プレゼント
ままにょにょSS。でもメインはやっぱりランス×シィル。 ◇2005/12/08 にょ 世界観妄想
ママトトに異次元の強者達を召喚し異空窟探索を初めてかなりの時間が経つ。
召喚された強者達は、この世界では年を取らない事もあり、のんびりと日々を楽しんでいるようだ。
フォーランド大陸の一年が終わろうとする頃、ママトト司令官のナナスから一つの提案がもたらされた。
「本日から年の終わりまでに得たアイテムは、仲のいい人にプレゼントすることにしましょう」
異空窟の戦闘で得たアイテムは、ママトトの共有財産としてナナスが管理・分配を担当していた。
しかし、召喚した強者達に聞いた異次元の行事である『クリスマス』に興味を持ったナナスが、
プレゼント交換だけでもやってみたくなったらしい。
「シィル、それも寄越せ」
比較的前線に出る事の多いランスとシィルは、かなりの数のアイテムを手に入れていた。
……最も、シィルが見つけたアイテムも、ランスに巻き上げられてしまうのではあるが。
「さーて、誰にプレゼントしようかなあ、美女がいっぱいで選びきれんなあ」
多数のアイテムの前でニヤニヤしているランスを見て、シィルはため息をつく。
そして、手の中に隠したアイテムをちらりと見た。
(良かった、これは見つからなかったみたい)
金色に輝く『ドラ猫の鈴』、物理攻撃力を上げるレアアイテムだ。
(これだけはプレゼントとしてランス様に差し上げたいもの)
そして、一年最後の日。
珍しく全員揃っているママトトの食堂で、プレゼント交換会が行われた。
「まずはあてなとかなみだな、シィル、プレゼント持って付いてこい」
「はい、ランス様」
ご機嫌なランスの後を、大量のプレゼントを抱えてえっちらおっちらシィルが付いて行く。
「ご主人様、あてなにプレゼントくれるれすか?」
「……嬉しいような嬉しくなような……」
わくわくしながら待っているあてなと何とも中途半端な表情のかなみの前に、
ランスは二つのアイテムを出して見せた。
「大きいアイテムと小さいアイテム、好きな方を選ばせてやろう」
「あてな、大きい方がいいれす」
そう言って、さっさと大きいアイテムを取ってしまうあてな。
かなみは残された小さなアイテムを受け取った。
「わあ、『カレーうどん』だ、あてなこれ大好き」
「あっあてなちゃん、それは食べちゃだめー!」
『カレーうどん』の封を切ろうとするあてなを、慌ててシィルが止める。
「かなみ、お前も開けてみろ」
「う、うん……」
かなみががさがさと包みを開けると。
「いやーっ、何これ、『素早い変な虫』じゃない!」
「正確には『素早い変な虫の死骸』だぞ」
「もっと質悪いわよ!ランスに期待した私が間違ってたわ」
「かなみさん、一応レアアイテムですから……」
「うわーん!」
シィルの説明も聞かず、泣きながら走り去ってしまうかなみ。
「……早っ」
「さっそくアイテムの効果が出てますね」
大量のプレゼントをすべて配り終え、ランスとシィルは部屋に戻ってきていた。
お茶で一息つきながら、シィルは何気なさを装ってランスに訊ねる。
「そういえば、志津香さんとマリアさんには何をプレゼントしたのですか?」
「志津香には『ぶちょ玉』だな、『雷入りボール』だったらやれたかもしれんのに」
(ランス様、多分それは無理だと思います)
言葉に出せば殴られるのは目に見えているので、心の中だけでシィルは答える。
「マリアには召喚鉱石の欠片だ」
本来は、イデヨンで異世界の強者を召喚するためのエネルギー源として用いられる召喚鉱石。
しかし、召喚メンバーが出そろった今、召喚鉱石はママトトの倉庫にうずたかく積まれ放置されている。
どうやらそれを失敬してきたようだ。
「俺様達の世界にはない成分らしくてな、嬉々として分析していたぞ」
「マリアさん、喜んでると思いますよ」
「後は魚が餌にかかるのを待つだけだな、ふふふ」
「……」
あれだけたくさんのプレゼントが入って(シィルが担いで)いた袋には、もう何も残っていない。
(やっぱり、私の分は無かったんだなあ……)
予想していた事とはいえ、シィルは肩を落とす。
「どうした、暗い顔をして」
「あっ、いえ……」
慌てて笑顔を作り、シィルはランスに小さな包みを差し出した。
「あのっ、これ、私からランス様に……」
「ん?何だシィル、俺様に内緒でアイテムを隠していたのか」
拳が飛んでくる、ととっさに身構えたシィルの頭を、ランスはわしわしと撫でた。
「まあいい、特別に許してやろう……おっ『ドラ猫の鈴』か、レアアイテムだな」
ランスは楽しそうに金色の鈴をちりんちりんと鳴らしている。
(ランス様の笑顔が、私にとってのプレゼント、かな)
シィルは、少しだけ晴れやかな気持ちでランスを見つめていた。
その視線に気付いたランスは鈴を鳴らすのをやめ、ポケットから何かを取り出す。
「そうだ、シィル、お前にプレゼントを寄越してきた物好きがいたようだぞ」
「えっ、私に?誰だろう……」
「知らん、まあ開けてみろ」
ランスから受け取った包みを、シィルは怪訝そうな顔で開ける。
「わあ『雷入りボール』だ、嬉しいな、前にも言いましたけどあと一個欲しかったんですよ」
「ふん」
喜ぶシィルに、不機嫌そうにランスは背を向けて立ち上がった。
怒らせてしまったかとシィルは慌てたが、すぐにある事に気付く。
(そういえば……ランス様『雷入りボール』を昨日拾ってたような)
そして今日、他の魔法使い系の女の子に、ランスが『雷入りボール』を贈った覚えはない。
シィルはランスの背中に微笑みかけ、『雷入りボール』を大切にしまった。