使用例版権物



01 ロボぽっぽ * れっつくっきんぐ [三国無双:陸蒙]

鈴をじゃりじゃりと言わせながら甘寧が陸遜の部屋へ駆け込んでくる。
「陸遜ー、陸遜、りークソんー?」

陸遜は無言で裏拳を叩き込んだ。

表情を変えずに、机に広げた書簡を見ている。
「……。地図?次の作戦でも考えてんのか?」
甘寧の顔には痣が出来ていた。その痣の痛さから、俺を次の戦に出せ!というのを止めた。そんな事を行ったら戦に出る前に陸遜に殺されそうだ。
「いえ、どうすれば今この場から甘寧殿を消して呂蒙殿を湧き出させることができるか考えてました。」
真剣な顔で地図を見たまま。特に地図の意味はない。
陸遜は頬杖をついて地図を眺めている。

甘寧の相手をする気もまったくない。

「お前さ、いつもそんな事考えてんの?」
「いえ。普段は甘寧殿のかの字も私の脳内にはありませんよ。」
「…。じゃあ何考えてんだよ」
「そうですね。例えば、」
陸遜は地図から視線を上げ、何かを思い出すように遠くを見た。

「呂蒙殿スパゲッティー。
イタリア料理に使われるパスタの一種で麺類です。基本的にはデュラムセモリナ粉に水などの材料を入れて混ぜ合わせ、空気を抜くように捏ね上げます。が、呂毛殿らしさを出すために芯に呂蒙殿の毛髪を入れてみました。しかもその事により湯で時間、火力ともに心配の必要なし!強火でガンガン茹でましょう!!」

そう言った陸遜の手にはいつの間にか皿。その上にはもちろんスパゲッティーが乗っている。
ほかほかと湯気の立つただの素スパが。
その一本を指でつまみ、陸遜はちゅるりと口の中に入れる。


「うーん、アルデンテ☆」


甘寧どころか呂蒙にすら見せないような笑顔で陸遜は親指を立てた。
「さあ、甘寧殿!ぜひ召し上がってください。」


「血がたg」

「茅ヶ崎には行かなくて結構です。」


真無双で脱出を試みた甘寧の肩に、陸遜の左手が食い込んでいた。
右手に持った呂蒙スパをぐりぐりと甘寧の顔に押し付ける。
「さあ、さあ、さあ!」
「ひぎゃーーーーーーー!!!」
甘寧の悲鳴を聞きながら、嗚呼結局相手にしてしまったと、陸遜は後悔した。
それでもスパはきちんと甘寧に完食させた。



後日。
「おっさん!」
呂蒙は甘寧に呼び止められる。
なにやら甘寧の手には黄色い瓶が握られていた。
「どうした?」
「おっさん、これ、受け取ってくれ!いつも迷惑かけてすまねえ。でもいつまでも呂毛でいてくれよ。俺、今度から自重する。俺が悪かった。火元には気をつけろよ。じゃあな!」
いっきにまくしたてると呂蒙に黄色い瓶を渡して走り去っていった。
呂蒙は瓶を見る。『黄○宮』と書かれていた。
「甘寧…何かあったんだろうか」

『黄金○』:従来から多くの育毛剤に使用されてきた「センブリ」や「ニンジン」「グリチルリチン酸」に加え、黄金宮では世界で始めて「ミカン」「イヨカン」「甘夏柑」の3種類の果皮エキスを保湿剤として配合した特許申請中の製品・頭皮が弱いとされる女性にも安心してお使いいただけるように、天然成分を配合し、頭皮に対する刺激を可能な限り押さえることに考慮した新製品
だそうです。これでも陸遜×呂蒙だと言い張っておく。



02 …は続くよどこまでも * どうしてあなたは私にさわるの [三国無双:甘陸]

ロープの結び方も、明日メシを喰う方法も、人の殺し方も知ってる。得物の切れ味も血のぬめりと温度も分かってる。何が足りない。
あなたがと、思ってから嗚呼また論旨がずれているなと思い直した。それでも思考はもとに戻らず、この人は、そこらの文官など(私など)よりもよほどに優れているのではないかと考える。
その上お前は、オレの知らないことをいくらでも知ってるだろうが。
船舶泊めるロープの結びなんて分かりませんよ。私だって知らないことはたくさんあります。
あなたとか、あなたとか、あなたとか。だめだもう、何の話だったかも思い出せない。せっかく隣にいるのに私の意識は他所を漂っている。
しかしまあ、お前でも落ち込んだりするんだな、
でもとは何ですか。心外ですね。
それにしても、弱い面を知られるのはもっと侵害だ。でもそれで、声をかけられるのならば。ガラス細工のように(女のように)もろく(弱く)
あー、ほら、あんま考えんな。今まで通り次、次な。
あなたには向上心が必要ですね。
いやしかし、それで今のあなたが失われるのならば、進化も成長も学習も、私は全てを拒否するのだろう。そしてどん詰まりで、進退窮まって、あなたと――

