朝
日常甘甘話。◇2006/02/02 日常
カーテンの隙間から差し込む太陽が眩しい。
のろのろと体を起こしたランスの隣では、シィルがまだまだ夢の中だ。起きるにはまだ早い。
もう一度ベッドに潜り込もうとして、シィルの寝顔を見るのも久しぶりだということにふと気付く。
たいていの場合、夜はランスがさっさと先に寝てしまうし、
朝は食事を作り終えてからシィルがランスを起こしに来るのだから、
昼頃居眠りしているのはともかく、ベッドで眠っているシィルは、ちょっと新鮮だった。
(幸せそうな顔で眠ってるなあ……)
うっすらと微笑むような口元を、ランスは指先でちょんと突いてみる。
起きている時と変わらない柔らかさを楽しむ。
「……ランス様……」
唇から零れる己の名前に、ランスは慌てて指を引っ込めた。
シィルは口の中でむにゃむにゃ言いながらころりと寝返りをうち、
ちょうどすっぽりとランスの胸に顔を埋めるようにして、安らかな寝息を立てている。
「ランス様……」
何の夢を見ているのか、シィルはランスの名前を呼びながら、嬉しそうに笑っていた。
(……まだ目を覚ましてはいないようだな)
ランスはしばらくの間、その寝顔を堪能することに決めた。
「はうう、もうこんな時間ー?」
シィルが目を覚ましたのは、いつもより少し遅い時間だった。
慌てて飛び起きようとして、背中に回されたランスの腕に気付く。
「あっ、いけない」
ランスを起こさないよう、シィルは慎重にランスの腕から抜け出した。
毛布をかけ直して、ちらっとランスを見る。
何の警戒心も持たずすっかり安心しきっている顔に、
寝坊したことも忘れて、ついつい見とれてしまう。
「ランス様、今朝もいいお顔で気持ちよさそうに寝てらっしゃるなあ」
ぽつりと呟いたとたん、ランスの目がぱちりと開いた。
「いや、起きてるぞ」
「ひっ?あうっ!」
驚きのあまりシィルは声も出せず、ただぱたぱたと手を振り回している。
「ご主人様より遅く起きるとはなっとらんな」
「す、すみませんっ、ランス様っ」
「朝飯食ったらがっつりお仕置きだな、覚悟しとけよ?」
「ひーん!」
半泣きで走り去るシィルの背中を、ランスは寝顔と同じ笑みで見送った。