Ωとαのゆるゆる日常

幸運の坩堝P

オメガバースなシィル×ランス。

Ωとαの日常

発情期の始まる日。◇2017/07/20  読物 えち 右ランス

 ぱちりと目が覚める。外はまだ薄暗く、いつもなら俺様よりも早く起きるシィルもまだすやすやと眠っている。昨夜はあまり気が乗らず二回しかしていないので、無理がたたって寝坊しているわけでもない。
 なのになぜ俺様が起きているのか。
(うーんもうそんな時期か……)
 体の異変。その徴候はすでに昨夜からあった。時間があったにも関わらず二回しかしなかったのもそのせいだ。
 股間に手を伸ばして確認すると、いつもの朝なら元気なハイパー兵器がしおしおとうなだれているのがわかる。だらりとこちらも力のない袋のさらに奥に触れてみれば、通常ぴたりと閉じて縫い目のようになっているはずのそこが、ぱくりと口を開けている。その内部には、αやβの男にはありえない、Ωの男しか持たない孕むための器官があるのだ。

 思春期を迎え男として普通に女に興味を持ち経験も重ねたが、ある時期からいわゆるΩの発情期(ヒート)に悩まされることになった。数ヶ月に一度起こるその現象は、まずは精力減退から始まる。いやに早く目が覚める朝から微熱が続き、体の中をかき回されたい衝動にかられる。
 最初はそれがなんだかわからなかった。α・β・Ωの検査を受ける前に育ての親から放り出され独り立ちしたため、検査を受ける機会がなかったのだ。優秀な俺様はおそらくα、悪くて優秀なβだろうと思い込んでいたため、わざわざ自腹で検査を受けるつもりもなかった。
 しかしいざ冒険者として活動を始めると、この微熱の時期に限って男どもから妙な視線を受けるようになり参っていた。当時共に行動していた女冒険者に「もしかして君Ωじゃないの?」と言われたが激しく否定したし、βだった彼女はそれで納得していた。
 彼女を失いこんどこそひとりぼっちで動き始めた頃Ωの冒険者が輪姦され殺される事件が起きた。任務中に発情期を迎え、仲間(βばかりだったらしい)にさんざん輪姦された挙句置き去りにされ、動きが取れなくなっていたところを魔物に殺されたのだという。

 それまで冒険者稼業はあまり性別(男女でもαβΩでも)を取り沙汰されることはなかったのだが、その事件以降Ωの冒険者は、一部を除き忌避されるようになった。つがい相手のαがいて、しかも相手も同じパーティ内にいれば依頼を受けることはできる。そもそもつがい相手を持つΩは、相手のα以外にはβにしか見えないらしい。ならばαの女(できれば好みのタイプが好ましい)を探してさっさとつがいになってしまうかと考えたこともあったが、これがなかなかいない。冒険者のαは知るかぎり全員男だったし、たまにαの女を見つけても、どこぞの貴族だったりすでにつがいがいたり。仕方がないので、Ωであることをひた隠しにして冒険者を続けていた。
 が、ある時、任務明けで見つけそうとは知らずに購入した奴隷が、実はαだったという偶然にぶち当たる。つまりその奴隷こそが今隣でのんきに寝ているシィルちゃんだ。

 なんという幸運、さすが飛び抜けて優秀なΩである俺様、運の強さも半端ない。

 もともと冒険に連れ回すつもりで魔法使いの奴隷を選んだので、仕事面はなんの問題もない。 発情期こそ俺様がシィルに抱かれることになるのだが、それ以外の期間は男と女として励めるので、性生活もむしろバリエーションが増えて豊かになったといえるだろう。

 さて、そんな俺様のつがい相手という名誉を得たシィルは、現在どんな状況か。
 眠ってるシィルの股間をまさぐるとすでにナニは顕現しているものの、俺様とお揃いのようにまだくったりとしている。発情期のピーク中は、シィルが寝てようとなんだろうと、シィルのナニを俺様のアレに突っ込んで満足したりもするのだが、それをやるとシィルの機嫌が地味に悪くなるので切羽詰まった時以外は控えるようにしている。うむ、気遣いのできる俺様。
 発情期が始まったばかりの現在はそれほど切羽詰まってるわけでもないので、今晩あたりから始まるピークのために昼間はゆっくり休み、精のつく料理でも作らせるとしよう。そう決めて、俺様は普通にシィルを突っついて起こすことにした。

 日も陰る頃、本格的な発情が始まる。
 熱っぽさを自覚した朝から全身のだるさはあるが、ごろごろしていればごまかせる程度のものだ。発情期のピーク中はΩの俺様はもちろんαのシィルでさえヤること以外考えられなくなってしまうので、家から出られない。それに備えて、シィルは昼間のうちの食料の買いだめにでかけたり、後で大変なことになるであろう寝室や風呂を念入りに掃除したりしている。

