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『こ』
古城に立て篭もって泣き叫んでみるか?
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古ぼけた遠い時代の遺物。
追いかけてきた追跡者や暗殺者たちは立ち入ることすら許されないでいた。
「待っていたってこないと思ってるくせに」
「帰れ」
「俺にそんな場所が?」
「…………」
そう。俺もこいつも『帰る場所』なんてものはない。
この古城だって、単なる通り道だ。
大方一週間もいたらまた出て行くさ。
俺たちがいられる場所なんてないのだから。
「…いっそ泣き叫んでみようかな」
「一度くらいやってみるか?」
「いいよ…どうせ効果なんかない」
古ぼけた城のエントランスに寝転がるこいつ。
あいかわらず、自愛心にかける奴だよな…。
「エカナ」
「……なんだよ」
「もうやめろ」
「…………お前に何がわかる。クー」
何もわからねぇな。
『戀』に狂った人間の苦しみなんてな
「古城に立て篭もって泣き叫んでみるか?」
「…もうやってるさ。それこそ何度も、な」
腕の中に抱かれているのは、『あの方』が手に入れた
ある国の最高の至宝。
届かない。
こいつの気持ちも、『あの方』の気持ちも。