GALZOOデザート

幸運の坩堝P

GALZOOアイランドエリナエンドアフターとクロスオーバー。鬼畜王設定を微妙にアレンジ。

5.協力

◇2010/05/01(初2006/04/26) 

「ふうん、お前以外にもたくさんの女の子モンスターがここにいるのか」
最初は警戒心をむき出しにしていたバニラだが、シィルの柔らかい口調や、 ランスの下心を慎重に隠した優しい言葉に、だんだんと態度を軟化させていった。
「つまり、シャングリラ王のデスココとやらをぶっ殺せば、お前達も自由になれるのだな?」
「うん、契約者が死んでしまえば、従魔の契約は破棄されるから」
威勢のいいランスの言葉にバニラの顔が一瞬明るくなるが、すぐに俯いてしまう。
「でもここからの脱出方法が解らなくて……」
「安心しろ、脱出手段は確保してある」
「ホント?」
再び顔を上げたバニラの目を、ランスはじっと見た。
「ああ、大丈夫だ、だからデスココを倒すのにお前達も協力してくれ、いいな?」
ランスの目からバニラは視線を逸らせない。
(この人間、魔物使いの素質が……?)
「わかった、きっと皆も協力してくれると思う」

「……で、とっこーちゃん、サルファ、はりまおーが北の塔にいるんだな?」
「うん、別れた時の打ち合わせなら、そのはずなんだけど」
「全く、何でこんな宮殿中に散らばったんだ」
他の女の子モンスターの居場所をバニラから聞いたランスは、心底面倒臭そうにため息をついた。 バニラは申し訳なさそうに俯き、大きな船長服の裾をいじっている。
「誰かがデスココに捕まっても、他の子が助けに行けるようにって……」
余所から人間が来るまでデスココから逃げ切るというのが当面の課題であったため、 バトルノートがそう指示したのだ。
「まさか、人間が……ランスとシィルがもう、ここにいるとは思わなかったから」
「がははははは、モンスターとはいえかわいい女の子のピンチを救うためなら、 俺様はいつでもどこへでも駆けつけるぞ!」
「……」
腰に手を当てて高笑いしているランスに、純粋に感心しているバニラと、曖昧な笑顔のシィル。
(女の子モンスター達を助け出したら、その後はやっぱり……なんだろうなあ)
バニラの話では、彼女達にはデスココではない本来の主人、魔物使いが既にいるらしい。 魔物使いが男性であれば、従魔である女の子モンスターが恋心をいだく事も多いと聞く。 当然そんな事は気にせずにランスは手を出してしまうだろうから、彼女達が気の毒だ。
もちろんそれだけではなく、ランスが他の女の子にちょっかいかけているのを見たくないという、 シィル自身の嫉妬心もあるのだけれど。
「それでは計画の再確認だ」
女の子モンスター31人が、再び屋根裏に集まっている。その中心にいるのは、ランスとシィルだ。
「俺様とシィルがデスココを引きつける、俺様が合図したらお前ら出てこい」
女の子モンスター達を集める途中で会ったシャリエラに聞いたところ、 デスココはまだ、ランス達をコパンドンの使者という事で、宴の用意をさせて待っているらしい。 ならばせっかくだから接待を受けてやろうじゃないか、と、ちょっぴりみみっちい考えもランスの頭にあった。

「ようこそ、我がシャングリラ宮殿へ」
シャリエラに案内させてデスココに面会したランスは、そのあまりにも醜い容貌に、一瞬固まる。
「どうなさいましたか?」
(こりゃあひどいな……ぶたバンバラの方が数倍マシだ)
女の子モンスターの容姿に対する価値観は人間の女性とは大きく異なると聞いた事があるが、 それにしてもこれではバニラ達が従魔になるのを嫌がるのも無理はない、とランスは納得した。
「えっと、あの、デスココさん」
間を持たせようと、シィルが割り込む。
「こちら、コパンドンさんからの、今後の取引に関する要望書です」
当座を誤魔化す程度の知識は、コパンドンからレクチャーされている。 シィルは計画書を広げ、最もらしく説明を始めた。 商人でないシィルにとっては意味不明な語句も多かったが、とりあえず丸覚えで凌ぐ。
「……ということなんですけど、いかがでしょう?」
「おおむねよろしいでしょう、後は現物を見て取引価格の微調整をしましょうかね」
シィルが説明している間に、宴の準備が進められていた。 次々と運ばれてくる見た事もない贅沢な料理、そして何より、料理を運んでくる何人もの美しい少女達に、 ランスは鼻の下を伸ばして見とれている。
それに気付いたデスココが、ぬちゃりと笑った。
「仕事の話はこれくらいにしましょう」
生理的嫌悪感をもよおす笑顔に、シィルはさりげなく視線を外し、ランスは全く気付いていない。
「ささやかながら宴を用意させていただきました、どうぞ存分にお楽しみください」