 シィルとつがいになる前の発情期はそれは大変だった。外に出られないので、美味くもない冒険糧食を買い込み、水とそれだけで一週間ほどしのいでいた。風呂にはいるのもままならず、かといってほてって大汗かいている上に下半身は粘液でべっとりと汚れてしまうので、仕方なく風呂場で日に何度も水をかぶっていた。だが時に勢い良く流した水の刺激だけで半端に達してしまい、風呂場で気を失っていたこともあった。
 だが、シィルというつがいを得てからその生活は大きく改善された。
 自分がαだと知っていたシィルは、将来つがいを持った時のためにと、発情期中のΩに関する本をよく読んでいたらしい。「Ωのお世話がまるごとわかる本」なるものをちらっと見たが、なんだかペットの飼い方のようでいらっとしたのでシィルを一発殴っておいた。とはいえ、口当たりがよく栄養価の高い食事や不快感を軽減させる身繕いなど、発情期をやり過ごしやすくなったのは確かだ。しかも、最も大きな問題である性欲の方も満たせるのだ。実に素晴らしい。
 男の性欲はまあ女を抱くかそれが無理ならエロ本見てちんちんしごくか、その程度で散らせることが多いのだが、Ωの性欲はαに突っ込まれないかぎり治まらないというのがやっかいだ。発情期が終わるまで悶々と鬱屈したモノを持て余さねばならなかったからな。我ながら、よく耐えられたものだと思う。

「シィル、シィル」
「はいランス様、お風呂入りますか?」

 動くのさえ億劫な俺様に肩を貸し、シィルは風呂に向かう。手早く俺様の服を脱がすと、シィルもさっさと服を脱ぎ捨てる。いつもの、男と女のセックスの時はぐずぐずしてるのに、この時ばかりは早い。俺様の発情に当てられて興奮しているのかもしれん。
「お先にちょっと失礼しますね」
 俺様を風呂いすに座らせると、汗を流す前にシィルは俺様の首をぐるりと舐める。最後に喉仏のあたりをかりっと軽く噛まれると、それだけで下半身がずくりと重くなる。本来はつがいになる時だけやればいい行為なはずだが、シィルはこれが好きなようで毎回やるのだ。俺様のフェロモンがたまらないらしい。俺様が魅力的すぎるせいなのでしかたない。実際舐めてる間にシィルのナニはがっちがちに固くなり先走りをたらりと垂らすほどになっている。
 うんうん、そこまでなると一度抜かないと辛いんだよな。シィルのナニを軽く握って、指先でぬるぬるを塗り込めるように先端を刺激してやる。
「っ、ランス様、まだ洗ってないから……」
「いいから一度出しておけ、そうでないとこちらも楽しめん」
 そう、あくまで俺様が楽しむための処置だ。シィルが辛いだろうなあなどと同情したわけでは、決してないぞ。そもそも男の性とαの性が同じものかどうかはわからないしな。

 シィルを浴槽のふちに座らせ、その前にぺたりと座る。勃起してないハイパー兵器が床につくのは不快だが、シィルが昼間一生懸命掃除していたから問題はないだろう。
「ランスさ、まっ……ん……」
 ぬめる先端をぺろりと舐めてから中ほどまでをぱくりとくわえる。びくびくと脈打つソレを強く吸うと、シィルがたまらず声を漏らす。吸いながら先端の割れ目をちょんちょんと舌でつつく。気持ち良いか?気持ちいいはずだ。発情期が終わったら、お前が俺様にやるのだぞ、しっかり覚えておけよシィル。

 くわえたまま見上げると気持ちよさそうな表情をしたシィルが、俺様の髪をすくように頭を撫でる。なるほどこれはなかなか良いものだ。今度シィルにフェラチオさせるときは頭をなでなでしてやろう。覚えていたらな。
 女性器の方はこの時期触っても嫌がるだけなので放置するが、胸の感度はいつもと変わらないらしい。しゃぶりながらたまに手を伸ばしてやわやわともんだりしていると、だんだんと口の中の味が変わってくるのがわかる。そろそろ射精のタイミングだろう。口の中に出すとシィルは嫌がるが、俺様は気にしない、というかむしろウェルカムだ。男の精液とαの精液では味が違うのかもしれないが、男の精液なぞたとえ自分のであっても味見する気はないのでわからない。イラマチオは若干屈辱感を感じるので、自分で頭を振ってシィルのナニを唇でしごき、射精へと導く。程なくしてたっぷりと口内に放出された精液を、喉を鳴らして飲み干す。
 αの精液、といってもシィルのものしか知らないが、これはなかなか美味いものだ。もしかしたらつがいだからなのかもしれん。下半身の疼きも少し楽になるので、上からでも下からでもαの精液を摂取することがΩの発情期を鎮めることに繋がるのだろう。
 意図的な上目遣いで唇に残った精液をぺろりとなめとると、シィルが困ったような照れたような顔で俺様を見ている。視界の隅で再び元気を取り戻していくシィルちゃんのシィルちゃんには気づかないふりをして、風呂いすに座り直し、体を洗うよう促した。

