共同妄想企画

幸運の坩堝P

望の文+朔の絵で妄想Collaboration

伝説の貝殻

日常話。拍手お礼SSに加筆。◇2005/06/12  日常

「お帰りなさいランス様、良い貝殻はありました?」
貝殻のオークションに出かけていたランスが、機嫌良さそうに帰ってきた。 小脇に抱えた箱が、本日の戦利品なのだろう。
「うむ、今日はおまえのために伝説の貝殻を落としてきてやったぞ」
コレクターなら誰もが欲しがる一品だ、そう勿体付けながら、手にしていた箱をシィルに渡す。
「戴けるんですか?ありがとうございます」
ランスからのプレゼントを素直に喜ぶシィル。ランスの怪しい笑顔には気付いていないようだ。
「開けてみてもよろしいですか」
「ああ」
シィルがいそいそと箱を開けると、中には三枚の大きい貝殻が入っていた。
大きさも形も揃った貝殻は確かにきれいではあったが、何故か紐が付いている。 横に並ぶよう繋がれた二枚と、紐が付いているだけの一枚。
「……ランス様、これは?」
「貝殻ビキニだ、タケダクミコが着用したという、いろんな意味で伝説のアイテムだぞ」
なるほど、確かにビキニの形だ。しかしこれをどうしろと言うのだろう。
「遠慮することは無い、着てみろ」
嬉しそうなランスと困惑するシィル。
「……でもこれ、上はともかく下が……」
前はかろうじて隠れるものの、後ろは紐だけ。 というか、これでは肝心なところが全く隠れないのではないかと、シィルは戸惑う。
「ええい、ごちゃごちゃ言ってないで、さっさと着替えんか!」

「ランス様……」
「お、着替えたかシィル、よしよし、こっちに来い」
貝殻ビキニに着替えたシィルが、ランスの前に姿を現した。 丸出しの後ろ姿を見られないよう、シィルは壁沿いに横歩きする。
「『素早い変な虫』みたいな動きだな」
「あうー」
真っ赤になって俯いたまま、シィルはにじにじと移動する。 『素早い変な虫』度がアップしているシィルを、ランスはまじまじと眺めた。
白い肌に淡い色調の貝殻が映えている。その態度も相まって、セクシーと言うよりは可愛らしい。 色っぽさを求めて落札した貝殻ビキニだったが、これはこれでグッドだとランスは満足している。
「あの、もう着替えてもよろしいですか?」
自分を凝視しているランスに、シィルは懇願の視線を向ける。
「まだ後ろ姿を見ていないぞ」
「うっ、だって後ろは……」
「後ろが肝心なのだ、ほれ、そこでくるっと回って見せんか」
「……うう」
反抗出来るはずもなく、ランスの目の前でくるりと回ってみせるシィル。
「ぐふふ、良き眺めだのう」
「もう勘弁してくださいよう、ランス様ー」
「何を言うか、楽しいのはこれからだぞ」
涙目のシィルも愛しく、更なる意地悪心を刺激されるランスであった。