「おお、美味い、どの料理も最高に美味いぞ!」
「本当に美味しいですね、ランス様」
「女の子達もかわいいしな、ここは天国のようだ」
あっちの皿からぱくり、そっちの皿からもぐもぐ、その合間に、 給仕をしている少女の胸にタッチ、うはうはのランスに、シィルは少し心配になる。
(ランス様、まだ女の子モンスター達に合図しなくてよろしいのですか?)
(馬鹿者、デスココを殺したら宴も終わってしまうではないか、もう少し堪能してからだ)
「おや、どうかなさいましたか?何かお気に召さない事でも……」
ランスとシィルの会話は、デスココや少女達には聞こえていない。
「何でもない、奴隷がつまらん事を言っただけだ、気にするな」
「奴隷……その少女はランス殿の奴隷なのですか?」
「ああ、何かと便利な奴隷だ、うらやましいだろう」
何故か自慢げなランスに、デスココは首を横に振った。
「人間の女はすぐに裏切ります、面倒ではありませんか?」
「ん?お前だってかわいい女の子達を、こんなにたくさん侍らせているではないか」
デスココの言葉に引っかかりを感じたものの、それよりも主張しておきたい事がランスにはある。
「それにシィルは俺様を絶対に裏切らない、なんせ絶対服従の魔法がかかっているからな」
「はい……ランス様」
絶対服従の魔法がとうの昔に効力を失っている事を、ランスは気付いていない。 ランスの言葉に肯くものの、嘘を付いている後ろめたさで、シィルの表情は沈む。 その暗い顔を、ランスに逆らえないが故の哀しみだと、デスココは受け取ったようだ。

「なるほど、そのような便利な魔法があるのですか」
感心したように肯くデスココに気を良くし、ランスは更に続ける。
「ゼスではポピュラーな魔法だぞ、あ、体制が変わった今はどうなんだろうな」
ランスも関わった、というかむしろ原因の一つになった魔軍侵攻と撃退以来、 ゼスでは、魔法が使えない者が魔法使いの奴隷であった時代は幕を下ろしている。
「今でもペットの売買では利用されてますけど、対人使用はガンジー様が禁じたはずです」
「ならお前は、今でも絶対服従がかけられている数少ない人間というわけだな」
「……あはは」
力無く笑うシィルの頭を、ランスが機嫌良さそうにぐりぐりと撫で回した。
「しかし、本当に何でも言う事を聞くのですか?」
「ああ、俺様の命令に逆らう事はない、なあ?シィル」
「……っ、はい」
ほんの少しシィルが逡巡した間を、ランスは見逃さなかった。
「……シィル、お前御主人様に恥をかかす気か?」
「え、そんな事はないですう」
慌てて否定するシィルを、疑い深げに眺めていたランスが、ふと、ニヤリと笑った。
(う、この顔は、ランス様がよからぬ事をお考えになってる時の……)
「よし、では身の潔白を証明するため、ここで裸踊りでもしてもらおうか」
「えっ、ええー?そんなあ」
「黙れ、俺様に逆らうな!」
怒ってるわけではないのはシィルにも解る。それでも、力ずくで押さえつけられ、 ただでさえ肌を覆う面積の小さい服に手をかけられて、シィルは必死に抵抗した。
「ああん、やめてください、ランス様以外の人に裸を見られるなんてイヤです!」
(こんなことしてる場合じゃないですよう、ランス様!)
(解ってる、お前は適当に抵抗してろ)
(……えっ?)
ランスの囁きに、シィルの動きが止まる。 それを見るデスココの視線に気付き、ランスは軽く舌打ちした。
(どあほう、抵抗しろと言っただろうが!)
ランスの僅かな表情の変化は、シィルにしか解らなかっただろう。 すぐさま好色そうな笑顔に戻ったランスは、シィルの上着に素早く手を差し入れる。
「お、観念したか、それでは……」
「あっ、きゃあっ!」
上半身をむき出しにされ、シィルは慌てて胸を両腕で覆う。
(よし、デスココはこっちに意識が全部向いてるな)
ランスは、デスココの視線から隠すように、シィルを胸に抱き入れる。 そして、シィルの背中に回した手をぽんぽんと二回叩く。
そこで、ランスの行動の意味が、ようやくシィルにも飲み込めた。 手を二回叩くのは、女の子モンスター達への合図だ。