知恵の輪
知恵の輪それぞれの解き方◇2009/02/12 日常
健やかなる昼寝から目覚め、何かおやつでもないかと台所に向かう。
食料庫にてぽち肉ソーセージを発見。速やかに包装を破り、味覚にて品質検査を行う。うむ、問題なし。
それにしてもシィルの姿が見あたらないな。買い物籠が台所の隅に放置されているので買い物に出た形跡は無し。
内職は本日のノルマ分終わらせたと昼寝前に言っていたし。後は、居間で魔法ビジョンでも見ているのか。
足音を忍ばせて廊下に回り、居間の様子を窺う。魔法ビジョンは点いていないが、ソファに座るシィルが見える。
……何をやってるんだ?
金属の輪っかに持ち手が付いたようなものがふたつ組み合わさっているものを、
シィルは一心不乱にかちゃかちゃと動かしている。しばらく観察を続行すると、
やがて、かちんと小さな音がして輪っかが外れた。
「わーい、できましたー」
廊下から覗き込んでいる俺様には気づかず、無心に喜ぶシィル……何だか面白くない。
「俺様の昼寝中に一人で楽しんでいるとは、とんだオナニー大好きっ娘だなあ?」
「へっ、あ、ランス様お目覚めですか?」
声をかけてやったところで、ようやくシィルは俺様に気づいたようだ。シィルのおっきなお尻をつついてずらさせ、
空いたスペースにどっかりと座る。それにしても、この小さい金属の輪っかは、一体何なのだろう。
「あ、これですか?」
俺様の視線をたどったシィルは、手に持っていた金属の輪っかを俺様の目の高さに持ち上げた。
そしてかちゃかちゃとぶつけ、さっき外して喜んでいた輪っかを再びくっつけてしまう。何をやってるんだ。
「知恵の輪ですよ」
「知恵の輪?」
ひねったり回したりずらしたりして、このふたつの輪っかを外すおもちゃらしい。うーむ、なんと非生産的な。
「ほどよく頭を使うので面白いですよ、ランス様もおやりになりますか?」
ぴくり。
「ふふん、天才の俺様には造作もない事だな、やってやるから寄越せ」
確か、持ち手のところを持ってくりくり回していたら外れたんだっけな。
よしよし、シィルちゃんより早く、外してやるぜ。かちゃかちゃかちゃ……んんっ、なんだ?全然外れないぞ!?
「シィル、お前魔法でくっつけたり外したりしたんじゃ……」
「確かに、魔法の訓練用にそういうのもありますけど、これは普通のおもちゃですよ」
シィルの話を聞きながら、さらに知恵の輪を動かす。しかし、外れる気配は全くない。
「うがー!」
ぺきょ。
「ふふふ、どーだ、もう外したぞ、さすが俺様は天才だな!」
「……ランス様、違います、それは違います……」
……解ってる。ちょっぴり力を入れて引っ張ったら
、輪っかのところがびよーんと伸びてただの二本の棒になっただけだ。
解っているが……失敗を認めるつもりは無い。というか、俺様が失敗をするなど、断じて認められない。
「黙れ、魔法で外す知恵の輪があるなら、パワーで外す知恵の輪があってもいいはずだ」
「あう、それもう『知恵の』輪じゃ……」
ぐじぐじ言ってるシィルをとりあえずぽかり。
それでもまだ納得のいかない顔をしているシィルを、とりあえずソファに押し倒して誤魔化す事にしよう。