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『ば』

盤上の駒に情けなど要らぬ


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目の前の、今までずっと、ずっと守ってきた相手に声を掛ける。

「相変わらずですね」
「………クーズ」
「……あなたは、人に優しすぎる」

いやと言うほど近くて、遠い人。
ココに着てから何度も、何度も、彼は、守るためにどこかを
…『自分の』どこかを切り捨てた。

「……そうだね」
「言い切ります。どうか、今のあなたから、『情け』を捨て去ってください」
「…それは、こいつには無理な相談じゃないか?」

後から声を掛けてきた、彼の大切な人。

「たとえ、駒であろうとも、こいつにそんな考えは無理さ
付き合いの長いお前なら、とうの昔に分かっていたと思ったがな」
「……分かっています。それでも…。」
「…気持ちは、分からなくはない。でも、俺も、見捨てられない人間なんでな」

彼は、そう告げて、また、最前線へと向かっていった。

「……いくんですか」
「…俺は、あの人の傍らで戦う。…お前は、俺達の後ろを守れ。
…守るために、死ぬことなど、許さない。」


残酷な言葉を残してあの人の所に向かって行く彼の背中に、聞こえないように投げかけた


「俺は、あなたにとって大切かもしれない。
それでも僕は、あなたより大切なものなどない。たとえ、この命さえも。
あなたの中で僕が、駒以下であればよかったのに」


自嘲気味に、顔をゆがめ、彼の言葉に従うために、自分も、最前線へと、走った。


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砂漠の城に着いてから、何度目かの戦いの途中。

彼にとって、そして、お互いにとっての『自分』。