シィルに体を洗わせるのはいつでも気持ちが良いものだが、発情期中は性的にも気持ちがいい。タオルやスポンジを使わせず、素手に直接石鹸を塗りつけ全身くまなく洗わせる。発情期中触られたくない部位ナンバーワンである男性器ですら、シィルの手で洗われるのは心地よい。
 いわんや、発情期中のみ顕現する器官なら。
「おい、もっと中まで洗え」
「ここに石鹸入れるの、あまり良くないんですけど」
「なら石鹸なしでいい、指一本では物足りん、二本いや三本突っ込め」

「ええっ?」
「何ならフィストファックも試してみるか? お前のちっちゃい手ならいけるかもしれんぞ?」
「……それは流石にランス様が痛いのでは……」
 ううむ、さすがに拒否されたか。俺様のたくましい腕をシィルのアソコに突っ込むのは気が引けるが、逆なら可能かもと思ったのだが、残念。
 俺様をきれいに洗い上げた後シィルも自分の体を洗いさっぱりして風呂からあがる頃には、精飲で一度は楽になっていた下腹部が再び熱を持ってくる。動けるうちにとシィルをベッド上に放り投げ、腰のあたりにどっかりとまたがる。俺様のアソコはトロトロシィルちゃんのナニはギンギン、準備はオッケーだ。

「行くぞ、とーう!」
 根本を握って狙いを定め一気に腰を沈める。ごりごりと中をこすられ、繋がっている部分から頭の天辺までびりびりと快感が突き抜ける。
「は……っ」
 一瞬目の前が真っ白になり、呼吸するのもままならない。下からシィルが心配そうに見ている。
「ランス様、大丈夫ですか?」
「あー……うん、ちょっと休憩な」

 イッた直後のシィルがよく休みたがってる意味が、Ωのセックスを経験してわかったような気がする。とにかく気持ち良すぎて疲れるのだ。しびれるような快感の余韻を堪能しながら、シィルの胸をちょいちょいといじる。先端を軽くつまんで引っ張ると、俺様の中でシィルがびくんと震えて一回り大きくなった。
「なるほど、ここがスイッチか」
「違います、違いますよう……」

 やや落ち着いた頃合いで抽迭を開始する。気持ちいい所にこすりつけるように動くとシィルもまんざらでもなさそうな顔をしている。つまるところ相性が良いのだろう。しかしやがてシィルの表情が微妙に歪む。腑に落ちぬような、あるいは諦めのような。そして一点に注がれる視線。
「どうした、気持よくないのか?」
「いえ、あの気持はいい、んですけど」
 男と女のセックスでは絶対に言わないようなことを言っている自覚はないようだが。
「おなかに……その……」
 シィルの視線を辿って繋がっている付近を見る。俺様の立派なハイパー兵器は、発情期中はただの排泄器官でしか無い。つまりぐんにゃりとうなだれて、腰を上下に揺するたびにシィルのお腹をぺちぺちと……
「……ガムテープで止めておくか」
「それもビジュアル的にどうかと……」
 しょんぼり兵器をつまんでため息を付いた俺様が、相当情けない顔をしていたのか、シィルは慌てたように笑顔を浮かべた。
「あっ、じゃあ私上になりますから、それならぺちぺちしませんよ?」
 ……シィルちゃん、励ます方向が間違ってるぞ?
 グーで殴ってやろうかと思ったが、それをシィルが察した瞬間、俺様の中に埋まってるモノがひゅっと縮んだような気がした。まずい。これからクライマックスなのに萎えられては困るので、殴るのはやめておいてやろう。
 せめてもの意趣返しにと派手にぺちぺち音をさせるように動いてやる。最初は妙な表情を浮かべていたシィルも、だんだんと興が乗ってきたのか下から突き上げるように腰を使う。
 そして、最大の波が来たタイミングで、ぐっと腰を落とし根本までシィルを呑み込む。圧倒的な快感と、腹の奥にじわりと染み込む安堵感。俺様とシィルはほぼ同時に、果てた。

