闘神大会IF

幸運の坩堝P

ランスくん、闘神大会に出場しようとする。

ランス君inとーしん大会

ランスくん、闘神大会に出場しようとする。◇2008/12/01  パラレル 闘神都市3

「ランス様、本当に闘神大会に出場なさるんですか?」
身支度を整え家を出ようとするランスに、シィルが不安そうに問いかける。
「当たり前だ、俺様の実力なら余裕で優勝できるからな」
闘神大会。現在のルールでは、見目麗しい女性のパートナーと共に大会に出場することが義務づけられている。 勝てば相手のパートナー、あるいはパートナーとしての基準を満たしていれば対戦者本人を24時間自由にできる。 その後は闘神として、闘神都市で何不自由ない生活を送る事ができるらしい。 負ければパートナーは対戦相手と24時間過ごした後、3万Goldの保釈金を払うかさもなくば3年間闘神都市で 無償労働を課せられる。そして、大会出場者本人には、何のペナルティもない。
「確かランス様、ルール改定前にも大会に出場されましたよね?」
シィルの言葉に、ランスは不機嫌そうな表情で応える。
「確かあの時は、対戦相手のくのいちさんに……」
一回戦、優位に試合を進めていたランスだが、パートナーを兼任する対戦相手の美人くのいちに、 試合が終わるまで我慢できずに(えろい意味で)襲いかかって反則負けを喫したのだった。
「試合後まで待てなかったんだよなあ……あの頃は若かったからな」
あの時のパートナーは、通りすがりの美少女だったと聞いている。対戦相手が女性だったためえろ事は免れたが、 ペナルティの無償労働は避ける事ができず闘神都市に残ったはずだ。 手ぶらで帰ってきたランスに保釈金を貯めてはどうかとシィルが提案したが、 「もうはっきり顔も覚えてないからいいや」とランスはあっさりしたものだった。

あの時。
「たかが奴隷のお前に闘神大会のパートナーという大役など任せられるか」と言い残して、 ランスは一人で闘神都市に向かった。パートナーは現地調達する、とも言っていた。 一瞬、押入の奥にまだ隠してあるピンク仮面のコスチュームで後を追おうかと思ったが、 その時期、シィルはそれを許されない状況にあった。
「だいたいお前、長旅は無理だろう?」
ランスはシィルの腹部をじろりと睨む。
当時、シィルは妊娠初期であった。まだ安定期に入っていなかったので、長距離の移動は危険だった。
「お前は留守番だ、ガキが生まれるまでには闘神になって帰ってきてやるから案ずるな」
……その結果が『反則負け』だったわけだが。帰ってきたランスは反則負けについて、 「お前がぽんぽんでかくてあまりやらせてくれないから溜まってて、我慢できなかったんだ」と怒っていた。 シィルは自分が悪いわけではないのに(妊娠だって避妊魔法無しでやりたいとランスが駄々をこねたせいだし)、 必死になって謝った事を覚えている。

「……今回のパートナーは、どうされるんですか?」
あの時の子供はもうそこそこ大きくなっていて、数ヶ月くらいならあてなと一緒に留守番できる年頃だ。 実際、あてなに子守を任せてランスとシィルの二人で生活費を稼ぎに出かける事も多い。
「ああ、そのことなんだが」
ランスは、闘神大会規約が書かれたパンフレットを広げてみせた。
「お前はパートナーを務める事ができんぞ」
「えっ?」
ランスが指で差している部分をシィルはのぞき込む。
「人妻はパートナーにする事はできない……こんなルールができたんですか?」
「まあ、いろいろあるんだろうな」
いくら大会規約上は問題なくても、人の妻であれば遠慮して手を出せない勝者もいるだろう。 そのために付け加えられた規約らしい。
「というわけで、シィル『奥さん』はお家でお留守番だな」
「はあ……」
「闘神区画に住む事になっても、闘神、つまり俺様が招待すればお前もガキも闘神区画に住めるらしいから案ずるな」
薬指に金色の指輪を嵌めた左手で、ランスは相変わらずもこもこと柔らかいシィルの髪を乱暴にかき回した。
「では行ってくる、引っ越しの準備をしておけよ!」