ふらりと倒れこんできた陸遜を、甘寧は片腕で受け止めた。一体どういう状況なのかと、甘寧の思考が一時停止する。
陸遜は一昨日、自身の独断で戦場から軍を撤退させた。どう見ても戦況は不利で、事実陸遜の判断により自軍の被害は最小限に押さえられたといえる。
しかし帰城した陸遜に待っていたのは、上位文官からの説教・厭味・皮肉。
それらから開放された陸遜は、どう好意的に受け取っても元気とはいかない様子だった。そんな陸遜が気になった甘寧は、励ましてやろうと思い、廊下をふらふらと歩いていた陸遜に声をかけたのだ。
ところが返事は一切返ってこないし、今はぐったりとした様子。
熱でもあって倒れたのかと、帽子を落さないように気をつけて額を触ってみたが、特にそんな様子もない。呼吸も正しい。
どうしようかと思っていると、ちょうど呂蒙が通りかかった。
「甘寧、どうしたんだ」
「おう、おっさん。ちょうどいい。なんかよくわかんねえけど、陸遜が」
続きを言おうとした甘寧に呂蒙は苦笑する。
「…よく見ろ甘寧。寝てるだけじゃないのか?」
言われて見れば、規則正しい呼吸は確かに寝息だ。陸遜は甘寧の腕に寄りかかって、立ったまま眠っている。
「お前の部屋が一番近いだろ。連れて行って、しばらく寝かせてやれ。」
「チクショウ、心配して損したぜ」
言いながら甘寧は陸遜を担ぎ上げる。軽かった。じゃあなと呂蒙にもう声をかけ、自室へと向かった。
足で乱暴に扉を開けて部屋に入ると、陸遜をゆっくりと寝台に下ろす。帽子は脱がせて枕元へ置いた。
「次の戦には俺を連れて行け。」
そう言って寝具をかけてやった。

なんかもう、私の書く無双は気持ち悪い方向性で統一されつつある。



03 血管・欠陥 * 煩雑・乱雑 [三国無双:凌統→甘寧]

いい加減あの憎々しいクソ馬鹿の相手にも疲れたから、ちょっと木陰に座り込んで休憩。別に、仇討ちを諦めたわけじゃない。ただ、あいつの相手は調子が狂って、色々わけわかんなくなるから今は休憩。地面がひやりとして気持ちよかった。そのまま後ろに倒れて寝転がる。こういう、平穏って言うの?悪くない。それどころか好き。でも最近なんか違う。焦りっつーやつ?何かしなくちゃいけないって思って落ち着かない、落ち着けない。そういう時はとりあえずどうやってあの鈴を殺そうか考える。後ろから襲い掛かって上から振り下ろすだろ、したらあいつ頭の上あたりで刀で受けるから鳩尾に膝蹴り。うん、いい感じ。少し達成感。転がってうつ伏せになってみた。草の匂いがする。最近奇襲かけるのも楽しい。いや、楽しいのはたぶん仇をとる事ができる(できそう)だから楽しいのであって。お互い得物で競り合ってる時のぎしぎしいう耳障りな音だとかあいつの容赦無い殺気と睨みだったりそのくせ仲間扱いの変な躊躇とかそれを何度も繰り返すのが、良いなあ、なんて思ったりしてない。でももし、例えば仮定の話。あいつが父上殺したりしなくて(俺の仇じゃなくって)そしたら俺、どんな顔であいつに会ってんだろな。今みたいな攻防じゃなくてふつーに手合わせなんてしちゃってんの?わ、待て何考えてんだ気持ちワル。馬鹿じゃないのか。あいつは俺の仇ってことが事実だろうが。やばいな、最近どっかネジ飛んでんのか俺。あー、もしかして、ここ日陰だし風通し良いしで眠いのかも。そう、眠いから眠いから。頭おかしくなってない証拠にしゃんしゃらんって鈴の音でばっちりスイッチ切り替わる。考えるよりも先に立ち上がって音のほうに走り出してた。



04 血管・欠陥 * 煩雑・乱雑 [三国無双:甘寧→陸遜]

渡り廊下の周りをうろついていた甘寧。
「死ね!」
振り返り大上段の攻撃を腕で受ける。すぐさま左側に飛んで、膝蹴りをかわした。横っ面を撲った後、うなじに手刀を叩き込んだ。
意識を失い、倒れこむ正面に回って鳩尾を撲ろうとした時、動きが止まる。
廊下に陸遜が立っていた。
甘寧は真正面から倒れてきた凌統を受け止める形になった。しゃんしゃらんと、鈴が鳴る。
「ああ、陸遜さがしてたんだぜ」
「うわ、甘寧どの最低ですね、カワイソウに凌統さん」
貴方武器持ってたら間違いなく殺してましたよね、書簡越しに眉をひそめながら陸遜が呟いた。
抱えた凌統と陸遜を交互に見ながら甘寧が弁明する。
「違うんだ、不意打ちだったから気付かずについ」
言い終わらないうちに陸遜は廊下を渡り始めていた。凌統を落して追いかける。
「つい、で貴重な戦力殺されるわけにはいかないのですが」
横目で地面に落ちた凌統をちらりと見た。
「待てよ、俺はお前に用があんだ」
書簡が今にも落ちそうに揺れている。それでも陸遜は足を速め、室内へと入っていく。おい、と甘寧が大声で呼びかけて足を止めた。振り返った場所は既に日陰。
「聞いてくれよ、」
陽射の中に立つ甘寧は、陸遜から良く見えた。
日陰の中に立つ陸遜は、甘寧からは酷く見えずらい。かろうじて陸遜が、目を細めている事が解った。
「忙しいんです、仕事があるんです。」
燕尾を揺らして優雅にターン。
陸遜の名を叫ぶ甘寧の声が室内に響いた。



