シィルちゃん物語りたーんず

幸運の坩堝P

GGS3補完企画。テーマはいつもの『ラブ&お馬鹿』で細切れ文と絵。

スーパー賢者タイム

『黒マジスコドリンク』の翌日◇2009/02/26  日常

つまり、性欲の欠片も見あたらない、どこまでも澄み切った心。俺様にもそういう気持ちになる事があるのだ。
……昨夜というか今日の昼近くまで、限界いっぱいまで絞られ切ったからではないぞ、決して。 まっっったく関係ないが、もう二度と、黒マジスコドリンクは買わないでおこうと思う。 うむ、スーパー賢者タイムとは本当に全っ然関係ない事だけどな。
シィルも呼ばずに一人でさっさと風呂に入って、魔法ビジョンを見ながら居間でごろごろ。 『ちゃつみ三分クッキング』とやらを、シィルはメモをとりながら真剣に見ていたが。
「……ん、どうしたシィル」
「あ、いえ」
番組が終わってメモを片づけたシィルが、ちらちらと俺様を窺っている。何だなんだ?
「えっと、そろそろ私も、お風呂に入ってきますね」
「ああ行ってこい、俺様は先に寝てるからな」
「はーい」と返事をしながら、相変わらずこちらを見ながら部屋を出て行くシィル。全く、一体なんだというのだ。 訳がわからん。こういう時は、さっさと寝てしまうに限る。


うとうとしかけたところで、寝室のドアを開けてシィルが入ってきた。
「ランス様……もうお休みですか?」
薄目を開けて、肯いてやる。シィルが入れるようにちょっとだけ動いてベッドを空けてやると、 毛布をそっとめくって、シィルがベッドに潜り込んでくる。
「……」
俺様との間に微妙に隙間を空けて、シィルが横になる。むー、隙間があると寒いんだよな。 仕方ないので、腕を伸ばしてシィルを抱き寄せる。相変わらず石鹸の良い香りをぷんぷんさせやがって。 だが、スーパー賢者タイムまっただ中の俺様には、そんな誘惑は効かないぞ。
腕の中から、シィルは上目遣いで、何だか困ったように俺様を見上げている。 ゆるく抱きしめているだけでそれ以上何もしないのが、そんなに不思議なのだろうか。ええ、今日はしませんよ?
しばらくの間シィルはもぞもぞしていたが、諦めたのか、もこもこ頭を軽く俺様の胸に押し当てて落ち着いてしまった。
「おやすみなさい、ランス様」
「ん、おやすみ」
ちらりとシィルの顔を見る。もっと欲求不満でいっぱいな表情でもしているかと思ったが、意外や意外、 目を閉じて微笑みを浮かべている。さっきまでの様子だと、えっちしたくてしょうがないのかと思っていたのだが。

程なく、すうすうと健やかな寝息を立ててシィルは眠ってしまった。
こんな穏やかな顔で寝ているシィルを見るのも久しぶりだ。えっちした時でも、たいていは俺様の方が先に寝てしまう。 あるいはいきまくって気を失うようにシィルが先に眠ってしまうか。たまに昼間、ソファで居眠りしている事もあるが、 変な姿勢で寝ているせいかもうちょっと苦しそうな顔をしていたように思う。
ほっぺたにかかっているもこもこ巻き毛に指を軽く絡める。柔らかい髪の指先にこそばゆい。 そういえば、奴隷商人から買い取ってウチに連れてきた時は、もっと髪が長かったなあ。いつから短めになったんだっけ ……そうそう、一緒に風呂に入るようになって、濡れた髪がわかめっぽいとからかったら、 半泣きになってはさみ引っ張り出してきたんだっけな。あれ以来、乾いた状態で肩くらいに揃えてるんだっけか。 しかし、濡らすとあの頃とあまり変わらない長さなような気がする。
「ん、ランス様……」
やば、起こしたか?と思ったが、どうやら寝言らしい。俺様の夢を見ているのか、感心感心。 相変わらず、顔には笑みが浮かんでいる。どんな夢を見ているのかなあ、俺様がリーダーの魔法を使えたら、 シィルが見ている夢も解るんだろうか。

夢だけでなく、シィルの本心を知りたい気持ちに、たまになる。
買った時に絶対服従の魔法がかけられているから、シィルが俺様に逆らう事はない。 ぐずぐず不満を漏らす事もあるが、最終的には俺様の言いなりだ。たまには俺様の方が折れてやる事もあるが、 それは、まあなんだ、俺様の心が広いからであって、シィルに言いくるめられている訳ではないぞ。いや、ホントに。
とにかく、そんな感じだから、シィルが本当はどう考えているかなんて、解りやしない。えっちだけとりあげてもそうだ。 本当に喜んでいるのか、仕方なく抱かれているのか、全く解らない。俺様に抱かれる事は女にとって幸福のはずだから、 きっとシィルもそうに違いない……と思いたいところだが、本当に解らないから困る。
もし、もしもだ。絶対服従の魔法が切れたら、一体シィルはどうするつもりなんだろう。 今まで通り、俺様に付いてくるのか、それとも……いや、そんなことはない、はずだ……たぶん。 玄武城から脱出した後だって、俺様のそばにいたいと言っていたではないか。 でもあれは、絶対服従の魔法が……いやいやいやいや。
「ふふ、大丈夫ですよ、ランス様」
どっきーん。
ななな何だいきなり、寝言、だよな、シィルちゃん!?
慌ててシィルを見るが、やっぱりぐっすり眠っているようだ。くそっ、びっくりさせやがって。 スーパー賢者タイム終了後は、がっつりお仕置きしてやるからな!