シィルちゃん物語りたーんず

幸運の坩堝P

GGS3補完企画。テーマはいつもの『ラブ&お馬鹿』で細切れ文と絵。

性格反転薬1

きれいなランス?で甘々◇2009/03/26  日常

えっちの幅を広げるアイテムのひとつに、性格反転薬というモノがある。
その名が指し示すように飲むと性格が変わってしまう薬で、 ツンデレえろシィルが卑語をばんばん言ってみたり、シィル女王様が俺様を責めてみたり。 シィルはおとなしくて従順だから、ツンデレだの女王様だのになるわけだ。
この薬、俺様が飲むとどうなるんだろう。
紳士的で英雄な俺様だから、とんでもない鬼畜野郎になったりするんだろうか。 そんでもって、シィルちゃんが泣くまでいじめたり……ん、いつもと変わらないような気がするが、そんな事はないぞ。
「うっ、それは性格反転薬……」
俺様が考え事しながら手の中でもてあそんでいた薬を見て、シィルがいやあな顔をした。 この薬を飲むと記憶が一部曖昧になるらしく、翌朝あんな事言ったとかこんな事したとか教えてやっても、 シィルはあまり覚えていないようで困った顔になる。薬のせいとはいえ記憶が飛ぶのはやはり気持ち悪いのだろう。
だが、俺様の好奇心はとどまる事を知らないのだー!
「えっ、ランス様、飲んじゃっ……」

……しまった、少々迂闊すぎたかもしれない。素の俺様の、勢いだけで何でもやってしまうチャレンジ精神は、 時に良い方向に向かう事もあるが、何もこんな場面で発揮されなくてもいいというのに。 しかも目的が性行為とか、全くどうかしている。
「ランス様、大丈夫ですか?」
シィルが水の入ったコップを持ってくる。水を飲んで少しでも薬の効果を薄めようという事だろう。 彼女の心遣いに感謝を表し、水を一気に飲み干す。あまり変化はないように思えるが。
「おかわり、持ってきます?」
胃のあたりを押さえると、たぷたぷと水の音がする。無理に吐きでもしない限り、これ以上は飲めないだろう。
「とりあえずトイレ行って……風呂で汗流してきたら、少しは薬効が薄まるかな」
「かもしれませんね、お風呂、すぐ入れますよ」
「では入ってくるとしよう、お前は先に寝ていていいぞ」
「いえ、私もまだお風呂入ってないので」
「そうか、ならば先に入ってくるといい」
汗を流すために長風呂になりそうだからな。その間シィルを待たせるのも可哀想だ。 シィルはしばらく何事か考えていたが、俺様の意志が変わらない事を確認すると、 立ち上がってタオルや着替えなどのお風呂セットを手に取った。
「んー、じゃあお言葉に甘えて、お先に失礼しますね」

しばらくして、ほんのりと上気したシィルが戻ってきた。洗い髪から石鹸のいい香りが漂っている。 ちょっとだけ甘酸っぱさのある爽やかな香りは、シィルのイメージによく似合っていると思う。 この匂いにまで欲情してしまうのが、素の俺様なんだよなあ……ううむ、少しだけ自己嫌悪。 シィルはもちろん魅力的だし、絶対服従の魔法のせいとはいえ俺様を全面的に受け入れてくれるから、 どうしてもそちら方面に走ってしまうのは仕方ない事ではあるのだが。
やり残した事があるので、と和室に向かったシィルを残し、俺様も風呂に入る事にした。

ゆっくりと風呂につかって大量の汗を流し、更に水を飲んでみたものの、 性格反転薬の効果が弱くなったのかどうか自分では全く解らない。 和室にシィルの気配を感じ、声をかけて襖を開ける。
「あ、ランス様」
シィルは丸いちゃぶ台の上に家計簿を広げていた。覗き込むと、支出の項目に遊興費が目立つ。 収入のシィルの内職代とトントンといったところだ。つまり、シィルが稼いだ内職代で俺様が遊んでいるわけで。 これじゃあまるでヒモだ。いや、ヒモは女のぱんつ洗ってやったりして家事全般を受け持つらしいから、 冒険に出ていない時の俺様はそれ以下のような……ううう。
「どうなさったんですか?」
がっくりと肩を落とす俺様を、シィルは心配そうに見上げている。ああ、可愛いなあ、シィルは。 ピンク色のふわふわ髪、青い大きな瞳。白い肌にほんのり桜色の頬と唇。 いつも隣にいて見慣れた顔のはずなのに、性格反転薬のせいか、やけに新鮮に見える。
「え……ランス様?」
急にシィルがいとおしく思え、いきなり抱きしめる。はっ、これでは素の俺様と変わらないじゃないか! いやいやいやいや、素の俺様だったら、抱きしめるだけでは済まないはず、ここから胸とかあそことか触ったり…… うん、大丈夫大丈夫、ちょびっとだけやりたい気持ちはあるが自制できているぞ。 まだ、性格反転薬の効果は切れていないのだろう。

そっと抱くだけで、満たされていく心。やはりまだ、薬は効いているようだ。
「なんつーか、その、いつもごめんな」
シィルはびっくりして変な声上げてる。「はうっ?」とか言われてるし。どんだけダメ人間なんだよ、素の俺様は。 でもまあ、薬が効いている今は、シィルに優しくしてやってもいいか。
「ランス様、あの、まだお薬の効果が……」
「ああ、なかなか消えないみたいだな、せっかくだからこの機会に甘えてもいいんだぞ?」
そうそう、薬のせいだからな。素の俺様に戻ったら、またいつものように、意地悪したりえろい事したりするわけだし。 シィルも納得したようで、俺様の胸に身体を預けてきた。どうせ明日の朝になれば記憶も飛ぶんだしな。
「あのね、ランス様」
いつも以上に甘えた声で、シィルは俺様から視線を外して呟く。しかし、その先をなかなか言わない。
「……大好き」
さんざん焦らしてやっとそう言うと、シィルは恥ずかしそうに俯いてしまった。耳まで真っ赤にして、 何というか……これはこれでたまらんな。
「ん、俺様も……」

翌朝。
性格反転薬のせいで、さんざんこっぱずかしい事言った気もするが、きっと気のせいだ。 あれは薬が言わせただけだ。シィルだって、雰囲気に流されて趣味で読んでる少女小説の台詞を口走っただけだよな、 なあ、シィルちゃん!?