05 血管・欠陥 * 煩雑・乱雑  [三国無双:陸遜→呂蒙]

まったく煩いなあ、ちょっとは黙っていられないものですかねどうせ馬鹿なら言語も理解しないほど馬鹿ならいいのに。それならこの場にもいなかったでしょう。私は忙しいんですよ、貴方がそうやって大きな声で私を呼ぶようにあの方の名を呼べればどれだけ楽になると思っているんですか黙ってください。ああ、私も馬鹿に生まれつけばよかった。そうすればこの書簡を届けたついでに美味しく呂蒙殿を頂いてしまうことも可能なわけででもそれが出来ない私が大嫌いですよええ。この廊下寒いですね。表とは大違い、窓も少ない日陰だからですねうわ今の私にぴったり過ぎて本当嫌になります。あ、呂蒙殿。窓から差し込む陽射が無くったって貴方のことは見分けられますよ。まだ瞳孔が開ききらずに目の前に眩しい斑点が光っていたってです。いいところで会いましたね、これ頼まれていた分ですよ。え、すまないって、何をおっしゃるんですか。これくらい苦になりませんよ。貴方のためならなんてわかりやすい理由とか仕事の間はこの鬱々とした気分も忘れていられるなんて本当のことは言えませんけど、これも孫呉の為と使いやすい大嘘で貴方の笑顔が見れてかなり幸せ。かんから竹簡が鳴って私の心臓が鳴って手渡す瞬間手が触れてふらつく。倒れそう。いえ、貧血だなんてとんでもない。今一番上の書が落ちそうだったから均衡保つためですよ、私の心の均衡が崩れてますからの言葉は飲み込め陸遜。お前は馬鹿じゃないんでしょう。呂蒙殿の後を継ぐのに馬鹿な私でどうするんですか。そんなもの求められていませんよ、馬鹿ならさっさと戦場で散ってきなさい潔く。では。未練がましい顔なんてしない。ああそうだなんて呼び止められても喜んだ様子は見せない。今夜ですか?ええ、たった今暇を作りました。お酒は苦手ですけど肴が貴方なら別ですよ短くはいでは今夜と返事をしておく。それよりも忙しいんだと言わんばかりに早足でこの場を去ろう。大丈夫、今夜



06 血管 ・欠陥 * 煩雑・乱雑 [三国無双:呂蒙→皆]

「ああそうだ」
呂蒙が分かれたばかりの陸遜を呼び止める。お互いに振り返って相手を見た。
「今夜暇なら、一緒に酒でもどうだ?」
「はい。では今夜、」
陸遜は短く返事をして足早に去っていった。抱えていた書簡がかんからと音を響かせている。陸遜の後姿が見えなくなってから、呂蒙は片手に竹簡を握ってもとの進路へ歩き始める。渡り廊下に差し掛かる。陽光の眩しさに目を細めた。
しゃんしゃらんと、鈴の音が聞こえる。
「あーチクショウ!」
うつ伏せに倒れた凌統の側に甘寧がしゃがみ込んでいた。
「おい、何事だ」
声をかけられ勢い良く立ち上がる甘寧。その勢いで凌統を知ってか知らずか蹴っていた。
「うを、おっさんか。聞いてくれよ、陸遜のやつよ〜」
「それより、凌統は大丈夫なのか?」
「おい、おっさんまで無視か?」
大股で呂蒙に近づいてにらみをきかせる甘寧。
「まあ多分お前が悪い。」
そう言いつつ、空いている手のひらを振って軽く受け流した。
「ケッ、なんだよ。今晩酒にでも誘おうと思っただけなのに」
「なんだ、お前もか。さっき俺が誘ったら乗ってきたから、お前も来ればいい。」
「あ?……わかった俺も行く。」
甘寧は一瞬眉をひそめ、それからうなずいた。その様子に呂蒙は少し笑う。
「あと、凌統こっちに寄越せ。そこに置いておくわけにもいかんだろ。気付いた時に目の前にお前の顔があるのも不憫だ。」
ケッと吐き捨てながらも、甘寧は凌統を抱え上げる。
「ほらよ」
二、三歩歩いてから、それを呂蒙に向けて投げつけた。呂蒙は慌てて受け止める。握っていた竹簡を落した。かんから音を立てて転がる。
「投げるやつがあるか馬鹿者!拾え!」
呂蒙に言われて甘寧は気の無い返事を返す。凌統を担いだ呂蒙はため息をついた。甘寧が竹簡に歩み寄る。その手が竹簡を握った。