは少し体を起こして、ランスの鼻の頭に軽くキスをした。
起きあがった事で胸の間のクリームがゆるゆると流れ落ちて、臍の窪みに溜まる様が見える。
「あ……」
その視線を目で追ってクリームの澱みに気付いたランスは、
シィルの腰に手を回して支えてやりながら、クリームの軌跡を舌で辿った。
胸から腹へと丁寧に舐め取ってから、臍に舌を差し入れると、シィルの躰がぴくりと震える。
「こんな所まで感じるのか」
「んん、だって……ん、ふ」
舌での愛撫に加えて、ランスの前髪が脇腹を撫でるくすぐったいような快感に、シィルは身を捩った。
「シィル?」
予想外のシィルの反応に、ランスは再び顔を上げた。その前髪の先に付いたチョコクリームを、シィルはじっと見る。
シィルの視線に気づいたランスは、髪に付いたクリームを指でとり、ぺろりと舐めた。
「……髪、伸びてきましたね、そろそろ切ります?」
「ん?ああ、そうだな、ついでに爪と耳掃除もな」
「はいランス様、じゃあ……」
体を起こそうとするシィルを、ランスは軽く突き飛ばして再びテーブルに転がした。
「あっ!?」
「俺様はまだまだチョコを食い足りないぞ」
ランスはチョコクリームをスプーンですくい取り、シィルの太股から中心に向けて塗りつけた。
「あん、そんなとこ……ケーキならちゃんと完成させますから、クリームはとっておいて……」
「チョコケーキとチョコシィルちゃんは入る所が違うのだー!」
「ええーっ!」
ケーキに塗る分は何とかシィルが死守したものの、
しっかり一戦終えた頃には二人してチョコクリームだらけになってしまった。
一緒に入ると騒ぐあてなの口にもらい物のチョコを押し込んで黙らせると、ランスはシィルを連れて風呂に入った。
「ちょっと短すぎちゃいました?」
「いや、こんなもんだろう、目にかかると邪魔くさいからな」
切ったばかりの髪を洗わせながら時折シィルの躰をまさぐったりと、ランスはバスタイムを満喫している。
「あー風呂に入るとやっぱ腹減るな、後でさっきのケーキを食ってやるから、さっさと仕上げとけよ」
「じゃあ、お風呂からあがったら急いでクリーム塗っちゃいますね」
「その前に爪と耳だな」
「はいはい、きゃん!」
ばしゃり、とシィルの頭から水を浴びせるランス。
「返事は一回だ、馬鹿者が」
「はい……っくしゅん!」
水の冷たさにくしゃみをするシィルを抱きかかえて、ランスは風呂桶に飛び込む。
「……優しいんですね」
「ふん、ひ弱なお前に風邪を引かれては迷惑だからな」
「はい、気を付けます」
照れ臭そうにそっぽを向いたランスの腕の中で、シィルはそっと目を閉じた。