一発勝負
駄々っ子ランス◇2008/12/05 闘神都市1 えち
いつものごとく事に及ぼうと、ランスがシィルをベッドに放り投げた。 服の胸元に手をかけた時、シィルが慌ててランスを止める。
「ランス様、そろそろ避妊魔法をかけ直す時期ですよ」
避妊魔法。中出しはしたいが相手を妊娠させるのは気が進まない、
そんなランスのわがままにうってつけの生活補助魔法だ。かつて強姦した女性を妊娠堕胎させてしまった事は、
ランスの中で苦い記憶として残っている。魔法使いであるシィルを奴隷として買い取った時、 避妊魔法を真っ先に覚えさせたのもそのためだ。
そしてそれ以降、シィルに定期的に魔法をかけさせる事で、避妊の心配なくエロ事を謳歌していたランスだったが。
「たまには避妊魔法無しでやるのもいいか」
「え、ええっ?」
ランスの下で、シィルが素っ頓狂な声を上げる。
「で、でも、先月かけた魔法の効果はそろそろ……」
「完全に切れてる、というわけではないだろう?」
避妊魔法はそれほど強力な魔法ではない。かけた直後は完全な避妊効果があるが、
時間と共に効果が薄れ、失敗の確率が上がる類の魔法だ。ランスの体質とシィルの魔力の強さから、
月に一度かけておけば失敗する事はまずないだろうということで、この間隔に決めたのだ。
避妊魔法をかけておけば、シィルはもちろん他の女を孕ませる心配はない。
それは、ランスにとってどこでも誰でも中だしし放題で安全に楽しめるだけではなく、 シィルにとってもある意味ありがたい事であった。
「100%安全、もいいが、男はスリルを求める生き物なのだ、今夜は避妊魔法無しでやるぞ」
そう言いきってランスはシィルの服を脱がせる。自分の服も脱ぎ捨てていざとシィルに覆い被さったところで、
反論を諦め目を伏せたシィルの顔をまじまじと見た。
「……何が不満なんだ」
「何が、って……だって、もし……」
それだけ言って、シィルはちらりとランスの顔を見て、またすぐに目を逸らしてしまう。
「妊娠したら困る、ってか」
「だって……ランス様だって、そうでしょう?」
ランスはシィルの言葉に、僅かな引っかかりを感じる。『ランス様だって』、本当にそうなのか。
「ふうん、奴隷の分際でご主人様のガキを産むなんておこがましい、そう言いたいわけだな?」
意地悪く強調された『奴隷』という単語に、シィルの眉が僅かに動く。
「ん……まあ、そういう事です」
複雑な感情の入り交じった声で肯定の言葉を紡ぎ出す唇に、ランスは人差し指を軽く当てた。
思いがけないランスの行動に、シィルは伏せていた瞼を大きく開く。
「そうか、では万が一、いや、億が一にもお前が妊娠したら」
柔らかい唇を指でゆっくりなぞったあと、掌全体でシィルの頬を包み込む。
そして、シィルの額にランスは自分の額を、軽くぶつけるように押しつけた。
「結婚してやってもいい」
何か言おうと開いたシィルの唇に唇を重ね、言葉を封じるように舌を差し入れ絡ませる。
シィルをきつく抱きしめ舌で口腔をくまなく愛撫しながら、ランスはたった今自分が言った事の意味を考えていた。
シィルの生理周期は朧気ながらも把握している。シィルがこれで妊娠する可能性は低いだろう。
それでも、絶対に妊娠しないとは限らない。
ランスは唇を離し、少し頭を上げてシィルの顔をまじまじと見た。
珍しく優しく激しいキスにうっすらと赤みが差しているシィルの頬に口づける。
耳元にシィルの熱くなる息を感じながら、耳の後ろ、首すじから鎖骨へと舌を滑らせた。
ほどよく手に収まるサイズの乳房をやわやわともてあそびながら、ランスはシィルの腹部に頬擦りして唇を押しつける。
たった一度の行為で、この柔らかい腰の曲線の内部に別の生命が宿る可能性は、限りなく低いように思える。
「妊娠したら……」
結婚、なんてランスとは縁遠い言葉だと思う。ちょっとした誤解ややりたいが為の方便で口にする事はあっても、
本当に誰か一人を永遠の伴侶と定め家庭を持つ事などおそらくありえないだろう。
幼い頃の記憶、両親の記憶がないランスは、家庭がどういうものかよく解らない。
シィルと暮らす日々は、それまでとは違う穏やかで安定した日々ではあるが、これが一般的な家庭かと言われれば それは違うような気がする。
そもそもシィルは恋人ですらなく、ランスにとっては奴隷で所有物なのだから。
『奴隷』という単語に思考を停止させ、その実他の女性とは一線を引いた特別扱いをしている事に、ランスもシィルも気づいてはいない。
「……?」
途中で言葉を止めて考え込んでいるランスの顔を、シィルは訝しげに覗き込む。
きょとんとしているシィルの鼻先を指先で軽く弾いてから、ランスはわしっと乳房を掴んだ。
