ソファで2
構ってちゃんランス君◇2010/05/08 日常
昼飯を食い終わって食堂のテーブルでだらだら。
さっきまで食器を洗っていたシィルは、片づけが終わったのか、居間に移動したようだ。
開け放たれた扉越しに覗き込むと、ソファに座って雑誌など読んでいる模様。これはぜひ、邪魔をしなくては。
ぽすん。膝の上の雑誌をどかして代わりに俺様の頭を乗せてやると、シィルは俺様の顔を覗き込んだ。
「ランス様、どうかしました?」
む、しまった。この後何をしようか考えていない。誤魔化すために、後頭部をぐりぐりと太ももに擦りつける。
「あん、くすぐったいです」
おや?なんとなく色っぽい声が出たぞ。エロスイッチが入ったのか、シィル。
よくよく顔を見れば、頬を紅潮させ目は潤……んではないか。
でもまあ、こんな明るいうちから何か期待してるように見えなくもない。いやいや、俺様の願望補正ではないぞ、決して。
しかし、えっちに関しては主人が主導権を握るべき、というのが俺様の持論だ。
つまり、ここではえっちに持ち込まないのが正解だろう。
「ランス様?」
不思議そうに俺様を見つめているシィル。えっち以外にシィルにさせるべき事と言えば……ぴきーん、そうだ!
ちょいちょい。俺様は自分の耳を指で差してみせる。
「ん、お耳の掃除ですね」
正解。俺様の耳そうじは、シィルにとっても栄誉ある仕事の一つであろう。
その栄誉ある仕事をさせてやろうという俺様の慈悲に、心ゆくまで感謝するがいいぞ、がははははは!
俺様を褒め称えるシィルちゃん達の幻を見ていると、いきなり頭の位置が低くなった。
むちむちの太ももに包まれていた後頭部は、いまやソファの上。なんだ、なんで俺様の頭を膝から降ろすんだ。
「耳かき、寝室にあるので取ってきますね」
シィルは俺様をソファに残して立ち上がる。むー、ご主人様を置いてけぼりとはどういう事だ。
俺様も立ち上がり、シィルの腰に腕を巻き付けた。
「ランス様、歩きにくいですってば」
このままシィルの腰にぶら下がって寝室まで歩いていくのもなんだな……
「きゃあ!」
腰に巻いていた腕を解き、今度は肩にまわす。そしてそのまま背中に覆い被さってやった。
「えっと……おんぶですか?」
…………。
……そのつもりだったんだが……シィルと俺様の身長差のせいで、
もこもこ頭の上に顎を乗せても長い脚が床についてしまう。なんだか悔しい。
仕方ないので軽く弾みを付けてジャンプし、脚をシィルの腰の下あたりに巻き付ける。
それでようやく俺様の意図するところを理解したのか、
シィルは俺様の膝を腰の横で抱え、完全におんぶの体勢になった。
「ふふ、意外と甘えんぼさんですね、ランス様は」
え、なにそれ、どういう事?
俺様を軽々と背負ったシィルは、何故だか妙に嬉しそうな足取りで寝室に向かう。
まあ、俺様も歩かなくていいので楽ちんだしシィルも楽しそうだから、今の問題発言は聞かなかったことにしてやろう。