黒にゃん祭

幸運の坩堝P

──10月31日の夜、黒いにゃんにゃんと過ごした魔法使いは、魔力がアップするという。魔法王国ゼスに伝わる、そんな伝説。

黒にゃん祭

ランス世界観妄想SS。◇2005/10/22 2008/10/14改稿  黒にゃん祭 世界観妄想

──10月31日の夜、黒いにゃんにゃんと過ごした魔法使いは、魔力がアップするという。
魔法王国ゼスに伝わる、そんな伝説。

「うーむ、ゼスってのは訳の解らん祭りが多いな」
お色気グラビア目的で購入した雑誌をぱらぱらと見ていたランスが呟く。
「『黒にゃん祭り』の事ですか?」
「名称からして変な祭りだなあ」
ちょこちょこと近寄ってきたシィルに、ランスは黒にゃん祭りのページを見せた。
「……うっわー……」
シィルがのぞき込んだページは、きわきわ衣装の美女がにっこり微笑むグラビア。 黒とオレンジの配色は確かにシィルが知っている『黒にゃん祭り』と同じものだったが、 そのデザインは極めて扇情的だ。
「この服、通販できるらしいぞ?」
嬉しそうなランスに、シィルはただただため息をつくしかなかった。

そして10月31日の朝。
「お届け物でーす」
ランスの家に小包が届く。いやな予感を覚えつつも、シィルはその小包を受け取った。 差出人はえっちいコスプレ衣装の通販で有名なあの会社だ。
「ランス様、通販で買った服が届きましたよ」
「おお、ちゃんと当日に届いたな、シィル開けていいぞ、なんせお前のための服だからな」
内心がっくりとうなだれつつも、それを表情に出さないよう努力しつつ、シィルは包装をといた。
「あ、結構かわいいかも」
出てきた服は相変わらず露出多めではあったが、きわきわグラビアに比べれば、まだ可愛らしいデザインの物だった。
「お前に似合いそうなのを選んでやったのだぞ、死ぬまで感謝するがいい」
「はい」
ちょっとアレなデザインなのはいつもの事でもあるし、 ランスから服をプレゼントされるのはやはり嬉しい。シィルは喜びに頬を染めて、いそいそと箱から服を取り出す。
「あれ?」
服の下に、黒い物が入っている。訝しげな顔で、シィルはそれを手に取った。
それは、にゃんにゃん耳を模した飾りの付いたカチューシャだった。
「……つけにゃんにゃん耳?」
「ああ、それは俺様のだな」
シィルの背後から手を伸ばして、ランスはつけにゃんにゃん耳を奪い、自分の頭に付けた。 それを見たシィルの表情が変わる。さらにその下に入っていた、にゃんにゃんしっぽと肉球グローブ。
「黒にゃんにゃんと過ごさないといかんのだろう?」
しっぽとグローブも、躊躇無く身につけていくランス。シィルの表情はますます強張る。
「ん、別に俺様の趣味じゃないぞ、お前の魔力アップを手伝ってやろうとだな」
シィルの手からぱさりとコスプレ衣装が落ちた。
「だーかーらーそんな目で俺様を見るなー!」