「おっぱい大きくなるかなあ?」
「……知りませんよ」
ランスのどうでもいい一言に解りやすく冷めるシィルの反応も、それはそれで楽しい。
ややテンションが下がったシィルの脚を開かせ、柔らかい内腿を強く吸って赤く跡を残す。
「や、跡付けちゃ……」
「俺様以外の誰に見られる訳でもないだろう、こんな所」
「そうですけど、んっ」
シィルは嫌がるのを確認してから、さらにランスはいくつもキスマークを付ける。
シィルが普段着ているスカートの長さを考慮した上で、普通に歩いていれば見えない位置を狙い、
そうでない場所には跡が残らない程度に軽く噛んで舐める。
再び甘くなる声に満足し、ランスはシィルの中心に顔を寄せた。
ランスは、己の強運を信じていた。 今まで何度も、ちょっとした思いつきからの行動で状況を大きく変化させてきた。
そしてそれは、必ずランスにとって好ましい変化だった。
そもそもシィルとの出会いからしてそうだ。『たまたま』お金がないところに、『都合よく』高報酬の依頼が回ってきた。
奴隷商人の護衛という他の冒険者があまり引き受けたがらない依頼を『なんとなく』引き受け、
『偶然』時間が余ったから商品の女の子を見に行ったら、そこにシィルがいた。
法外な値段のシィルを買い取るため『珍しく』依頼を受けまくり、『運良く』どの仕事も成功し金を貯めることができた。
「妊娠したら結婚してやってもいい」というのも、何か考えがあって言ったわけではない。
シィルが妊娠する事はないだろうと思っているからこその軽口だ。
それでも、もし、シィルが妊娠したら。
(それはきっと、俺様にとって好ましい事態なのだろう)
何ら根拠があるわけではない。だが、ランスはその結論に自信を持っていた。
たっぷりと時間をかけて舌と指で刺激を与えられたおかげで、十分に潤った襞にランスはゆっくりと侵入する。
「っ、ら、ランス様、やっぱり、魔法、かけませんか?」
不意に妊娠の可能性を思い出したのだろう、シィルが僅かに腰を引いてランスの侵入を拒もうとした。
「断る」
「で、でも、……っ」
避妊魔法をかけてから効果が現れるまでは少々タイムラグがある。それを待っていたら、
せっかくのやる気が萎えてしまうだろう。ランスは逃げられないようにシィルの腰を掴み、ひと息で奥まで貫いた。
「ん、くふっ」
シィルの体が大きく震え、内壁が不規則にランスを締め付けた。引っ張られそうになる感覚を、ランスは何とかこらえる。
ふるふると揺れるくるりと巻いた癖の強いシィルの前髪を、ランスは指に絡めた。
中心から外側、また中心へと、指を何度も往復させる。その動きをシィルはぼんやりと目で追っていたが、
それが先ほど花弁に対して行われた行為と似ている事に気づいたのか、慌てて目を逸らした。
「妊娠するのが恐いか?」
ゆっくりと動きながら、ランスはシィルに囁く。
「こ、恐いというか……申し訳、ないような……」
困ったような表情で目を閉じたシィルの真意は、ランスにはよく解らない。
「妊娠か、それとも結婚か?」
聞くだけ聞いたものの、シィルの答えを待たずにランスは大きく動いた。
「ひ、や、ああっ!」
答えを聞くのが恐かったわけではない、とランスは自分の中で言い訳をする。そしてそのまま行為に没入していった、
「シィル、お前いつもより感じてただろ」
「えっ、そ、そんな事無いですよう」
「がははははは、隠しても無駄だ、俺様にはちゃあんと解るのだ」
二人ほぼ同時に達していつもより長く感じた射精の後も、シィルはランスにしがみついて離れようとしなかった。
ランスも別段邪険にすることなく、繋がったままシィルを抱いてやっていた。
いつもとは少々違う行為後の空気を存分にむさぼった後、ランスはぽつりと呟いた。
「さて、避妊魔法をかけておくか」
「今から、ですか?あまり意味無いと思いますけど」
「馬鹿者、二回戦に向けてだ、さっさとかけろ」
納得いかない表情のシィルを軽くぽかりと殴って、ランスは避妊魔法をかけさせる。
「運試しは、一回だからこそスリルがあるのだ」
「運試し……?」
不思議そうな顔でシィルは言われたとおり、避妊魔法の呪文を唱えた。
二回戦どころか結局エクストラステージまでしっかりこなし、くったりと気を失ってしまったシィルの横で、 ランスも満足げに大の字に寝そべった。柔らかい笑みを浮かべている頬を軽くつつくと、シィルが寝言を漏らす。 「……ね、ランス様、式は赤ちゃん産まれてからにします?」 「結婚式などするかあほう、入籍だけでありがたいと思え」 嬉しそうに寝言を言っているシィルに『うっかり』そう答えてから、ランスは自分の表情も緩んでいる事に気付き、 慌てて不機嫌そうに顔をしかめ鼻を鳴らしてから、寝た。