++++++++++++++++++++
『び』

微動だにせず

++++++++++++++++++++



「…樹」
「腕、動かない!先生、腕が…」


繋ぎきれなかった線は、よりにもよって、右腕だった。
利き腕となっている右腕を、必死に動かそうとする樹を、そっと寝るように促した。


「…どこだ、どこが…」
「先生、手伝います。」
「…海か」

後ろから、現れた海に視線を向ける。
他のみんながいないということは、止めて置くのは成功しているんだろう。

「あと、右腕だけですか」
「…あぁ。他はもうおそらく繋ぎきれたはずだ。」

意識を奥に埋められた樹の体は、つながってない右腕と共に
動くことなく、二人の『治療』を受け続けていた。
手伝いながら海が樹に語りかける。


「…一緒に、戻るんだ、樹。俺と戻ろう」
「…………」


繋ぎきれない、線を悔やみながら、ひとつ、ため息を落とした。



+++++++++++++++++++++++++++++++++++
続編です。