 男は射精直後は冷めるものだが、αはどうなのだろうか。
 果てた直後にシィルにぎゅうぎゅう抱きついても、苦しいなどと文句は言うが邪険にはねつけられたことはない。たまにそのまま寝落ちしていることはあるが、俺様も終わってすぐに熟睡することもあるからわからんでもない。腕の中でうとうとまどろむシィルの幸せそうな顔を存分に堪能してから、もちもちほっぺたをむにむにとつまんで覚醒させる。
「ん、何、ランス様……?」
「休憩は十分とっただろう、二回戦行くぞ」
 まだちょっとぼんやりしているシィルの頭を支えて、自分の喉をシィルの口元に近づける。無意識なのか、シィルの唇が薄く開きちろりとのぞかせた舌先で俺様の喉仏を舐める。

 本来喉は人間の急所であり、そう簡単に他人にさらけ出す場所ではない。極端な話、ちんちん噛みちぎられてもうまく処置すれば生き延びることはできる(男としては死ぬ)が、喉笛噛みちぎられたらまずは助からない。
 なのになぜシィルにはさらけ出せるのか。絶対服従で縛った奴隷だから危険なことはしないはずだという安心感と、単純に俺様も気持ちいいからなのだ。常に気持ちのいい性感帯というわけではないのだが、発情期中にシィルに好き放題されるのはとんでもなく気持ちが良い。たまに興奮したシィルが甘噛することもあるが、その痛みすらも快感になってしまうのはΩの性なのか。発情期明けに、首から鎖骨辺りまでびっしりとキスマークと歯型が散っているのを見てぎょっとすることもあるが、ぺこぺこ謝るシィルが哀れなのでついつい許してやってしまう。
 首を執拗に攻めていた唇と指先が、じわじわと下に降りてくる。乳首は普段も多少は気持ちいい部位ではあるが、発情期の快感はそれとは比べ物にならない。乳首を舐めたり吸ったり、あるいはたくましく鍛えられた筋肉にそって指を滑らせているシィルは、間違いなく恍惚の表情を浮かべている。いつものセックスの時にもやっても構わないのに恥ずかしいんだか、積極的なシィルは俺様の発情期にしか出現しない。もったいないことだ。快楽には貪欲になるべきだぞ、シィル。

 双方十分に整ったところで、今度は正常位で挿入。
 Ωの発情期とはいえ骨格まで大きく変わるわけではないので、俺様が膝を立ててその間にシィルが体を割りこませる感じになる。俺様はどうやらやや上付きらしく、その体位でもシィルは自由に腰を振ることができる。最初のうちはおっかなびっくり出し入れしていたが、慣れてきたのか最近ではちゃんと俺様の反応を見て腰を使うようになったので大満足。
「っ、シィル、そこもっと強く……」
 深く、浅く。時にわざとポイントをずらして焦らすように攻め立てるのもお手のものだ。その積極性をいつものセックスの時に(以下略)。
「シィル……シィル……」
 俺様が伸ばした手をシィルがしっかりと握ると、そろそろフィニッシュに向かう合図だ。
 上気した顔で俺様を見下ろすシィルの顔は、つがいの贔屓目を鑑みても壮絶に色っぽい。俺様に抱かれている時とはまた違う表情だ。これを両方楽しめるのは、俺様がΩでシィルがαだからだ。これもある意味ラッキーといえるかもしれん。
「ランス様……」
 握った手を引き寄せて、シィルが俺様の手の甲にくちづける。繋がってる部分とは違う快感が手から全身へと広がり、飛びそうになる意識を必死につなぎとめる。早く、強くなるが、決して単調ではない動きに翻弄されて。
「ね、ランス様、もう……」
 返事をする代わりに中のシィルをぎゅうっと締め付け、俺様は意識を手放した。

 美味しそうな匂いに目を覚ますと、枕元にはジュースとサラダのセットが用意されている。
 多少楽になっているとはいえまだまだ発情期まっただ中である俺様でも無理せずとれる食事を試行錯誤した結果がこれらしい。最中は様々な液体を垂れ流しまくっているわけで、水分多めがありがたい。あっという間にきれいに平らげると、シィルが何故か嬉しそうに俺様を見ている。
 シィルとつがいになる前はどうやって発情期を乗り越えていたのか。今ではよく思い出せないが、おそらくぎりぎりだったのではないかと思う。
「……もう、シィルのいない生活は考えられんな」
「ランス様……」
 ぽわりと顔を赤らめるシィルにデコピン一発。そして額を抑えてうずくまる背中に一言。
「まあ発情期中に限るが」
「うう……ですよね……」